年上の男がかっこいいのは幻想
女は年上が好きだ。
理由はわからないけど、やっぱり女は年上が好きだ。
私にも年上の男を好きになった経験が2度ある。
好きになりかけた、というのも含めると3度ある。
1度目は高校1年生。同じ部活の先輩を好きになったが、すでに彼女がいて失恋。
2度目は大学生。これまた同じ部活で、一浪の同級生だった。
これは年上か審議を必要とするが、この男の話をしないと先に進めないので年上ということにします。
この男はま〜〜〜〜〜あタチが悪かった。
彼女がいるにも関わらず(彼女いる男を好きになりすぎなのはそっとしといてほしい)俺はいつでもお前と付き合えるよっていう雰囲気を出してくるのだ。まんまとそれを信じ込んで告白も3回ほどした。馬鹿すぎる。
『2番目でいいから付き合って』
ドラマでしか聞かないようなセリフを21歳のわたしは声に出して好きで好きでしょうがない男に言ったのだ。
これをお読みの皆さま、どうですか?
恥ずかしい!自分だったら完全に黒歴史!そう思う方も多いことでしょう。
でも当の本人は案外そんなことない。
あんなことをシラフで言えてしまうほど彼が好きだったのだ。
彼への気持ちは大きくなるばかりだが、一向にこの恋は実らなかった。当たり前である。彼は遊びだった。
ただ私も遊びを見抜けないほど馬鹿ではなかったので、本気の恋の合間を縫って合コンを時折していた。
そこで出会ったのが6歳上の田中だった。
田中は出会った男の中で1番他人の話を聞くのが上手かった。
取材する仕事なので当たり前だが自分でもまとまらない話を、他人が綺麗に整頓して言語化してくれることに衝撃を受けた(当時は聞き上手だなくらいにしか思ってなかった)
好きな彼のこと、好きなバンドの話、とにかくいろんな話をした。どれも田中は真剣に聞いた。
たとえ2ヶ月会わなくても絶対にそれを覚えていて、話したバンドの曲も聞いてくる。
ああ、田中、いいな。好きかも。
なーんて思ってたが、もちろん田中には彼女がいた(彼女いる男好きになりすぎなのは割愛)
田中は彼女と別れるつもりがなかったし、私は2番目でいいと思える(なんなら3番、4番でも良かった)好きな男がいたし、田中と私が付き合うことはなかった。
大学4年になると会う頻度も次第に減った。
気づけば彼氏(今の夫)ができて、自然と会わなくなった。たぶん、田中は役割を終えた。
そんな田中と7年ぶりに会った。
7年以上経ってもあのバンドの曲を覚えていた。
話したことさえ忘れていた親の勤め先まで覚えていた。(流石に怖い)
良くも悪くも田中は本当に変わってなかった。
歳を重ねて「30かあ〜若いね〜」なんて言う自虐もしないし、「次どうする?(ホテル)行く?」なんて言う勘違いエロおじさんにもなってなかった。
変わらず聞き上手で、言葉選びをせず話して伝わる心地よさがあった。でも私は少し退屈だった。
田中は私に言った。
「お前大人になったなあ」
学生でバイトしかしたことない世間知らずの私は、いつのまにか仕事をして転職までして子供も2人産んじゃって、いつしか大人になっていた。
田中を追い越してしまったんだ。
変わらない人間なんていない。きっと田中も変わっていると思う。でも、それ以上に私が変わって大人になった。
年上の男がかっこいいのは、自分が知らないことを当たり前に知っているからだ。
学生が社会人に憧れるのは、未知な仕事に月曜から金曜まで勤しんでいるから。
新卒社会人が3つくらい上の先輩に憧れるのは、わからないことさえわからない仕事を、さらりと教えてくれるから。
そんなの出来て当たり前である。その男たちは自分より何年か多く生きているだけだから。
私が追い越した田中とまた酒を飲みたいと思う。
あの頃とは違った田中に会えるかもしれない。