
宙飛ぶペンギン
ねぇ、知ってる?
ここから山一つ隔てた地方には宙飛ぶペンギンもいるんだって
私も飛びたいわ。
あなた何言ってるの?
ペンギンなんだから海中をスイスイ、地上をペタペタ行くのが普通でしょ。
そんな非現実的なこと夢見る前に部屋を片付けたらどうなの。
私はそれを口にするのを止めました。
それでも、飛ぶ練習やめませんでした。
クタクタになっても遊ぶ友達がいなくなっても。
周りのペンギンに見られないように真っ暗な時間に練習していたものですから、寒さで体が悲鳴をあげて練習もできなくなってしましました。
しかし、憧れは完全には捨て切れませんでした。
そんな中、ある日ついに、飛ぶ方法がわかりました。
それは私がしていた練習とはかけ離れたものでした。
なんと彼らは、目に見えない羽根を背中につけて飛んでいたのでした。
それはとても透明だから、疲れた目では見えませんでした。
見えないから存在を知らないから使えるとも知らない、当然飛べないわけです。
それは飛びたいと心から望んだ者、あるいはなんらかの必要性によってのみ天から授けられるようです。
ペンギンなら誰でも備わっているチャンスですが、気づいたペンギンにしか受け取れません。
私は、時たま人の羽がうっすら見える程度ですが、自分の背中にはすでにあると信じています。まだなくても一向に構いません。
授けられたときにはいつでもすぐに使える心づもりでいますから。
見えるようになったのは、別の理由からたまたま目を洗って目の疲れが癒えたからでした。
もちろん羽のことを知りませんから、羽を見ようと思って洗ったわけではありませんでした。
でも、いつでも飛べたらいいなと思っていたのは本当です。
だから、私の場合は必要性からではなく、心から望んだ者ということになるのでしょう。
そして、羽を使うために必要なのは練習は、まだ飛べもしないうちから妄想でジャンプしたり疲れる練習ではなく、羽を使ったと仮定してその時の心持ちや身体の状態を保つ練習です。
羽があれば飛ぶのに苦労はしないわけですから、いつでも苦労しない練習をするのです。
われわれの集落にも建造物も印刷物も増えました。目の疲れは現代社会ではすぐに生じますから、それをゼロにするのは無理です。
溜めないことが何より大事なのです。
ともかく私が飛ぶのはそう遠くない将来だと信じています。
もし飛んだらこの集落では目立ってしまうかもしれません。
みんなが教えてほしいと寄ってくるかもしれませんし、その逆かもしれません。どちらでも私は気にしません。
先のことはその時に決めれば良いと思っています。
【完】