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兄ず゚ンタメず私〜私の幞せ構成の䞀郚〜

    私には、歳幎䞊の兄がいる。お絵描きず鉄棒をこよなく愛する゜ロ掻動掟の私ずは察照的に、運動神経が良く瀟亀家でもある兄は、その掻動範囲がほずんどかぶらなかった。それに加えお、生たれた時から兄は自分の郚屋があり、ご飯を食べる時間以倖は自宀に行っおしたうので、姿を芋る時間も少なかった。だから私は、い぀の間にか、私の人生に関係ない人、ず思うようになっおいた。

    ずはいえ、党く接しおいなかったわけではない。倧人になった今振り返るず、かなり可愛がっおもらったようだ。実際赀ちゃんの頃抱っこされおいる写真もあるし、兄の埌を远いかけたわし、お猿のポヌズを真䌌したりしお、呚囲を笑わせた逞話も芪から聞いおいる。けれど、子ども目線で蚀えば、わかりやすく恩恵を授けおくれたわけではない。芪のように庇護し逊っおくれおいるわけでもなく、私の性栌的にも助けを求めたこずもなく、本圓に『いおもいなくおもいい存圚』だった。奜きでも嫌いでもない。いおも邪魔にならないが、いなくおも困らない、そういう存圚だったのである。
    だからだろう、私が䞭孊幎に䞊がる時、兄は就職しお䞊京したのだが、その時も寂しいずいう感情はなかった。やっず念願の個宀がもらえる、むしろそれだけだった。私はよく䞀人っ子ず間違われた。それくらい、兄匟関係が垌薄だったのだ。

    けれど、倧人になっお、幎に䞀床くらいの間隔で、無性に兄に䌚いたくなる。それはどういう時か。自分の奜きなドラマやバラ゚ティ番組に぀いお、マニアックに話がしたい時である。私にずっお、ドラマずは、ただ面癜かったず感動するためだけにあるのではなく、あの脚本家ずあのヒロむンの盞性は最高だ、だの、その前振りずしおあの番組があったからどうだ、だの、原䜜のここずドラマのここは違ったけどそれがよかっただの、し぀こく现かい面癜がり方をしたいのである。バラ゚ティ番組然り、叞䌚をやっおるお笑いのあの人がどうだだの、その人が舞台をやっおる時の面癜さは違うだの、このネタを考えおるのがこっちの人なんだよね実は、だの、もう本圓にし぀こく楜しみたい。そしおそんな気持ちを䞀人で抱えおいるず、ちょっず぀たらない。面癜いこずは分かち合えるず倍も倍も楜しいのである。しかし、私の『面癜い』に付き合っおくれる人は、そうそういない。そんな時、

    「お兄ちゃんだったら、ずはいかなくおも、結構し぀こく話せるんだけどなぁ」

    ず思う私がいる。なぜそう思うんだろうか。倚分気が぀かないうちに、テレビの話や芞胜の話をしおいたに違いない。その時のしっくり感を、きっず䜓が芚えおいるのだろう。そしお運よく䌚う機䌚があっお、その時奜きなテレビの話をするず、やっぱり楜しいのだ。私の゚ンタメ倧奜き魂を支えおいるのは兄なのだずいうこずに、段々気づいおきた今日この頃なのである。

    兄ず音楜ず私

    思えば初めお「誰それのファンになった」ずいうきっかけは、兄が持っおきた。それは誕生日が近かったある日、

    「぀うはこれが絶察奜きだず思う」

    ず小遣いで買っおきおくれたであろうシングルレコヌドをもらった時だった。昭和の小孊校では英語は習わないずいうのに、なんずABBAの『ダンシング・クむヌン』、そしおダメ抌しの2枚目は『サマヌ・ナむト・シティ』。その時私は小孊幎生の歳、兄は高校に入ったばかりの歳。ここは聖子ちゃんか明菜ちゃん、頑匵っおもYMOっおずころだろうっお幎代に、たさかのディスコティヌクだ。

    「なにこれ。」

    ず半ば吐き捚おるように぀ぶやいた。それでもプレれントを無碍にするこずはできず、枋々受け取った。しかしうっかり聞いおしたった私は、それから毎日

    「さたないしおぃヌ🎵」

    ず歌っお過ごすこずになるのである。

    ちょうどその頃、クラスメむトに「このオヌディション、䞀緒に受けよう」ず毎週やっおるロヌカルな歌番組のオヌディションに誘われる。人の小・䞭孊生が歌っお、䞀人チャンピオンが決たるずいう分番組。そしおこれが私のABBA奜きに拍車をかける。運よくチャンピオンになるこずができた私は、副賞のレコヌド刞を党おABBAのLPレコヌドに぀ぎ蟌み枚ゲットするこずによっお、ほが党おのABBAの曲を聞くこずができるようになったからだ。

    「ざうぃなおいかろヌ♪」

    「たねたねたねヌ♪」

    ず、数々の名曲を、英語がわからないたたノリノリで歌い螊っおいた。同じく歌が奜きな母は、お茶の間をABBAで占領しおいたこずに文句も蚀わず、やりたいようにやらせおくれた。文郚省唱歌ずザ・ベストテンしか知らなかった私の䞖界を、文字通り䞖界に広げおくれた出䌚いであり、その出䌚いを持っおきたのが他ならぬこの兄だったのだ。

    そしお私が受けたのは、ABBAのように盎接的な圱響だけではなかった。兄が隣の郚屋で音楜や映画を楜しんでいるずいう環境は、間接的にも私に響いおいた。朚造のK借家ずいう間取りが気密性を持たなかったのも功を奏したかもしれない。ずにかく個宀でありながら出入り自由で音がダダ挏れずいう状態は、知らず知らずのうちに兄の文化を共有するこずに繋がっおいたのである。

    その代衚的な存圚が、薬垫䞞ひろ子だ。兄はひろ子ちゃんの倧ファンで、郚屋に入るず正面に等身倧の「探偵物語」、寝っ転がるず倩井にセヌラヌ服のひろ子ちゃんが機関銃かたえおる。壁が芋えないくらいひろ子ちゃんがいる。
    しかし私は、そのビゞュアルに圱響を受けたわけではない。郚屋に、ひろ子ちゃんのアルバム「叀今集」がポンず眮いおあったのだ。それをうっかり聞いおしたったのが運の尜きだった。私は䜕床も䜕床も聞いお、歌詞カヌドを芋ながら歌っおいた。曲ほど収録されおいる䞭に、あきらかに奜きな歌が䜕曲かある。

    倧貫劙子。
    竹内たりや。

    この時は、どうしおこの曲が奜きなのかずいうこずもわからないたたに、ただひろ子ちゃんの真䌌をしお気持ちよく歌っおいただけである。そしお埌々気づく。私の心にシティポップのタネを蒔いおくれおいたのがこのアルバム「叀今集」だったず。

    兄ずマンガず私

    私はマンガが奜きだ。
    この分野に関しおの盎接の䌝道者は、少女挫画が倧奜きな母であった。ちょっずお高く止たっおいた子䟛であった私は、「本を読むからマンガはけっこうよ」ずいうスタンスだったのだが、小孊幎生の倏䌑みに匕っ越し、人も街も知らない䞭、匕きこもるしかない状況で、

    「暇でしょ」

    ず枡された別冊マヌガレットの誘惑に抗えなかった。幎前埌の別冊マヌガレットの連茉陣は、これたた私にずっお魅力的な逞品揃いで、そういう意味でも挫画にハマらざるを埗なかった。次の発売日たでのヶ月間、䜕床も䜕床も繰り返し読んではうっずりしおいたのである。
    そしお次の幎の月には、別冊少女コミックの母の定期賌読が始たる。近所の仲良しさんが「なかよし」「りがん」の賌読者で、貞し借りしおいたおかげで、私の挫画の䞖界はさらに広がった。
    そしおうちの家族は本が倧奜きだ。寝る前に垃団の䞭で20分ほど本を読んでから寝るのが習慣で、そのための本を月に回ほどたずめ買いに行く。父は冒険小説系、母は恋愛小説系、そしお私に挫画の単行本を䞀冊買っおくれるのだ。その䞭に、竹宮恵子の「ファラオの墓」があった。私はこれで、゚ゞプトファンになり、竹宮恵子ファンずなる。そしおさらに竹宮恵子ファンの熱量が増したきっかけを䜜ったのが、たさに兄であった。

    わたしはその時、珍しくひどい颚邪を匕いおいた。病院に行ったら気管支炎だねず蚀われ、孊校を䞀週間ほど䌑んだ。初めは垃団から出るのも億劫だったのが、やはり治っおくるず暇になる。で、午前䞭、兄が孊校に行っお空になった兄郚屋に遊びに行く。い぀ものように党おが床に攟り投げられた散らかりたくりの空間に、初めお芋るものがあった。「地球ぞ」雑誌サむズの総集線。

    「あれ竹宮恵子じゃん」

    ずうっかり手に取ったのが運の尜き、䞀気に読んで、時間埌には号泣しおいた。
    翌々日には登校しおいたのだが、それから䞀週間は授業なんか頭に入らなかった。病み䞊がりだからではない。「地球ぞ」あがりだからだ。頭の䞭はストヌリヌずキャラずその切なさでいっぱいで、頭を珟実に割く䜙裕などなく、もう「どうしおなんだ」「どうにかならなかったのか」ず、もう蟛くお蟛くお自分の生掻どころの隒ぎではない。竹宮恵子、すごすぎる。私のお絵描き垳は、ゞョミヌでいっぱいになった。しかも映画になっちゃう。もちろん芋に行く。兄は䞻題歌のレコヌド買っおステレオかけおる。

    「かみほヌ ずぅおえらあ♪」

    ず私も歌いたくるしかない。おかげで私のお奜み二倧路線が、歎史ロマンずSFに固たっおいくのである。

    兄ずアニメず私

    思えば、「さらば宇宙戊艊ダマト」を映画通に連れお行っおくれたのは兄だった。あたりの悲しいラストに号泣しながら垰っおきた私を芋お、兄は母から「あんたたた぀うを泣かせお」ず濡れ衣を着せられおいるのを聞きながら、匁解する䜙裕もなく泣いおいた私。
    「違うんだよ。お兄ちゃんじゃないんだよ、お話が悲しかったんだよ。お兄ちゃんはポテトチップス買っおくれたんだよ」
    ず歳の私に戻れるのならば、お母さんにちゃんず䌝えたい。プロレスごっこでマットレスに毎週投げ飛ばされおいた私は、私ばかり兄に苊劎させられたず思っおいた。しかし、私も兄にしっかり苊劎させおいたのである。

    「機動戊士ガンダム」をテレビで芋ながら、
    「なんでパンチパヌマが䞻圹で、かっこいい方が敵なの」
    ず玍埗いかない私に、
    「そんな単玔な話じゃないんだよ、本圓は」
    ず蚀いながら、原䜜の小説を手枡しおきたのも兄だった。
    兄が芋おいたから自然ず芋おいた「人造人間キャシャヌン」「バビル二䞖」「サむボヌグ」、ふりかえれば私の䞖界を䜜っおきた倧切なパヌツだ。「キュヌティヌハニヌ」に至っおは、正矩の味方でありながら、人間ではないゆえの孀独を歌った゚ンディング曲「倜霧のハニヌ」が、ヒロむンずいう立堎の切なさ、苊しさをストレヌトに教えおくれた。私が本圓に䞀人っ子だったら、知らなかったこず、思いも及ばなかったこずがたくさんあっただろうず思う。兄がいたから知るこずができたのだ。だがそれも、䞭孊䞀幎生たで。静岡ず千葉、離れ離れになった私たちは、その埌は数幎に回、本圓に数えるほどしか䌚わなくなる。

    その埌、兄も結婚しお子䟛が二人、私も結婚しお子䟛が人、お互いいい歳になった。兄は子䟛が生たれたあず静岡に垰っおきた。私も高校卒業埌に䞊京したが、結婚しお垰っおきた。近くに䜏んでいるずはいえ、仕事の郜合でなかなか䌚えない。結局䌚うのは数幎に䞀床。いおもいなくおもいいずは思わなくなっおいたが、いおもいなくおもそんなに圱響がない存圚、ずいうのは倉わらなかった。

    そしお今幎の䞉月、兄の嚘ず私の嚘が音頭を取っお、私の䞡芪が元気なうちに、䞀床集たろうず提案しおくれる。幎前から韓囜に来おいた私ず倫、次女ず長男であったが、䌚える時に䌚っおおこうずその堎でチケットを予玄、䞡芪、兄の家族、私の家族が実家の近所の居酒屋に集合し、倧宎䌚を開いたのだった。

    この頃、私は悩んでいた。自分の人生の方向を定めようず䞃転八倒しおいた。そんな時「俺だけレベルアップな件」ずいうアニメに出䌚う。䞻人公のたっすぐで誠実な人柄も去るこずながら、圌を匷くするシステムの存圚に私は頭を殎られた。そう、どんな人でも最適な関わりで鍛えられおいくなら、どこたでも成長できる、そう思わせおくれたこずで私は救われた。
    日本に向かう道すがら、どんな環境でも聞けるようにず「俺だけレベルアップな件」のオヌプニング曲はスマホにダりンロヌド枈みであった。ただ具䜓的に、䜕をどうしおいこうず思い぀いおいるわけではない。ただ、「俺レベ」が䜜っおくれた熱い思いを倧事にしよう。絶察に私は私の人生を生きられる。そんな思いでLiSAさんの歌を聞きながら静岡ぞ向かう。そしお兄ずは幎ぶりの再䌚になる。

    居酒屋の倧宎䌚の埌は、駅前のカラオケボックスで、倧カラオケ倧䌚である。私も兄ももちろん歌が倧奜きなのだが、子どもたちも、䞡芪もずおも奜きだ。䜕時間でも歌えるメンバヌだから、やめ時を最初に決めおおかないず倜が明ける。時間延長なしで、挔歌唱歌アニ゜ンフォヌク、オヌルゞャンル入り乱れおのマむクの奪い合いず歌わせ合い。時間はあっずいう間だった。
    ここで喋っおおかないず、この埌䜕幎䌚えるかわからないなず思っお兄に話しかける。

    「最近なににハマっおんの」

    「んヌ、おたえ知らないかも知れないんだけどさ」

    わかる、この切り出し。兄も私ず同様、自分の『面癜い』を説明なしにわかっおくれる人に出䌚いにくいくらい、マニアックな楜しみ方をしおいるのであろう。だから兄ず話したいのだ。そう思いながらうんうんず倧きく頷く。

    呚りが歌でうるさいから、喋る声は自然ず倧声になる。

    「『俺だけレベルアップな件』っおアニメがあっおさ。」

    は今、「俺だけレベルアップな件」っお蚀ったか

    「俺、もう回芋おる。」

    これを聞いた時の私の状態を、想像できるであろうか。そもそも私は自分の感動を誰かず分かち合うずいうこずを、半ば諊めおいる人間だ。だから、「俺レベ」が私の人生を倉えたなんお話は、誰にもする぀もりはなかった。だけど、目の前に、明らかに私ず同じアニメを芋お、尋垞じゃないくらい心を動かされた人間がいる。具䜓的にどう動かされたかは聞けなかった。時間もないし、䜙裕もなかった。ただ、この事実が、私の人生党おを肯定しおくれた。しかしそれを䌝える時間もないし、䜙裕もない。やっず私が蚀えたセリフは、

    「ごめんね〜、私ただ週目。」

    だけど、これだけで、ある皋床は䌝わったはず。なんずいっおも私の兄なのだから。

    時間の宎䌚、時間のカラオケ。その䞭で、兄ずした䌚話はたったこれだけだった。だけどそれで十分だった。涙が出おきた。止められなかった。みんな酔っ払っおいたのが救いだった。

    お兄ちゃん、私のお兄ちゃんでいおくれお、ありがずう。

    心の底からそう思った。そんなこず、誰にも蚀わないし、倚分本人にも蚀わない。私の幞せ構成の䞀郚を、兄がしっかり担圓しおくれおいた、それをこの日私が理解した。それが倧事だったし、それで十分だった。

    次は、い぀䌚えるんだろう。幎単䜍で間隔が開くんだろうず思い぀぀、次はなんの話を振ろうかず考える。

    「ドラマの『アンナチュラル』倧奜き。䜕が奜きっお」

    「䜕が奜きっお」

    「ストヌリヌでもキャストでもなく『Lemon』が流れるタむミング。」

    こんな本音を蚀っおも、ちゃんず笑っおくれる気がする。それを考えるだけですでに笑っおしたっおいる私が、今ここにいる。

    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

     
     
    50代、䞀男二女の母。幎から、生たれ倉わっお人生転生コヌチ。私自身幎たでの前䞖はお気楜䞻婊でした。 ぀うさんの曞く恋愛小説はこちら → https://kakuyomu.jp/users/tu_asa

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