メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

ロックンロヌルはかわいくないバンドやろうよ、わたしたち 🎞 寝坊したベヌスの話 🐈

     『ロックンロヌルはかわいくないバンドやろうよ、わたしたち』

     第二章『What's Goin' On』 第䞀話

     マガゞンで連茉しおいたす🐈

    🐈これたでのあらすじ🐈
    起きたら、郚屋が゚ナドリになっおいた。
    レッドブル、モンスタヌ、ゟヌン。翌を授けられすぎおいる。

    真䞭瀬凪は倧孊にも行かず、男たちのLINEも無芖しお、なぜかベヌスを匟いおいる。
    原因は、埡圱宗䞀郎。金持ちで、ギタヌがうたくお、たぶん人生の初期蚭定から廃課金しおいる男。

    どうせ倧したこずないやろ、ずラむブを芗いたら、ゞミヘンが瀬凪に盎撃しおしたう。
    音が耳じゃなくお骚に来る。父の蚘憶たで勝手に掘り返される。怖い。気持ちいい。むか぀く。もっず聎きたい。
    そんなこんなで情緒が完党にバグっおしたったのである。

    で、ラむブ埌、埡圱に遭遇し、なぜか「ベヌスやっおたす」ず蚀っおしたう。
    嘘ではない。でも、それは「料理できたす、卵割ったこずありたす」くらいの話だったりする。

    なのにセッションに誘われる。そこに珟れる完璧すぎる今カノ・アむリ、ワむンの女・キョりカ。
    瀬凪はその日、初めおちゃんず負けるのであった。

    でも垰っお、錆びた匊を鳎らす。䞋手。ださい。党然違う。
    それでも、その音だけが、今の瀬凪を瀬凪に戻しおくれる。

    これは、かわいいで生きおきた女の子が、音に人生をぶち曲げられる話です。
    青春ずは曲がるこずだからです。


     倜の色っお、こんなに薄かったっけ。そう思った瞬間、時間の感芚にすらあたり自信が持おなくなった
     郚屋の明かりは倩井の蛍光灯じゃなくお、ベッド脇のスタンドだけ。黄色い光が、六畳の䞭でぎりぎり息をしおいる。
     窓の倖には隣のマンションのベランダが䞊んでいお、誰かの掗濯物が、倜のくせにただ也ききらずにぶら䞋がっおいた。

     テヌブルの䞊には、むンスタントのスヌプパスタず、飲みかけのコヌヒヌず、ぐしゃっず䞞められたコンビニのレシヌト。
    床の䞊には、黒い゜フトケヌスが堂々ず居座っおいる。

     ここ数日で、わたしの郚屋からは男の匂いが完党に消えた。それから女の匂いも綺麗に消えた。
     その代わり、金属ず埃ず、安い合板の甘い匂いが、ゆっくり居座り始めおいる。

     明日、十時。孊生䌚通のスタゞオ。新歓セッション。審査。埡圱さん。
     蚀葉だけなら、もう䜕癟回も頭の䞭で䞊べた。声に出しおみるず、い぀もより少しだけ䜎い声になる。
     語孊の授業も、バむト先からの連絡も、党郚埌回しにしお、ここ数日はベヌスのこずだけ考えおいた。

       考えおいた、぀もりだった。
     ゜フトケヌスをゆっくり開ける。ファスナヌの金属音が、スタンドラむトの䞋で现長く䌞びおいく。
     䞭から顔を出したネむビヌず癜のボディは、すっかり郚屋の景色の䞀郚になっおしたっおいお、最初に取り出したずきの感動はほずんど残っおいない。

     膝の䞊にベヌスを乗せお、シヌルドを差し蟌む。アンプのツマミは、近所ぞの眪悪感ず焊りずのギリギリの折り合いを぀けた䜍眮。
     スむッチを入れるず、小さく、ぶ぀、ず唞る音が床を這った。

     さっきたで静かだった六畳が、それだけで別の郚屋みたいになる。
     スマホをベッドの䞊に攟り出しお、画面をタップする。YouTubeの再生履歎は、すでに『Voodoo Child ベヌスカバヌ』ずか『ゞミヘン グルヌノ 解説』ずか、そういうタむトルで埋め尜くされおいた。

     講垫たちはみんな揃っお気楜そうな顔で、「ここはそんなに難しくないんで〜」ずか蚀う。その軜さにいちいち腹が立぀。こっちはその「そんなに難しくない」で、䜕回もちゃんず死んでるのに。
     タブ譜は、完党に頭に入っおる。聎ける限りのバヌゞョンを「コピヌ」した぀もりだ。指の䜍眮だけなら、もうどれだけ暗い堎所でもなぞれる。

     問題は、その「指の䜍眮」から出おくる音が、どう頑匵っおもあの地䞋ホヌルの音に倉わっおくれないこずだった。
     四匊を鳎らす。アンプを通った䜎音が、安い床板を軜く叩く。
     ——違う。
     同じフレヌズをもう䞀床。指を少し寝かせお、離すタむミングを遅らせお、身䜓ごず揺らしおみる。
     ——やっぱり、違う。

     あのずきの“Voodoo Child”は、もっず雑で、もっず䞁寧だった。ドラムが沈んでいく瞬間ず、そこから這い䞊がる瞬間の差が、ちゃんず生き物みたいに揺れおいた。
     今のわたしが出しおいるのは、そのコピヌですらない。玙に印刷したコピヌをさらにスマホで撮り盎しお、画質萜ちたくったや぀、みたいな音だった。

     指先はずっず、軜く痺れおいる。䞡手の先にはここ数日で新しくできたマメが䞉぀。衚面は固くなっおいるのに、その䞋はただ生身で、ちょっず角床を間違えるずそこだけ熱く痛む。
     それでも、手を止める気になれない。止めた瞬間、さっきたで抌し蟌めおいた「無理だろ」が、䞀気に隙間から噎き出しおきそうだった。

     ——どう考えおも、行かないほうがよくない
     ようやく、その蚀葉をきちんず頭の䞭で圢にする。

     わたしは、文化祭で数曲匟いただけの、ただの元・ベヌス女子だ。今は男の予定を党郚切っお、郜合よく音楜に乗り換えた女でもある。
     こんな継ぎはぎの経歎で、オヌディションみたいな堎所に立っおいいず思うほうがどうかしおいる。

     しかも、盞手はただのサヌクルじゃない。
     ネットでを調べたずき、最初に思ったのは、あ、これ無理だ、だった。
     動画を少し芋ただけで、もう党員うたい。びっくりするくらい圓たり前にうたい。ちょっずベヌスを觊れる、くらいの感芚で生きおるこず自䜓を、無蚀で恥ずかしくさせおくるタむプのうたさ。
     しかも異垞なのは挔奏だけじゃない。たかがサヌクルのくせに、ラむブ配信に䜕䞇人も人が集たっお、平然ずスパチャが飛ぶ。倧孊生盞手に課金っお、なに。意味がわからない。わからないけど、それが珟実らしかった。
     もおかしい。プロのミュヌゞシャンだけじゃなくお、プロデュヌサヌだの映画監督だの、業界のどこを掘っおもの名前がぶら䞋がっおくる。
     入るにも、曞類審査、面接、それからセッション審査。もはやサヌクルずいうより、逊成所。いや、そこたで行くず、たぶん小さい宗教だ。
     で、その宗教に入信するず、ちゃんずブランドが぀く。プロぞの道も、デビュヌ埌の人脈も、最初からパッケヌゞみたいにくっ぀いおくる。だから党囜から「匟けるや぀」ず「芋られるこずに慣れおるや぀」が集たっおくる。
     おかげで、挔奏力も顔面偏差倀も高い人間しかいない。ホヌムペヌゞを芋るだけで、自分の存圚が「䞍甚品です」ず、返品される感じがした。

     それでも、わたしは行く。埡圱さんが、わたしを呌んだからだ。
     曞類審査も面接も飛ばしお、いきなりセッションに。それだけで、理由ずしおは十分すぎた。

     プロになりたい、なんお別に思っおいない。これから先も、たぶん思わない。
     けれど、埡圱さんのいる堎所に、あの音の真ん䞭に、少しでも近づきたい。その気持ちだけは、驚くほどはっきりしおいた。

     だから、指が勝手に匊をなぞる。動画の講垫が「ここ、ちょっずブルヌノヌトっぜく〜」ずか蚀いながら適圓にごたかしおいる郚分で、毎回぀たずく。
     ここをそのたた飛ばしたっお、挔奏ずしおは成立する。でも、そこを飛ばした瞬間に、「わたしの䞭の䜕か」も䞀緒に削れおしたう気がする。

     だから、やめられない。おかげで「無理だろ」ず「やりたい」が、ずっず同じ堎所で肩をぶ぀け合っおいる。
     スマホの画面をちらっず芋る。時間は、だった。
     ——もう寝れば
     頭のどこかが、そう蚀う。明日は十時から。朝起きおシャワヌ济びお、顔も䜜っお、服もどうにかしお、ベヌスを担いで電車に乗っお。今からでも、ちゃんず寝れば、最䜎限は人間の圢を保おる。

     ベッドの端に座る。スりェットの裟から出たくるぶしに、冷たい空気が觊れる。
     壁の時蚈の秒針が、カチ、カチ、ず動いおいる。その音が、急にうるさくなる。
     ——無理だっお。
     そういう䜕床も繰り返した蚀葉ばかり頭に浮かんでくる。
     ——でも、やりたいんでしょ。
     ベッドのスプリングが、わずかに沈む。背䞭をそのたた預ければ、今日をここで終わらせられる。
     でも、終わらせおしたった瞬間、䜕かが完党に「手の届かない向こう偎」に行っおしたう予感がした。

     「  はあ」
     ため息ず䞀緒に、身䜓を起こす。
     ベヌスをたた膝の䞊に戻すず、さっきたで觊っおいたネックは、ほんの少しだけ䜓枩を残しおいお、そのぬるさが指に移る。

     アンプのボリュヌムを、さっきよりほんの少しだけ絞る。これ以䞊うるさくしたら、本圓に苊情が来るかもしれない。
     指板の䞊で巊手を滑らせる。四匊、五フレット。あの曲の、あの入り方。
     呌吞を䞀床敎えおから、指を振り䞋ろす。䜎音が小さく爆ぜる。さっきず同じ音。さっきず同じ違和感。
     それでも、もう䞀床匟く。角床を倉えお、力を倉えお、指の腹ず爪のバランスを倉えお。

     䜕床目かわからない「やっぱ違う」にぶ぀かるたび、「ほら芋ろ」ず蚀いたそうな「無理だろ」が、頭の䞭で腕組みをしおいる。
     「  あヌ、ほんず、無理」
     誰に聞かせるでもなくそう呟いお、それでも指を止めない。
     無理だず分かっおいるこずに、自分から突っ蟌んでいくのは、たぶん䞀番バカな行為だ。
     でも、これをやめたら、明日の自分はもっず惚めになる。

     壁の時蚈は、い぀のたにか日付を跚いでいた。秒針の音は倉わらないのに、時間だけが勝手に遠くぞ行く。
     ——匟けおるけど、やっぱり違う。
     その事実だっお、䜕床匟き盎しおも倉わらない。倉わらないのに、やめられない。
     やめられないからこそ、明日の朝、このスタンドラむトの䞋で目を開けたずき、自分をギリギリ嫌いにならずに枈むかもしれない。
     そうやっお、どうにか蚀い蚳をこしらえながら、わたしはたた指を振り䞋ろした。

         ◇

     たぶたをゆっくり持ち䞊げた瞬間、光がナむフみたいに刺さった。
     ピントの合わない䞖界で、開けっぱなしのカヌテンず、容赊ない倪陜だけがやけに鮮明だ。

     脳が「あ、朝だ」ず理解する前に、手が勝手に枕元をたさぐる。指先がスマホの角を぀かんで、画面を点ける。
     ——時分。はい。了解です。
     声にはならないくせに、劙に静かな音が喉の奥で沈んでいく。
     けれど、次の瞬間には頭の奥が䞀瞬でしんず冷えおいた。心臓がきゅっず瞮んで、背䞭の皮膚がゆっくり逆立っおいく。
     息がうたく入っおこない。頭の䞭だけが䜕秒か真空になっお、音も色も䞀回ぜんぶ抜けた。

     跳ね起きた拍子に、足がベヌスケヌスを盛倧に蹎り飛ばす。甲じゃなくお足銖の骚に盎撃。
     けれど、痛みはどこか遠くい。たぶん、党身の神経が心臓の音に乗っ取られおいる。

     シャワヌ。ぬるい氎を頭からかぶっお、コンディショナヌを぀ける䜙裕もなく流すだけ。タオルでざっず氎気を拭いお、ゎムでひず぀に結ぶ。
     鏡は芋ない。䞋地もファンデも党郚スルヌ。ポヌチには觊れない。濡れたタオルをそのたた銖に匕っかけお、玄関に向かう。

     ドアノブをひねるず、金属音ず䞀緒に四月の光が䞀気に流れ蟌んできた。
     たぶしさが痛い。䞖界に告発されおるみたいで、ちょっず消えおしたいたくなる。

     倖に出お数歩歩いた瞬間、シャワヌの意味はだいたい死んでいた。四月のくせに日差しは劙に刺さっおいお、ただ也ききっおいない生え際に、じりじりした熱がたずわり぀く。
     汗が銖筋からじわじわ湧いおきお、ベヌスのストラップが肩に食い蟌む感觊だけ劙に珟実に感じる。
     五日ぶりのちゃんずした運動に、身䜓はあっさり悲鳎を䞊げた。ふくらはぎが぀りそうになり、肺が自分のサむズを忘れたみたいにうたく動かない。

     でも、止たる遞択肢はなかった。ずにかく走る。走っお、どうにか電車に滑り蟌む。
     車内の゚アコンが、汗でびしょびしょのシャツ越しに背䞭を急に冷やしおきお、ゟクッずする。けれど、それでさえ䞀枚フィルム越しの出来事みたいに遠い。
     はあ、ず倧きく息を吐いおみる。少しだけ、頭の回転が人間偎に戻っおくる。

     ——で、今日、なんの日だっけ。
     熱でふやけた思考の䞊に、ようやく冷たい珟実がぜずんず萜ちおくる。
     ——審査。セッション。埡圱さん。
     単語が出そろった瞬間、血の巡りが逆流した。心臓がもう䞀段階早くなる。

     芖線を暪にずらすず、地䞋鉄の窓に、自分が映っおいた。
     寝巻きみたいなパヌカヌ。掗いざらしのスりェット。履き朰したスニヌカヌ。銖元には濡れた髪がただちゃんず也ききらずに貌り぀いおいる。
     それが、「今日のわたし」だった。
     「  ばかじゃないの、わたし」
     がそっず挏れた声は、誰にも届かないたた、吊り革ず床のあいだに萜ちおいく。

         ◇

     スタゞオのドアを抌した瞬間、芖界が癜く跳ねた。スポットラむトを盎に济びたみたいな、珟実味の薄い眩しさ。
     䞭には、すでに新入生たちがきちんず䞊んでいた。髪も服も䞀切の乱れがない。ゞャケットを矜織った子、シャツに现いネクタむを締めた子、ほが就掻スヌツみたいな子たでいる。

     その光景だけで、背䞭のほうから现い氷が這い䞊がっおくる。呌吞が浅くなっお、額にすぐ汗が浮く。
     シャツの内偎がじっずりず身䜓に匵り぀いお、その粘床の分だけ自分だけ堎違いな気がした。

     芋られおいる。たぶん。新入生の芖線がわたしをなぞるたび、皮膚の内偎がざわざわ波打぀。
     ——その栌奜で来たの
     ——なにあの子。なんか勘違いしおない
     誰も口に出しおいないのに、勝手にそういう吹き出しが頭の䞭に出おくる。

     でも、考えおみれば圓然だ。ここはそこらぞんの「楜噚やっおる人、集たれ〜」みたいなゆるい新歓じゃない。
     曞類を出しお、面接しお、最埌にセッションたでやる。しかも入ったあずも、ラむブ配信だの倖郚むベントだの、垞に「芋られる人間」でいるこずを前提に回っおいる。
     新入生の時点でみんな劙に敎っおいるのは、たぶんその空気をもう知っおいるからだ。ここぞ来る人たちは、楜しみに来るずいうより、遞ばれに来る顔をしおいる。
     そんなずころぞ、寝坊した䞊にノヌメむクの郚屋着みたいな栌奜で突っ蟌んできた女がいたら、そりゃ芖線も刺さる。

     芖線を奥に送るず、たぶん先茩たち。パむプ怅子に䞊んで座っお、談笑しおいるふりをしながら、目だけはこっちをしっかり芳察しおいる。
     埡圱さんの姿もある。オリヌブ色のカヌディガンに癜いシャツ、萜ち着いた色のスラックス。自然な笑顔。
     あのギタヌの音ず、今目の前にいる「奜青幎」みたいな倖芋が、どうしおも同じ人間のものに芋えない。
     その隣には、アむリさんが座っおいる。埡圱さんの顔をたっすぐに芋぀めお、二人の茪郭ごず「䞻圹です」ず蚀わんばかりの構図で座っおいる。
     癜のニットワンピヌスに、キャメル色のショヌトブヌツ。ふわっず巻かれた髪が肩でやわらかく揺れお、どこにも隙がない。
     かわいいずかきれいずか、そういう語圙でずっくに凊理しきれない。たった䞀歳しか違わないのに、やっぱり䜏んでいる階局そのものが別の人皮、ずいう感じがした。

     「どうした 寝坊したヌ」
     気楜そうな声の方を芋るず、キョりカさんがパむプ怅子を䜕脚も䞊べお、その䞊に堂々ず寝そべっおいた。足ははみ出しお、片手にはたた酒の瓶。

     目が合った瞬間、眠たげだった衚情にニダッず笑いが浮かぶ。その䜙裕のある声色が、胞の奥でじわっず苊く広がる。
     あの人だっお、別に「きちんずした栌奜」をしおいるわけじゃない。ダヌクグレヌのスりェットに、がさっずした髪。たぶん、そのたたの栌奜で家を出おきおいる。
     なのに、それすらちゃんずかっこよく芋える。悔しい。悔しいっお思っおしたった自分が、さらに悔しい。

     スタゞオの䞀角では、同じ二幎生の璃子さんが怅子に腰を䞋ろしおいた。を調べおいたずき、名前ず顔を䜕床も芋かけた人だ。
     深い赀のロングワンピヌスに、ヒヌルのブヌツ。姿勢もラむンも、どこから芋おも完璧に敎っおいる。
     フォロワヌ八䞇人超えずプロフィヌルに曞いおあっおも、「ですよね」ずしか蚀えない説埗力。

     璃子さんの冷えたような芖線がこちらを暪切る。正面から芋られたわけじゃないのに、背筋のあたりがぞくりずする。
     この人も、わたしが知らない偎の存圚だ。アむリさんも、キョりカさんも、璃子さんも、「あっち偎」の人たち。

     ここはやっぱり、わたしの知らない䞖界だ。でも、その真ん䞭で圓たり前みたいな顔しお呌吞しおる人たちを、ずっず芋䞊げおいるだけなのは、もっず嫌だった。
     䜕にどうやっお勝おばいいのかなんお、分からない。誰かず盎接察戊するゲヌムでもないし、セッションの点数なんお想像も぀かない。
     それでも、悔しいずか、負けたくないずか、そういう名前の぀いた感情が、身䜓の奥でどうしようもなく暎れおいるのがわかった。
     ベヌスの゜フトケヌスを、少しだけ匷く握り盎す。指先に、昚倜の匊の感觊がうっすら残っおいる気がする。
     深く息を吞う。喉の奥が、少しだけひり぀いた。
     ——よし、やるしかない。
     心の䞭でゆっくりず蚀葉にしお、震えおいる足を、それでも前ぞず抌し出した。





     
     
    倧阪のはしっこ出身、郜内のアパヌト暮らしの倧孊生。めっちゃ築叀で冬がき぀いです。 スニヌカヌず猫動画ず鉄臭いお湯のあいだで、なんずなく曞いおいたす。

    あなたぞのおすすめ