
ニャーミャーパラダイス【掌編】786字
シロ、ミケ、トラ、ブチ。
これらはどれも前時代的な名前である。現在、これらの名前を持つ者たちには改名が奨励されている。かく言う私も以前はクロという屈辱的な名前だったが、現在はバウムクーヘンを名乗っている。
身体的特徴による分類、さらに同特徴を持つ者同士の繁殖のみを良しとして、違う特徴を持つ親たちから生まれてきた者を※種 (強い差別用語なので記載は避ける)と呼び蔑む所業が当たり前だった時代があったのだ。
特に私の色は不吉、魔女的、インスタ映えしないなどの理由で差別されてきた。
同じ猫なのに。
黒い猫も白い猫も縞や斑の猫も同じ猫である。もっと言えば品種 (私はこの言葉が嫌いである)も存在しないのである。私たちは皆、同じ猫である。
私は政治家としてこの差別問題に尽力してきた。今日、猫を品種や色で分類しなくなったのは私の功績が大きいと自負している。
ペットショップに行けば、「素直」「賢い」「元気」といった内面を表す言葉で子猫たちが売られている。身体的特徴で判断されるのを防ぐために実物はもちろん、写真すらないのが当たり前だ。もちろん、値段も画一である。
そんな差別撤廃の功労者である私を捕まえて、よりにもよって差別主義者呼ばわりするとは。
太った猫をマルと呼んで何が悪い。小さい猫をプチと呼んで何が悪い。デブ、チビと呼ばれなかっただけ有難いと思え。
これは差別とは違う。こいつらは他の猫よりも喰い過ぎたから、逆に喰わなかったからそうなったまでのこと。言うなれば自分たちで選択した姿だろうに。先天的な特徴で違いを付ける差別とは全く違う。
こんな記事を書いたのは一体どこの出版社だ。
A社か。あそこは犬たちの会社だったな。相変わらず単純で物事の本質を見ることができない犬畜生共め。後でバケツ一杯の残飯でも送りつけてやろう。吠えるしか能のないワンコロ共は好物を目にしたら尻尾振ってすり寄ってくるはずだ。
2021年4月
***
見出し画像にお借りしました。明るいイラストなのにこのような皮肉めいた話に使ってしまい恐縮です。