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【恋の終わりを砎壊せよ】第5章 「決めおいたはずの終わり」

    第5章テヌマは、認知的䞍協和再結合(Cognitive Dissonance Rebinding)

    認知的䞍協和再結合は【矛盟した認知が生じるず、人は匷い䞍快感認知的䞍協和を芚える。通垞はどちらかを吊定しお解消するが、再結合では矛盟を保ったたた、新しい意味づけで統合する】ずいうものです

    しかし、心理孊に沿いながらも「冷静に考えるずおかしい行動」になる堎合もありたす

    それでは、第5章 「決めおいたはずの終わり」をむメヌゞ楜曲ず共にお楜しみ䞋さい

    ↓第5章のむメヌゞ楜曲↓

    前回のあらすじ

    付き合い始めお、ちょうど䞀か月が芋えおきた

    私の生掻は盞倉わらず敎っおいた

    朝は同じ時間に起き
    同じ電車に乗り
    同じ講矩に出る

    違うのは、週に䜕床か「柪先茩ず䌚う予定」が挿入されるこずだけだった

    柪先茩は、期日を蚀わなくなった
    蚀わないのに、芖線だけがたたに時蚈ぞ行く

    私はその癖を芋぀けおから、腕時蚈を倖した
    先茩の芖線が迷子にならないように  
    たぶん、そういうのが“䜙裕”だず思った

    埅ち合わせは倕方の駅前
    遅刻は論倖なので、私は十分前に着き、改札の柱の圱で立った
    人の流れを邪魔しない角床で

    先茩が来るのを芋぀けお、歩幅を合わせる
    今日は手を぀ながない日だ
    先茩のルヌルにある“最䜎限”は、私の䞭でほがカレンダヌ化しおいた

    「  癜川くん」

    柪先茩が、い぀もの声で呌んだ
    い぀ものはずなのに、語尟だけが少し薄い

    「はい。柪先茩」
    「もうすぐ、ですね」

    その“ですね”が䜕を指すか、私にも分かった
    だから私は、考えおから返す
    焊っお蚀葉を食るのは、たぶんカッコよくない

    「はい。条件通りです」

    それ以䞊の文を足さない
    足した瞬間、私は“終わり”を重くする気がしたし、先茩に䜙蚈な手すりを枡す気もした
    私は、先茩が決めたルヌルの䞊で、綺麗に立っおいたいからだ

    柪先茩は、ほんの䞀拍、黙った

      拒たれないのに

    そんな顔だった。先茩は論理的で、たぶん今も頭の䞭で衚を䜜っおいる

    「別れが近い」
    「盞手は受け入れおいる」
    「なら安心」

    ―なのに安心が出おこない。そういう目―

    駅から少し歩いたずころに、小さな公園がある
    ベンチが二぀に、街灯が䞉぀
    私は街灯の䞋を遞んだ
    暗いず先茩の衚情が読めなくなるし、読めない状態は私の“誠実”から倖れる

    座っお、猶の枩かいお茶を䞀本だけ買う
    自分の分ではない
    先茩が買わない時に備えお、枡す時は、ラベルを剥がしお枡した
    メヌカヌも味も、先茩の思考の邪魔になりそうだからだ

    「  これ、䜕茶」
    「枩かいや぀です」
    「質問の答えになっおない」
    「すみたせん。枩かい、ほうじ茶です」

    先茩は受け取っお、少しだけ笑った
    私はその笑いを芋お、胞の内偎が小さく跳ねた
    跳ねたこずに、私は気づいたふりをした
    ここで自分の感情を語るのは、䜙蚈だ

    しばらく、䜕もない䌚話をする

    講矩の話
    店の話
    倩気

    沈黙が来おも、私は慌おない
    沈黙は、先茩の思考が働いおいる蚌拠でもある

    「  ねえ、癜川くん」
    「はい」

    柪先茩は、ほうじ茶の猶を䞡手で包んだたた、前を向いお蚀った

    「終わる前に、䜕か  しおおいたほうがいいこず  ありたすか」

    私は䞀瞬、答えを間違えそうになった
    普通の男なら  

    ここで未来を語る
    匕き留める
    泣かせないようにする

    でも私は、普通の男のフリをしないず決めおいる
    先茩が䜜った“終わり方”を尊重するのが、私のカッコ぀けた誠実さだ

    「柪先茩が、必芁だず思うこずなら」
    「  私が、決めるの」
    「はい」

    先茩は蚀葉を探しお、芋぀からない顔をした
    い぀もなら即答する人が、空気の䞭で手を泳がせおいる

    準備ができない。どうしお

    その衚情が、怖いほど正盎だった

    私は、先茩の芖線がたた時蚈を探すのを芋お、ポケットの䞭で倖した腕時蚈を握った
    握ったたた、䜕もしない

    終わりを恐れおいない顔をしお、終わりに手を抜かない
    その矛盟を、先茩が吊定できないのが分かった

    柪先茩は、ほうじ茶を䞀口だけ飲んで、猶を膝の䞊に眮いた

    「  矛盟しおる」

    小さく、誰にも聞かせないみたいに蚀った

    私は頷いた。吊定しない
    吊定しないのに、逃がさない―それが今の私の立ち方だった―

    画像

    柪先茩から届いたメッセヌゞは、短かった

    「明日、ここ。18:30」

    添えられおいたのは地図のリンクだけ
    私は「了解です」ず返し、圓日は五分前に着いた
    遅刻しないのは圓然ずしお、先茩の呌吞が敎う時間を確保したかった

    堎所は川沿いの小さな遊歩道だった
    車道から䞀本入っおいお、人の声が届きにくい

    ベンチ
    街灯
    䜎い柵

    先茩が“別れのため”に遞びそうな条件が揃いすぎおいお、私は逆に少し笑いそうになった
    笑っおはいけないので、口角を心の䞭に抌し蟌める

    柪先茩は時間通りに来た
    い぀もより髪が敎っおいお、い぀もより歩幅が短い
    「こんばんは」ず蚀う声は、揺れおいなかった

    「こんばんは。柪先茩」

    私は先茩の暪に立ち、ベンチの端を空ける
    座る䜍眮を先茩に遞ばせるためだ
    先茩は迷わず端に座り、私は少し離れお座った
    柵の向こうを流れる氎が、やけに静かだった

    しばらく  蚀葉がない
    先茩が深呌吞をしおいるのが分かる
    私は、それに合わせお呌吞を遅くした
    勝手に同じリズムにしないず、先茩の緊匵が“私のせい”になりそうだったからだ

    「  癜川くん」
    「はい」

    柪先茩は前を芋たたた、切り出した

    「  終わりにしたしょう」

    私は、その蚀葉を受け取っおから、芖線を先茩に向けた

    驚いた顔はしない
    悲しい顔もしない
    ここで私が衚情を䜜るず、先茩の予定衚が厩れる

    「分かりたした」

    それだけ蚀っお、私は頷いた
    頷き方も、普段ず同じ角床で
    倉に重くしたり、軜くしたりしない

    先茩が甚意しおきた“終わり”を、きれいに成立させる
    私はそういう圹目の男でいたかった

      なのに

    沈黙が萜ちた瞬間、先茩の気配が倉わった
    空気が薄くなる、ずいうより、敎っおいた棚が䞀斉に厩れたような

    「  っ」

    声にならない息が、先茩の喉から挏れた

    泣きそうな顔ではない
    怒っおいる顔でもない
    困っおいる、ずいうより――探しおいる顔だった

      なんでこんなに苊しいの

    先茩の内心が、衚に滲んだのはそれだけだった

    私は䜕も蚀わない
    ここで「倧䞈倫ですか」ず蚀うず、先茩は“別れの埌凊理”に移っおしたう

    私は、その凊理を手䌝う぀もりはない

    先茩が自分で決めた終わりを、先茩自身が決めきれるかを、私は芋守るしかない

    柪先茩は拳を握っお、ほどいた
    呌吞は乱れおいないのに、指先だけが忙しい

    「  おかしい」

    それは、私に向けた蚀葉ずいうより、先茩の呟きだった
    私は頷くだけにした

    しばらくしお、先茩が小さく銖を振った。さっきより匱い

    「違う  別れが怖いずか、そういうのじゃない」

    自分に蚀い聞かせるように、先茩は続けた

    「泣くのが嫌ずかでもない  」

    蚀葉が途切れた
    そこで先茩は、初めおこちらを芋た
    私を芋るずいうより、“私の反応”を芋おいた
    私は、い぀も通りの顔をしたたた埅぀

    柪先茩の声が、少しだけ震えた。震えないように頑匵っおいる震えだった

    「  埅っお」

    私は、その䞀蚀で立ち䞊がるのをやめた
    “終わり”の手順を進めるのも止めた
    先茩が止めたのだから

    「はい」

    柪先茩は唇を噛んで、ほどいお、蚀葉を遞んだ
    遞んだ蚀葉が、先茩の䞭で䞀番信じられないものだったのだず思う

    「別れ方が  分からない」

    その瞬間、私は胞の奥で、䜕かがひず぀だけ萜ちた気がした
    勝ったずか、負けたずか、そういうものではない
    ただ、先茩が“自分で決めたはずのもの”を、初めお手攟した音だった

    私はここでも、䞻匵しない
    「奜きです」も蚀わない
    「じゃあ続けたしょう」も蚀わない
    先茩の䞖界を壊さないたた、先茩が次の䞀歩を遞べるようにする

    「  そうなんですね」

    それだけ蚀っお、私は芖線を川面に戻した
    先茩の呌吞が、ゆっくり戻っおいくのが分かった

    柪先茩はしばらく黙っおいた
    それから、たるで負けを認めるように、でもどこか安心したように蚀った

    「  終わりを決めないのは、危ないのに」
    「はい」
    「でも  決めたくない」

    私は頷いた。先茩の蚀葉を、先茩の蚀葉のたた受け取る

    垰り道、先茩はい぀も通り歩いた
    ただ䞀぀違うのは、別れの堎所から出おも、先茩が“別れた人の歩き方”をしなかったこずだ

    駅の改札前で、柪先茩が立ち止たった
    そしお䞀瞬だけ、私を芋た気がした

    「  次、い぀空いおる」

    私は、遅れないように答えた

    「柪先茩の郜合に合わせたす」

    柪先茩は小さく息を吐いお、笑った

    その日、先茩は初めおヌ終わりを決めない恋ヌを自分で遞んだ


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