#12 何もないけれど、すべてがある町
〜北海道 豊富町〜
豊富町という場所を語るとき、そこには単なる「湯治の町」以上のものが息づいているように思えます。
✓ 自然に身をゆだねるとき、人は本来の姿に戻っていく
心と体の境界は曖昧で、相互に影響し合っていると思います。
アトピーという症状もまた、単なる皮膚の問題ではなく、心の揺らぎや環境との関係性が深く影響している——そんな実感を持つ人は少なくないのではないでしょうか。
もし私たちが「社会から切り離された存在」だと感じているのだとしたら、豊富町のような場所で自然に身をゆだねることは、分断された感覚をそっと溶かし、本来の“ありのままの自分”へと戻るプロセスなのかもしれません。
✓“何もないけれど、すべてがある”という豊かさ
豊富町を訪れると、最初に感じるのは「静けさ」です。
都会のような便利さはないかもしれない。
けれど、そこには人が生きるうえで本当に必要なもの——安心、つながり、自然、そして“居場所”がある。
社会では少数派であるアトピーの人々も、この町では多数派になることができる。 「自分が異物ではない」と感じられ深い安心につながります。
空間や時間が変われば…
マイナスがプラスにも変わったり。 過去の痛みも誰かの光になったり。
✓ かつての葛藤と、育まれた寛容
20数年前、アトピーの湯治客や移住者が増え始めた頃、町には「病人ばかり来るのは歓迎できない」という声もあったといいます。
小さな町にとって、急な変化は不安を生むものです。
しかし、時間とともに町は変わっていきました。
アトピーの人々が町に溶け込み、地域に貢献し、互いに支え合う姿が、町の価値観もゆっくりと変わっていったのではないでしょうか。
豊富町が持つ資源は、温泉だけではないように感じます。
同じ悩みを抱える人が集まり、弱さを共有し、支え合うことで、他の過疎自治体にはない“人的資源の豊かさ”が育まれているのです。
✓弱さを中心にしたコミュニティという価値
豊富町には、現代社会が失いかけている構造が自然と生まれています。
① 弱さを中心にしたコミュニティ
-弱さを隠さなくていい場所は、人を強くする。
② ケアを軸にしたまちづくり
-誰かの痛みが、町の文化を形づくる。
③ マイノリティが安心して生きられる社会
-多数派になることで、初めて呼吸が深くなる人がいる。
④ 自然資源と人のつながりが共鳴する地域
-温泉や自然が、人と人の関係をやわらかくつなぐ。
これらは、単なる“地域の特徴”ではなく、これからの日本社会が必要とするヒントそのものです。
✓ 未来の社会モデルとしての豊富町
生きづらさを抱える人が増えている現代の日本。
競争、効率、同調圧力——そうした価値観に馴染めない人々が疲弊しています。
そんな中で、豊富町はまるで未来の社会モデルを先取りしているように見えます。
・弱さを排除しない社会。
・ケアを中心に据えたコミュニティ。
・自然とともに生きる暮らし。
・マイノリティが安心して存在できる場所。
「何もないけれど、大事なものはすべてある」
その在り方は、私たちが忘れかけていた“人間らしさ”を思い出させてくれます。
この町の在り方は、未来の社会が向かうべき方向を静かに照らしているように思えます。
https://www.town.toyotomi.hokkaido.jp/section/syoukoukankouka/a7cug60000001fqi.html