
愛は、距離と不安を連れてくる。
風鈴の音が
揺れながら溶けていく
開け放した窓の向こう
白い雲だけが流れた
君の影を追い越せずに
夕暮れを歩いていた
名前のない感情だけが
熱を持ったまま残った
⸻
いつからだろう
手に入れたものほど
失くす形をしている
⸻
君に近づいた分だけ
世界が少し狭くなった
昨日まで見えなかった
終わりの輪郭が見える
夏の匂いがするたびに
何かを思い出しそうで
思い出せないまま
ただ空を見上げている
⸻
蝉時雨だけが
正しそうに鳴いていた
僕らが抱えた言葉は
まだどこにも届かない
笑い声だけ残して
季節は先へ進むのに
置き忘れた心だけが
まだ同じ場所にいる
⸻
二人はきっと
どこまで行っても
二人のままだ
⸻
触れられる距離なのに
どこか遠く感じるのは
君の中にある孤独へ
辿り着けないからだろう
花火が消える音なんて
本当は聞こえないのに
胸の奥では確かに
何かが落ちていく
⸻
もしも僕らが
ひとつの影になれたなら
夜風も不安も
半分になっただろうか
だけど
重ならないからこそ
伸ばした手には
意味がある
⸻
夏は何度も来るのに
今日という日は戻らない
君の隣で知ったことを
僕はまだ言葉にできない
近づくほど怖くなるのは
離れる日を知ったからじゃない
消えてしまうものに
名前をつけてしまったから
⸻
遠くで花火が鳴る
夜空が少し明るい
振り返れば
そこにいた気がした
夏の終わりは
いつも静かで
君の名前だけが
風に残っていた