
一年ぶりに会う織姫が茶髪ショートになっていたらどうしよう。
強く愛し合ったばかりに、一年に一度の逢瀬しか許されなくなった二人。
一年ぶりに会う彼女が、茶髪ショートになっていたらどうしよう。
彼女はもう一年前の彼女ではないかもしれない。黒くて長くて月明かりに輝くその髪が好きだったのに。
彼女が普段何をしているのか知らない。この川の向こう側でどんな人と接しているのかわからない。
友達に囲まれて、たくさん遊んで、時々本を読んで、おいしいものを食べるけれど、心の片隅にはいつも僕のことがある、そのくらいがちょうどいい。ちょうどいいけれど、仕事にばかり身を注いで一年中機を織り続けていてくれるほうが、僕はずっと気が楽だ。
早く早く会いたいと思うけれど、心の底から会いたくない。できることなら二度と会いたくない。知らない彼女を見たくない。でも、一年に一度、その日に晴れたらば、橋は架かってしまうから、渡らないわけにはいかない。
毎晩寝る前に、対岸を向いて彼女の無事を祈っていることを、彼女は知らないだろう。
彼女は僕のことを考えながら過ごしているのだろうか。一人で夕食を食べるたび、毎朝布団の中でまどろみから醒めるたび、友達がくだらないことで笑っているのを見るたびに、僕を思い出して胸を痛めるだろうか。
もしそうであるなら、僕はとんでもない業を彼女に背負わせている。彼女もまた、一年に一度しか会えない僕のために縛られながら生きているかもしれない、僕のように。
今日も祈る。彼女が健康であることを、毎日が明るいものであることを、彼女を一番幸せにできる誰かに、川の向こう側で出逢えることを。
一年ぶりに会ったあなたは、変わらず黒く長い髪を月明かりのもとで輝かせていたね。
でもあなたは変わってしまった。
一年前はピアスの穴なんて、開けていなかったのに。
強く愛し合ったばかりに、一年に一度の逢瀬しか許されなくなった二人。
柄でもないけれど、サプライズをしてみようと思った。
一年に一度しか会えないのだから、少しでもきらきらした一日にしたい。
思い切ってピアスの穴を開けた。両耳の耳たぶ。痛かったし、少し腫れて大変だった。
揚々と買ってきたピアスをつけてみる。鏡に映る私が私でなくなったようだ。
次の七月七日に合わせて、髪も切ろうと思った。長かった髪を肩上まで切って、いっそ染めてしまおうか。
彼の反応を想像して、ウキウキしながら美容院へ予約の電話をいれようとする。受話器のボタンを押すところでふと、彼の顔が浮かぶ。
いつだったか、この黒くて長い髪が好きだと伝えてくれた。これを失ってしまったら、彼は悲しむだろうか。
鏡に映る、耳たぶに穴の空いた私をみる。
彼はきっと、私の変化を望まない。
彼はそういう人だ。変わらない関係、変わらない私たちをどこまでも愛している。彼もまた、私に会えない一年間をどこまでも悔やみ苦しみ続けているのかもしれない、私のように。
この穴は塞がらない。私たちの間には一年間の穴がある。
鏡に映る私の目下にはうっすら隈ができている。少し仕事に精を出しすぎたかもしれない。機織りだけがどんどん上手くなる。
ピアスをつけて行くのはやめよう、去年と変わらない私で、でも、できる限りおめかしをして。
最愛の彼に逢いに行こう。
一年ぶりに逢うあなたは、すっかり変わってしまったね。
一年前のあなたは、あんなによそよそしくなんてしなかった。
まるで私を突き放すような、そんな目で見ないで。
(2026-07-07)