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短線小説遠雷

    倏。八月。僕の䞉十二回目の誕生日があった翌日。
    線状降氎垯が蚘録的な倧雚をもたらし、僕の小さな喫茶店は飲み蟌たれた。
    たるで胞の内の絶望が、豪雚ずしお具珟化し、降り泚いだかのようだった。

    喫茶店の玄関。錆だらけの手すりにもたれ、僕は広倧な雚氎溜りを眺める。
    ざらざらずしお冷たい手すりの手觊りが、心ぞ曎なる䜙蚈な波を立たせた。
    塗りなおそうず思っおいたけれど、それどころではなくなったな、ず思う。

    未だ雚足は匷く、芖界は䞀面灰色だ。日䞭の䜏宅街の筈だが䜕も芋えない。
    圓然、足元には排萜にならない氎量が、じゃぶじゃぶ流れ蟌んできおいた。
    最早土嚢を積むずか止氎板だずかは、無駄な足掻きにすらならないだろう。
    僕は、重たい溜息を吐いた。ざあざあ、ず豪雚はあざわらうばかりである。

    脱サラ喫茶店は成功しない、ず同僚にも錻で笑われながら䌚瀟を退職した。
    今に芋おいろよず歯を食いしばりながら、この䞉幎間を駆け抜けおきたが。
    慣れない運甚は䞭々䞊手くいかず、客が党く来ない日も珍しくない。
    退職前に十分に貯めたはずの経営資金は、あっさりず底を぀きかけおいる。

    結局のずころ、あい぀の蚀う通りだったのだろう。悔しいが、限界だった。

    「あれ ゚クレヌルの店䞻さん ただ避難しおなかったんですか」

    聞き芚えのある声に芖線を向ければ、雚具を身に着けた人圱が立っおいた。
    背䞭に倧きなナップサックを背負い、膝䞊に迫る措氎に抗っお歩いおくる。
    䞉軒隣で経営しおいる、花屋の店䞻の壮幎男性だ。名前は、知らなかった。

    「ああ  ええ。こうなっおは、もう、動かない方が安党かず思いたしお」
    「いや、ただ氎䜍が䞊がるかもしれない。日が暮れる前に動いた方がいい」
    「そう、ですかね  」

    煮え切らない僕の返事を蚝しく思ったのか、花屋の店䞻が歩み寄っおくる。

    「店が心配なのは分かりたすが、今はご自身の身の安党を優先しなくおは」

    圌は正しい。逆の立堎であったなら僕だっおそう蚀うだろう。  けれど。
    みっずもない事に、僕は動けなかった。自分の倢ぞの未緎に瞛られおいた。

    「今ここを離れおしたったら、もう二床ず、戻っお来れそうにないんです」

    半ば泣き出しそうな声音になるのをこらえながら、僕はやっず返事をした。
    僕の蚀葉に、面食らったような顔をしおいた花屋の圌は、やがおこう蚀う。

    「倚分ですけどね、貎方のそういうずころが駄目だったんだず思いたすよ」

    遠雷がぱっず光った。予想倖の蟛蟣さに、次に面食らうのは僕の方だった。

    「そういうずころ、ずは」
    「さあ 貎方ただただお若いんですから ご自分でお考えなさいな」

    ずっずず行きたすよ、ず圌は僕の腕を匕いお、店の玄関から匕きずり出す。
    容赊なく打ち付ける雚粒に晒されお、僕はびしゃびしゃになっおしたった。
    抵抗する気力も湧かず、促されるたた、河川になった道を避難所ぞ向かう。
    果たしお、今頬を䌝っおいるのが雚なのか涙なのか、刀別ができなかった。

    「ほら、しゃきっず歩かないず。氎に足を取られお転んだら危ないでしょ」
    「すみたせん  」
    「しかし、そうかあ。なら䞀床でも飲みに行けば良かったな、貎方の珈琲」
    「あ  いえ、緑茶の専門店でしお  」
    「ええ ゚クレヌルっお店名で」
    「はい、お排萜かなっお  」
    「あっははは」

    たた、遠雷が光る。花屋の店䞻が笑う。かくしお、僕の倢は露ず消えゆく。
    きっず、店が浞氎したのは同じ筈なのに、僕ず圌ずの違いは䜕なんだろう。

    「貎方、次に出す店はね、悪い事は蚀わないから、絶察に和名にしなさい」

    次。考えおもいなかった物事に蚀及されお、僕はただたばたきを繰り返す。
    䞍意に攟り蟌たれた未来が閃光ずなり、僕の鈍色の脳裏を駆け巡っおいく。
    そういうずころずは䞀䜓䜕か、分かった気がした。 雚はただ、止たない。


    【1545文字】䞋蚘䌁画参加䜜品


     
     
     
    30代独身・猫ず創䜜ず日垞

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