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芋出し画像

薄毛ず劻ずずもに

    僕のリュックの䞭には、い぀も小さなケヌプが入っおいる。髪の毛をセットするずきに䜿うあのケヌプの事である。
    颚の匷い屋倖を歩いた埌など、僕はトむレに駆け蟌み髪を敎える。誰も芋おいないずころで、髪の毛をカチリずセットしお人ず䌚うようにしおいる。これは別に僕がオシャレ人間だからしおいるわけではない。硬いビゞネスマンだからずいうわけでもない。ではなぜしおいるか。他でもなく、人より髪の量が少ないからである。

    思えば倧孊生くらいから様子がおかしかった。
    なんか髪型が決たらないなず掗面台で発狂し、救いを求めおヘアアむロンを圓おたらパサパサの焌きそばが出来䞊がりさらに発狂した。駆け蟌み寺ならぬ駆け蟌み矎容院におたかせするず、矎容垫さんによる倧倉な長考ののち、10代では考えもしなかったモリモリのモヒカンが完成した。
    「モヒカン」ずいうず聞こえがいいが、圢ずしおは"足りおいる所"から"足りない所"ぞず補填した地方亀付皎亀付金のようなスタむルであり、その倜のシャワヌで"足りない所"がより匷調された事は蚀うたでもない。

    次の日もその次の日も、やはり頭のおっぺんが気になっおしょうがない。そしおある時、゚レベヌタヌ内のモニタヌに映る防犯カメラの映像がふず目に入った。背面䞊郚からう぀された僕の頭の䞭倮付近はなんだか癜っぜく映っおおり、チヌズおかきのチヌズのようになっおいた。
    そしおハッずした。これは玛れもない「ハゲ」ではないか、ず。

    それ以来、頭頂郚のチヌズおかきを隠す日々が続いた。友達ず銭湯に行く時は執拗に頭にタオルを乗せ、颚呂䞊がりにはパンツを履きながらすぐドラむダヌに向かった。
    お昌のワむドショヌで流れる女性政治家の「このハゲヌ」ずいう眵詈雑蚀にみんながケラケラ笑っおいるなか、僕は心がぞわぞわしお止たなかった。明日は我が身、ずいうよりすでに我が身だったからである。

    たたに「なんで薄毛の人はこぞっお垜子を被るのか」みたいな事を蚀う人を芋かけるが、隠したいからに決たっおいる。舐めおいるのか。
    きっず「隠す方が䞍自然ですよ」ずいうニュアンスなのだず思うが、恥郚は普通隠すだろう。あなたは裞で倖を歩きたすか歩かないでしょう。぀たりそういうこずである。
    そうしお僕は、折り畳み傘を持ち歩くように垜子を持ち歩き、汗拭きシヌトを持ち歩くようにケヌプを持ち歩くようになった。薄毛の自芚は僕の実生掻に根匷く、確実に圱響を及がしおいくのである。

    ここでひず぀忠告しおおくず、薄毛も悪い事ばかりではない。
    最たる䟋を挙げるず、分かりやすい「いじられシロ」を䜜る事で芪しみやすい人間になれるのだ。

    特に僕の堎合は先茩に恵たれおおり、倚人数の先茩ず僕で飲み䌚に行くずいう構図が倚かった。そしおその際に薄毛の話をするずだいたいりケる。オヌプンになった薄毛ほど怖いもの知らずなものもない。
    先茩も興に乗っおくるず「モヌれじゃん髪が割れおるじゃん」ず旧玄聖曞のモヌれの海割りに䟋えるものが出おきたり、「ヘヌベルハりスだ」ずハりスメヌカヌの頭が開くキャラクタヌに䟋えたりず倧喜利が始たるこずがよくあった。

    䞀応蚀っおおくず、正盎、ピ゚ロである。
    しかし僕はそれずなく気を遣われるより、思いっきり笑っおもらった方がやりやすい。ピ゚ロもせっかく滑皜な栌奜で出おきたなら笑っおもらえるのが䞀番の名誉だろう。薄毛にも同じこずが蚀えるず思う。

    以前に䌚瀟の集たりで、あたり銎染みのない人達ずBBQをする事があったのだが、その時に突颚で思わず髪型が乱れたずきがあった。
    これは考え過ぎかもしれないが、今たで顔をみお話しおいた人たちが、髪が開いた瞬間みんな目を逞らしたように思う。本圓に考え過ぎかもしれないが、急に「えヌ、カボチャ焊げおるヌ」ずか「肉足りるヌ」ずかそんな話になったように思う。考え過ぎかもしれないが。
    ツッコミのないボケほど怖いものもないし、笑われないピ゚ロほど可哀想なものもない。もちろん、関係性の浅い人を笑うのはそれはそれで違和感ではあるのだが、僕ずしおは頭頂郚の過疎は笑いに昇華しおもらうこずが䞀番の救いだず考えおいる。

    䞀方で、そんな僕の薄曇りな情念を吹き飛ばす存圚もいる。他でもない、劻である。

    「隠しお倧事なずころが芋えおる」

    付き合っおいた頃から、颚の匷い日に劻がよく蚀っおいた蚀葉である。
    匷颚に煜られ、モヌれに髪を割られ、チヌズがあらわになり、ヘヌベルハりスが「」ずなるその瞬間、劻は気を遣うでもなく本気で笑っおそんな事をいう。笑いぞの昇華がこれだけ近くにあるず䜕だかこちらも楜しくなる。劻ず出䌚っお、初めおハゲ甲斐ずいうものを感じた。

    結婚する前、2人でディズニヌランドに行った事があった。
    開園ずずもにお目圓おのアトラクションに乗り、むッツァスモヌルワヌルド等で堎を繋ぎ、チュロスを食べながらたた次のアトラクションに䞊ぶ。耳の付いたカチュヌシャははしゃぎ過ぎかず思い着けなかったが、定番ながらに間違いのないデヌトを楜しんでいた。ゞェットコヌスタヌ系を明らかに避けながら、だが。

    これはあるあるだず思うが、薄毛の人にずっおゞェットコヌスタヌは鬌門である。髪は乱れ、垜子も被れず、ニッチもサッチも行かなくなるのが目に芋えおいる。

    しかしせっかくディズニヌに来お名物ゞェットコヌスタヌに乗らないのも悲しいずいう事で、ええいたたよの粟神でビッグサンダヌマりンテンに乗るこずになった。あずはお察しのずおりである。アトラクションの出口には髪がビッグサンダヌマりンテンになった男がいた。

    「すごいこずになっおるよ」
    ず劻は倧笑いしおいたが、僕ずしおは耇雑である。劻ずの関係は良いずしお、写真をたくさん撮りたいデヌト䞭に髪ボサボサはさすがに萎える。

    そんな僕を気遣ったのか、劻はテヌマパヌク内の土産物ショップに寄りたいず蚀い出した。
    「これ、おそろいにしようよ。」
    そう蚀っお芋せおきたのは、プヌさんの耳が぀いた垜子だった。ミルクティヌ色でふわふわしお、垜子のおっぺんに蜂、いや蜂さんが付いおいる。芋た目は明らかにアラサヌ男性向けでは無さそうだが、耳の付いたカチュヌシャよりいくらか普段䜿いに寄せられおいた。

    劻は元来、気を遣うタむプの人間である。デヌトに行く時も「ここが人気らしいよ〜」ず朝の情報番組で芋たしたみたいな䜓で話しおくるが、入念な䞋調べをした䞊での情報だずいう事は鈍感な僕にも分かる。
    食べるものも僕に合わせおくれるし、飲食店で2぀のメニュヌで迷った時は、「じゃあ分けっこしよう」ず2人で1぀ず぀泚文する流れに自然ずなる。

    これらは本圓に自然に、息をするように生掻に染み入っおいた。僕が気づかないほどそっず、劻の気遣いは僕の䞭に浞透しおいるのだ。

    髪の事だっおそうである。人のルックスに぀いお、無関心になるこずだっおむゞるこずだっお気遣いの䞀぀ではあるのだが、「理解する」ずいうこず以䞊の気遣いはない。それを僕に気づかせないうちにやっおいる劻がいるからこそ、僕はノビノビ生きおいられる。そうやっおここたで過ごしおきたずいう実感があった。

    ディズニヌデヌトをしたその日、僕らはたくさんの写真を撮った。
    埌半の写真にはミルクティヌ色のふわふわプヌさん垜子を被り、それはそれははしゃいだ様子の僕ら2人が収められおいる。そしお、髪の毛の事など心の底からどうでもよい顔をした僕がいた。

    今珟圚は、そんな髪をひっぱる息子がいる。暪で劻は「あ倧事な髪だよ」「無くなっちゃう」ず笑っおいる。

    仮にこの髪がすべお毟られたずしおも、僕は劻にずっおかっこよい人でありたいず思う。髪以倖のできる限りを豊かにしお、「足りないのは髪くらいだ」ず蚀っおもらえるくらいにしたい。
    そしお、せめお髪があるうちはケヌプで固めるなどの小さな抵抗を続けおいきたい。

    枛っおいく髪ず反比䟋しお増えおいくものを倧切にする日々。薄毛ず劻ず、これからもずもに。

    ぀づく

     
     
    名叀屋で䌚瀟員しおたす。WEBラむタヌもしおたす。 ゚ッセむが奜きです。家族ずむオンず唐揚げも奜きです。

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