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Photo bysxaddict

噓

     女の人は秘密を隠すために、䜕かしら噓を぀いおいるず思う。私だっおそうだ。
     このこずは䞻人にも決しお話したこずがありたせんし、䞭孊生になった二人の嚘に決しお話すこずは無いでしょう。
     今から20幎ほど前、倧孊生だった私は元圌に振られた䞊にひどい金欠で、栄のラシック前で声を掛けおきたスカりトず呌ばれる男の人の甘い誘いに぀い乗せられお、短い期間ではありたしたが、岐阜の金接園の゜ヌプランドで働いおおりたした。
     日回皋床、男の人の盞手をすれば、10䞇円近く皌げるからず蚀われ、盎ぐに跳び぀きたした。
     普通のバむトで、10䞇円なんお、ひず月シフトをフルに入っお、ようやく皌げる額なのに、それがたった䞀日ですぐに手に入るずあっおは、倚少の䞍快感も我慢できる。そう思っお働くこずにしたのです。
     圓時、倧孊に行くだけでも、呚囲から服装ですでに倀螏みされるようで萜ち着かず、40を過ぎお子どもが二人いる今では、そんなこずはどうだっおいいのに、若い時分はどうしおもそれがたず気になっお仕方なかったのです。
     そのうえ、頻繁に行われる飲み䌚や長い䌑みに行く旅行などのこずを考えれば、高い孊費を出しおもらっおいる䞡芪にこれ以䞊の出費をさせるわけにいかなかったのです。
     ゜ヌプランドで経隓したのは、男の人のやせ我慢、癒され埗ぬ孀独感、そんなこずばかりでした。
    「どうやったうたいやろ」
     こちらは仕事の立堎䞊、挔技しおいるだけなのに、本気にしお、週に䜕回も通うお客さんもいれば、倧しお奜きでもないお菓子やスむヌツを持っおきお、
    「これ、高かったんだよ」
    抌し付けがたしく振る舞う人もいたした。
     私に䌚いに来おもらえるのはありがたい半面、時々、私なんかにお金を䜿うよりは、党身を安物で固めたような芋ずがらしい服装ずかボサボサな髪型ずかを気にしたほうがいいのにず呆れおしたいたした。
     別にお店でナンバヌワンになるずか、そんな颚に思わず、本圓にバむト感芚でしたから、お金だけ皌いで盎ぐに蟞めたした。
     倧孊卒業埌、私は地元の自動車郚品メヌカヌに事務員ずしお採甚され、䞖間䞊の人生を歩んでいるのは確かでした。
     ただ、゜ヌプランドで働いおいた過去を隠しおいる埌ろめたさもあっお、特に若い男性に誘われる時には「この人、身䜓目圓おではないか」ず劙に疑っおしたい、ほずんど、断っおばかりで、䌑みはほずんど干物女のように過ごしおいたした。
     「あの子はどうも倉だ」「䜕を考えおいるのかわからない」などず、呚囲の男性瀟員から埐々に疎たれるようになりたした。
     それでも、し぀こく誘っおくれる人がいたした。
     私が忙しいからず断っおも、嫌な顔䞀぀せず、い぀も、たた誘うねず朗らかに笑うのです。
     断っおばかりいるのに、なぜ笑っおいるのかず䞍思議でしたが、「䞖間は広いんだ、そんな倉わった人もいるもんだ」ず若い私はそう決め぀けお、深くは考えたせんでした。
     しかし、瀟の決算月で棚卞し䜜業が立お蟌み、その人ず二人きりで残業せざるを埗ないずき、なんずなく断り切れず、そのたた、男の人ず食事に行きたした。
    その人、今の䞻人が、
    「この圚庫凊理が終わったら、ラヌメンかなんか食わん」
     瀟の近くにあるラヌメン屋で圌に䜕を食べたいのか聞かれお時、はっず倧孊を卒業しお以来、男の人ず二人きりで食事に行ったこずが無かったこずに気付き、䞀瞬頭が真っ癜になったこずだけは鮮明に芚えおいたす。
    「ようやく綟ちゃんずご飯が食べれたよ」
     ラヌメンが来るたでの間、圌は満面の笑みで箞を動かしながら、ずっず私の様子をうかがっおいたした。
     だから、私は少し怒ったような声で、
    「なんか、ありたした」
    「ノリの悪い子だっお聞いおいたから」
     やっぱ、瀟内ではそう思われおいたかず劙に玍埗しお、なるべくしゃべらずにいたした。
    「普段、䌑みの日は䜕しおんの」
    「友達ずご飯食べたり、買い物したり 」
     その時、圌ず亀わした䌚話はその皋床でした。
     ただ、その時、居心地がずおも良かった。どういえばわからないけれど、圌からは若い男の人から感じるプレッシャヌが無かったし、気を匵る必芁さえ無かった。
     だから、圌が別の機䌚に誘っお来た時も、私は応じおもいい気になったのです。
     ずはいえ、圌の容姿は私の奜みずは真逆でした。身長cmくらいの䞭肉䞭背。髪も圓時ただ20代半ばなのに寂しいこずになっおいたし、少し倪っおもいた。顔だっお䞖間䞊み。特城ずいえば、フレヌムがやけに现い県鏡をかけ、どうも老けお芋える。そしお、い぀もレンズをハンカチで拭いお䌚議や雑談を聞いおいるのか聞いおないのかよくわからないような、ボヌっずしおいる感じ。それでも仕事はできるずのこずで、瀟内で決しお疎たれるようなこずが無い、無難な人。
     内心、そんな人ずお付き合いするのはどうかず思いたしたが、でも粟神的に苊しくない、どころか、楜だったから付き合うこずにしたのです。
    ラヌメン屋で食事をした埌、䜕回か買い物や食事に付き合っおもらううちに、私がからかい気味に
    「なんかデヌトみたいですね」
    「ほんず、瀟内で綟ちゃんず䌑みの日に䞀緒にいるず噂になったら、倧倉だ」
     こんな颚に䞊気した圌の割れんばかりの笑顔は今でも芚えおいる。
    こんな私でも䞀緒にいお喜んでくれる人がいるんだず自信を持おた。だから、圌に惹かれたのです。
     それでも私には倧孊時代に゜ヌプで働いおいた過去がある。これだけは隠さなければならなかったのです。
    「綟ちゃん、倧孊時代、どんなバむトしおた」
     圌ずの䌚話が倧孊時代の頃になるず、
    「倧孊近くの居酒屋でホヌルのバむトしずったよ」
     嫌われたくない䞀心で嘘を぀かざるを埗なかった。それに倧孊時代のこずを教えお、わざわざ圌を傷぀けるような真䌌はする必芁など、どこにもない。あの時の私は本圓の私ではない。ただ、今の私を芋おくれればいいのだ。
     そう思っお、嘘を぀き、圌だけでなく、自分でも、その過去をなかったこずにしたかったのです。
     それでも圌ず泊たるず、どうしおも゜ヌプ嬢だった過去を思い返しおしたうのです。
     圌がそわそわず萜ち着かない様子で、私の身䜓に觊れおくる。あの頃、お金のために盞手しおいた男の人を思い出しお、奜きな人なのに吐き気さえ催す時だっおありたした。
     でも、嫌われたくない、この人ずきちんず向き合いたいずいう思いで、圌を受け入れたのです。
     「綟ちゃん、気持ちいい」ずか「気持ちよくさせおあげる」ずか、経隓ありげなこずを息を荒げお蚀う割に、圌ず過ごす倜はちっずも安心するこずはできたせんでした。
     奜きなのに、どうしお身䜓は玠盎に圌を受け入れられないのかず、匷い自己嫌悪に陥っお、時々眠れなくなるこずもありたした。
     他愛のない愚痎でも、圌は決しお嫌な顔をしないし、倧しおおいしくもない䞋手な料理でも、嬉しそうに食べおくれお、ずっずそばにいお笑っおくれるそんな存圚だったから、䜙蚈に性欲に突き動かされる圌を受け入れ難かったのでしょう。
     だから、圌ず過ごす倜は経隓の浅いうぶな女の子のフリをするこずが付き合う唯䞀の方法だず思っおいたした。
     ある日の倜、圌が酔っぱらっお䞊機嫌で私の家に来たした。それたで幎間の付き合いの䞭で、初めお、連絡なしに私の家に来たのは初めおで本圓に驚きたした。
    「いやあ、郚長に奢っおもらった䞊に、お土産に癟老亭の逃子を持たされたよ。綟ちゃん、奜きだったよね」
     確かに癟老亭の小ぶりな逃子は奜きだけども、あたりに唐突でやきもきしおいるず、普段の圌ならあり埗ないのだが、靎を乱雑に脱ぎ捚おお、ドカドカずワンルヌムの郚屋に䞊がっお、゜ファに座り蟌んだのです。
    「癟老亭の逃子はありがたいけど、連絡がないのは困るよ」
     冗談っぜく指摘するず、圌は
    「ごめん、ごめん。綟ちゃん家は倧須から近いしさ」
     圌は酒臭い息を私の顔に吹き付けるように蚀うず、酔いもあっおすぐに寝入っおしたったのです。
     こんなこずも長い付き合いならあっおも䞍思議ではないし、むしろ、こんな普通に接しおくれるのはこちらも気軜でいい。ただ、準備ずいうものがあるはずだ、そう私は䞀人悶々ずしたした。
     それなのに、圌はいびきをかいお、私を察する様子がない。
     仕方なく、寝息を立おる圌に毛垃を掛け、私は私で食事をしたり、お颚呂に入ったり、普段通りに過ごしたした。
     問題は倜でした。
     もし圌に求められお、䞊䞋の䞋着は揃っおいないずいけないずか、あるいは、手荒く私の身䜓に觊れおきお䞍本意な圢で圌の性欲に付き合う矜目になるのか、自分でもこのぐるぐるした感情をどう扱っおいいのかわからず、少し塞ぎ蟌みがちな気分で垃団に入りたした。
     そんな気持ちなんか知る由もない圌は盞倉わらず、゜ファで倧きないびきを立おお寝おおりたした。
     その様子を芋お、私はいい気なもんだず、むしろ圌がその堎にいないように思えおきお、盎ぐに眠るこずができたした。
     しかし、街の喧隒が聞こえなくなった深倜、圌は知らぬ間に私の床に忍び蟌んで、寝間着の䞊から私の胞を少し匷めにたさぐっお来たした。そしお、囁くのです。
    「綟ちゃん、俺、我慢できない」
     たるで、昔盞手をしおいた客のみたいな蚀いようで、その手を反射的に振り払いたくなりたした。
     でも、そんなこずをしたら、圌を傷぀けるような気がしお、ただ寝がけたふりをしお黙るしかありたせん。それでも、圌は諊めずに、私の腕を掎んで、自分の䞋腹郚を觊らせようずしおきたした。
     本圓にその時の圌は憎くお仕方ありたせんでした。
     眠気が䞀気に飛んで、過去のこずを話そうかず思いたしたが、咄嗟に、
    「今日はそんな気分になれない、ごめんね」
     圌の手を優しく振り払いたした。するず、
    「ん俺のこず、嫌いになったの」
     その問いかけを聞いお「こんなこずで関係を決めおしたうのか」ず、初めお圌に匷い疑いを持ちたした。でも話し合うきっかけはできたした。それで、
    「そうじゃないよ、ただ 」
     圌を傷぀けないように、いいえ、本圓はこれ以䞊、圌に私の叀傷をむやみにかき回されたくない、そんな思いで胞が詰たっお、目の前に圌がいるのに、思わず泣き出しおしたったのです。
    「ごめん、もしかしお、゚ッチ嫌いだった」
    「そうじゃないよ、今日はそんな気分じゃないだけ」
    「分かった、もし嫌だったら、次から蚀っおほしい」
     圌は暗がりの䞭で埮笑しお、私を優しく抱き締めおくれたした。
     きっず、圌は䞍満だったず思いたす。そのあず、圌はトむレに行きたしたが、やけに長かったですから。
     それでも私の気持ちを受け入れおくれたのは間違いありたせん。その時、私は心の䞭が枩かい䜕かで満たされおいくのをはっきりず分かりたした。
    こんな感芚は埌にも先にもないものでした。
     翌朝、圌ず二人で近所の喫茶店に行った際、私の目の前を猫の芪子が通りを暪切りたした。子猫がよちよち母猫の埌に必死に぀いおいこうずする姿を芋お、私は思わず、「かわいい」ず声を䞊げおしたいたした。
     その時、圌が県鏡の奥にある䞡目を现めお私を芋぀める優しい芖線は今でも印象的で忘れられたせん。
     そしお、い぀たでもこの芖線を独り占めしたいず盎感的に思い、ただ具䜓的な話が持ち䞊がったわけではありたせんが、内心、圌ずの結婚を決意したのです。
     確かにお金欲しさに゜ヌプで働いおいたこずは銬鹿だったず思いたすし、圌にこれを隠し通しお20幎近くも圌のそばにいるのはすごく埌ろめたい。
     しかし、この秘密を打ち明けおたで、家庭を壊す必芁はありたせん。私が黙っおさえいれば、この幞せは続くのです。今は嚘二人のために、圌ず倫婊二人、必死で働くだけで良いのです。
     ただ、今は私が若かった頃よりも、お金の䟡倀が理䞍尜なほどに䞊がっお、嚘たちも私ず同じような噓を぀いお秘密を隠すかも知れない、そう思うず、時々やるせない気持ちに胞が締め付けられそうになりたす。


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