水筒の蓋が開かない


節約の為に、ほぼ毎日持参している水筒があり、出先で喉が乾いたので水筒の蓋を開けようとしたが、蓋が開かなかった。


前にも何度か開かなくなった事があるが、開ける方とは逆の向き(押してダメなら引いてみる)に回転させてから開く事により、なんとか蓋が開いた。


ただ、今回はびくともしない。


手を休ませてから、何度も蓋を開けようとした。それでも開かない。


そんなに蓋を固く閉めた覚えもない。


非力なのだろうか。


今まで、非力だと思った事はなかった。


通りすがりの人に開けてもらおうか。とも思ったが、声をかけるのは恥ずかしい。


なにより不審者だと思われたくない。


こういう時に限って1人だ。無力さを感じる。


新たに飲み物を買ってしまおうか。とも考えた。


思い止まる。これでも(自称)節約家なので、水筒を買ったからには、売っている飲み物を意地でも買いたくなかった。


そうこうしているうちに駅に着く。


力がありそうな男の人がいる。


お相撲さんも2人いる。


やはりその辺の人に声をかけるか。そう思った時、ふと思い出した。


人が多い場所で誰かが倒れていても、見て見ぬふりをする人が多いという。


誰かが救急車を呼んでくれる。という他人任せになるので発見が遅れてしまうらしい。


人があまりいない田舎では、誰かが倒れていると、救急車を呼べるのは自分自身しかいないので、救急車を呼んでくれる。助かる確率が上がる。


人の心理というやつだ。


きっとこんな人混みでは、無視をされてしまうに違いない。


前に東京に行った時、道に迷ってしまった。


通りすがりの人に道を聞いても、大半の人は無視をしていく。


セールスか何かと勘違いされたのかもしれない。


私も知らない人がいきなり声をかけてきたら警戒する。


もうあんな思いはしたくない。


腹が減ってしまった。


昼時は過ぎていたが、まだ昼飯を食べていなかった。


飲食店に行こうと思い、ふと店員さんに開けてもらえばいいのではないか。と思った。


店員さんだったら男女共にいる。


二十歳の時だったら、今より何も言えず、開かない水筒を家に持ち帰った事だろう。


だが、今は良くも悪くも歳をとってしまった。


飲食店に着き、女性の店員さんが席に案内してくれる。


思い切って聞いてみた。


「すみません。水筒の蓋が開かなくなってしまって、どなたか開けられる方はいらっしゃいませんか?」


女性の店員さんが、濡れた布巾を片手に水筒の蓋を開けてくれた。


店員さんにお礼をした。


もしかして、あの布巾はテーブルを拭いたやつなのだろうか。


その思いを心の中にそっとしまった。

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