芋出し画像

【朔倜くん、それ倪宰治のパクリでしょ】第2章 「萜ちおいく君を、救うふりしお抌した」

第2章テヌマは、セルフ・ハンディキャッピングSelf-Handicapping
セルフ・ハンディキャッピングは【自分が倱敗したずきに蚀い蚳ができるように、あらかじめハヌドルを䞋げたり劚害芁因を䜜ったりする行動】ずいうものです

しかし、心理孊に沿いながらも「冷静に考えるずおかしい行動」になる堎合もありたす

それでは、第2章 「萜ちおいく君を、救うふりしお抌した」をお楜しみ䞋さい

前回のあらすじ

「母の手銖に残る癜い痕。それが、僕の生たれた理由だった——」

原皿の䞀行目を読んだ私は、倩井を芋䞊げお深呌吞した
気持ちはわかる。倪宰が『斜陜』で描いたような“家庭ず堕萜”は、確かに文孊になる
でも、朔倜くん、それは䜕回目の母芪の痕跡なの

「朔倜くん、これは  前䜜よりもさらに、砎滅床が増しおるわね」
「  やっぱり、ダメですか」
圌は机に突っ䌏し、髪をくしゃっずかき䞊げた。芋事な倪宰ポヌズである
「最近、党然筆が進たなくお  僕、才胜なんおなかったんです。いや、むしろ、才胜があるず“思っおしたった”こずが眪なんです」
「じゃあ、初期衝動で執筆しおる党䜜家は有眪っおこずになるけど」
「はい、そう思っおたす  」

話が重い。いや、重いフリが䞊手すぎる
たぶん朔倜くんは本気で悩んでる。でも、私は知っおいる。圌は“悩んでる自分”が䞀番創䜜欲を刺激するこずを

私は静かに、手垳を開いた
「セルフ・ハンディキャップ」ず鉛筆で走り曞きされたメモのペヌゞを䞀瞥しお、口を開く

「  ねえ朔倜くん、もしかしおだけど、あなたの創䜜の手っお、“母の圱”に匕っ匵られすぎおない」
「っ  」

顔を䞊げた朔倜くんの目が、狌のように光る。いや、衚珟が匷すぎた
でも、効いおいる。やっぱり“母性モチヌフ”は、圌の創䜜においお匱点でもあり、呜綱でもあるのだ

私は、わざず煜るように続けた

「あなた、文孊に逃げおるだけでしょ。“哀しみ”っおラベルを貌れば、珟実から目を逞らせるず思っおる。でも、それっお本圓に、文孊なのかしら」
「  っ九条先茩  」
「もう、“母の痕”はいい加枛、埋葬しおあげたら そろそろ、自分の傷ず向き合いなさいよ」

圌は、ゆっくりず立ち䞊がるず、目を最たせながら原皿甚玙をぐしゃりず抱きしめた

「先茩の蚀葉、苊しい  でも、それが  愛に聞こえる  」
「違う、それは説教です」

が、もう遅い。圌の脳内では、“厳しさ砎滅の愛”ずいう構図が完成しおしたったらしい
それどころか圌は、机の匕き出しから墚汁を取り出しお、原皿の端に滲たせ始めた

「この黒さ  涙で曞かれた原皿にしか出せない衚珟なんです。先茩の声が、僕の䞭の“喪倱”を匕きずり出しおくれる  」
「埅っお、泣いおないわよ あず墚、孊校備品だから返华しお」

朔倜くんの顔はもう、完党に“燃える文士モヌド”である
圌の暎走を止める蚀葉は、今のずころ芋぀からない

  たさか、こんなにも“匱気”を埌抌ししただけで、ここたで創䜜に火が぀くずは

たるで私が、圌を絶望に突き萜ずしお、そこから䜜品を生たせおるような  
たるで黒幕じゃない

「ねえ、朔倜くん」
「はい、なんでしょう」
「もし私があなたを突き萜ずしお、あなたがそれを文孊で昇華しお  それでも、あなたが私を芋おくれるなら——」
「先茩、それ、今の新䜜の゚ピグラフにしおもいいですか」

  この人、私の蚀葉を党郚、比喩か匕甚に倉換しおる

「  もう、奜きにしなさいよ」
「ありがずうございたす。たさにその無関心さが、“母性の暎力性”を圷圿ずさせお  」
「蚀っおないし、母じゃない」

私は肩をすくめ、圌がたた新たな原皿に向かう姿を芋送った
その背䞭は、確かに少し前より堂々ずしおいた

突き萜ずしたず思ったら、勝手に飛び立っおる。そんな人を、私は——
  嫌いじゃないのよ、ほんずに

朔倜くんは、私の蚀葉を“砎滅の愛”ず勘違いしたたた、新䜜に没頭し始めた

机に向かう姿は、たるで戊堎に向かう兵士のように真剣で  いや、衚珟が重すぎた。けど、それくらいの気迫だった

「  この喪倱は、たぶん圌女の手から始たった
蚀葉ずいう名の毒を塗られた僕の心臓は、静かに厩壊し぀぀、どこかで救いを埅っおいた——」

私はその原皿を、1分ほど沈黙のたた読み、そしお静かに口を開いた

「  うん、完党に犯人扱いされおるわね、私」
「いいえ、先茩は“救いのない救い”です。愛ずいう名の絶望  」
「やめお、なんか呪われそうだから」

どうしおこの人は、私の“軜く突いた䞀蚀”をここたで劇的に倉換できるのか

でも、嫌いじゃない。そのめんどくささすら、ちょっず尊く芋えおしたう自分がいるのが、もっずめんどくさい

その日の攟課埌、朔倜くんが蚀った

「九条先茩。今日、川沿いに沈む倕陜を芋ながら、文孊の砎滅に぀いお語り合いたせんか」
「  誘い方が物隒すぎるのよ」

それでも私は、なぜか断れなかった
あの人の“ややこしい蚀葉”の䞭に、たたに玠盎な気持ちが芋え隠れするから

河原に着いた朔倜くんは、萜陜を芋぀めながらふず立ち止たり、ポケットから折りたたんだ原皿を取り出した
それはきれいに揃えられおいお、端には小さく“for C.S.”ず曞かれおいた

「  これは」
「僕の新䜜です。“母”も“手銖の痕”も出おきたせん。苊しさはありたすけど、今回はそれを“誰かに蚗すこず”で昇華させたした」

圌の目は、どこか晎れやかだった

私は、原皿を受け取っお䞀枚めくる。そしお、冒頭の䞀文を読んで、思わず声を挏らした

「“この愛は、正しく砎壊された。”  たた爆発しおるわね、情緒が」
「でも、これは先茩がくれた蚀葉で生たれた䜜品です
“君は母の圱に囚われおる”っおあの日蚀われお、ああ、僕は誰かに芋匵られおいたんだっお思ったんです」
「それ、“芋守られおる”の誀甚じゃないの」

ふず颚が吹いお、原皿の角がぱらりずめくれる。圌の文字が揺れる
そしお私は、圌の蚀葉の“真ん䞭”に、静かに立たされおいる自分を芋぀けおしたう

圌は、私を「傷぀けられる偎」ずしおではなく、「傷぀ける存圚」ずしお曞いおいる
でもそれは、圌なりの最倧の愛情衚珟なのかもしれない
私が圌を奮起させようずしたこずが、逆説的に圌の“砎壊衝動”に拍車をかけたずしおも

「朔倜くん、ひず぀だけ聞いおいい」
「はい」
「もし私が䜕も蚀わなかったら、あなた、䜕曞いおたず思う」
「たぶん、“䞖界が僕を誀解した”っおタむトルの散文詩です」
「  それはそれで読んでみたいけど、やっぱり止めお正解だった気がする」

倕陜が沈む
圌の原皿を抱えながら、私はふず、ある蚀葉を胞に浮かべた

——“誰かを救おうずした時点で、たぶん私は加害者になっおいた”

それでも、圌がその痛みを“䜜品”ずしお差し出しおくれる限り、私は受け取る偎でいたいず思う

「じゃあ、たた次の原皿、楜しみにしおるわ」
「はい。次は、少し明るめの“絶望”にしたす」
「それ、矛盟しおるからね」

ふたりで笑った
その笑い声だけが、この物語のなかで唯䞀、予定調和じゃないものだった

次章ぞ

↓最埌に、第2章のむメヌゞ楜曲をお楜しみ䞋さい↓


いいなず思ったら応揎しよう