猫に後追い
私が入浴していると、ドアの前にうっすらと影が見える。ぼんやりとした輪郭がそれが晴だとわかるよりも先に、ドアの向こうで晴が「開けろ」と鳴いた。
最近、晴が後追いをしてくるようになった。後追いをしてくれるのは猫なので、この場合「後追い」という言葉が正しいかわからないけれど。
まず一つがトイレ。ドアノブに手をかけて人間が用を足しているなんてお構いなしにガチャリ、と器用に開けてはその隙間になんとか顔や体を入れようとする。びっくりするし恥ずかしいのでやめてほしいが、無理やりにでも入ろうとする晴の必死な顔はとっても可愛い。ちなみに、今のところ人間も負けじと手や足を器用に使って、入室を阻止し続けている。
続いてがお風呂。主に私が入浴しているとドアの向こうでピャーピャーと泣き叫ぶのだ。渋々ドアを開けると、顔が見えて安心するのかそのままバスマットの上で丸くなってみたり、洗濯を控えた洋服が入っているかごの上でじっとしてみたりするけれど、顔が見えるまでは鳴いてアピールをし続ける。
大量の水は怖いのか浴室にまで入ってくることは少ないのだけれど、私が長風呂をしている時はそろりそろりとやってきて、へっぴり腰のまま浴槽に手をかけてニャーニャーと泣き叫ぶ。大量の水に浸かっている人間を心配してくれているのか、「正気か?」と言っているのかわからないけれど、とにかくも何かを訴え続けている。
晴にとっては信じられない量の、見たこともない大量の水があるとわかっていて、怖い気持ちを隠しながらそれでもやってきてくれるって愛だよなあ。
そんな日々を過ごしていたので、最近では浴槽にいる間はドアを開け、顔を見せるようにしている。そうすると晴も落ち着くのか鳴くことも無く、見える位置でじっとしてくれるので、お湯が冷めるのも気にせずドアを全開にして入浴している。可愛い猫を眺めながらの入浴も乙なもの。
子供に恵まれなかった我が家では、「ママ」とか「パパ」と呼ばれることもないし、「後追いが本当に大変で」なんて愚痴をこぼすことも無いはずだったのだけれど、天と晴に体験させてもらうことになるとは思ってもいなかった。
天と晴を子供の代わりにしたいわけでは無いし、赤ちゃんのように接しているわけではないのだけれど。
人間と猫として、ううん、それじゃあ軽いかな。我が家の宝物の猫として接しているのだけれど、夫と「最近晴の後追いがさ」なんて二人きりだったら有り得ない、幸せな会話ができる機会をもらったことは、素直に嬉しいなと思うのだった。
とか書いたけど、天も晴も、猫らしく、自由に、気ままに、好きに生きてくれていいからね。

