
MADRSとは?治療の変化を見逃さない、うつ病評価の「もう一つの軸」
みなさん、こんにちは!
リハビリナレッジです。
MADRSとは?
うつ病治療の「変化」を読み取るための評価尺度
うつ病の評価尺度として、最も名前が知られているのはHAMD(ハミルトンうつ病評価尺度)でしょう。
一方で、治療の経過を丁寧に追いたい場面では、MADRS(モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度)が選ばれることが少なくありません。
HAMDが「全体像を把握するための地図」だとすれば、MADRSは「今、どこがどれだけ動いたのかを確かめるための感度の高いセンサー」。
本記事では、MADRSの考え方と構造、HAMDとの使い分け、臨床での読み取り方を整理します。
MADRSが作られた理由
MADRSは1970年代後半、「治療による改善を、もっと正確に捉えたい」
という臨床的な問題意識から開発されました。
当時すでにHAMDは存在していましたが、
身体症状の影響を受けやすい
気分が改善しても点数が下がりにくい
といった課題が指摘されていました。
そこでMADRSは、
うつ病の中核症状
気分・思考・感情の変化
に焦点を当て、「変化を逃さない」ことを目的として設計されています。
MADRSは何を見ているのか
MADRSは10項目から構成され、それぞれ0〜6点で評価されます。
特徴的なのは、「症状があるか」ではなく、「どの程度変化しているか」を見る点です。
たとえば、
表情や姿勢ににじむ悲しみ
言葉として表現される絶望感
内側に張りつくような緊張や不安
喜びを感じにくくなる感覚
将来への悲観的な見通し
こうした要素を、面接を通して総合的に評価します。単なるチェックリストではなく、評価者の観察力と対話が問われる尺度とも言えます。
スコアの目安と考え方
合計点は0〜60点。
一般的には次のように解釈されます。
0〜6点:寛解レベル
7〜19点:軽症
20〜34点:中等度
35点以上:重症
ただし、重要なのは「何点か」より「どう変わったか」です。
5点下がったのか、5点下がったのか
どの項目が動いたのか。MADRSは、治療の方向性を微調整するための指標として力を発揮します。
HAMDとMADRSの使い分け
HAMDとMADRSは、競合ではありません。
初診時・全体像把握 → HAMD
治療経過・反応性の確認 → MADRS
という役割分担が現実的です。
特に薬物療法では、気分は改善しているのに、副作用で睡眠が乱れている
といった状況が起こります。
この場合、HAMDでは改善が見えにくく、MADRSでは精神的回復が反映されやすい。「効いているかどうか」を判断する尺度として、MADRSが選ばれる理由がここにあります。
評価を「数字」で終わらせないために
MADRSを使う上で、意識したい視点が2つあります。
① 客観評価と主観評価のズレ
評価者の視点と、患者さん自身の実感は一致しないことがあります。
自己評価尺度(BDI-II、PHQ-9など)と併用することで、ズレそのものが臨床情報になります。
② 項目ごとの動き
合計点だけでなく、
自殺念慮はどう変わったか
感情の鈍麻は改善しているか
を見ることで、次に何を優先すべきかが見えてきます。
まとめ
MADRSは、うつ病治療における「変化」を捉えるための尺度です。HAMDが全体を映す広角レンズなら、MADRSは心の動きを追う望遠レンズ。両者を使い分けることで、評価は単なる数字ではなく、治療の意思決定を支える道具になります。