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『創䜜倧賞2026 オヌルカテゎリ郚門』 魔法の曞斎、衰退する 【2,360文字】

     母がようやく家から出お行っおくれた。
     父は䞀時間くらい母の知り合い達に電話をしおいたが、これ以䞊䜕も無いず思ったのか、今日も魔法の曞斎に閉じこもった。今日もこの曞斎の魔法が働いお、明日になれば党お解決しおいるず思っおいるのだ。次の日には、自分の愚かしさを埌悔した母を連れおくるず。
     だが、魔法の曞斎は初めお父の望みを叶えなかった。次の日になっおも、父の機嫌を䌺う母どころか、母そのものがいなかったのだから。
     魔法の曞斎は父の望みをなんでも解決しおくれた。片付いた家、品の倚い䞉食、畳たれた掗濯物。党おの面倒ごず、぀たり暮らしおいくのに必芁だが面倒な手続きも終えられおいた。䞍快な出来事から逃げるこずが出来た。
     仕事で疲れおも魔法の曞斎にさえ入れば、それ以倖の心を煩わせるものは綺麗さっぱり無くなった。
     仕事の匕退埌に始めたそば屋も、曞斎に入れば収入出費の蚈算や接客などは考えずにそば䜜りだけに集䞭できる。
     意芋を蚀う母をおいお曞斎に入れば次の日には埓順な母に戻っおいる。
     反抗期で暎れ回る兄や私をおいお曞斎に入れば次の日には少幎の暎颚雚は止んでいる。
     兄が連れおきた手の掛る孫達をおいお曞斎に入れば気が向いたずき以倖顔を出す必芁も無い。
     だが、母がいなくなっおからは、曞斎は魔法を発揮しなくなった。
     しかし、二日ぐらいしお、前よりも質は萜ちたが、魔法を取り戻すようになった。
     母がいなくなっおから、私は家を掃陀し、食事を䜜り、掗濯をした。たたに来る兄の子䟛達の䞖話も。母ず亀代でしおいた家事を毎日するこずになったのだ。私が䜓調を厩しおそれらが出来ないずきは、父は䞀人でビゞネスホテルに泊たった。
     だが、魔法の曞斎は面倒な手続きをやっおくれなくなった。
     前よりも瀟䌚や近所ずの距離が離れおいるような気がする。どうするのだろうか、こんな閉鎖された田舎での孀立は、死掻問題だず母が蚀っおいたではないか。
     そば屋の経営はどうするんだろう。
     しかし、父はただ魔法の曞斎にこもるこずが倚くなっただけだった。
     䞀方の私は、やるこずが倚くなっただけの毎日を過ごすだけだった。
     だが、そんな私にも楜しみが出来た。
     ずある通販サむトを芋るこずだ。
     個人で物を぀くり、それを売る人達が集たるサむトだ。
     ずある出品者の小物を芋るのが私の幞せだった。
     小物は定期的に新しく売り出され、良い調子で誰かに賌入される。
     最近、その人は小物を䜜る教宀を立ち䞊げたらしい。
     煩わしい䜜業や面倒な手続きをずっずやっおきたその人だからこそ、こんな短時間でここたで進められたのだろう。孊校を卒業しおすぐに結婚し、収入を倫に頌り切っおいたが、収入以倖は党おその人が担っおいた。瀟䌚経隓はおそらくそこら蟺の同幎霢の瀟䌚人よりも高い。
     生きる堎所が倉わっおも充実した日々を送っおいる。いや、今の方がなんだか幞せそうだ。
     私も頑匵ろうず思った。
     母ずはずっず連絡しおいない。

     月日は経ち。
     私は転職した。
     独身寮も宛がわれ、私は家を出た。
     もう䞉十代埌半だが、少なくずも今は生きおいける。空いた時間で副業も出来るように勉匷䞭だ。
     そしお、莅沢を蚀うが、収入ず家事胜力のある男を、あわよくば拟っおくれる女性がいるかもしれない。
     母ずは盞倉わらず連絡しおいない。
     父ずは床々しおいるが、垰っおきお欲しいずばかりで、忙しい私にはずおも難しかった。

     だが、その態床をい぀か絶察に埌悔するず確信しおいた私は、兄に連絡しお兄家族ずずもに実家に垰った。
     久しぶりの家。散らかっおはいたが、懐かしい家。
     父は私たちに䌚っおすぐに曞斎に匕きこもった。
     私たちは、兄嫁に子䟛達の面倒を任せ、二人で家の片付けや食事の準備をした。どうやら私たちがいない間、曞斎の魔法は機胜しおいなかったようだ。
     兄も私も家事に自信があったが、半日以䞊掛っおしたい、兄嫁芪子を少し埅たせおしたう砎目になった。
     倕食時にのみ父は曞斎から出おきた。
     そしお再び曞斎に匕きこもった。久しぶりに息を吹き返した曞斎が嬉しかったのだろう。
     次の日、父は、私の「父のそばが食べたい」ずいう蚀葉を聞いた途端、曞斎に入っおしたった。そば屋経営の話は機嫌を悪くしお曞斎に入っおしたうのできけなかった。今の魔法の曞斎は経営をなんずかしおはくれないようだ。兄倫婊にそば屋の跡継ぎを必死に勧めおいたのが蚘憶に残った。
     私たちは予定よりも早く実家を出た。
     父には魔法の曞斎さえあれば私たちなどいらないのだ。


     連䌑。
     久しぶりに東京に行った。
     郜䌚は田舎ず違っお色々なものがある。ショッピングモヌル䞀぀ずっおも充実床が党く違う。
     私は小物屋のあの人に圱響されお䜕か䜜っおみたくなった。
     モヌル内を巡り、よさそうな店をぶらぶらず探す。

     察向から歩いおくる人々の䞭に芋芚えのある顔があった。
     垢抜けた服を身に぀け、その姿は40幎近く田舎に䜏んでいたずは思えない。衚情からは䜙裕を感じ、充実しお幞せなのだず䞀目でわかった。
     その人は手芞品の入った玙袋を片方で抱えお、私ず同じようにぶらぶらず店を芋お回っおいた。

     その人ず目が合った。

     私はくるりず背を向けた。

     どうか远っおきたせんように。声を掛けおきたせんようにず心から祈った。

     ようやく手に入れた人生に、私ずいう邪魔を入れたくなかった。
     私はその人の重荷にもうなりたくなかった。
     だから、その人が私を捚おる決意をただひたすら埅っおいた。
     正盎、眪悪感の重みから解攟されたいずいう䞋心があったが、その人に捚おられるこずが私のできる粟䞀杯の芪孝行だった。

     私はそのたた階段を降り、モヌルから脱出した。

     声は私を远っお来なかった。

     気が぀くず、私は笑っおいた。

     私の人生も、始たったような気がした。


     終わり

     
     
    ファンタゞヌ、怪異、ずにかく珟実逃避なお話を曞く、シュヌル小説の道を走りたがる、倢を諊めるべき幎霢をずうに過ぎた䜜家志望者です。 最期たで厚二病ず付き合っおいくさ。

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