メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

Realigi 4第䞀郚第二章 幜霊海域第䞀話 「人は、等しく尊い者」


    ▌前回▌

       1

    『海の神よ、この子をどうか抱き留めたたえ』
     レアリヌギは、自宀の鏡台の前に座り、自分の巊右色違いの瞳を芋぀めおいる。
     淡く苊しげに笑んで、圌女は呟く。
    「  なぜ、わたくしは捚おられたの  」
     右は、玫。
     巊は、青。
    「なぜ、わたくしは、生きおいるの  」

     倕暮れのデッキに䞊がるず、コヌラルが倕日を眺めおいる。
     レアリヌギは声をかけようずしお、沈黙する。
     圌の暪に、黄緑色の髪に、柎色の瞳の少幎。━━ビリヌノ。
    「コヌラルは、ビリヌノがお気に召したようですわね  。ビリヌノも  」
     圌はい぀も、コヌラルずばかり䞀緒にいる。
     圌の名を蚊き出したのだっお、コヌラルだ。
     少し寂しそうに笑んで、レアリヌギはきびすを返した。

    「幜霊海域」
    「ああ、そうだ。操舵手の奎らが、いくら舵を回しお方角を倉えたっお、いくら航海したっお、岞蟺が芋えるこずはない。他の船に出逢うこずもない。俺たちがガむコツになっおから、ずっずだ  。たるで、䞖界には海しかなく、圚るのは俺たちだけ。━━そう思えるほど。だから、俺たちは名づけたんだ。俺たちのゆけるこの海は、この海域は、幜霊海域。決しお、倖の䞖界ず繋がるこずのない、切り離された、たるで霧で包たれ、倖の海からは入るこずのできない、幻の海域━━。そんなふうに、思えるんだよね  。たあ、実際どうなのかは、わかんないんだけどね」
     ありえるはずのないのにありえおいる、海域。
     だから、幜霊海域。
     本圓は自分たちだっお、実圚するのか、わからないくらいだから  
     ありえない存圚。
     ありえない船。
       消せない悔恚。
     䞍安な日々。
    「だけど、レアずビリヌノは生きおいる。━━そうに、違いない」
     コヌラルは、噛み締めるように蚀った。
    「俺は、そう、信じる」
     もしもそうでないなら  それも嘘なら、垌望が朰《぀い》えおしたう。䞍確かなこの海。そこにあるすべおが幻だったずしおも━━そう思いそうになっおしたっおも。
    「おいうか、おたえらはマゞ生きるしな  だっおほら、俺らず違っお、お肌スベスベヌ」
     ガむコツに䞡類を撫でられお、ビリヌノは悲鳎を䞊げる。  さすがに、そんな簡単にはガむコツには慣れられない。
    「や、やめろ  」 
    「ハハハ、照れるな照れるな」
    「照れおない‌」
     思わず拳が出た。次の瞬間、コヌラルの頭が宙に舞った。
     しかし、コヌラルの䜓の骚は、ビリヌノのそばに留《ずど》たったたた。
     頭郚だけ、デッキの隅に転がっおいる。
     ビリヌノの顔が、瞬時に青ざめる。
    「コ、コヌラル⁉」
    「おっず、これはお芋苊しい」
     コヌラルの䜓が頭に駆け寄り、デェラハンのように頭を抱え、それを元の堎所に━━銖の骚の䞊に戻す。
    「だだだ、倧䞈倫なのか、コ、コヌラル」
    「ん 䜕が」
     ガむコツ生掻が長いからか、コヌラルは時々ボケる。ずいうか、人間の垞識ずいうものを忘れ、自分たちの感芚でものを蚀うようなずころがある。
     今も、なぜビリヌノがそんなに怯えたような顔をしおいるのか、瞬時には理解できなかったらしく、銖を傟げ  そしお、手を打った。
    「あぁ ごめん、驚いた 驚いた」
     もしかしたら、わざずやっおいるのかもしれないが。
    「だから、俺さ、仙人もどきガむコツ だから、死なないの。ちょっずくらいおたえには䞍思議に思えるこずも、ここではありえるの おたえ、もっず頭柔らかくなんない」
    「ちょっずどころではなく、今のはずお぀もなく  心臓にクリティカルヒットが来たぞ」
     胞を抌さえ、ビリヌノは隒ぐ錓動を萜ち着けようずする。
    「やっぱり、おたえら  おかしい」
     ビリヌノはおもむろにコヌラルに歩み寄るず、䞡腕で、圌の頭を掎む。
    「あ、おい、䜕すんだ、ビリヌノ」
    「ちゃ、ちゃんず、぀いおるのか、コ。コレ  」
     自芚はないが、ビリヌノもこの船に来おから、おかしくなり始めおいるのかもしれない。ビリヌノの知りうる、普通の生きた人間がこのシヌンを芋たら、ビリヌノもガむコツず同類か、理解䞍胜の存圚ずされそうだ。
    「は、倖れない  」
    「そんな簡単に倖れるか」
    「なら、さっきはなんで、あんな芋事にかっずんでったんだ」
    「あんた现かいこず気にするなよな。垞識っちゅヌモノサシはね、案倖圹に立たないもんなの 俺は死んでから━━こヌなっおから、そう実感したんだよ」
    「おゆヌか、型霊船ずか、幜霊海域ずかより、むしろ、ガむコツ船ずか、ガむコツ海域のがよくないか、コヌラル」
    「うわ、あ、頭匕っ匵るな、ず、取れねヌっおば  取っおどヌする気だ、おたえは⁉ 俺らのネヌミングセンスにケチ぀けおんじゃねヌぞ、新入り‌」
     隒ぎ合う二人を、少し離れた垆柱の陰から、オクトずセシボンが芋぀めおいる。
    「や、やっぱり、仲良くなっおるっお あの二人  ッッ‌」
    「う、うらやたしいぞ  ダディヌは」

    「  た、そんなわけだからさ」
     センボン䜜の倕食を摂《ず》るビリヌノを芋ながら、コヌラルが蚀う。
     少し離れたテヌブルで、レアリヌギも同じ物を食べおいる。
    「おたえの、今埌の身の振り方だけどさ  ワリィんだけどさ」
     蚀いづらそうに、コヌラルが口にした。
    「たぶん、もう、無理なんだ。元いた堎所ぞヌ━━海や倧地ぞ垰るのは」
    「ふヌん」
     ふっくらずしたブルヌベリヌパンを頬匵りながら、ビリヌノは至犏の笑みを浮かべおいる。こんな物を食べるのは、初めおだった。
    「ふヌん、っお  それだけ」
    「だっお、仕方ないんだろ」
     クリヌムシチェヌを口にし、ほっぺたを萜ずしそうな顔をしおいるビリヌノの姿に眉を竊め、コヌラルはレアリヌギず目を合わせる。
    「  どうせ、オレはき、島から売り離され、新王宮建蚭のために働かされお、死すべきさだめだったんだ。今さら戻れないっお聞かされおも、萜ち蟌んだりするものか。ずいうより、ここは、もしかしたらさ」
     パラダむスなのかもしれない  。
     自分には豪華すぎる食事を芋぀め、ビリヌノはふずそう思う。
     目を䞊げれば、恐ろしいガむコツ。
     だけど、お綺麗な青の瞳の貎族や䜕かのほうが、ずっず、腐った心を持った、恐ろしい生き物なのだ。
     䞀方で、こんな食事くらいで盞手を借じたら、足元をすくわれる━━そんなふうにも思うけど。
     自分の裡《うち》に根づいた疑心の皮は、そんな簡単には倱くなりはしない。
    「  でも、いなかったのか おたえの育った島には、おたえの、倧切な━━還りたいず思える人々が」
    「たさか」
     ビリヌノは即座に嗀い捚おる。
    「オレは、ただの奎隷だ」
    「けど、いたんだろ 家族だっお、仲間だっお」
    「芪は、オレが物心぀く前に死んだ。仲間は  玫の瞳の奎らは、いたけど  」
     ビリヌノはかぶりを振る。
    「いろいろ、圌らの存圚には助けられもしたけど  けど  」
     淡く笑む。
    「オレは、ただの、奎隷だ」
     戻りたいずは、思わない。
     コヌラルはしばらく黙っおいたが、やがおたた、口を開く。
    「なら、おたえが、青の瞳の人間になれるのなら━━おたえは、再び元いた堎所ぞ、垰りたいずいうのか」
    「    なれる、のか」
     ビリヌノは瞳を揺らし、コヌラルを芋る。期埅をするような、だけど、怯えたような目をしお。
    「おたえや、おたえらの、䞍思議な力で━━、オレの、この柎の睡は  青く、倉化できるのか」
    「たずえそうだずしおも━━」
     コヌラルは冷たく切り捚おる。
    「やらない。他の奎らにも、やらせない」
    「な  ⁉」
    「俺は、バカだった。生前、ずおもバカだった。  䜕もわかっおなかった。死んでから、━━いや、《《あい぀》》に逢っおからやっず、わかっおきたんだ  」
     コヌラルは右人差し指で、自分の県窩《がんか》を差す。
    「こんなものに、䞀䜓、なんの意味がある」
     そこに、圚りし日の圌の姿が芋えた気がしお、ビリヌノは息を呑む。極々短い瞬間。その顔立ちも、瞳の色も、捉えられるほどではなかったが。
    「意味、ねぇじゃねぇか そんなもので、なぜ、差別したり、されたりしなくおはならない 蚀っおしたえば、倖芋なんお、䜓なんお、魂を入れるための、噚みおぇなもんだ。なのに、なぜ、そんなものに囚われなければならない 倧切なのはさ、䞭身のほうなんじゃない」
     ビリヌノの拳が小刻みにえる。瞳を狭め、唇を歪め、コヌラルを睚む。
    「だっおさ、こうなっちたえばさぁ、俺ら、ガむコツなんおさ、もう、関係ねヌじゃねヌか  県球なんお、もう、俺らにはないんだよ。たずえ、差別しょうずしおも、ないもので差別したりなんか、できないんだ」
     ビリヌノは瞬間、レアリヌギを芋た。
     思い出したのだ、あの、悪倢を。
    「そうだよ。無意味なんだよ。俺らは、俺は━━生前、なんもわかっちゃいなかった 噚だっお、同じようなもんさ そんなんで、それだけで、なぜ、わかるんだ 盞手のこずが。目に芋えない、ハヌトが。瞳の色やなんかで、なぜ、盞手を虐げたり、玠晎らしいず爜め称えたりできるんだ ━━ちっぜけだったんだ、狭くおカタくお、俺の頭もハヌトも、未熟だったんだ」
     だから、もしかしたら、未熟すぎる自分が倧きくなるには、こんな、ガむコツにたでなっお、人の生を遥か越えた時を過ごす必芁があったのかもしれないけど。
    「ここには差別なんおない。圹割はあるが、䞍圓な差別などないはずだ。━━そう心がけおいる。人は、生たれた時から等しく尊い者。それが、この船の心だ」


    ▌次回▌

     
     
     
    むラストず小説を創䜜しおいたす。 青春恋愛やファンタゞヌ、少し䞍思議な物語を䞭心に執筆・制䜜䞭。 🎚手描き原画・むラスト販売䞭BOOTH 📖党䜜品ガむドは固定蚘事ぞ 🔗VLINKから各サむトぞ

    あなたぞのおすすめ