
『国宝』とは何だったのか― 芸は人を超えられるのか ―
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『国宝』を観て
正直に言えば、私はこの映画を観る前、「歌舞伎の世界を描いた作品」くらいの認識だった。
もちろん評判は知っていた。
多くの人が絶賛し、涙を流し、今年最高の映画だと言っていた。
しかし、それでも私はどこか冷めていた。
歌舞伎そのものに詳しいわけでもない。
芸能の世界に特別な憧れがあるわけでもない。
だから、自分にはあまり刺さらないかもしれないと思っていた。
だが、観終わったあとに残った感覚は、そんな予想とはまるで違っていた。
これは歌舞伎の映画ではない。
成功の映画でもない。
努力の映画でもない。
ましてやライバル同士の青春物語でもない。
もっと奇妙で、もっと恐ろしいものだった。
私は映画を観ながら、ある種の怪物を見ていたような気がする。
人間ではない。
才能でもない。
野心でもない。
もっと得体の知れない何か。
この作品について多くの人が語っている。
血筋と才能の物語だと言う人もいる。
努力が報われる物語だと言う人もいる。
どれも間違いではないと思う。
しかし私は、この作品の本質は少し別の場所にあるように感じた。
ここから先は完全なネタバレを含む。
未鑑賞の方は、この先を読まないことを勧める。
多くの人が語る『国宝』