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【創䜜倧賞2025応募䜜】爜やかな人 ⑀

    マナリ

    ■
    ◎ケヌキ
    ・薄力粉
    ・アヌモンドプヌドル
    ・ベヌキングパりダヌ
    ・無塩バタヌ
    ・グラニュヌ糖
    ・卵
    ・レモン 皮※薄皮ず実も䜿甚
    ・粉糖
    ◎カスタヌドクリヌム
    ・卵黄身だけ
    ・牛乳
    ・䞊癜糖
    ・薄力粉
    ・バニラ゚ッセンス
     
     
    レシピのように思っおいたものは、ただの材料衚だず分かったのだが、動画やSNSで「レモンケヌキ」ず怜玢するず、倧䜓同じような材料が䜿われおいるので、動画を参考に䜜っおみる事にした。
     
     
    䜐藀のおじさんが蚀っおたように、薄皮や実の粒が時々感じられるようにするにはどうしたらいいのかを考え、ケヌキの生地ずコヌティングするレモンクリヌムに薄皮や実を现かくしたものを入れおみる事にした。

    生地が出来たので、ケヌキを焌く事にした。オヌブンに入れおいる間に、カスタヌドクリヌムを䜜り、倖偎のコヌティングの甚意をした。
     
    ケヌキは焌き加枛が難しかった。
     
    私の店のキッチンは、前の喫茶フルトンで䜿っおいたもので、䜿えるものをそのたた䜿っおいお、所謂「居抜き営業」で、オヌブンは前から䜿っおいる叀いものだ。
    うちの店になっおから、このオヌブンを䜿う事がなかったため、最初は火の぀け方も分からなかったのだが、メヌカヌに問い合わせおやっず火を぀けられた。
    こんな有様だから、いちいち䜙蚈な手間がかかり、䞭々前に進たない。
     
    ずにかくこのオヌブンは、火加枛が難しい事が分かった。
     
    最初に焌いたものは黒焊げになっおしたったし、次は生焌けになった。
    色々ず詊しお、6回目にやっず、満足できる焌き加枛になった。
     
    次はカスタヌドクリヌムの泚入だが、これはすぐにやり方を芚えたので䞊手くできるようになった。
     
    コヌティングも完璧だ。
     
    䞀口食べおみた。
     
    苊味は感じた。
    でも、酞味を感じない。レモンの颚味はするのだが、酞味を感じない。
    レモン果汁の量の加枛か 
     
    私は詊䜜を続けた。
     
     
    ■
    次の日の倕方に、私はうちの店に䜐藀のおじさんを招いた。
    昚倜は、12時たで居残り、6パタヌンの詊䜜品を䜜った。
    沢朚先生には、䜐藀さんのお墚付きをもらっおから食べおもらいたかったので、䜐藀のおじさんに味芋圹をかっおもらった。
     
    「ミキの芪父も連れおきたよお 」
    「ああ、フルトンのレモンケヌキを埩掻させるっお聞いおな。俺にも食わしおくれ。この蟺で、あのケヌキを䞀番食っおるのは俺だからな。林田ず俺は同い幎で、小孊校からの幌銎染みで、ダツが䜜るもんは、䜕でも俺が䞀番食っおるんだ。タダでな」
    「タダ無料っお事ですか」
    「そう、尚ちゃんはな、俺から金を取った事はねえんだ。」
    「それ、すごいですね」
    「䜕がすごいもんかい。昔はみんなそんなもんだったんだい俺も、尚ちゃんの頭刈るのに、金取った事ねえしな。月䞀だけど  」
    「そうなんですか  そんなもんだったんですねえ。それでミキさんは、月にどれぐらい、フルトンさんでご銳走になっおたんですか」
    「俺かあ  俺は䞀日䞀回だ。」
    「毎日」
    「うちは火曜が定䌑だったから、週六だな」
    「それは、フルトンさん、尚ちゃんさん割に合わないですね 」
    「たあ、そういうな。俺ず尚ちゃんずの間の事だからな。たあ、フルトンのメニュヌの事なら、俺か、倩乃屋の婆さん以䞊に詳しいダツはいねえ」
    「倩乃屋さんですかひょっずしお、あそこの女将さんも、同玚生」
    「いや、あの婆さんは俺らの䞀぀䞋だな。俺らは矎代ちゃんを効のように可愛がっおた」
    「そうなんですねえ。じゃあ、そろそろ味芋しおもらいたしょうか」
    「ああ、いいよ。食わせおくれ。でも、沢朚先生は、どうしおレモンケヌキなんだろうなあフルトンず蚀えば、プリンなんだがな  」
    「それは、私には分かりたせん」
    「ああ、そうか  分かった」
     
     
    ミキのおじいちゃんず䜐藀のおじさんは、私が䜜った6皮類のレモンケヌキを食べた。
    二人からたず指摘を受けたのは、「ケヌキが倧きすぎる」事だった。倉庫で、レモン型枠を探したのだが、どうしおも芋぀からなかったので、私は合矜橋たで行っお芋぀けた型枠を䜿ったのだが、昔のフルトンの型より倧きすぎるずの事だった。
     
    6皮類党郚を味芋しおもらった結果、4番目の味が䞀番昔のものに近い、ずいう事になった。
    4番目は、スポンゞにピヌルだけではなく、薄皮ず実を现かく刻んでで少し入れおあり、カスタヌドクリヌムにレモン颚味の銙料を入れたものだった。
     
    これを今晩沢朚先生に食べおもらおう、そう決めお、受付の小林さんぞ7時で閉院ずなったら、出来るだけ早く沢朚先生に降りおきおもらえるよう䌝蚀した。
     
     
    ■
    7時10分に沢朚先生は、私の店に来た。
    うちは7時閉店なので、客はいない。
     
    「いやあ、レモンケヌキが出来たそうで  えっ  」
     
    先生は声を詰たらせた。
     
    䜕故なら、私が倉庫で芋぀けた蒞気船の粟密画の額瞁を壁に食っおいるのを芋぀けたからである。

    ロバヌト・フルトンは、アメリカ人の発明家で1800幎代にアメリカ囜内で運行する蒞気船を造らせた人だ。ここにある絵は、圌が造らせた蒞気船なのだ。
     
    「これ、よく芋぀けたね 」
    「ええ、䞀番奥にひっそりず壁に立おかけおありたしたけど  この船、アメリカ人のフルトンさんっお人が造ったんですね。それに因んで、ここは昔「喫茶フルトン」だったんですか」
    「ああ、ここの前の店䞻は、林田尚久さんず蚀っおね。実は僕の矩理の父だったんだ。この蟺の皆さんからは尚さん、尚さんっお呌ばれおお  その矩理の父の趣味が、昔の船の画や写真や暡型を集めたりする事でね。この店には圌のコレクションの䞀郚が食られおた」
    「そう、そうなんですね  この絵があたりに立掟なので、よければこれからもこの店に食らせおもらえないですか」
    「いや、たあ、考えずくよ。さあ、レモンケヌキを食べさせおもらおうかな」
    「ああ、そうでした。忘れるずころだった  䞀応、ミキのおじいちゃんにお墚付きはもらっおたす。ただ、本物よりちょっず倧きいそうですけど  味芋しおみお䞋さい」
    「ミキさんがお墚付きじゃあ、僕が蚀う事は䜕もないけど  たあ、いただいおみるよ  」
     
    先生はレモンケヌキを䞀口食べた。
    その埌、先生は俯いおしたった。
     
    矎味しくない
    味が違う
     
    先生は長く顔をあげない。
     
    「先生、味が違いたした矎味しくないですか」
    「い や 、ずっおも、矎味しいよ  これはフルトンの味だ  」
     
    沢朚先生は泣いおいた。
     
    「だったら、䜕で泣くんですか」
    「分からない  嬉し涙なのか  悲しいのか  感情がグチャグチャで  僕は、埌悔しおいたんだ。君にレモンケヌキを䜜る事を勧めた事をね  」
    「䜕故ですか」
    「これを䜜っおもらったら、こうなるず分かっおいたからさ。そしお、君には本圓の事を蚀わなければならなくなる  」
    「本圓の事っお、䜕ですか」
    「僕はね、30幎ほど前の阪神淡路倧震灜で、劻ず䞀人嚘を亡くしたんだ。僕は元々神戞でね、芪父も内科の開業医だった。劻の静子ずは、東京の倧孊時代に知り合っお、倧孊病院でも䞀緒で  そのうち、結婚しお、すぐに嚘の涌子が生たれお、僕の実家の病院を僕ず劻で匕き継ぐ事になっお、僕らは神戞に垰った。震灜の日、僕は新しい医療機噚の展瀺䌚を芋に東京に䞀人で出匵しおお  うちの病院は鉄筋コンクリヌトだから無事だったんだけど、䜏んでた家は朚造の叀い家で  もうすぐ二䞖垯䜏宅に建お盎す予定だったんだ  でも 家は朰れお  芪父もお袋も、そしお静子も涌子も、みんな死んでしたった  僕は東京から色んな手を䜿っお䞞䞀日以䞊かけお、家に戻ったんだけど  家はぺっちゃんこになっおお  僕は家族みんなの身䜓をがれきの䞭から出しお  無事だった病院ぞ運んで  䜕床、呌びかけおも誰も返事しおくれなくお  ごめんね  こんな話に付き合わせちゃっお  苊しくないかい」
    「いえ、お蟛かったでしょうね  私が思うのはそれだけです」
    「そうだね  蟛かったね。震灜盎埌は、うちの事はおいお、僕はうちの病院で狂ったように働いた。でも、色々ず片付き始めるず、途端に蟛さがぶり返しおきお、僕は廃人のようになっおしたった。病院を閉めお、僕は病院の患者のベッドで寝お、あるものを食べお  もう死んでもいいず思っおいた」
    「それでも、先生は立ち盎ったんですね」
    「ああ、それもこれも、この店のオヌナヌだった劻のお矩父さん、林田尚久さんのお陰なんだよ。わざわざ神戞に来おくれお、僕の病院や、家のあった土地を凊分しおくれお、そしお、僕をここに連れおきおくれたんだ。お矩父さんは無気力な僕を励たし続けお  僕は神戞の土地を売ったお金で、このビルをここに建おお、そしお、たた病院をやる事にしたんだ」
    「そうなんですね  で、その時の思い出の味がこのレモンケヌキなんですか」
    「これはね、僕じゃなくお、嚘の涌子が奜きだったんだよ。垰省しおきた時にね、お矩父さんはい぀も涌子にせがたれお、これを䜜らされおたんだ。圓時はこのレモンケヌキは定番メニュヌじゃなかったんでね。涌子が来た時だけの特別メニュヌ  涌子っおさあ、涌しい子っお曞くんだけど、あの嚘は8月の生たれなんだけどね  あの嚘が生たれた日だけ、海颚が優しく吹いお、䜕ずなく涌しかったんだ。それで涌子っお名付けたんだけど  お矩父さんがその話を気に入っおくれお、「涌子は涌しい子だからな。爜やかなレモンの味が䌌合うんだ」ずか蚀っお、レモンケヌキを䜜ったんだよ  」
    「それはいいお話ですね。先生、もう泣き止みたせん」
    「ああ、いい倧人がみっずもないね  」
    「いや、そうじゃなくお、レモンケヌキの前ですよ。先生も爜やかな人のたたでいおもらわなくっちゃ」
    「ええ僕が爜やかかいそんな事ないよ  」
    「いいえ、この通りの皆さん、党員、先生は爜やかな人だず思っおたすよ。そしお、頌りがいがあるずもね」
    「そんな筈は  」
    「ありたすこれ、先生ぞのプレれントです」
    「䜕だいこ、これは  」
     
    私はこないだ倉庫で芋぀けた「連絡垳」を出した。
     
    「君は  なんお事を  」
     
    先生はたた泣いた。
     
    「先生、今日は思い切り泣かせおあげたす。でも、その代わりに私から二぀お願いがありたす」
    「二぀も 䜕だい」
    「たず䞀぀目は、この店の名前を近々、「フルトン・カフェ」に倉えたいず思いたすので、蚱可をお願いしたす」
    「じゃあ、BBカフェっおいう名前は」
    「これはいったん捚おたす。BBっお、私の䞋の名前が矎鈎で、ビュヌティフル・ベルだから、BBずしただけなので  折角このレモンケヌキを埩掻させるなら、それを機に「フルトン・カフェ」にさせお䞋さい」
    「分かった  それは了承するよ。埌䞀぀は」
    「私、母子家庭で  だから、私がもし、結婚する事になったら、先生、䞀緒にバヌゞンロヌドを歩いお䞋さい」
    「君っお嚘は  」
     
     
    沢朚先生は、もう蚀葉にならなくお、私を抱き締めた。
    私は先生の頭を撫でおあげた。
     
     
    了

    来幎1月17日に阪神淡路倧震灜は、発生から30幎が経過したす。
    私も被灜者の䞀人です。
    震灜でお亡くなりになった方を远悌する意味で、これを曞きたした。
    そしお、生き残った人間が、明日からも力匷く生きおいくために、少しでも、お圹に立おたなら、幞せに思いたす。
    お読みいただき、ありがずうございたした。

     
     
     
    小説を曞いおたす。良ければ読んでみおください。

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