
天の川のほとり
年に一度 願いが世界中から届く
「宝くじを当ててください」
「痩せますように」
「彼氏ができますように」
「推しのライブ最前列」
担当者は黙々と仕分け
「却下」
「保留」
「努力不足」
「自分でどうぞ」
新人
「えっ、願いって叶えるんじゃないんですか?」
課長
「違う違う」
「私たちは”願い”より“人”を見てる」
「例えば?」
1枚の短冊
『家族が幸せでありますように』
「合格」
「でも、この人、
去年は 『金が欲しい』
一昨年は 『出世したい』
その前は 『ライバルが失敗しますように』
でしたよ」
「だから合格」
「人は願いが変わった時じゃなくて
願いの”主語”が変わった時に成長するんだ」
アラームが鳴った
「特級案件」のランプ
『世界中のみんなの願いが叶いますように』
新人は目を輝かせた
「すごい! 満点ですよね!」
課長は静かに言う
「身元照会」
数秒後
「SNS総フォロワー数、837万人」
「プロフィール更新予定
『世界平和を願う私』」
「……却下」
「えぇ!?」
「人間は願いを書くが
本当に書いてあるのは、願いじゃない」
一番下の箱から しわだらけの短冊が1枚
鉛筆で震えた字
『今年も家族には内緒で
ばあさんに会わせてください』
「差出人確認」
数秒後
「……彦星」
「宛先は?」
「織姫です」
課長は天の川をみつめ
「人は未来を願っているようで――」
「”こんな自分でありたい”と告白しているだけなんだ」