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夜更けのチャイム

    仕事から帰って、家事を片付けて、風呂に入ってすぐ寝る生活。
    明日も仕事で、他に何かをする気力もない。

    疲れた身体を引きずって、何とかベッドに辿り着く。
    歯は磨いたし、他にやることはないはずだ。
    そこまで考えて、ふと涙が滲んだ。

    ピンポーン。
    夜遅くだというのに、チャイムが鳴った。

    「誰だ…?」
    俺はノロノロと、重たい身体を起こして、インターホンを覗く。

    ドアの外で、幼馴染の結城ゆうきが立っていた。

    「こんな時間にどうしたんだよ」
    「いや、用はないんだけど。
    肉まん、食わねえ?」
    結城が二カッと笑いながら、レジ袋を持ち上げた。
    俺はそれを見て、ドアを開ける。

    「いやー、悪いな!
    終電なくなっちゃって」
    「…泊まる気かよ」
    「だめ?」
    「…肉まん、俺のもあるんだろうな」
    「もちろん!」
    「…ならいい。今日はそれで我慢してやる」

    「コンビニのやつ?」
    「そう。
    チーズのと、豚肉たっぷりのやつがあるけど、どっちにする?」
    「…高い方」
    「んじゃ、これな」
    結城は豚肉たっぷりの肉まんを俺に差し出した。
    俺はそれに齧りついた。……旨い。

    「何か、顔色悪い?」
    「…別に」
    俺の返答を待たずに、結城が額に触れてくる。

    「すっげー冷たいよ。
    ……大丈夫じゃなさそう」
    「…うっせーよ」
    「もしかして、何も食べてなかったとか」
    俺は口を硬く結んだ。

    「とりあえず、座って食べよ。な?……ここじゃあれだし」
    結城は俺の背中に手を添えて、玄関からリビングに連れて行く。

    リビングといっても、一人暮らしの狭いリビングキッチンなので、男二人が座っただけでも非常に狭い。

    俺は座ってから、肉まんに再び齧りついた。

    「そんなに慌てなくても。
    何なら、もう一個食べなよ」
    結城は隣で「はい」と差し出した。

    「要らねーよ、それはお前のだろ」
    「そんなにお腹を空かしてるのに、放っておけないだろ。
    俺のは、あとでまた買ってくるからいいよ」
    「…………ありがとう」

    結城が渡してくれたスポーツドリンクを飲む。
    一度口を付けると、喉が渇いていたのか、飲むのを止められなかった。
    一気に丸々一本、飲み終えてしまった。

    「何で食べなかったの」
    「腹減ってなかったから…」
    「腹減ってたじゃん」
    「それは…食べ始めたら、腹減ってたって気付いて…」

    話していくうちに、ボロボロと涙が溢れてきた。
    自分でも、理由はよくわからなかった。

    「疲れてたのかもな。今日はよく休みなよ」
    結城が指で、俺の涙を拭った。
    抵抗する気力もなかった。

    「…そうする」
    俺は頷くと、二つ目の湿った肉まんを平らげた。

     
     

    綴

     
     
    綴(つづり)と申します。 日常の一瞬や言葉にならない感情の揺れ、静かな関係性を描く短編を書いています。 余白と空気の温度を大切に、そっと寄り添う物語を届けます。 日・火・木・土の週4更新です。 フォローはご自由にどうぞ。 フォロバ目的のフォローはご遠慮ください。

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