記憶には、気持ちの温度が残っている気がする。
あたたかい、心地よい、ひんやり。
わたしと彼は、長らく遠距離恋愛で、
逢える距離にいつもいない。
だからなのか、
一緒にいられたときの温度だけは、
忘れていても、ふと思い出す。
たとえば、手をつないだときの、
あたたかくて、大きくて、安心できる手のこと。
手を離したあとも、
わたしの手には、ゆっくりと、やさしい温度がひろがっていく。
彼の手は、やわらかな温度のまま、
記憶の奥の方に、そっと残っているのかもしれない。
きっと誰の記憶にも、
触れたままの温度が、ひとつくらいは残っている気がする。