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TRUNK #004 BMWが直営を手放した日 「新古車」が街に溢れた年

    BMWが直営を手放した日

    「新古車」が街に溢れた年

    2019年9月、公正取引委員会がBMWジャパン本社に立ち入り検査に入った。理由は「押し込み販売」だ。

    BMWジャパンは、販売計画台数を達成するために、実際の需要を超えてディーラーに新車を自社名義で登録するよう求めていた。ディーラー側は、自社の利益にならないと分かっていても、名義登録した上でその車を中古車として転売するケースもあったという。結果、走行距離ほぼゼロの「新古車」が市場に溢れる異常事態が起きた。当時の登録データでは、メルセデス99台・アウディ6台に対し、BMWだけが849台という突出した数字を記録している。

    断れない理由

    なぜディーラーは断らなかったのか。答えは単純で、多くのディーラーが売上の大部分をBMW車両の販売に依存していたからだ。この経済的依存関係を背景に、ノルマを断れば実質的な取引縮小・契約解除のリスクを負わされる。公正取引委員会が問題視したのは、まさにこの「優越的地位の濫用」だった。2021年3月、BMW側から提出された改善計画(確約計画)が認定され、行政処分という形で決着している。

    直営という選択肢を、なぜ手放したのか

    この事件と時を同じくして、BMWは直営店の縮小を進めている。実はこの流れ自体は2000年代から続いていて、2003年にもヤナセへ複数拠点を譲渡するなど、直営網の見直しは長年にわたって断続的に行われてきた。

    2020年以降の動きはさらにはっきりしている。同年8月、BMW目黒・MINI目黒・MINI世田谷・天王洲サービスセンターの4拠点が、BMW/MINI正規ディーラーの阿部モータース(現ABE MOTORS)へ譲渡された。杉並区浜田山にあったショールームと、笹塚のサービス工場も、その後ALC Motors Group(独立資本)の運営に移っている。独立資本のディーラー網への移管が、この数年でさらに加速した形だ。

    直営を持ち続けることは、裏を返せば「メーカーが小売の現場に直接責任を負う」ということでもある。系列ディーラーへの過度なノルマ要求という形で表面化した今回の問題は、メーカーが小売と近すぎることのリスクを、身をもって示した格好だ。

    それでも手放さなかった2拠点

    ただし、BMWがすべての直営を手放したわけではない。お台場の「BMW Tokyo Bay」と、青山の「BMW青山スクエア」は、今も「ビー・エム・ダブリュー東京株式会社」というインポーター直系資本のまま残されている。中古車拠点(BMW Premium Selection)や、サービス工場(お台場・勝どき・木場)も、同じくこの直営体制の中に含まれている。

    お台場は約2万7000平方メートルという広大な敷地に、ドライビングエリアや300人以上収容できる国際会議ホールまで備えた施設だ。これはもはや「儲かる小売店舗」というより、「メーカーが直接コントロールしたいブランド体験の拠点」としての性格が強い。

    つまりBMWは、量販機能は独立資本のディーラーに委ねながら、ブランドの旗艦だけは直営で残す、というハイブリッドな形に落ち着いている。「小売から完全撤退」ではなく、「どこを手放し、どこを握り続けるか」を選び直した、という方が実態に近い。

    この先に見えるもの

    直営を広げ続けるVWグループと、直営を絞り込んだBMW。(VWグループがなぜ逆方向に舵を切ったのかは、前回の記事で詳しく書いている)同じ「メーカーが小売にどう向き合うか」という問いに対して、この2社はまったく逆の答えを出している。どちらが正解というより、それぞれの資本構造・企業文化・過去の失敗経験が、今の形を作っている、ということなのだと思う。

    過去回をテーマ別にまとめたマガジン「TRUNK SPINE」、はじめました。第1弾は「顔」、第2弾は「誰がこの車の後ろにいるのか」――この記事も収録された、ディーラー資本構造をめぐる12本です。

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    「駆けぬける歓び」を極めたブランドの軌跡そのものを、もう少し深く知りたい方に。

    BMW物語―「駆けぬける歓び」を極めたドライビング・カンパニーの軌跡(デイビッド・キーリー 著)

    ※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。


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    TRUNKです。車の"裏側"が好き。資本構造に気づくと調べてしまう性分です。 Car capital structures fascinate me. Started this with AI. For car lovers, a bit of fun reading.

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