メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo byfairview_square

【ショートショート】彼とあくびと恋の行方

     あくびから始まる恋があることを、私は知った。

     窓際で大きな口を開けて、口の中が見えることもお構いなしに、自由を吸い込むように大きなあくびをする彼に、私の目は釘付けになった。

     切れ長の目に見つめられると、体がしびれた。

     甘い声を聞くと、耳が幸せを訴えた。

     彼に触れられると、生まれてきたことに感謝した。

     ただ、彼が私に興味があるかはわからない。ふらっと私の部屋に来たかと思えば、疲れているのか私のベッドに直行して、私に見向きもせずにそのまま眠ってしまう。

     彼のごはんを真心こめて作っても、彼はおいしいの言葉もなく、ただ黙々と食べ続ける。そして、またあくびをひとつして寝てしまう。

     私は彼の連絡先も知らない。彼の気が向いたときに、気ままに部屋にやってくる。そんな関係。なにより、私は彼の名前すら知らない。

     何度となく口にした言葉が、今日も私の口から溢れ出る。湿気を含んだ部屋の空気が、彼と私の間に薄く膜を張っている。

    「ねえ、あなたの名前は?」

     彼はあくび混じりに、気怠げに返事をする。


    「にゃーお」


     私は彼の背中に顔を埋めると、彼の気持ちを全て感じとるべく大きく息を吸い込む。日なたに干したお布団のような匂いが鼻腔をくすぐる。

     私の一方通行の思いをまるで知らないように、彼は体をよじり抗議の声をあげる。するりと私の手から抜け出すと、彼は窓の隙間から出ていった。 


    終


    MV作るの楽しいけど時間がかかって仕方ない。でも楽しい。でも時間が……

    動物シリーズでおすすめはこちら😉

    今まで投稿したショートショートの記事をまとめました。

    今まで投稿した短編小説の記事をまとめました。こちらも読んで頂けると嬉しいです。

    #片思い文芸部
    #あくび
    #ショートショート
    #短編小説
    #小説
    #創作大賞2025
    #オールカテゴリ部門

     
     
     
    読むことは長年していましたが、最近は書く楽しさにも目覚めました。拙い文章ですが、読んで頂けたら嬉しいです。 少しずつ公募にも挑戦し始めましたが、結果は……心折れることなく続けていこうと思います。 短編、ショートショート、エッセイなど。そのうち長編にも挑戦したいと思います。

    あなたへのおすすめ