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ゼブラの筆ペンと私


    漫画を描きはじめて、特技を身につけたいと思い、ツヤベタを極めることにした。
    艶やかな黒髪になるように筆で塗る作業だ。
    特技があれば、アシスタントになれるかもしれないという淡い期待もあった。

    検討し、選んだのはゼブラの筆ペン(FDS-5B1)。
    決め手は筆のコシの強さ。意図した線が素早く描ける。
    ただ、穂先がまとまりにくく、スッと線を抜くためには練習が必要だった。

    このペンで練習するうちにツヤベタの楽しさを知った。
    線の流れが揃うと、サラサラの髪に見えて感激した。
    感覚を忘れないように毎日描いていた。


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    出版社に持ち込んだ原稿は、ツヤベタを高く評価され、アシスタントの声がかかった。
    アシスタントへの道はこの筆ペンのおかげで、ついに切り拓くことができたのだ。

    その後、漫画作業のデジタル化の波に乗り、清書以降の作業はパソコンで行うようになる。
    毎日使っていた筆ペンも、引き出しで留守番する日が多くなった。

    数年して再びペンでツヤベタをしようと思い、売り場に向かった。
    しかし、何度見てもゼブラの筆ペンがない。
    インターネットで調べてみる。
    ……ない。
    公式サイトの一覧に載ってない。

    ああ、廃番‼

    最後に見かけたのは、近所の本屋。予備を買うべきか? いや、また今度でいいか。また、今度…、今度……。

    今度などなかった。
    後悔した。
    効率とラクさを採ったがゆえに、培った技術とそれを支える道具が消えたのだ。
    ブランクを隔てて描いたツヤベタは納得のいく出来ではなかった。

    打ちひしがれていると、
    「ファンレターをメーカーに送るなり、その筆ペンの良さを発信すればよかったんじゃない?」
    と、アドバイスをもらった。ハッとした。
    作り手には、ツヤベタに最適という声が届いてないかもしれない。
    まだ、この筆に出会ったことがない人がいるかもしれない。

    作り続けてほしい文具たちはまだまだある。
    これからは「良いものは良い」と作っている人たちにも、周囲にも、広く発信していこうと思う。


     
     
    編集デザイナー。チラシ、ポスターデザインなど承ります。 Webマガジン「MIZUTAMA」編集部の一人。 MIZUTAMAホームページできました。 https://mizutama.press

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