
『アンマスク・ヒーロー』|第20話
第20話|初日
全国新人選抜合宿。
初日。
講堂。
タクミは少し緊張していた。
(今日は何をやるんだろう)
(模擬戦?)
(実戦訓練?)
(ついに完全マスクか!)
教官長がマイクを持つ。
「それでは初日の講義を始める」
スクリーンに映し出された文字。
【完全マスク適応テキスト 完全攻略本】
タクミは首をかしげた。
「……攻略本?」
「ゲームみたいですね」
隣の参加者も頷く。
「裏技とか載ってるんですかね」
教官長は真顔だった。
「本日より三日間」
「この攻略本を学んでもらう」
会場が静まり返る。
「……三日?」
タクミは思わずシンを見る。
シンは窓の外をぼーっと眺めていた。
視線に気付く。
「なんだ」
「シンさん、この講義……」
「三日続くらしいですよ」
シンは缶コーヒーを一口飲む。
「そうだぞ」
「地獄だ」
「そんな軽く言わないでください!」
講義が始まった。
ページをめくる音だけが教室に響く。
パラッ。
パラッ。
パラッ。
最初だけは。
全員、やる気に満ちていた。
一時間後。
「休憩」
一斉に立ち上がる。
背伸び。
深呼吸。
コーヒー。
水分補給。
「意外と平気ですね」
タクミが笑う。
シンはボソッと言った。
「午前中はな」
昼休み終了。
午後。
教官長が静かに言う。
「午後の部を始める」
その瞬間だった。
教室の空気が変わる。
パラ……
パラ……
ページをめくる音が遅くなる。
一人。
コクリ。
二人目。
コクリ。
三人目。
ガクッ。
タクミは目を丸くした。
「戦死者が……」
前列。
一名、完全沈黙。
後列。
一名、白目。
さらに一名。
シャープペンを握ったまま停止。
教官長が淡々と言う。
「起きろ」
ピクッ。
全員、生き返る。
また数分後。
ガクッ。
戦死。
「すごい……」
「次々倒れていく……」
タクミは水を飲む。
生き残るために。
シンを見る。
寝ていた。
「シンさん!」
「ん?」
「寝てましたよね!」
「講師だから」
「聞かなくても知ってる」
「そういう問題じゃない!」
教官長がため息をつく。
「シン」
「なんです?」
「お前も起きろ」
「起きてます」
「目を開けて寝るな」
「特技です」
会場が笑う。
タクミは思った。
(怪人と戦うより……)
(眠気と戦う方が強敵かもしれない。)
(第21話へ続く)