
きゅうりとかっぱに怯える季節
太巻きに入っている、彩り要員レベルの大きささえも抜きたくなる。
私はそれくらい、きゅうりが苦手だ。
どうしても、あの青々しさと独特のにおいと距離を置きたい。
きゅうりが好きな人は、シャキシャキの食感や、みずみずしさがいいらしい。だけど私は、そこも賛同できない。
でも、新玉ねぎのみずみずしさは感動するくらい好き。炒めるときに、必ずといっていいほど水や料理酒を入れて、水分を蒸発させないようにするほどだ。
新玉ねぎに火が通って、だんだん透き通っていくのを見ると、「おいしくなってきたあぁ〜!!」とテンションが上がる。なくなれば買い足したし、密かに「新たまちゃん」と呼んでいた。
だけど、きゅうりは全くそうならない。
くたくたになるまで豚バラと一緒に炒める作戦。焼き目をつけて香ばしさで包み込む作戦。細く切ってにおいの成分を壊す作戦…。
いろんな作戦を実行したけど、きゅうりの勝利だった。
きゅうりは細身だけど、とても「自分」を持った芯のある食材なのだ。
本当のことをいうと私は、きゅうりはかっぱの食べ物だと思ってる。
だって、きゅうりの色ってかっぱに似ているし、特に、曲がったきゅうりは、かっぱのしっぽのようだ。
「食べれば食べるほど、かっぱに近づいていくのでは?」と恐れている。
もしかしたら、たくさん食べると、きゅうりのにおいを感じ取って、かっぱが近づいてくるかもしれない。仲間と思われて「やあ。元気?」と声をかけられるかもしれない。
それほどびくびくしているのだ。
晩ごはんにきゅうりを2本使った翌日。冷蔵庫の野菜室を開けたら、また2本あった。
「これは…かっぱからの贈り物…?」と、はっと息を呑んで「いよいよか…」という言葉がよぎった。
でも、それはまたも家族がもらってきた貰い物だった。
見たことも、会ったこともないかっぱに怯える季節が、始まった。