
二つの富士山世界遺産センター、あなたはどちらが好き?
山梨県在住です。毎日富士山を見ることができます。雨や曇りで富士山が見えない日も、「この方向に富士山がある」と思うだけでしあわせな気持ちになります。
富士山がユネスコ世界文化遺産に選定されてから、さまざまなことがありました。
オーバーツーリズムの問題など、課題もあります。しかし、私はプラスのこともたくさんあることを認識しています。
特に、山梨県、静岡県両県に「富士山世界遺産センター」ができたことは画期的です。私は両方とも見学しました。その上で、両方の違いを興味深く感じました。
山梨は「信仰の山」を語る施設です。
山梨側は世界遺産登録名である
「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」
をかなり忠実に解説しています。
富士講、御師、登拝、巡礼などが中心で、
「なぜ山に登るのか」
「なぜ富士山が特別視されたのか」
を理解する構成です。
ややアカデミックで、文学好きの方なら面白いのですが、小学生には少し抽象的かもしれません。
静岡は「登る山」を体感させる施設です。入口からまるでアトラクションです。
坂茂氏設計の逆さ富士の建物に入り、らせんスロープを上りながら映像を見ることで、
「海から富士山へ登る」
という疑似登山体験ができます。
展示も、火山としての富士山、
自然環境、登山、信仰をバランスよく扱っています。
富士山を見る方向が違う
私は両館の最大の違いはここだと思います。
山梨館は
「人々が富士山をどう見てきたか」
を語っています。
対して静岡館は
「富士山そのものとは何か」
を語っています。
つまり、山梨は人文系、静岡は自然科学系という傾向があります。
もちろん両方とも両面を扱っていますが、重心はかなり違います。
面白いのは建物です。
山梨館は比較的控えめで、主役は館内の展示です。巨大和紙オブジェ「冨嶽三六〇」が象徴的ですね。


一方の静岡館は、坂茂氏の設計そのものが観光資源になっています。逆円錐の木格子は、外観だけでも見学する価値があります。


個人的には、
山梨館は「富士山を読ませる博物館」
静岡館は「富士山を体験させる博物館」
という表現がしっくりきます。
もしあなたが文学や歴史がお好きなら、展示の密度という点では山梨のほうが何度も味わえる施設かもしれません。一方で、家族連れや初めて富士山を学ぶ人を案内するなら、静岡のほうが圧倒的に分かりやすいと思います。
