メインコンテンツへスキップ
見出し画像

推しとの距離、あと3メートル

    ライブ会場の照明が落ちた瞬間、歓声が響いた。

    私はペンライトを握りしめる。

    ステージ中央に現れた彼。

    人気ロックバンド「RAY」のボーカル、蓮。

    48歳になった今でも、彼がステージに現れるだけで胸が高鳴る。

    恋ではない。

    そう思っていた。

    ただの推し。

    ただの憧れ。

    手の届かない存在。

    そのはずだった。


    20年前に離婚した。

    子どもを育てることに必死だった。

    仕事を掛け持ちしながら毎日を生きた。

    恋愛なんて考える余裕はなかった。

    気づけば48歳。

    娘も独立し、一人暮らし。

    自由な時間ができた頃、偶然動画で蓮の歌を聴いた。

    涙が出た。

    理由は分からなかった。

    ただ、張り詰めていたものが切れた。

    そこから私の推し活が始まった。


    ライブ。

    遠征。

    グッズ集め。

    SNS。

    毎日が楽しかった。

    人生に色が戻った。

    蓮は私にとって、生きる理由の一つになっていた。


    その日。

    ツアーファイナルの終演後。

    抽選企画が行われた。

    当選者一名。

    バックステージ招待。

    どうせ当たらない。

    そう思っていた。

    司会者が番号を読み上げる。

    「A-324番」

    会場がざわつく。

    私は手元のチケットを見た。

    A-324。

    一瞬意味が分からなかった。

    足が震えた。


    控室の前。

    スタッフに案内される。

    ドアが開く。

    そして。

    そこに蓮がいた。

     
     
    内野 猫です🐾 学生の頃からアイドルや芸能人との恋愛小説を書くのが大好きでした。 推し活、大人の恋愛、夢みたいな恋物語を綴っています。 ちょっとだけ、ノンフィクションも交えています。 読んだあと少し幸せになれる小説をお届けします♡

    あなたへのおすすめ