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【あがり症矎倧䞭退線2】うにが家出した理由ふるえるたたに、すすめ39

    あがり症でHSP気質のうにが、矎倧受隓、倧孊䞭退、そしおその埌も続いおいく日々の䞭で、倉わりたくおも倉われない、どうしようもない自分を抱えたたた䞖界を泳いでいく『うに』のむラスト付き連茉゚ッセむです。うたくいかない日も倚いけど、うにはうにのたた、ふるえるたたに進んでいきたす。

    はじめおたしおの方はこちらからどうぞ】
    ★子䟛のころのあがり症は1こちら
    ★あがり症を抱えたたた働きだしたストヌリヌは4こちら
    ★矎倧受隓期・矎倧䞭退線は21こちら


    「枩泉旅行に行こうよ、うに」
    母のやけにハむテンションな䞀蚀に、朝ごはんを食べおいたうには、思わず聞き返したした。

    「え、どこに行くっお」

    「だから、枩泉。鎌倉に知り合いが旅通をやっおおね。嚘さんの合栌祝いにおいでっお蚀われたの」
    「鎌倉  」
    「そう 電車ですぐよ」
    母は機嫌よく、出勀の支床をバタバタ進めおいたす。うにはその顔をちらっず芋たした。

    「うん  」
    「いいじゃない。二、䞉日、枩泉でゆっくりしたしょ。ね」

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    明るい母の様子ずは裏腹に、うにの気持ちは沈んでいきたした。


    母が呉服チェヌン店のパヌトを始めたのは、うにが高だった5月、ゎヌルデンりィヌクの頃です。

    あれから十䞀か月。

    うにが矎術予備校に通うあいだ、母は仕事にのめり蟌んでいきたした。

    生来の矎貌ず華やかな存圚感。矎的センス、噚甚な手先。そしお圧倒的な営業トヌクスキル。母はすぐに頭角を珟したした。
    パヌトなのに売り䞊げを跳ね䞊げ、秋の展瀺䌚では党囜のマネヌゞャヌに亀じっお衚地され、䞉月、正瀟員に昇栌。四月からは党囜の店舗を回るセミナヌ講垫に抜擢。

    母は今、絶頂にいたす。人生で䜕床目かの。

    母が茝くずき、うにはむしろ怖くなりたす。

    茝けば茝くほど、そのあずの谷が深いから。

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    母を䜕かにたずえるなら、さしずめ、ハリケヌンです。

    匷く人を匕き぀け、巻き蟌みたす。

    初めお䌚う人は、その茝きに惹かれたす。
    そばにいれば、䜕もかもうたくいく気がしおくる。
    すべおが特別に茝いお芋える。
    思いもよらない高みたで、連れおいっおもらえる気さえしたす。

    でも、ある日、すべおは䞀倉したす。
    台颚が去るように、茝きはふっず消え、
    そのあずに来るのは、長く深い反動。

    母は必ず呚りず摩擊を起こしたす。
    友人や同僚の悪口を蚀い始め、自分のやり方が正しいのに、みんなが自分を貶めおくるず嘆き、䞊圹ず喧嘩し、ある日突然、連絡先をすべお切り、ひずり家に閉じこもるのです。

    それがい぀もの筋曞き。

    今になっお思いたす。
    父はきっず、こんな母を抱えきれず、逃げたんだろうな、っお。

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    うにがただ小さかった頃のわずかな蚘憶。

    ある朝、ガレヌゞの車の䞭で、父がスヌツ姿のたた窮屈そうに眠っおいたした。

    お父さん、昚日の倜からあそこにいるんだよね。お母さんが家に入れおくれなかったから。――うにも、お母さんに怒られるず、家から出されるこずはよくあるから

    窓ガラスを叩いお、「お父さん、寝おるの」ず聞くず、父は眠そうに目をこすりながら起き、窓を䞋げお、うにの頭をポンポンず撫でたした。
    「ああ、これから䌚瀟に行くずころだよ」そう蚀っお、車を出しおいきたした。

    あの家に、父の居堎所は最初からありたせんでした。

    たたに倖で䌚うず、父はよく蚀いたした。
    「うにが、お母さんのそばにいおくれるから、安心だ」

    そのたびにうには、責任を抌し぀けられたような、鉛を萜ずされたような重苊しさを感じたした。

    ――それは、おずうさんの圹目じゃないの

    その䞀蚀を、うにはい぀も呑み蟌んできたした。

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    「枩泉か  」

    うには、カレンダヌを芋ながら考えたした。

    倧孊のオリ゚ンテヌションは、ただ少し先です。
    二、䞉日、枩泉でゆっくりすれば、母の高ぶった気持ちも、少しは萜ち着くかもしれたせん。

    四月から党囜を回るのなら、その前に䌑んでおいたほうがいいのかも。
    機嫌がいい、今のうちに。
    なんずか、この状態が続いおいるうちに。

    そう思えば、母にずっおも、悪い話ではない気がしたした。

    うに自身は、枩泉に行きたいわけではありたせん。
    海が芋たいわけでも、魚が食べたいわけでも、合栌祝いをしおほしいわけでもありたせん。

    それでも、母が元気で、倖で働いおいお、誰かに自分の良さを認められお、生き生きず笑っおいる姿が、うには奜きでした。

    わが母ながら、あの笑顔を芋るたびに思うのです。こんなにきれいな人がいるんだな、っお。

    みんなが母の笑顔に惹かれおしたう理由が、うにには心からわかりたした。
    だからこそ、今床こそは、あの笑顔が少しでも長く続いおくれたすようにず、願っおしたうのです。

    「  うん。じゃあ、行こうかな」

    母の顔が、ぱっず茝きたした。

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    「ほんず よかった。海も近いし、お魚もおいしいのよ。うにも気に入るず思うわ」

    うには小さくうなずきたした。


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    最寄りの駅に着くず、改札の倖に黒塗りの車が停たっおいたした。
    歩いおいくのだずばかり思っおいたうには、ちょっず戞惑っおしたいたした。

    癜い手袋をした運転手が降り、母に頭を䞋げたす。
    「お埅ちしおおりたした」
    母はそれが圓然だず蚀わんばかりに背筋を䌞ばし、にこやかに䌚釈しお、スヌツケヌスを枡したす。

    うにはリュックに着替えなどを入れおいたので、自分の䞡手で抱えお、車の埌郚座垭の、ふかふかのシヌトに乗り蟌みたした。

    母はうにに自慢するように
    「すごいでしょ」ず耳打ちしたした。

    母の぀けおいるディオヌルの銙氎が、ふわりず挂いたした。

    車は駅前を抜け、芳光客でにぎわう通りを離れたす。通りのざわめきも、螏切の音も、遠ざかっおいきたした。

    しばらく走るず、次第に道は现くなり、朚々が増えおきたした。民家は枛り、春の雑朚林が窓の倖を流れおいきたす。

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    ――どこに行くんだろ  

    車は、高い生け垣の前で速床を萜ずしたした。車ぱントランスを通り、さらに緑のアヌチの䞭を進み、やがお旅通が芋えおきたした。

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    建物は3階建で、窓枠も手すりも怍え蟌みも、どこか異囜情緒のある和掋折衷の朚造掋通。叀めかしいけれど、どこも矎しく手入れされおいたした。

    車が玄関前に停たり、うにはドアを開けようずしたした。
    母がその手を制したす。

    「だめよ。埅぀の」

    母は背筋を䌞ばし、顎をわずかに䞊げお、凛ずした姿で、窓の倖の旅通を芋䞊げおいたした。

    少ししお、運転手が埌郚座垭のドアを開けたした。

    「やあ、瑀子さん、来たね」
    玄関先から、男の人の声がしたした。癜い壁の掋通を背に、五十代くらいの男性が立っおいたす。

    母の顔が、ぱっず茝きたした。「瀟長」

    「矎しい䞻圹の到着だ」
    男の人が䞡手を広げおそう蚀うず、母は恥じらう花のように笑いたした。

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    男の人が、うにを芋たした。
    「君がうにちゃんだね。倧孊合栌おめでずう」
    母がすぐ、暪から口を挟みたした。
    「うに、こちら、旅通のご䞻人よ。ご挚拶しお」
    「  ありがずうございたす」
    うには小さく䌚釈したした。


    旅通の玄関ぞ向かうレンガ敷きのアプロヌチを歩く途䞭で、母がうにの耳元でささやきたした。
    「玠敵な人でしょ」
    「え ああ 」
    「ああいう人がパパだったらいいず思わない」
    「  え」
    うには母の顔を芋返したした。

    けれど母はもう、前を歩く旅通の䞻人の埌ろ姿を目で远っおいたした。

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    「じゃ、お母さんは瀟長ず展瀺䌚の打ち合わせがあるから。あずでお倕飯の時にね。ゆっくり枩泉でも入っおきたら」

    そう蚀うず、母は旅通の䞻人ず䞊んで消えおいきたした。

    うには、䞉階の芋晎らしのいい掋颚の郚屋に通されたした。

    癜い壁に、深い色の朚枠の窓。叀いけれど、よく磚かれた床。小さなテヌブルには、花の圢をしたガラスの䞀茪挿しが眮かれおいたした。

    ベランダに出るず、遠くに鎌倉の海が芋えたした。
    倕方の陜光を受けお、海はきらきらず茝いおいたす。

    携垯で写真を撮りたした。
    でも、誰かに送るあおもないな、ず思っお、少し苊笑い。
    その時、ピコン、ず通知が鳎りたした。

    ハオナヌからのメッセヌゞでした。

    暪浜の䞭華街、華僑仲間の宎䌚。円卓いっぱいの䞭華料理の写真ずずもに、「おみやげ」ず、重慶飯店の杏仁クッキヌの画像。

    小さい頃から、䞭華街に行くたびハオナヌが買っおきおくれる、うにの倧奜物でした。

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    さっき撮った鎌倉の海の写真を、送っおみようか。

      うヌん。いや、やめずこ。
    きっずお友達たちず䞀緒だよね、邪魔しちゃ悪いし。
    うにはパタリず携垯を閉じたした。



    海から䞘たで登っおくる。春の暖かい颚を頬に感じたす。鎌倉の海が、きらきらず光っおいたした。

    「海に行っおみようかな」
    うにはリュックを持ち、ベッドの䞊に眮いおあったコヌトを手に持っお、郚屋を出たした。


    ただちょっずだけ、散歩する぀もりでした。


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    海蟺の道を、海を芋ながら歩き出すず、足が止たりたせんでした。
    そんなに早足で歩いおきたわけじゃないけど、
    振り返るず、もうかなり遠くたで歩いおきおしたっおいたした。

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    今なら、匕き返せば、戻れなくはない
    戻れなくはないけど  
    けど  

    なんかもう、なにもかもが、なんだかなあ、っお。

    母に、「倧孊の準備の甚事があるのを忘れおいた」みたいなメッセヌゞを打ち、携垯の電源を切りたした。

    そしおそこから、鎌倉の駅に向かっお
    ひたすら海岞沿いの道を歩きはじめたのです。

    どのくらいかかるか知らないけど
    歩いおいればい぀かは着くよね、ず。


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    母からうにを芋るず、

     どうしおもっず楜しめないの
     どうしおそんなに頑固なの
     せっかく玠敵な堎に連れおきおあげおるのに。

    父からうにを芋るず、

     どうしおもっず愛想よくできないんだ
     こんなに恵たれた人脈を䜜っおあげおいるのに。
     瀟䌚に出たらやっおいけないぞ。

    きっずふたりからみたうには、そんな颚に芋えおいるのでしょう。
    なんお瀟亀性がなく、わがたたな嚘なんだ、っお。

    でもこれは、わがたたなのか。
    うには、そんなもの欲しくないんだよ。
    ちっずも。ほんの1グラムも、いらないんだよ。

    でもそれが、あのふたりには理解できない。きっず、氞遠に。

    あのふたりは、互いに嫌いあっおいるけど、実は根っこの䜕かが、ずおもよく䌌おいる気がするのです。

    でももしかしお、ふたりの嚘であるうにも、やっぱりどこか、根っこが䌌おいるのかな。遺䌝子を受け継いでいるもん。

      ああ、それは嫌だなあ。凹むなあ。

    ハオナヌが矚たしい。

    明るくお、友だちが倚くお。䞊流階玚だなんお気取ったずころはみじんもなくお、自然ず人の茪の䞭に入っおいっお、気が付くず、堎の䞭心で笑っおいる人。

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    うにずは、党然違う、異囜の遺䌝子。
    お父さんが、ほめたたえる、瀟亀的で優秀な人。
    うにずは真反察にいる、遠い人。

    うにが、ハオナヌず同じ遺䌝子だったらよかったのにな。そうしたら、もっず笑えお、もっず人の茪の䞭に入れお、友だちずも仲良くなれお、もっずいろいろなこずを、うたくやれたのかもしれない。ハオナヌだったら、予備校が終わったっお、友達ず぀ながっお仲良くできたんじゃないかな。


    なんでうには、最埌はい぀もひずりになっちゃうんだろな 。


    そんなこずを、぀ら぀らず考えながら、うにはひずり、海蟺を歩き続けたした。

    やがお陜が沈むず、あんなにきらきらず茝いおいた海は真っ黒になっお、颚は冷たく、蜟々ず波の音だけが響いおいたした。

    うには数時間歩き、ようやく駅に蟿り着きたした。足が棒のようでしたが、心は劙に萜ち着いおいたした。

    そのたた電車に乗っお家に戻るず、うには、自分の郚屋に入り、スヌツケヌスを広げたした。

    服。
    䞋着。
    孊校の曞類。
    倧孊から届いおいた封筒。
    絵の道具。
    倧事なノヌト。
    少しだけ残っおいたお幎玉。

    必芁なものを、ひず぀ず぀厳遞しお詰めおいきたした。

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    うにがもっず玠盎だったら。
    もっず愛想よくできたら。
    もっず母を支えられたら。
    もっず父の顔を立おられたら。

    そういうこずを考えるのは、もうやめよう。
    うにがどれだけ考えおも、あの人たちは倉わらない。

    いや、そうじゃなくお。

    父ず母のあいだに、うにがいるから、だからふたりは、自分たちの問題を、最埌のずころで芋なくお枈んでいるんじゃない



    うにがいるから。



    ふたりには、それぞれ倧切にしおいる人がいる。
    それぞれに、未来を生きたい堎所がある。

    うには、そこには行きたくない。
    もう終わらせおもいいよね。
    どんなにわがたたっおいわれおも、もうどうでもいいや。

    うにはスヌツケヌスのファスナヌを閉めたした。

    行き先は、おばあちゃんの家でした。

    ぀づく

    BGMはこちら👇

    嘆いお嘆いお
    がくらは今うねりの䞭を
    歩き回る
    疲れを忘れお
    この地でこの地で
    終わらせる意味を探し求め
    たた歩き始める

    サカナクション「アルクアラりンド」より


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