
キンキンに冷えたやつ
人間には生きていれば癖というものが存在する。
ビールを飲んだ後に「くぅ~!」というとか、
子供なら顕著だろう。小さいころから使っている布類が手放せないとか、耳を触るとか、そういう癖。皆さんにもあったのではなかろうか。
例外なく私にもある。こう、非常に言いにくいうえに理解されないことはわかっているのだが、人の肘を触る癖である。物心つく前からしている。しかも抜けない。油断すると触っている。何歳からとか具体的な数字が言えない程度には年数が経った。
この癖の厄介なところは、あくまで自分の肘ではダメなところだ。しかも肘の触り心地にもランクがあり、肉のついてない肘が好きなのである。一番いいのは、言い方を全く遠慮しないと骨と皮みたいな肘である。
皮をつまんでいる感じがこの上なく安心するのだ。
私も年を重ねて、自分ではだめだというところを克服し、自分の肘をもんでいる。私は食べることが趣味だから肉がついている時点で、非常に好ましくないのだが仕方がない。妥協である。
こんなことろで年を重ねたなと思いたくはなかった。
そして、この癖の一番めんどくさいところは、あたたかい肘ではだめだということ。今もし読んでいる人がいたら自分の肘を触ってほしいのだが、布団の中とかサウナの中とか熱があるとかではない限り、大体肘は冷えている。
冬は必ず、夏は今自分のを触ったらちょっとあつかったから断言できないが。
生ぬるいのも許せない。冷えるまで待つ。キンキンに冷えているのが最高なのだ。これは夏はもちろん、冬もである。ここで思い出してほしいのは私は生ビールの話をしているのではない。肘の話をしている。
子供の頃は血縁者全員の肘を触って回っていたため非常に気持ち悪がられた。しかしずっとしていると当たり前になる。このため私がいきなり触っても誰も驚きはしない。人に肘を触られる感覚は気持ち悪いから非常に可哀そうに。もし人に不快感を与えたければ実行してみてほしい。
子供の頃は、おばあちゃんが一番の被害者だった。両親が共働きだったため、兄弟の中で一番上の私が一人になることを危惧して1~2年生の間ぐらい同居して世話をしてもらっていた。おばあちゃんっこだった。
冬の間は布団から肘を出させられ、寒いのに腕を布団にしまえずしかも孫が寝るまで続けられるのだ。かわいそうである。
そんなおばあちゃんもその数年後病に倒れ、ほどなくこの世から去っていった。今考えるとそこまで年を取ってなかったからやり残したこともいっぱいあっただろう。
夜に冷蔵庫で冷やしたお酒を飲むけれど、自分の肘をもむたびにおばあちゃんの顔を思い出す。
冷たい肘、あれが愛だったんだなあと。