里芋って、どの芋を食べている? 親芋・子芋・孫芋の話
スーパーの野菜売り場に並ぶ里芋。
袋の中には、ころんと丸い芋がいくつも入っています。どれも同じ「里芋」に見えます。
けれど、土の中にいたころの姿は少し違います。
大きな親芋のまわりに子芋がつき、その子芋から、さらに孫芋が育っています。
親芋、子芋、孫芋。
私たちが普段食べているのは、このうちどの芋なのでしょう。
いつも何気なく皮をむいている一個の里芋。それが親なのか、子なのか、それとも孫なのか。
里芋は「根」ではなく、茎が大きくなったもの
里芋も、さつまいもも、名前には同じ「いも」がつきます。
土の中から掘り出すので、どちらも根のように見えます。
でも、さつまいもは根が太った「塊根(かいこん)」、里芋は地下の茎が太った「球茎(きゅうけい)」です。
同じ「いも」でも、さつまいもでは根を、里芋では茎を食べています。
そして、この地下の茎が「親」「子」「孫」へとつながっていきます。
一個の種芋から、親・子・孫へ
始まりは、春に植える一個の種芋です。
芽が伸び、地上では大きな葉を広げます。その地下で新しく育っていくのが親芋です。
親芋が大きくなると、そのまわりに子芋がつきます。さらに子芋から孫芋が育ちます。
収穫するときには、親芋を中心に大小の芋がまとまった一株になっています。
私たちが売り場で見るのは、そこから一個ずつ離れたあとの姿です。
袋の中では同じように見える里芋も、土の中にいたころは、それぞれ親・子・孫としてつながっていました。

スーパーで買っているのは、親? 子? 孫?
普段「里芋」としてよく目にする「土垂(どだれ)」は、子芋を利用する品種です。
里芋には、子芋を利用するもの、親芋を利用するもの、親芋と子芋の両方を利用するものがあります。
たとえば「女早生(おんなわせ)」は、子芋と孫芋を食用にする品種。一方、「媛かぐや」は、大きく育った親芋と子芋を食べます。
さらに「八つ頭」のように、親芋と子芋が分かれず、ひとつの塊のように育つものもあります。
売り場では、どれも「里芋」。
でも、その一個が親なのか、子なのか、孫なのかは、品種によって違います。
いつもの里芋が、少し違って見えてきませんか。
あのぬめり、取る? 残す?
里芋の皮をむくと、手や包丁につく独特のぬめり。
煮物をつくるなら、きれいに取ったほうがいいのでしょうか。
煮汁をすっきり仕上げたい料理では、塩でもんだり下ゆでしたりして、ぬめりを落とす方法があります。
一方、ぬめりを残して仕上げる料理もあります。
福井県の郷土料理「里芋のころ煮」は、下ゆでをせず、そのまま調味料で煮るのが特徴です。下ゆでをしないことで、とろみのある仕上がりになります。
ぬめりは、必ず取るものではありません。
取るか、残すか。つくる料理によって、扱い方も変わります。
手がかゆくなるのは、ぬめりのせい?
里芋の皮をむいていると、手がむずむず、チクチクすることがあります。
ぬるぬるしているだけに、ぬめりが原因のようにも感じます。
かゆみに関係しているのは「シュウ酸カルシウム」です。
里芋には、目では見えないほど小さな針状の結晶が含まれています。この結晶が皮膚を刺激すると、かゆみや痛みを感じることがあります。
食べたときに舌や喉で感じる、チクチクとしたえぐみにも関係しています。
農林水産省では、皮をむいた里芋に塩を振ってもみ、ゆでこぼす下処理を紹介しています。
皮をむいたときの「ぬるぬる」と「チクチク」。
同じ里芋から感じるものですが、理由は別にあります。
何分煮ても硬い。その理由は土の中にあった
同じ鍋で煮た里芋なのに、ひとつだけガリガリと硬い。
「もう少し煮れば」と火にかけても、なかなかやわらかくならない。そんな一個に当たることがあります。
その原因のひとつが「水晶症」です。
農林水産省によると、里芋が大きくなる過程で、子芋のデンプンが孫芋へ移り、デンプンが少なくなった子芋がガリガリとした食感になることがあります。
子から、孫へ。
土の中で起きていたデンプンの移動が、食卓にのぼってから「この一個だけ硬い」という違いになって現れることがあります。
「同じように煮たのに、なぜこの一個だけ硬い?」
その答えは、鍋の中ではなく、土の中にありました。
親・子・孫の話が、ここで食卓につながります。
売り場では、里芋のどこを見る?
泥がついた里芋は、どれも同じように見えます。
選ぶときは、まず手に持ってみます。ふっくらとして、大きさのわりにずっしりと重みを感じるものがひとつの目安です。
次に見たいのが、皮にある横向きの縞模様。くっきりとして、そろっているものは、生育が良好な里芋とされています。
傷やひび割れが目立たないかも見ておきます。
そして、もうひとつ見ておきたいのが「おしり」です。
先端がやわらかくなった里芋は、鮮度が落ちて中がスカスカになっていることがあります。持ったときに軽かったり、おしりがやわらかくなっていたりするものは避けるのが無難です。
形を見る。
持って重さを感じる。
縞を見る。
傷を見る。
最後に、おしりを見る。
いつも何気なく手に取っていた里芋にも、見るところはいくつもあります。
ただ、ここまで見ても分からないことがあります。
先ほどの「水晶症」のように、外からは判断しにくいものもあるからです。
次に里芋を手に取ったら
スーパーの売り場では、一個ずつ離れて並んでいる里芋。
けれど、土の中では親芋のまわりに子芋がつき、その先に孫芋が育っていました。
品種によって、食べるのが親芋だったり、子芋や孫芋だったり。
そして、ときには子芋から孫芋へデンプンが移り、それが煮たときの食感にまでつながることがあります。
売り場では見えない、土の中の親・子・孫。
次に里芋を手に取ったとき、少しだけ思い出してみてください。
その一個は、親でしょうか。子でしょうか。それとも孫でしょうか。
参考資料
・農研機構「子・孫いも用サトイモ新品種『愛媛農試V2号』」
親芋・子芋・孫芋、子・孫芋を食用とする品種について
・農研機構「交雑で育成したサトイモ新品種『媛かぐや』」
親芋と子芋を食べる品種について
・農林水産省「サトイモを下茹でしてもかたかったが、どうしてですか。」
水晶症と、子芋・孫芋のデンプンの移動について
・農林水産省「サトイモの煮物を食べたらえぐ味を感じたが、どうしてですか。」シュウ酸カルシウムの針状結晶、えぐみやかゆみについて
・農林水産省「里芋のころ煮 福井県」里芋のぬめりを生かした調理について
・ウェザーニュース「縞模様がポイント!? 美味しい里芋の選び方」
形、重さ、縞模様、おしりなど、売り場での選び方について
・小林青果株式会社「おいしい里芋の見分け方」
青果店による里芋の選び方について
