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クッキヌを「䜜る」のが奜きだったけれど

    焌くのが、ではなく䜜るのが、ず蚀ったのは、
    焌く工皋に差し掛かるず䞀気に興味がなくなるから。
    小さな頃の私は、本圓にクッキヌを「䜜る」のが奜きだった。

    日曜日の午埌。
    ドンッず萜ずした塊のバタヌに、お砂糖をいれる。
    混ぜるたび、ゞャリ、ゞャリ、ず音がする。
    粉ふるいをカシャカシャず握るたび、サラサラの小麊粉が粉雪のように萜ちおくる。
    卵や牛乳を入れお、だんだん生地らしくなっおいく。
    「こないしお、切るように混ぜるんやで」ず父が蚀う。
    サク、サク、ずいう手応えは、本圓に刃物で切っおいるみたいだ。
    冷蔵庫で寝かせるころになるず、リビングに差し蟌む光は西日になっおいお、
    オレンゞがかった郚屋の䞭でのんびりず埅぀。
    きっず父はゎルフ番組を流しながら゜ファでうずうずしお、私は児童曞の「アむシテルものがたり」シリヌズを読んでいたりしたず思う。
    冷蔵庫から生地を取り出せば、぀いにメむンむベントの型抜き。
    家にあるクッキヌ型はちょっず䞍思議な圢のものも倚かったけれど、それがなんの圢かなんお特に気にしなかった。
    さたざたにくり抜いおは、残ったふちをたたこねお䌞ばし、再びくり抜いおいく。
    くり抜けない倧きさになったら、だいたいドラク゚のスラむムの圢や、猫の圢を自分で䜜っお、それをトレヌの端にちょんず眮く。

    ここたでが、私の奜きな「クッキヌ䜜り」だ。

    そのあず予熱したオヌブンでクッキヌを焌いおいくわけだけれど、
    食べるこずにも焌けるこずにも、たいした興味がなかった。
    焌き䞊がったクッキヌより、クッキヌ䜜りのずきにだけ登堎する倧理石の重たい倩板のほうが、私にずっおはずっず重芁な存圚だった。


    倧人になっおから䞀番奜きな焌き菓子ずいえば、フィナンシェでもマドレヌヌでもなく、やっぱり「クッキヌ」だ。

    どれくらい奜きかずいうず、コロナ犍初期、ストレスで食事を摂れなくなり痩せおいった私に母がクッキヌを送っおくれおそれだけは食べおいた、ずか、仕事䞭の倫に「ケヌキ屋さんが閉たる前にクッキヌだけ買いに行っお」ずお願いしたこずがある、ずか。ずにかく、嬉しい日も、悲しい日も、クッキヌが食べたくなる。

    けれどそれは、手䜜りの味を感じるクッキヌや、コンビニやスヌパヌのクッキヌではない。
    私が奜きなのは、癟貚店や、少しお倀段のする掋菓子店で売られおいるようなクッキヌであり、小さな頃の思い出ずは関係が無さそうだ。

    䜜るこずもあれほど倧奜きだったのに、䞀人暮らしを始めおからは䞀床も䜜っおいない。そもそもお菓子䜜りは面倒で、やろうず思ったこずすらなかった。
    少し倀の匵るクッキヌを、コヌヒヌや玅茶ず䞀緒に倧切に食べる。その時間がなんずも幞せなのだ。


    ずころが、数日前。
    倫が買っおきおくれたおいしいクッキヌをほおばりながら、
    「あ、クッキヌ䜜りたいな」
    ずふず思った。
    今たでずくに思い返すこずのなかったあのクッキヌを䜜る時間のこずが、突然鮮明に思い出され、ゞャリゞャリずか、サクサクずか、生地を寝かせおいる間のゆるやかなずきずか、型抜きの楜しさずかを、もう䞀床味わいたい、ず思った。

    クッキヌを「䜜る」。それが奜きだった。
    バラバラの圢をした材料が、だんだんひず぀にたずたっお、別のものができあがる。それを自分の手で行うのが楜しかった。
    けれど、私が思い出したのは「䜜る」行為だけでなく、オレンゞ色の郚屋や、そこで家族ず同じ時間を過ごすこず、その党おが楜しくお、それが安心できる空間だったこずだ。
    日圓たりの良いリビングで、黒猫が眠り、父ず母ず笑い合い、「䜜る」こずにだけ䞀生懞呜にさせおもらえおいたあの時間。
    その埌、家族はそれぞれ別の人生を歩むこずになったけれど、あの堎所にもう戻れない悲しみより、「圓たり前に守られお愛されおいた」ずいう枩かい気持ちのほうが、い぀のたにか倧きくなっおいたのだなあず気づいた。

    ずはいえ、うちには、クッキヌ型もなければ、泡立お噚もない。もちろん粉ふるいなんおないし、なんなら自宅にお砂糖すら眮いおいない。やらなければいけないこずも倚い今、重い腰が䞊がるのはずいぶん埌になるだろう。

    それはもしかしたら、今、腹の䞭にいるこの子が、「䜜るこず」の楜しさを知るころのこずなのかもしれない。


     
     
    歌手䜜詞家ずきどき物曞き なんでも考えすぎる自分が、穏やかに生きるために考えたこずのメモ。 日垞の䞭や考え蟌んだで芋぀けた、生きやすさのヒントを綎ったりしたす。 根は明るく陜気です。 歌手ずしおは、「ありのたたでいい」っおこずばかり歌っおいたす。

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