
TRUNK #018 マツダの看板の下で、BMWは去り、ポルシェは残った 「東京マツダ」は、マツダ本体ではない
マツダの看板の下で、BMWは去り、ポルシェは残った
「東京マツダ」は、マツダ本体ではない
かつて都内のマツダディーラーには、大手の関東マツダ、メーカー系のマツダオート東京、そして独立系の古参・東京マツダという、3つの系統があった。マツダオート東京は関東マツダに統合され、今、都内でマツダの看板を掲げる勢力は、実質的に関東マツダ(マツダ系列の直系資本)と、東京マツダ(独立した地場資本)の2つに整理されている。
東京マツダは、マツダの正規ディーラーでありながら、マツダ本体の資本が入った系列ではない。地場の自動車販売グループが、マツダというブランドの看板を借りて営業している、という構造だ。(以前この連載で見た、ダイハツ系がベントレーを扱う構造)新潟トヨタや名古屋トヨペットが超高級輸入車に参入するパターンと、根っこは同じ地場資本の姿だ。
かつてはBMWも扱っていた
そして東京マツダグループは、マツダ一本足ではない。長年、BMWディーラーも手掛けていた。ところがこのBMW事業は、「モトーレントーマツ」という子会社ごと、双日に売却されている。双日はこの買収によって、都内でBMW・MINI販売に新規参入した、と報じられている。
一方で、東京マツダグループは今も、株式会社シュテルン浦和(メルセデス・ベンツさいたま浦和、メルセデス・ベンツ浦和美園)と、株式会社TRUSCON AUTO(ポルシェセンター調布)を保有し続けている。つまり同じ「マツダ以外の輸入車事業」の中でも、BMWは手放し、メルセデスとポルシェは残す、という選別が行われたことになる。
なぜBMWだけ手放したのか
正確な理由は公表されていないが、いくつかの見方ができる。
一つは、単純な事業ポートフォリオの整理だ。東京マツダグループは都内に複数のテナントビルを保有しており、不動産事業へ軸足を移す動きもあると見られている。手元に残す事業を絞る中で、BMWよりもメルセデス・ポルシェの方が、収益性や将来性の見立てで優先された可能性がある。
もう一つは、双日側の事情だ。双日はこの数年、BMW・MINIだけでなく、ボルボやマセラティの販売にも相次いで参入しており、輸入車の小売事業そのものを積極的に拡大している。東京マツダにとっては「手放す」判断でも、双日にとっては「買い増す」判断だった、というのが実態に近いのかもしれない。
地場資本は、常に組み替えを続けている
これまで見てきたダイハツ系のベントレー、新潟トヨタ系のフェラーリ、名古屋トヨペット系のポルシェは、どれも「地場資本が新しく高級輸入車に参入する」という、拡大の物語だった。東京マツダのBMW売却は、逆に「一度手にした輸入車事業を、判断のもとで手放す」という、縮小の物語だ。
地場資本の多角化は、一度手を広げたら終わりではない。マツダという本業を軸にしながら、周辺の輸入車事業は、時代や経営判断によって、常に組み替えられ続けている。東京マツダの看板の下で、BMWは去り、メルセデスとポルシェは残った。この選別の基準こそ、地場資本が生き残るための、静かな意思決定の積み重ねなのだと思う。
過去回をテーマ別にまとめたマガジン「TRUNK SPINE」、はじめました。第1弾は「顔」、第2弾は「誰がこの車の後ろにいるのか」――この記事も収録された、ディーラー資本構造をめぐる12本です。
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