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Photo byonogano_design

早く大きくなれよ

    日曜日の昼過ぎ、母から電話があった。野菜を届けてくれるという。妻に伝えると「玉ねぎあるかなあ?玉ねぎがちょうどなかったんだよね」と言った。

    2時過ぎにインターホンが鳴った。モニターには母の姿。玄関のドアを開けると母が立っていて、その後ろに父もいた。父は両手でプランターを抱えながら「すいかの苗だよ」と言った。野菜を届けるってそういうこと!?と驚いたけど、母から渡された袋にちゃんと玉ねぎが入っていてホッとした。妻と2人でプランターをベランダまで運んだ。

    5歳の息子は、すいかが大好きである。
    春頃から母に会うたびに「ばあば、すいかできた?」と聞いていた。そんなに好きならばと、ゴールデンウィークに実家でバーベキューをしたときには母がサプライズですいかを出してくれて、息子は大喜びだった。5月にすいかなんて、そうとう高かったと思う。

    落語に「千両みかん」という噺がある。夏にみかんが食べたいという息子のために、1つのみかんを千両と言われても買う親の噺である。親と祖父母の違いはあれど、「食べさせてやりたい」という気持ちは昔も今も変わらないのだと思う。

    5月に食べたすいかの種は、息子がどうしても育てたいと言うので、アパートの木が植えてあるところの隅にこっそり蒔いた。雑草を抜いたり、水をあげたり息子と頑張って育てていたのだけど、結局芽を出すことはなかった。まあ芽が出ても困ったのだけど。

    同じように実家でも畑にすいかの種を蒔いていたらしく、そちらは芽が出たと言っていた。てっきり持ってきたのはその苗かと思ったら、それとは別にホームセンターで買ってきたものらしい。極小玉すいかという品種で、すでに実が1つなっていた。

    すいかに名前を付けることになった。
    すいか、スイカ、西瓜。「うりたろうなんてどう?」と僕が言うとあっさり却下された。

    「犯人はお前だ」
    と、突然娘に言われてドキッとした。
    ん?どういうこと?と聞いてみると、すいかだからすいり(推理)という名前はどうかということだった。それを息子がすいりんと聞き間違えて、その響きが可愛かったのですいりんという名前になった。

    息子がすいりんのためにベランダの掃除をしたいと言い出した。バケツに水を汲み、ブラシを持って2人でベランダに出る。息子がバケツからゾウさんのジョウロに水を汲んでは床にかけていくので、そこを僕がブラシで擦っていった。ベランダの掃除なんてしばらくしていなかったので20分くらいかかったけどなんとか綺麗になった。

    息子がすいりんに優しく触れながら「もう食べられる?」と聞いてくる。
    「もうちょっとかな」と答えると「そっかあ」と残念そうな顔をした。すいりんは、まだピンポン玉くらいの大きさしかない。

    うりたろう、早く大きくなれよ。

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