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母の引っ越しは、終わらない①

数年前、母の引っ越しを経験して、あれはもう引っ越しというより、
家族総出の発掘作業だったな、と思う。

母は、父が亡くなって一人になったタイミングで小さなアパートに引っ越した。

今回は、そのアパートを出て、少し広めの団地へ移ることになった。

10年以上暮らした部屋。

しかも、もともと5人家族だった頃の荷物をかなり持ち込んでいたので、
物が多いのは最初からわかっていた。

…いや、わかっていたつもりだった。

ーー引っ越し2週間前ーー。

母の家に集合した姉と弟と私。
まずは、ほぼ「開かずの間」になっていた押入れに手をつけた。

そしたら、出るわ出るわ。

どうやってこの中に収まっていたのか不思議なくらい、荷物が止まらない。

着物入りの桐ダンス。
様々な大きさの衣装ケース。
布団。座布団。
昔のストーブ。
紙袋に入った紙袋。
頂いたのか、買ったのかわからない
箱にはいったままのたくさんの食器類。
謎の鍋。

「これ高かったのよ」

「まだ使えるから」

「誰か使うかもしれないし」

母は、とにかく捨てたがらない。

いや、気持ちはわかる。

しかし、引っ越し先は今より広いとはいえ、全部は絶対入らない。

というか、今まで押入れで10年以上眠っていたものを、急に“愛用品”みたいな顔で守り始めるの、なぜなんだ。

私は内心かなりイラついていた。

姉弟3人、汗だくで荷物を運びながら、

「これは捨てよう」
「いや取っとく」
「無理だって!」

その会話を何回したかわからない。

母は母で、たぶん必死だったんだと思う。

物を捨てるというより、「今までの暮らし」を捨てる感じだったのかもしれない。

でもこちらは現実担当なので、感傷に付き合っている余裕がない。

だって、あと2週間しかないんだもの。

出しても出しても出てくる荷物に怯えた時間は、今でも妙にはっきり覚えている。

アルバムを持って帰ればいい、くらいに思っていた私は、完全に甘かった。

暮らしって、こんなに重たいんだなあと、あの時初めて知った気がする。

つづく。


今日もお疲れさまでした。

透青

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