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ー止まる前に設計する 第1弾ー 「寄り添うだけでは、現場は回らない」――シート設計20年の私が、キャリコン資格を取って気づいたこと

    キャリアコンサルタント資格を取ってしばらく経った頃、自分の中にあった違和感を、ようやく言語化できた。

    「私がやりたいのは、“伴走”だけではなく、“設計”なのかもしれない」

    そんな違和感だった。

    はじめまして。
    私はこれまで約20年間、自動車のシート骨格設計と、その開発チームのマネジメントをしてきた。
    突然だが、車のシート設計がどういう世界か、想像できるだろうか?

    ■ 常に前提が揺らぐ世界

    一般的には、「シート設計」と聞くと、椅子を設計する仕事くらいのイメージかもしれない。
    ただ、実際の現場はかなり違う。

    車の開発では、ボデーや操縦安定性など周辺仕様が先に決まり、その後にシート設計へ入ることが多い。特にリアシートはその傾向が強く、シートは“調整部材”として扱われやすい。

    つまり、常に変更が起きる前提で設計を進める世界だ。

    しかもシートには、

    • 安全性能

    • 強度・耐久

    • 乗り心地

    • 操作性

    • 異音

    • 危害性

    • 生産要件

    • コスト

    • 質量

    など、多数の要求性能が複雑に絡み合う。
    さらに、骨格だけで200点を超える部品が絡み合い、1ミリの変更が周辺部品に連鎖的な影響を与える。

    この世界で問われ続けてきたのは、ひとつだ。

    「変数が多く、前提が揺らぐ中で、いかに手戻りを最小限にしながら再現性の高い設計をするか」

    私はその問いと20年向き合ってきた。

    • どこが崩れやすいか

    • どの条件が性能に影響するか

    • どこで手戻りが起きるか

    それを観測しながら設計することに強みを持っていた。

    ■ 人もまた、前提が揺らぐシステムである

    マネージャーになってから、同じことが「人」にも起きていると感じ始めた。同じ説明をしても、

    • 動ける人

    • 止まる人

    • 条件次第で変わる人

    がいる。能力の問題だけでは説明できない。

    気づいたのは、能力と役割が少しでもズレると、途端に組織のボトルネックになるということだ。問題は能力の高低ではない。

    • 「能力」と「役割」

    • 「本人」と「環境」

    • 「期待」と「状態」

    が噛み合わないことで、組織全体が機能不全を起こす場面を何度も見てきた。そこで私は、人の能力そのものよりも、

    「どんな条件で、人は本来の性能を発揮できるのか」

    に強く興味を持つようになった。後になって、私はこれを

    「条件付き性能」

    として考えるようになった。
    人の能力は固定ではなく、状況・関係性・役割・前提条件によって大きく変化する。

    そう考えた時、人間系もまた、シート設計とよく似た構造をしているように思えた。

    変数が多く、前提が揺らぎ、感情も絡み、再現性が崩れやすい。

    技術よりも人への関心が強くなった私は、人材育成やキャリア支援に関心を持ち、キャリアコンサルタントの国家資格を取得したのだった。

    ■ 資格を取って気づいた「違和感」

    ただ、学べば学ぶほど、一つの違和感も強くなっていった。

    キャリアコンサルティングでは、「傾聴」「受容」「共感」が重視される。相談者の内側にある答えを引き出し、伴走する。それは確かに正しいし、尊いアプローチだ。

    しかし、日々対峙してきた開発現場・製造現場の問題に、教科書的な「寄り添う支援」を当てはめようとしたとき、私の中で明確なエラーが出た。

    「寄り添うだけでは、手戻りは防げない」

    現場の管理職が本当に困っているのは、部下の愚痴を聞いてスッキリさせることではない。

    「なぜ、あの人は急に動けなくなるのか」
    「なぜ教えたはずなのに、現場で再現されないのか」
    「なぜベテランが抜けると現場が止まるのか」

    このエラーを根本から直すための、再現可能な運営の設計図だ。
    私は無意識に、「その人の気持ち」だけではなく、

    • 今どんな状態にあるのか

    • 何が未定義なのか

    • どの条件が揃えば動けるのか

    を観測していた。つまり、私が見ていたのは、“感情”だけではなく、”状態”だった。

    人の気持ちを変えることだけではなく、「人が動ける条件を設計すること」。私はここに強く惹かれていた。

    最近は、この考え方を自分の中で、「未然防止型 状態遷移設計」という視点で整理し始めている。

    ■ ”状態設計者”として支援の世界に入る

    「やる気」や「性格」のせいにしているうちは、組織のバグは直らない。必要なのは、能力が発揮される条件を工学的に整えることだ。

    加えて、AIによって知識取得は容易になった。しかしそれと逆行するように、現場では

    • どの条件で

    • 何を観測し

    • どう判断を切り替えるか

    が共有されない問題が残り続けている。これはツールでは解決せず、人間系の運営や状態設計の問題で、これからさらに重要になると感じている。

    このnoteでは今後、不確実性を前提とした組織運営設計の視点から、現場のリアルな問題を分解していく。

    • なぜ育成は再現しないのか

    • なぜ1on1は機能不全になるのか

    • なぜ技術継承は属人化するのか

    • AIが普及した時代に「現場で判断できない人」が増える本当の構造

    これらを、「未然防止型 状態遷移設計」という、工学設計と人間系の両方を経験してきた独自の視点から分解・整理していきたいと思う。
    現場の「手戻り」に悩む管理職やリーダーのヒントになれば幸いだ。

    次回は、キャリアコンサルタントのロープレ試験に向けて書く。ただし、合格テクニックではない。なぜ養成講座を修了しても面談が身につかないのか、その構造的な理由を分解する。


     
     
     

    K

     
     
    自動車シート骨格設計20年・管理職10年・キャリアコンサルタント国家資格保有。「人が動けない」は性格や意欲の問題ではなく、設計の問題だと考えている。育成・技術継承・1on1等が機能しない運営構造を、工学的視点から分解する。

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