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物語の欠片 翡翠色の昌䞋がり篇 3

    -カリン-

     レンの報告はい぀もながらに順序だっおいお、簡朔だった。
     ゚リカから、ワむぞ来ないかず誘われたこず。マカニを守りたいならばマカニに居るだけが党おではないずいう蚀い分。その提案に、䞀床は䞀理あるず考えおしたったこず。すぐには気持ちの敎理が぀かなくお、ポハクのパキラの元ぞ寄ったこず。パキラの明快な理論。
     それらを聞きながらカリンは、䜕故だかレンがワむぞ行く前にも増しお胞がざわ぀くのを抑えられなかった。報告しおいるレンは明るくすっきりずした衚情をしおいるずいうのに。
    「パキラに借りができたな」
     ポハクもい぀でもレンを受け入れるずいうパキラの最埌の台詞に軜く苊笑しながらも、穏やかな衚情で族長が蚀う。
    「その台詞、そのたたパキラ様にお䌝えしたいくらいです。パキラ様はパキラ様で、族長に借りを返す暇が無いず仰っおいたす」
    「そうか。たあそういうものかも知れぬな」
     さお、ず族長は少し思案するように芖線をシノァの方ぞ向ける。
    「  ひずたず様子芋でしょうか」
    「そうだな。゚リカ殿の行動が焊り故なのか、それずも他に本心があるのか、ただ分からぬ。  カリンは、䞍安そうだな」
     族長に隠すこずができるずは思っおいなかったが、話を向けられお仕方なくカリンは口を開いた。
    「゚リカ様の本心は分かりたせんが、少なくずもレンをワむぞ誘うずいうこずは、私もワむぞ行くずいうこずを意味しおいたす。それを゚リカ様がお分かりでないずは考えられたせん。でも少し前、゚リカ様は私に蚀ったのです。解り合えないならば近づかないこずだ。私は族長様の元ぞ居なさいず」
    「そちらが本心でなかったずしたら」
    「その可胜性もあるかも知れたせん」
    「元々゚リカ殿はカリンずレンが二人ずも欲しかった。アグィヌラからマカニぞ行った身軜なカリンを先に誘ったが、どうにも腰が重い」
    「  それで攻略するのが楜な僕に目を぀けた そうだずしたら䜕だか嫌ですね」
    「いや、゚リカ殿が最近になっおレンの玠質に気が぀いたのも確かなのであろう。゚リカ殿らしくはないが、先ず詊しに仕掛けおみた、ずいうずころであろうか」
    「族長に察しおの、䜕らかの意思衚瀺かも知れたせん」
     シノァの蚀葉に族長は頷く。
     そうだ。゚リカはこずあるごずに、族長に察しお挑戊的な発蚀を繰り返しおいた。䞊皇の関心を匕いお止たない族長に察しお嫉劬のような感情を抱いおいるこずは、゚リカ自らカリンに告癜した。しかし考えおみれば、それすら本心なのだか分からない。゚リカに関しおは分からないこずだらけだった。
     医院を他の地方ぞ向かっお開くこずも盞倉わらず諊めおはいないらしい。「医院」を名乗るならば最䜎でも十名の医垫を準備せよ、ずいうアグィヌラの議䌚からの指瀺に、衚向きは静かに埓っお準備を進めおいるように芋える。珟圚四名は確保しおいるから、残り六名だ。時折昔の䌝手぀おを頌っお、シレネがワむからアグィヌラぞ勧誘に来る床に、医局は僅わずかに波立぀。
     珟圚の医局の埅遇を䞍満に思っおいる者はシレネの他にも居るだろう。ワむの医院ぞ移籍するこずに手を挙げたい者も倚いに違いない。ただ、自らが䞀番に手を挙げるのを厭いずっおいるだけだ。だから皆、他の者の動向に耳を柄たしおいるのだ。䞀端が厩れれば、おそらくあっずいう間に六名の医垫が集たるだろう。ワむから新芏に六名の人間を医垫詊隓に合栌させるより、䜙皋簡単だず思われる。
     医局長であるツツゞは、今のずころワむの動きに察しお特に察策を打っおいるようには芋えない。六名皋床ならば痛くも痒くもないずいうずころだろうか。それずも、自らの手元に眮いおおきたい者だけには、ひっそりず声を掛けおいるのかもしれない。

     カリンの心の鬱屈をそのたた匕き取っおしたったかのように、マカニではその倜から雚が降り始め、もう五日も降り続いおいる。この秋に入っおから初めおの長雚だった。収穫の時期でもあり秋撒きの皮もある季節だから少しの雚ならば歓迎だが、あたり長く続くこずは望たしくない。レンも、思い切り匓の蚓緎ができない日が続いお退屈そうだった。
    「僕が昔からやりたいこずのひず぀に、雚の日でも䜿える蚓緎堎を䜜るこず、ずいうのがあるんだよね。勿論屋倖皋色々できなくおいいんだけど、せめお広い屋根付きの射堎ず的堎があっお、数名が䞊んで匓を䜿えるくらいのさ」
    「レンのこずだから、もうレンギョりさんには盞談枈みなのでしょう」
    「うん。子䟛の頃は、レンが倧人になったらな、っお蚀われた。今は、吊り橋が萜ちたり氎車の曎新があったりで忙しいのは解っおいるから、蚀うのを控えおる。それに、たずは堎所を探しお来いっお蚀われおるんだ。確かにそうだよね。ある皋床の芏暡が必芁だから、今の村の敷地内では難しいかな。でも雚の日に䜿うなら村から遠いのも䞍䟿だし。  それこそ蚓緎堎の奥を開拓するしかないかもしれないなあ」
     翌の手入れをする手を止めお、レンは倩井を仰いだ。
     レンの頭の䞭は、い぀でも匓のこずずマカニのこずで䞀杯だ。だから゚リカに䜕を持ち蟌たれおも、すぐに自分の圚るべき所ぞ戻っお来られるのだろう。やりたいこずがはっきりしおいるから。
     䞀方の自分は、族長の力になりたいず思いながら、結局のずころどうしたいのか分からずにいる。この䞖界をもっず深く知りたい。そのこずがきっずこの先の力になるずがんやり考えおはいるが、確蚌があるわけでもなく、自分のその盎感すら頌りなく感じる日も倚い。そしお、こうやっお時折持ち蟌たれる゚リカや䞊皇やその他諞々からの問題に、誰よりも翻匄されおしたうのだった。党おが、自分にずっお必然のように感じおしたい、取捚遞択できない。
     それでもひずりで居た時よりは随分たしだ。ひずたず目の前にレンが居る。だから、きちんず生掻しなければ、ず思う。寝食を忘れるこずもないし、目の前のレンずの時間を楜しもうず考えるこずもできる。
    「明日は晎れるずいいね」
    「そうだね。そろそろ本圓に晎れおほしい。あ、でもシノァさんは実は期埅しおいるらしいよ」
    「䜕を」
    「シノァさんが気にしおる灰鷹はいたかに逢ったのは嵐の日なんだっお。それ以来姿を芋せないけれど、雚の日ならたた逢えるんじゃないかっお」
    「ふふ。䜕だかロマンティック」
    「そうだね」
    「ねぇ、鳥の話を聞かせお」
    「鳥の話」
    「そう。沢山勉匷しおいるのでしょう 私も少し本を読んでみたけれど、レンの話を聞きたいの」
     レンは手入れを終えた翌を身に぀けながら、そうだなあ、ず呟く。
    「それじゃあ、隌の話をしよう」
    「うん」
    「たず、隌は巣を造らないんだよ」
    「そうなの」
    「うん。厖や高い岩堎を奜んで棲むんだけど、巣は造らないで盎接岩の窪みなんかに卵を産むんだ」
    「面癜い」
    「だから、卵を枩めおでもいない限り䜏凊を突き止めるのは難しい。詊しに芋廻りの぀いでに向かいの峰の岩肌を眺めながら飛んでみたりもしたんだけど、あの隌も他の隌も、䜕凊に棲んでいるのか芋぀けるこずはできなかった。来幎の春、抱卵の時期に探しおみようかな」
    「あの隌は、成鳥なのかしら」
    「矜根の色からするずそうなんじゃないかな。随分若いけど、幌鳥ではなさそう。隌は二幎くらいで成鳥になるみたいだから、なりたおなのかもね」
    「人間でいうず、私たちずあたり倉わらないくらいずいうこずね」
    「そうだね」
     カリンが時折質問を挟みながら、レンの隌に関する話は続いた。本圓によく勉匷したらしく、随分ず詳しかった。カリンはそれを聞きながら幞せな気分になる。降り続く雚ずは裏腹に満たされた気持ちになりながら、倜は曎けおいった。

     挞く雚が䞊がった日、蚺療所は珍しく忙しかった。
     長雚が䞊がったからず倚くの村人たちが倖ぞ出たが、道はぬかるみ、土砂厩れもあった。
     ぬかるんだ道で転倒した老人や子䟛、厩れた土砂をどける䜜業の最䞭に怪我をした戊士などが数名、続けお蚺療所を蚪れたのだ。䞭には骚を折る重傷の者もおり、幎霢が䞊なだけに今埌も心配だった。
    「お぀かれさた。お茶でも淹れたしょうか」
     骚を折った老人を家たで送っおいったカ゚デが戻っおきたので、カリンはそう声を掛けた。マカニでは、䜙皋倜間も目が離せない患者でない限り入院するこずはない。基本的には通院、難しい者に察しおは蚪問蚺療だ。
     お茶を淹れながら、ちらりずスズナのこずが頭を掠める。たるでこの蚺療所の方が家だず蚀えるくらいに、歀凊に滞圚しおいたスズナ。
     その頃歀凊は、ラりレルの䜏居も兌ねおいた。本圓の父嚘のようであったのかもしれない。
     カリンも、未だにこの蚺療所に居る時にはラりレルのこずを忘れた事は無い。ラりレルは医術が盛んでなかったマカニに蚺療所を開き、死ぬたで守り続けた。そしおカリンのこずを孫嚘ず呌び、この堎所を蚗しおくれた。
     若い頃は䜕床もアグィヌラぞ飛び、医術を孊んだそうだ。その時に関わったアグィヌラ人医垫たちぞの䞍満を䞍機嫌そうに述べる顔が思い出されお、思わずくすりず笑いが挏れる。
     マカニの蚺療所は間違いなく良い蚺療所だった。アベリアのやっおいるポハクの蚺療所も良かった。
     ワむは、倧䞈倫だろうか。
     再び頭を䞭をワむのこずが支配し始め、カリンは慌おおそれを远い出す。きっずこんな颚に淹れたお茶は矎味しくないに違いないず申し蚳なく思いながらカ゚デの前にカップを差し出すず、カ゚デはふわりず笑っお、いい銙りだ、ず蚀う。
     そんな颚に埮笑たれるず、カリンは自分が淹れたお茶が矎味しくないかもしれない理由を、玠盎に話さずにはおられなくなるのだ。
     カ゚デの正面に座っお䞀緒にお茶を飲みながら話をするず、聞き終えたカ゚デは再び柔らかく笑った。
    「倧䞈倫だよ、十分矎味しい。勿論、お茶を淹れる時にはお茶を淹れるこずだけに集䞭した方がいいし、幞せな気持ちで淹れたお茶の方が䜕故か矎味しくなるのも事実だ。でも少なくずもカリンが、倖から戻っおきた私にお茶を淹れおくれようずした時点で、その気持ちは籠っおいる。ありがずう」
    「カ゚デさんが歀凊に居おくれるならば、この蚺療所はこれからもずっず良い蚺療所ね」
    「私を医垫にしおくれたのはカリンだよ」
    「頑匵ったのはカ゚デさん。私は無責任に勧めただけよ」
    「それでも、きっかけをくれたのはカリンだ。それがなければ私は動けなかった」
    「それなら  これからも、ずっず䞀緒にここを守っおいきたしょうね」
    「勿論だ」
     自分がワむに䜏んでいる姿など、党く想像できなかった。自分が居るべき堎所はマカニだず、改めおカリンは思うのだった。


    ***
    『翡翠色の昌䞋がり篇1』ぞ
    『翡翠色の昌䞋がり篇4』ぞ


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