
♯01 シャネル ココ フラッシュ68は、私に似合う赤を教えてくれたリップだった。
昔の私は、くすんだピンクやベージュが好きだった。
ふんわりしたベビーカラーを見ると心がときめいて、新作が出るたびに「かわいいな」と思っていた。
でも、いざ自分の唇にのせると、なんだか違う。
優しい印象になれると思ったのに、なぜか顔色が悪く見えたり、疲れた印象になったり。
鏡を見るたびに「今日のメイク、何かしっくりこないな」と感じていた。
残酷なことに、「好き」と「似合う」は違う。
そんな当たり前のことを、私はなかなか受け入れられずにいた。
転機になったのは、パーソナルカラー診断だった。
私の診断結果は「ビビッドウィンター」。
鮮やかでクリアな色が得意だと知ったときは、正直少し驚いた。
自分が好きだった優しい色とは正反対だったから。
それでも少しずつ、すすめられた色を試してみるようになった。
そして出会ったのが、シャネルのココ フラッシュ68〈ユルティム〉だった。
初めて唇にのせた瞬間のことは、今でもよく覚えている。
青みをほんの少し感じる、透き通るようなクリアな赤。
むっちりとした、でも下品にならない綺麗な艶感。
単なる「赤リップ」ではない。
自分の顔全体がぱっと明るくなるような感覚が新鮮で感動した。
不思議なくらい肌がきれいに見えて、「これが似合うっていうことなんだ」と、初めて実感した。
それからというもの、このリップは特別な存在になった。
少しかしこまった黒いワンピースの日にも。
Tシャツとデニムで過ごす何気ない休日にも。
服装を選ばず、それでいてほんの少しだけ背筋を伸ばしてくれる。
そんな一本だった。
もちろん、リップは他にもたくさん持っている。
新作を見に行くのも好きだし、季節ごとに気になる色は変わる。
それでも、コスメボックスを開けたとき、気づけば手に取ってしまうのは、この68番だ。
「限定だから」でも、「流行っているから」でもない。
何年後の自分も、きっとまたこの色を選ぶだろう。
そう思えるコスメは、実はそんなに多くない。
パーソナルカラーを知ってから、私は「好き」を諦めたわけではない。
本当に似合うものを知ったことで、以前よりもっとコスメを楽しめるようになった。
そして今では、くすみカラーをメイクではなくネイルやバッグで楽しむようになった。
好きでも似合わないものは、無理に捨てるのではなく自分に合うように取り入れればいい。
好きなものを、自分らしい形で取り入れる。
そんな選び方ができるようになった気がする。
シャネル ココ フラッシュ68。
この一本は、私に「似合う赤」を教えてくれただけじゃない。
"自分に似合うものを選ぶ楽しさ"を教えてくれた、大切なリップでもある。

