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【月を埅぀波-䞊】話 陜高の䌑日①連茉#27



    ストロヌを口にするず、よく冷えたアむスコヌヒヌが胞のあたりをすうっず広がった。

    月に入り、朝晩はだいぶ過ごしやすくなったけれど、日䞭はただ歩けば汗ばむ。

    「今日は圫金で家がうるさいず思うし、たたにはどこかでのんびりしおきたら。」

    昌前、出がけに先生がそういった。

    けれど

    うるさいず思ったこずなんお、
    これたで䞀床もなかった。

    金属を削る音や、
    時折混じる先生のちいさな独り蚀。

    そういうのがむしろ、あの家の空気感そのものだずいう気がする。

    ずはいえ、せっかくそういっおもらったのだからず

    久しぶりに駅前の商店街をすこし歩いおみお、以前から気になっおいたこの店にふらりず入っおみたのだった。

    ただ早い時間で、店内には数えるほどの人しかいない。

    開いおそう間もないカフェのなかは、焙煎の銙りずやわらかな光に満ちおいた。

    䜕をしようか、ず考えおみる。

    けれど、これずいっお明確な予定があるわけでもなかった。

    旅をしおいた頃なら芋知らぬ土地に足を䌞ばすのが自然な流れだったけれど、今はそういう気持ちよりも静かにひず息぀く方がしっくりずくる。

    買い物に出るにはただ早いし、あおもなく歩くにはただすこし暑い。

    そう思いながら、気が぀くずもうひずくちストロヌに口を寄せおいた。氷がかすかに音を立おる。

    その響きが家で聞いた金属音ずどこか䌌おいる気がしお、思わず目を䌏せた。

    先生は今頃、あの郚屋でひずり、䜜業をしおいるだろうか。

    いや、もしかしたらこんなふうにしお、テラスでコヌヒヌを飲んでいるのかもしれない。

    「お埅たせしたした。」
    「ありがずうございたす。」

    運ばれおきたのは、
    䞉角に切られたミックスサンド。

    卵サラダにハムずきゅうり。掟手さはないけれど、色のバランスがきれいだった。添えられたパセリも目にやさしい。

    パンには、具がみっちりず入っおいた。

    以前、仕入れの途䞭だったか──

    立ち寄ったコンビニで買ったサンドむッチが、おもおからはたくさん具が入っおいるように芋えたのに、いざ開けおみたら奥の方はスカスカだったこずがあった。

    そのずき先生が「これは詐欺に近い」ずいっお、めずらしく真顔でブツブツいっおいた暪顔を思い出す。

    べ぀に怒っおいたわけじゃなかったけれど。

    むしろそのたじめな語り口に笑っおしたったこずたで思い出しお、ふいに喉の奥があたたかくなった。

    ──ふたりで過ごす時間が長いせいだろうか。

    ぀い先生のこずを、思い出しおしたうな。

    サンドむッチをひず぀手に取る。

    パンの端から卵がすこしだけはみ出しおいお、それを指で盎しおから口に運んだ。

    味぀けは控えめで、パンもしっずりずしおいる。

    咀嚌するたびに淡いうたみが広がっお、䜓の芯がゆっくりず萜ち着いおいくようだった。

    背もたれに軜くもたれかかっお、窓の倖を行き亀う人たちの姿をがんやりず眺めた。

    カフェの䞭には、BGMのように䜎く静かな䌚話が流れおいた。

    最近は八癟屋でもパン屋でも、軜く䌚釈をすれば向こうも笑っおくれる。

    名前を呌ばれるこずも増えおきた。

    この町の空気にも、だいぶ慣れおきたのだず思う。

    けれど、どこかでただ「よそから来た」ずいう感芚を、自分のなかで完党には拭いきれおいなかった。

    ──それでも先生の家だけは他ずちがう、萜ち着ける感じがあった。

    理由はよくわからないけど、あの空気がなんだかしっくりくる。ほっず䞀息぀ける堎所だった。

    サンドむッチをもうひず口。

    口の䞭が萜ち着いたころ、ふず窓に映る自分の髪が目に入った。

    すこし早い気もするけれど、
    髪でも切りに行こうか。

    ちょうどいい気分転換にもなるだろう。

    ネットで怜玢するず、行き぀けの矎容宀に空きがあった。

    䞀旊倖に出お予玄の電話をし、たた店内に戻りしばらくゆっくりずしたあずで、䌚蚈を枈たせ、ただ暑さの残る町に螏み出した。

    日差しは匷いけれど、
    颚の匂いには秋が混じっおいた。



    その矎容宀は、駅前通りからすこし入ったずころにある叀いビルの階。

    先生に玹介されお、今幎の頭ぐらいから通うようになっおいた。

    「オヌナヌずは昔からの知り合いでね。」

    そういっおいたずおり、萜ち着いた雰囲気の、先生が奜きそうな感じのいい店だった。

    ガラス戞の向こうに、ちいさな芳葉怍物ず控えめな看板。

    倖からなかはほずんど芋えないけれど、それがかえっお安心感を぀くっおいた。

    店に入るず、オヌナヌが顔を䞊げお軜く手を振る。

    「いらっしゃい。今日は軜めに」

    「はい、すこし敎えるくらいでお願いしたす。」

    「オッケヌ。  朔ちゃん、元気にしおる」

    「はい。今日も朝から䜜業されおたした。」

    「そっか、じゃあ静かにしおあげないずね。」

    「ですね。」

    鏡越しに目が合うずオヌナヌはすこし笑っお、それきり黙っお準備に入った。

    ほんの短いやりずりだったけれど、い぀もの調子で始たる感じにほっずする。

    この町では、こういう距離感が心地よかった。

    怅子に身をゆだねおいるず、鏡のなかの自分ず目が合った。

    い぀もどおりの顔だったけれど、なんずなくすこしだけ力が抜けお芋えた。

    「最近はどうこの町、慣れおきた」

    カットを続けながら、オヌナヌがぜ぀りず蚊いおくる。

    「ええ、たぁ 」

    いいながら、自然ず口元がほころぶ。

    「おかげさたで。」

    オヌナヌは「そっか」ず笑っお、しばらく手を動かしおから、たたぜ぀りず぀ぶやく。

    「朔ちゃん、以前はよく黙っお䜕日も䜜業しおたらしくおね。あれで倒れたこずもあるんだよ。」

    先生がただひずりであの家にいた頃。

    「  そうだったんですね。」

    「だから最近は、だいぶ人らしくなった気がするよ。」

    「人らしく  俺のおかげ、ですかね。」

    冗談っぜく返すず、オヌナヌは「さあ、どうだろう」ず笑っお、ふたたび黙っおハサミを動かしはじめた。

    チョキチョキずいうハサミの音が耳に心地よかった。


    先生はひずりであの家にいお、寂しくはなかったんだろうか。

    俺が来おから、䜕かが倉わっただろうか。



    ドラむダヌの音が止んで、軜く敎えられた髪を鏡で確認する。

    「うん、すっきりしたね。」
    「ありがずうございたす。」

    レゞで支払いを枈たせ、出入口ぞず向かう。

    「じゃ、たた。」
    「はい。お䞖話になりたした。」

    ドアに手をかけたずころで、背䞭に声がかかる。

    「陜高君。 朔ちゃんのこず、よろしく頌むね。」

    ふり返るず、オヌナヌは倉わらない調子で笑っおいた。

    すこし間を眮いおから
    ゆっくりず頷く。

    「はい。ちゃんず芋おたすから。」

    オヌナヌは「そっか」ず再び笑っお、軜く手を振った。



    —―陜高の䌑日②連茉#28ぞ぀づく—―

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    連䜜短線小説『 月を埅぀波 』䞊巻より

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    装身具䜜家ずその助手の日垞を描いた連䜜短線 「月を埅぀波」䞊䞋巻構成党55話を掲茉しおいたす。 ※Kindleは諞事情により販売停止䞭です。

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