
我が友の手から生まれる魅惑のパンの名は
パン・ド・ロデヴ…というらしい。
「パンを焼いたから送るわね!」
そんな嬉しいお知らせが、焼きたてのオシャレなパンの写真と共にラインに届いた。
そこに写るパンは、いわゆる普通の食パンとは違ってハード系のもの。
きっと今、彼女のキッチンは香ばしいパンの香りに満たされてるんだろうなあ、なんて、そんな香りまで想像してみたりして。
パンを焼いてくれた彼女は、私より少し年下で、同じ高校の出身だけど、ギリギリ同じ時期に在校することはない年齢差。
ゆえに在校中にお互いを知ることはなかったけれど、バイト先で出会い、気付けばそこからとっても長いお付き合いというか、頻繁に会える距離にいなくても、何故か大事な時には必然のように会えたり、会いに来てくれたりする…お互いの若かりし時、いろんな葛藤や悩みや夢を抱えた「昔」を知る大切な存在、貴重な友であり、また、互いに猫さまをこよなく愛し、猫さまに仕える、猫さまの僕の民仲間でもある。
彼女から届いた、パンが入っているであろう荷物は、大きくてずっしり重かった。
パンを送るわね!という軽やかなフレーズとは真逆な感じにヘビー級で、私はまるで宝箱を開けるような気持ちで、息を整えていざ開封。


そこには料理もプロな彼女が、時短で美味しくできる優れものの品々に、猫さま愛する民には堪らない、猫さまグッズの数々がぎっしり詰め込まれていて、その奥にパンと思われる包が。

さあ、さあ、封印を解きましょう♪

オシャレなその姿に包丁を入れるのは、ちょっとした緊張が…


切った瞬間に迷わずワインを注ぎ、そのまま堪らず2切れを一気に…🍷しかも立ったまま‼️
なんでしょう、外は芳ばしくパリッとしているのに、中はしっとり。そしてほのかな優しい酸味がたまらない美味しさ…
「シンプルにオリーブオイルと塩で食べるのがいちばん好き」という彼女の言葉に、いそいそといつもより…ちょっとだけいいオリーブオイルを手に入れ、お気に入りのゲランドの塩で食べるとこれまた、新しい魅力が開花する美味しさで。
はあ…心がほぐれていく。
何を隠そう、私は彼女のお陰で始めてパン・ド・ロデヴを知り食したわけだけど、そこにどこか懐かしいような親しみを感じて、胸の奥がキュンとなるような、郷愁みたいなものが込み上げてくる…そんな時間もプレゼントしてもらったようだった。
そうか…うん。
きっとそれは、若かりし日に過ごしたヨーロッパの香り(ザックリ過ぎるが)を思い出させるもので、それが、その時の情景や、感情に触れてくる記憶みたいなものと繋がったからなんだ、と。
思えば彼女と私はヨーロッパの街を一緒に歩いたことがある。
それはもう、30年くらい前のこと。
私は10代から20代にかかる年頃に、ウィーンに2〜3年住んでいたことがあり、数年ぶりにウィーンを訪れることになっていたのだけど、当時ロンドンに留学していた彼女が、私が滞在する時期に合わせて、会いにきてくれたお陰で実現した「ウィーン歩き」だった。
その頃はスマホのスの字もない時代…携帯も日本では仕事で持つ人はチラホラ見られるようになっていたとはいえ、その携帯に今のスマホのような便利な機能はない。
そのため、空港に降り立ったらまずその街の地図を手に入れ、交通手段を確認して…と、完全なアナログ、人力による旅になる。
そうそう、椹野道流先生が祖母姫様とロンドンを訪れられた時代と、ちょうど同じ頃だと思われ、先生の奮闘ぶりには共感しきりだったけど、何より根底から違うのは…祖母姫様はファーストクラスのセレブ旅で、私たちの旅は格安強行詰め込み旅というところである笑
シュテファンス寺院やシェーンブルン宮殿、私の一推しのベルヴェデーレ宮殿…など、ウィーンの名所を、それもあの時代の燻し銀の古都ウィーンを、彼女と一緒に歩くことができたのは、かけがえなく、宝物のような経験だったと幸せに思っている。
去年、その名所をバックに写る私たちの写真を見つけ、彼女に送信。
「懐かしい!!私たち、顔パンパンね〜」と笑っていたけど、確かに、その写真の中の私たちは紛れもなく若さに満ちていた。
その写真は「写るんです」という使い捨てカメラで撮ったものだと思われるのだけど、その画像の感じも、ある意味、時代の流れをリアルに残してくれている感があって、ちょっと切なくも愛しいものがある。
彼女のパン・ド・ロデヴから、いろんなことが蘇って…そうして優しく癒されている自分に気付いた。
きっと彼女は、最近、ちょっと元気をなくしていた私を気遣って、でも、それを感じさせないように軽やかに送ってくれたんだろう。
パン・ド・ロデヴ…
パン・ド・ロデヴ
なんだか、何度も繰り返して呟いてしまうくらい語呂も響きもステキだ。
この先も、ちょっと元気をなくした時には、パン・ド・ロデヴの香りや味、そして古き良きウィーンを思い出して彼女に癒されるのだろう。
パン・ド・ロデヴ
パン・ド・ロデヴ
パン・ド・ロデヴ
まるで呪文のように。