
(ショートショート)「眠れない」
眠れない夜、思考は際限なく過去と未来を彷徨い始める。
目まぐるしく変化する世界情勢、昨日流れてきた不穏なニュース、そして自分の手の届かない場所で決まっていく明日。
そんな大きなうねりについていけず、足元がひどくおぼつかないような焦燥感が、静寂の中でじわじわと胸を突く。
ふと目をやったテレビの中では、煌びやかな衣装を纏った人々が、何の憂いもないかのように歌い踊り、ヘラヘラと屈託のない笑みを浮かべていた。
画面の向こう側、その光景を茶の間で眺めて無邪気に喜ぶ視聴者たち。
あるいは、画面の中で輝く「推し」に自らの人生を重ね、その活躍を自分のことのように誇り、懸命に応援することで今日を生きる人々。
彼らには、帰るべき場所や、信じるべき「何か」が明確にあるように見えて、ひどく眩しかった。
それに引き換え、私はどうだろう。
新しい環境に身を置き、まだ自分の居場所すら定まっていないようなこの不安定な場所で、何を目指して歩けばいいのかさえ見失っている。
「私は、何になりたいんだろう」
その問いは、答えのないまま暗闇に溶けていく。
私はさらに深く膝を抱え込み、自分という存在を夜の底に沈めた。
明日、また何食わぬ顔で外の世界へ踏み出すための、長い、長い準備のように。
Fin。
※この小説はフィクションです。
登場するモノや人物は存在しません。
↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。