
華麗なる賭けの代償は、あの『踊るキノコ』だった。
正月早々、キノコになってしまった。
あの有名通信会社のCMで踊っていた○○○キノコを思い出してほしい。
まさに、どこからどう見ても、ある日突然、私はあのシルエットになってしまったのだ。
話せば長いことながら、発端はベレー帽の福袋である。
絵描きとか、音楽家とか、そういうタイプではもちろんないが、私は帽子が好きだ。というか頭に何も被っていない状態で外に出ることに耐えられない。毎日がアスコット競馬場に行くオードリー・ヘップバーンのような気持ちで、帽子を忘れない。
夏は暑いから、冬は寒いからとかではなく、頭に風が抜ける状態に耐性がないのだと思う。
思うに、頭の中身が充実していないので、空気圧が直に来るのではないかと、科学的根拠はないが深読みしている。
世の中、自分にしかわからない身体の調子というのはあるものだ。
かくして春には春のキャップかベレー帽。
夏はつばのあるチューリップハットかストローハット。
秋は、春と同じキャップかベレー帽。なんと経済的。
冬はニット帽かあったかい生地のベレー帽。
なんなら家ではワッチを被ること多し。これは寒さ対策というより、いろいろむにゃむにゃとした誤魔化しである。
そんなに帽子があったら保管の邪魔じゃないか? と思われるだろうが同じものを使いまわしているので、大丈夫。ワッチやベレー帽は畳んで突っ込んでおけばいいし(雑)
私にとって靴下と帽子は同じ扱いである。
最近愛用のベレー帽が古びたので、買い替えたいなと思っていた。使う頻度を考えれば、結構お高くても許される、はず。
そう自分に弁解しつつお気に入りのメーカーさんのページをチェックしていたら、「ベレー帽」の福袋があった。
何が入っているのかは不明だが、ベレー帽が入っているらしい。(当たり前)
うーん、と1日悩む。
中身のわからない福袋ほど怖いものはない。最近は中見せ福袋が主流だが、ここは見せていない。
大丈夫か?
でもベレー帽だしな。ベレー帽はどうしたってベレー帽だろう。
もともと奇抜なデザインのないメーカーさんだ。
ここはいいんじゃないかと、1日寝てからクリアな頭で(自分比)買うことにした。
華麗なる賭け、スティーブ・マックィーンの気分である。
ちなみにマックィーンは本当にチャーミングな役者だった。二枚目とかイケメンとかじゃないが、ちょっとした表情が本当に魅力的だったなあ、としみじみする。動いている時の方が素敵な役者さんだった。多分ディカプリオもそうだと思う。写真で切り取るより動いている時が素敵。
と、そんなこんなで届いた福袋をバリバリと開封した。ちょっとワクワクする。
出てきたのは、確かに「ベレー帽」だった。色も形も間違いなくベレー帽。あったか素材のフランネルっぽい生地で、こっくりした茶色。真冬に飲みたいホットチョコレートの色。
真っ赤とかじゃなくてほんといいよね。気が利いたチョイスでありがとう。
だが私の第一声は「思ったんと違う……」だった。
なんというか、でかい。
ただただ、でかい。
クラウン(帽子の上の丸い部分)が、惜しみなく生地を使いました、どうでしょう?! と言いたげにたっぷりタプタプで贅沢な作りだ。
もう一度言う。タプタプ。
嫌な予感を押し殺しつつ被ってみた。
そして、キノコになった。
白かったら大黒さん
赤かったら還暦、紫なら喜寿のお祝い
どこに転んでもめでたいな、オィ。
○○○キノコになってしまった私は、鏡の前で、そうつぶやいてみた。
外に被って行っても誰も何も言わないだろう。
だが正直な子供だけが「あ、○○○キノコおばーちゃんがいる!」と指を指すだろう。
こちらが傷つこうとも正直は褒めるべきものだ。嘘も方便を覚えるのは大人になってからでいい。
謹んで、私はベレー帽をクローゼットの奥に突っ込んだ。
秋ごろ、遅くても冬には、私のファッションセンスが爆上がりして、このキノコベレーを被りこなせるようになることに、華麗にBetしたい。
ただ賭けは9割9分負けるものだと私は知っている。
※ ヘッド画像はAI作成のものです。