見出し画像

ほとんどの人が知らない「折りたたみ傘」2つの開閉機構。傘クリエイターが「ポキポキ傘」を愛用する理由

こんにちは、傘業界34年/アンベル株式会社代表・傘クリエイターのつじのよしひろです。

この記事でわかること

  • 手動折りたたみ傘にある「楽々開閉」と「ポキポキタイプ」の決定的な構造の違い

  • 一見手間のかかる「ポキポキタイプ」が圧倒的に優れている5つの技術的メリット

  • 似て非なる「逆式折りたたみ傘(クイックオープンタイプ)」との違いと本質的な選び方

そもそも、手動の折りたたみ傘には「大きく分けて2種類の開閉機構がある」ということをご存知でしょうか?

長年この業界に身を置いていると当たり前のことなのですが、おそらく一般の方のほとんどは意識されたことがないはずです。

実は先週、私たちがブースを出展した展示会でも、まさにその事実を目の当たりにしました。来場された多くの方が、これからご紹介する「ポキポキタイプ」の傘の操作方法をご存知なく、上手く開閉できないシーンに何度も遭遇したのです。

現在、一般的な量販店などでシェアの圧倒的大半を占めているのは、ろくろ(傘を開閉するときにスライドさせるパーツ)をつまんで上にスライドさせるだけで一発で開閉できる、いわゆる「楽々開閉タイプ」です。

なお、ボタンひとつで勢いよく開く「自動開閉(ジャンプ式)タイプ」もありますが、これは「楽々開閉タイプ」の構造をベースに自動メカニズムを組み込んだものです。今回は、純粋な「手動操作の折りたたみ傘」における構造美と機能性を比較・解説するため、手動と自動ではジャンル違いとし、自動開閉タイプは除外してお話しします。

「楽々開閉タイプ」
「ポキポキタイプ」

圧倒的なシェアを誇る楽々開閉タイプに対して、百貨店の傘売り場などを覗くと、今でもしっかりと主流として並んでいるのが「ポキポキタイプ」と呼ばれる開閉スタイルの傘です。業界の正式名称では「ホック式」や「日式ミニ」などと呼ばれています。

ポキポキタイプは、開くときにまずシャフト(中棒)を伸びきるまで引き出し、折れ曲がっている先親骨を手前側に倒して1本ずつ固定させます。この固定するときに「ポキッ」という心地よい手応えや音がするため、一般的にポキポキタイプと呼ばれているわけです。そして親骨をすべて伸ばしてから、ろくろを上にスライドさせて開く。閉じる時はその逆の手順を踏みます。

<動画で見る>
https://cdn.shopify.com/videos/c/o/v/cd65ca1252f34f828d92401e6dbeb4e6.mp4

文字にすると確かに手間に思えますし、展示会での出来事からもわかるように、操作になじみがない方が多いのも事実です。しかし、この「ポキポキタイプ(ホック式・日式ミニ)」には、その手間を遥かに上回る構造的メリットと技術的な美しさが詰め込まれています。

この部分にはめると「ポキッ」という心地よい手応えや音がする

なぜあえてポキポキ?プロがうなる5つの構造的メリット

ポキポキタイプの最大の強みは、手動で骨を1本ずつ固定する構造にすることで「無駄なパーツや複雑なメカニズムを徹底的に排除できる」という点に集約されます。具体的には次のような5つの大きなメリットが存在します。

1. 圧倒的な「軽さ」

楽々開閉タイプの傘には、1回のスライドで開閉操作に連動して骨が伸ばされる仕組みを作るため、複雑な連動パーツやジョイントが組み込まれています。これらは利便性と引き換えに、確実な重量増をもたらします。

一方、ポキポキタイプは手動でロックを行うため、連動パーツを最小限に抑えられます。パーツが減れば減るほど傘は軽くなり、バッグに入れて持ち歩く際の負担や長時間の使用による腕の疲労を劇的に減らしてくれます。

圧倒的な「軽さ」

2. 収納時の「スリムさ」

連動パーツが少ないということは、骨をたたんだ時の収まりが格段に良いということでもあります。傘を巻きたたんだ際の太さが一段とスリムになるため、スリムなビジネスバッグや小さな鞄にもすっきりと収まります。毎日の携帯性において、この差は決定的な利点となります。

圧倒的にスリム

3. 「長いまま(2段)で閉じられる」という隠れた神機能

意外と知られていませんが、これがポキポキタイプ最大の利便性と言っても過言ではありません。3段に折りたたむ構造でありながら、先親骨を伸ばしたままでシャフトだけを縮め、2段の「長傘っぽい状態」でサッと閉じることができるのです。

一般的な楽々開閉タイプは構造上、中途半端に2段で閉じることができず、「閉じる=生地をきれいに畳まないと収納できない」という制約があります。しかしポキポキタイプなら、雨の日にコンビニや店舗へサッと短時間入る際、わざわざ骨をポキポキ折って綺麗にたたむ必要はありません。

2段状態で閉じれば、店頭に備え付けのエチケット傘袋(長傘用の細長い袋)にそのままスッと入れられます。また、お店の傘立てに一時的に置くことも可能です。

ただし、これにはひとつ注意点があります。骨メーカーによって構造が異なり、石突(傘の先端パーツ)が一番下に出て地面に接するように設計されている構造なら傘立てに置くのも問題ありません。しかし、石突が生地より内側に入り込んでいるタイプもあるため、その場合は生地の擦れや汚れに注意が必要です。

長いまま(2段)で閉じられる

4. 風を受け流す「衝撃吸収」のやや深いシルエット

傘を開いたときのフォルムにも構造的な違いが現れます。ポキポキタイプは構造上、開いた際のエッジ部分がやや深めに落ちる、丸みのあるきれいなシルエットを描きます。

さらに、強い突風が吹いて傘が裏返りそうになったとき、先親骨が限界値でサッと受け流すように倒れ込むことで衝撃を吸収し、骨全体が破断するのを防ぐクッション機能として働きます。倒れ込んでも簡単に戻せますので、風の強い日でも安心感があります。

先親骨は倒れても戻せる

5. たたむ時に「手が濡れにくい」親切設計

ポキポキタイプを完全にたたむ際、構造上、雨で濡れた表生地が内側に倒れ込む形で収納されます。そのため、濡れた生地の外側を直接手で触る機会が減り、たたむ際の手の不快感や水濡れを大幅に軽減できます。

似て非なる「逆式折りたたみ傘(クイックオープンタイプ)」との決定的な違い

傘に詳しい方は、「ポキポキする手間がなく、濡れた面が内側に入る傘なら『逆式折りたたみ傘(クイックオープンタイプ)』もあるのでは?」と思われるかもしれません。(ポキポキタイプ構造を源流とする派生モデル)

逆式折りたたみ傘+自動開閉

確かに先親骨をたたまなくても良い逆式折りたたみ傘(クイックオープンタイプ)も、たたむ際に濡れた面が内側に入る便利な構造を持っています。しかし、開閉に連動して先親骨が動く「ポキポキが不要な機構」を採用しているが故に、先ほど挙げたポキポキタイプ独自のメリットのほとんど(圧倒的な軽量化・スリム化、2段での仮閉じ機能、しなやかな強風受け流し構造など)が打ち消されてしまいます。

結果として残るのは「濡れた生地を触らないで済む」というメリットだけになってしまうのです。

ただ、他の構造を否定しているのではなく、傘の使い方の目的に応じては、それぞれのフレームに何某かの利便性があります。手動ならではの不便さの裏には、緻密に計算された「軽さ」「耐久性」「汎用性」の明確なトレードオフが存在しているのです。

道具としての「愛着」を楽しむ

一発で開閉できるワンアクションの便利さも素晴らしいですが、ひとつひとつの動作に理由があり、無駄なパーツを限界まで削ぎ落とした「ポキポキタイプ(ホック式・日式ミニ)」の静かな機能美もまた、道具として非常に魅力的です。

私はちょっとした外出や、サコッシュに入れて持ち運びたいというときにポキポキタイプを携行しています。

次に折りたたみ傘を手にする機会があれば、ぜひその骨の動きや「ポキッ」という感触に耳を澄ませてみてください。そこに込めた軽さと強さの設計思想が、きっと伝わるはずです。

なお、今回のポキポキタイプ(ホック式・日式ミニ)は、AMVELの製品モデルで言うと「pentagon67」「pentagon72」「pentagon Large」などが該当します。


この記事が役に立ったと思った方は、ぜひ「スキ」やアカウントの「フォロー」をお願いします!励みになります。

今回のテーマや傘の選び方、AMVELの製品について気になることがあれば、お気軽にコメント欄で教えてください!プロの視点でお答えします。

プロのこだわりを詰めた傘を直接見てみたい方は、公式オンラインストアも覗いてみてくださいね。 https://www.umbrella-store.net/


執筆者プロフィール:つじの よしひろ 傘業界に携わり34年。アンベル株式会社 代表取締役/傘クリエイター。 「世界最軽量級の折りたたみ傘」をはじめ、機能性と耐久性を追求したオリジナル傘の企画・開発を手掛ける。使い捨て傘を減らし、愛着を持って長く使える傘文化の定着を目指して発信中。


いいなと思ったら応援しよう!