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VTuberの歴史④桐生ココ革命(2020)

     群雄割拠していたVTuber事務所も次第に淘汰が進み、2019年頃には業界再編が始まっていた。

    詳しくは前回の記事をご覧ください。↓


     そうした流れの中で、VTuber業界を牽引する主流派は、以下の3勢力となりつつあった。

    ①にじさんじ(いちから株式会社)
    ②ホロライブ(カバー株式会社)
    ③有閑喫茶あにまーれ、ハニーストラップ
     (ラボット株式会社→774株式会社)

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    圧倒的なタレント数を誇るにじさんじ。
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    アイドル路線に舵を切ったホロライブ。
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    第三勢力として追随していた774グループ。


     そうはいっても、当時の3勢力にYouTubeの登録者数が50万人を超えるVTuberは1人もいなかった。

     最も多い月ノ美兎が40万人台、続く本間ひまわりや白上フブキが30万人台である。

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    にじさんじ(いちから株式会社)
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    ホロライブ(カバー株式会社)


     このとき既にキズナアイや四天王など、50万人以上の登録者を持つ者は多くおり、業界は歪な構造になっていた。

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     もはや過去の栄光になりつつあった「3D動画型VTuber」の登録者数に、「2D配信型VTuber」は全く歯が立っていなかったのだ。


     そうした中で、新たに注目され始めた指標として「同時接続者数(同接)」の存在がある。

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    左下の「3人が視聴中」という表示のこと。


     同接とは、特定のライブ配信をリアルタイムに視聴している人数のことだ。

     ストック型のチャンネル登録者数と比較して、同接はフロー型の指標として機能するため、より流動的に配信者の実力を評価することが出来る。



     今回は、VTuberとして初めて同接10万人超えを達成した、1匹のドラゴンの話をしていこう。


    ──────────────────────
     なお、投稿者はホロライブの常闇トワ様が最推しであるため、ある程度バイアスのかかった内容であることをご承知願いたい。
    また、自分がいつからVTuberを追っていたか正確には把握していないものの、入りが輝夜月や猫宮ひなたで、初期の平田(ピンキー)や笹木引退&復帰騒動をリアルタイムで目撃していたので、2018下半期から2019初頭だと思われる。
    そのため、①の全体と②の前半は投稿者がリアルタイムで経験していない事柄であることを留意してもらいたい。
    ──────────────────────


     以下の表は、私がこのシリーズで用いるVTuber史観である。

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    小さくて見づらかったら申し訳ない。


     今回の記事では、「6. 桐生ココ革命」を扱っている。


    ⭐桐生ココ革命【2019.12.28~】

    非母語話者VTuberという革命

     2019年12月から翌年1月にかけて、カバー株式会社はホロライブ4期生のデビューさせた。

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    ホロライブ4期生「ホロふぉーす」。


     各VTuberのデビュー日は以下の通り。

    2019年12月27日:天音かなた(あまねかなた)
    2019年12月28日:桐生ココ(きりゅうここ)
    2019年12月29日:角巻わため(つのまきわため)
    2020年1月3日:常闇トワ(とこやみとわ)
    2020年1月4日:姫森ルーナ(ひめもりるーな)


     はっきり言って、異常な日程ではないだろうか?

     年末年始という最も休暇中の人が多い日程にデビュー日をぶつけるという、極めて明確な戦略が伺える。

     そうであれば、当然ながらデビューするVTuberに、今後の社運を占うような隠し玉を用意しているのではないか。


     …そして、それは現実となった。

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    苦手:かんじ
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    次の生放送:あしたの朝6時



     青天の霹靂。


     この日、この初配信を視聴した全てのVTuberファンが、新たな時代の到来を確信したに違いない。

     そう、桐生ココは外国人だったのである!!!!!!!!!!



     …もう少し丁寧に説明しよう。

     まずもって、桐生ココ以前にも日本語話者ではないVTuberは存在していた。
    いちから株式会社は運営するVirtuaRealやNIJISANJI_IDがその代表例である。

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     しかし、それらのVTuberと桐生ココは大きく異なる存在だった。
    それが、「ファンから見た外国人」という観点である。


     VirtuaRealは中国のファン向けに中国語話者が活動を行っていたし、NIJISANJI_IDはインドネシアのファン向けにインドネシア語話者が活動を行っていた。

     対して桐生ココは、"日本のファン向けに活動する日本語の非母語話者"なのだ。

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     つまり、桐生ココは「非母語話者VTuber」という革命を巻き起こしたのである。


     非母語話者VTuberという戦略は、一見失敗しそうに思える。
    なぜなら、以下のようなトラブルが容易に想像できるからだ。

    ・ファンとコミュニケーションが取れない
    ・他のVTuberとコミュニケーションが取れない
    ・日本の文化に馴染めない(認識の齟齬による炎上リスク)

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    桐生ココの配信の概要欄。


     普通に考えれば、その本人の母語(=英語圏)向けに活動するのが堅実だろう。

     しかし、桐生ココはある特異性によって、その全てを解決してしまった。

     それは、「日本語を"たどたどしく"話すことが出来る」能力であった。


     意思疎通は可能だが、日本語は練習中。
    日本に愛着はあるが、どこから仕入れたのか偏った知識ばかりある。
    ときにはキテレツな行動で周りを振り回して楽しませる。

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    彼女の『龍が如く』シリーズに起因する偏った知識。


     それはまるで、クラスに転校してきた外国人のように。
    もとからいたメンバーは彼女を積極的にサポートし、輪が出来ていく。
    ホロライブという空間が、コミュニティが、彼女を中心に回り出す。


     ホロライブという舞台装置は、桐生ココという一級の歯車によって急速に動き始めた。



    あさココという革命

     桐生ココは初配信の翌朝から、とある配信を始めた。

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    「あさココLIVEニュース!」、通称「朝ココ」である。


     あさここは平日のほぼ毎日、朝6時から20分間のライブ配信として放送された。

     そして、放送の内容は以下の通りである。
    ※初回放送から抜粋

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    ホロライブ4期生の同期、天音かなたの話題。
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    ホロライブ1期生、夏色まつりの話題。
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    ホロライブ運営、全体曲の話題。
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    天気予報(地球規模)。
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    ホロライブ4期生の同期、角巻わためのデビュー告知。


     この「あさココ」は、ホロライブにもう1つの革命をもたらした。

    それは、コミュニティの"ハブ"となる場所の登場である。

    ※この解説動画が大変わかりやすいので必見


     「あさココ」は毎日のように放送され、そこでは旬のホロライブ関連ニュースが取り上げられる。

     そのため、ホロライブの各VTuberのファンが「あさココ」に集まるようになる。

     「あさココ」では各VTuberの配信で起こった"内輪ネタ"がホロライブのファン全体に共有され、"ホロライブコミュニティ全体で通じるネタ"に昇華される。

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     桐生ココは「あさココ」によってホロライブ所属VTuberのファンを自分のチャンネルに取り込み、そして各VTuberのチャンネルへと誘導していたのだ。

     これにより、ホロライブは各VTuberの固定ファンを事務所全体のファン(=箱推し)に繋げることができ、それは事務所ブランドの向上に寄与することとなった。



    登録者数から見る変化

     ここからは、登録者数の変化から桐生ココ革命を見ていきたい。

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    2019年12月。
    にじさんじ:2チャンネル
    ホロライブ:0チャンネル
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    2020年8月。
    にじさんじ:1チャンネル
    ホロライブ:7チャンネル


     上記グラフは、桐生ココがデビューした2019年12月と、僅か8ヶ月後の2020年8月の情勢を比較したものだ。

     ホロライブの勢いの恐ろしさが一目で分かるだろう。

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    2019年12月のホロライブの情勢。
    10万人台:12人、20万人台:2人、30万人台:1人
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    2020年8月のホロライブの情勢。
    30万人台:7人、40万人台:7人、50万人台:4人
    60万人台:3人、80万人台:1人


     今度はホロライブに限定したグラフの変化である。

     登録者数がインフレしているのは一目瞭然だが、特に注目したいのが、デビューして間もない桐生ココが、2020年8月には5位にまで伸ばしているところだ。


     桐生ココはホロライブを業界トップに押し上げた立役者であった。
    それは紛れもない事実である。

     しかし、桐生ココの恩恵を受けたのはホロライブであって、VTuber業界全体に波及したわけではなかった。

     それは一体何故か。


     それは、ホロライブが徹底的にファンを囲い込んだからである。



    ホロライブの鎖国

     にじさんじとホロライブは、極めて対照的な事務所である。
    だからこそ、2025年現在、両者は綺麗に棲み分けされているといえる。

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     にじさんじは男女合同のエンタメ路線。
    ホロライブは男女別のアイドル路線。

     そして、それ以上に大きな、両者の違い。
    それこそが、「ファンを囲い込む意識」だ。


     ホロライブは2020年1月24日、初の全体ライブであるhololive 1st fes.『ノンストップ・ストーリー』を開催。

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     ここでは全体曲『Shiny Smily Story』も披露され、アイドル路線としてのホロライブが確立された。

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     2020年4月6日にはホロライブ公式チャンネルで『おちゃめ機能』の歌ってみたが投稿される。

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     この動画の画期的なところとして、ホロライブの全メンバーの見た目と名前、何期生か、誕生日、身長をファンに覚えてもらうことが出来るのだ。


     このようにして、ホロライブはファンをグループ全体への浸透を図った。


     そして、同時期に進んだのが外部コラボの減少である。

     にじさんじとのコラボユニットを含め、かつて築いていた関係性の多くがこのタイミングで疎遠になっている。

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    コラボユニット「27とJK」の社築と夏色まつり


     その理由として考えられるのが、以下の要素だ。

    ①アイドル路線(異性コラボの減少)
    ②多忙になった(アイドル路線によるレッスンの増加)
    ③業界トップになった

     この中で、特に大きいのが③の「業界トップになった」である。


     これまで、VTuber業界の流行といえば、にじさんじが創り出すものであった。
    その筆頭が『Minecraft』であり、ホロライブはそれに追従する存在であった。


     しかし、2020年の桐生ココ革命により、にじホロの立場は完全に逆転した。
    ホロライブは、一気にVTuber業界のトップへと駆けあがったのだ。

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    2020年4月18日。にじさんじの月ノ美兎が登録者数50万人を達成。
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    2020年4月19日。ホロライブの白上フブキが登録者数50万人を達成。
    もはやホロライブに、他箱への追従は必要なくなった。


     その結果、ホロライブはコバンザメ戦略を終了し、業界トップとしての「囲い込み戦略」に切り替えたのである。

     それは、これまでの"自身より大きな勢力からファンを奪う"という今までの方針と何も変わっていない。

     ただ、"自身より大きな勢力がいないからコラボしない"だけだといえる。


     こうして、ホロライブのVTuberは事務所内のコラボに終始するようになり、それは"鎖国"と揶揄されるようになる。

     しかし、この戦略は多くのホロライブの内部ユニット誕生を促した側面も大きく、ホロライブの人気を後押しすることに繋がった。

     当時の代表的なコラボユニットは以下の通り。


    ぺこみこ
    ・兎田ぺこら(うさだぺこら)
    ・さくらみこ

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    兎田ぺこら(左)、さくらみこ(右)


    おかころ
    ・猫又おかゆ(ねこまたおかゆ)
    ・戌神ころね(いぬがみころね)

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    戌神ころね(左)、猫又おかゆ(右)


    スバちょこルーナ
    ・大空スバル(おおぞらすばる)
    ・癒月ちょこ(ゆづきちょこ)
    ・姫森ルーナ(ひめもりるーな)

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    癒月ちょこ(左)、大空スバル(中央)、姫森ルーナ(右)


    同居ーず
    ・桐生ココ(きりゅうここ)
    ・天音かなた(あまねかなた)
    ・星街すいせい(ほしまちすいせい)

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    桐生ココ(左)、天音かなた(中央)、星街すいせい(右)


     そうした状況下で、2020年8月にはホロライブ5期生がデビューした。

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    魔乃アロエはデビュー後、早期に活動終了している。


     5期生の獅白ぼたん(ししろぼたん)は、なんと初配信前にチャンネル登録者数10万人を達成することとなる。

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    獅白ぼたんのデビュー配信。


     これはホロライブの天下を業界全体に知らしめるものとなり、ホロライブにおける登録者数10万人は登竜門ではなくなった。



    にじさんじの動向

     ホロライブが圧倒的な躍進を見せる中、にじさんじは業界の主導権を失いつつあった。

     その象徴的な事例が、『ARK』というゲームである。

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     このゲームはマルチプレイが可能なサバイバルゲームであり、ホロライブの桐生ココが箱ゲームとして流行を創ったものだ。

     そう、それはかつて、にじさんじが『Minecraft』という箱ゲームを普及させたように…

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    あらゆる流行の担い手として、桐生ココは圧倒的な影響力を持っていた。


     この頃のにじさんじ(国内)でデビューしたVTuberは以下の通り。


    2020年1月30日:イブラヒム、フレン・E・ルスタリオ、
            メリッサ・キンレンカ(メイフ)
    2020年4月2日:VΔLZ
    2020年6月30日:空星きらめ、金魚坂めいろ(きらめろ)
    2020年8月6日:世怜音演劇同好会


     この中で特に注目したいのが、VΔLZと世怜音演劇同好会である。

     この両者は従来のにじさんじのデビュー方針とは異なり、運営が事前にユニット名を決めている。
    つまり、明確にユニット売りの戦略が見えるのだ。

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    VΔLZの弦月藤士郎(左)、長尾景(中央)、甲斐田晴(右)


     VΔLZ(ヴァルツ)はVOIZ以来となる男性メンバーのみのユニットである。

     基本的に女性が有利とされていたVTuber業界において、にじさんじが男性オンリーでデビューさせるのには意図があると考えるべきだ。


     この時期のにじさんじには、2つの戦略が混在していたように見える。

    ①男性VTuberを押し出してホロライブと差別化する
    ②女性VTuberをユニット売りにして、ホロライブを模倣する


     ①を意図してデビューさせたのが、VΔLZである。

     そして実際に、にじさんじは男性VTuberの押し出しに成功した。
    特に突出したのが葛葉(くずは)と社築(やしろきずく)である。

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    ド葛本社のメンバー。
    右上が葛葉で、右下が社築。


     この2人はド葛本社というコラボユニットのメンバーとして人気を集めていたが、『ARK』をきっかけに葛葉が、音ゲーをきっかけに社築が有名になっていった。

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    葛葉はARK内のグループ、AlleXceed Familia(AXF)の中心メンバーとして活躍した。
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    社築は3Dお披露目配信で華麗な指さばきを披露。
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    にじさんじ公式チャンネルの新番組(レバガチャ)のレギュラーを笹木と共に務めた。


     そして、②の女性ユニットとしてデビューしたのが世怜音演劇同好会(せれいね・えんげき・どうこうかい)である。

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    東堂コハク(左)、朝日南アカネ(中央)、北小路ヒスイ(右)
    周央サンゴ(中央左)、西園チグサ(中央右)


     このユニットは明らかにホロライブを意識した売り出し方であり、アイドル路線を突き進むホロライブの模倣そのものであった。
    ※女性VTuberの5人組デビューはホロライブの基本戦略


     しかし、にじさんじはその模倣に失敗した。
    それは、世怜音演劇同好会が男性VTuberともコラボしたからだろうか?

     …いや、厳密にいえばそうではない。
    彼女らのアイドル的需要を得るための立ち回りが不足していたからである。
    多くのにじさんじ女性VTuberと同様、芸人路線のみを選択したからである。


     女性しかいない環境で、アイドルも芸人もこなすホロライブのVTuber。
    男性もいる環境で、芸人一本で戦うにじさんじの女性VTuber。

     どちらがより人気になるかは明白だった。

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    ホロライブはアイドル事務所でありながら、芸人集団とも呼ばれている。
    どちらの需要も獲得出来ていることが、人気爆発に繋がったのだ。


     こうして、にじさんじの女性VTuberはホロライブに顧客を奪われる。
    一方、男性VTuberは徐々に活躍の幅を広げていく。

    にじさんじの男性VTuberと女性VTuber、その力関係は変容しつつあった。



    新型コロナウイルス

     2020年は新型コロナウイルスが広がった年でもある。

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    1月9日:WHO(世界保健機関)が最初の声明。
    2月1日:ダイヤモンド・プリンセス号の乗客に陽性が確認。
    2月27日:内閣総理大臣より全国の学校に臨時休校要請が示される。
    4月7日:政府が7都府県に「緊急事態宣言」を発令。

     この未曾有の感染症は、これまでの社会の常識を一変させた。
    それはVTuber業界にとっても例外ではなかった。


     2020年3月5日に開催予定だった「にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!」の東京公演が中止になったほか、VTuberの中にも感染してしまう者もおり、大きな混乱と不安が広がった。

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    翌年にリベンジ公演が開催されている。


     一方、ステイホームによる巣ごもり需要は間違いなくVTuber業界にとって追い風となっていた。

     コロナ禍をきっかけにライブ配信の普及が急速に進み、VTuberに対する認知が高まったのだ。
    これはVTuber業界にとって「おうち時間革命」とも呼ぶべきバブルを引き起こした。

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     特に、甲子園や東京オリンピックがない中でのVTuberのスポーツ大会は、これまでにない盛り上がりを見せた。

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    第1回となる「にじさんじ甲子園」。
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    第1回となる「ホロライブ大運動会」。


     また、コロナ禍にはリアルタイム視聴の需要も増加し、3D記念配信の同接がうなぎ登りとなっていった。

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    ホロライブの桐生ココの3Dお披露目配信。VTuber史上初の同接10万人超え。
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    にじさんじの加賀美ハヤト(かがみはやと)の3Dお披露目配信。同接13万人。


     こうして、ホロライブの躍進が際立つものの、VTuber業界は全体として好景気に突入していた。



    既存事務所の淘汰

     VTuber業界が変革を繰り返す中で、淘汰されていく勢力が現れるのもまた必然である。

     かつて業界の花形であったupd8(アップデート)は、その歴史的な意義を終えつつあった。


     2020年4月30日にはupd8のサポートを受けていた織田信姫(おだのぶひめ)がVTuber活動を終了。

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     2020年11月1日、Activ8株式会社は事業の赤字を理由に、upd8を12月31日をもって終了することが発表した。

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    upd8のサポートを受けていた、おめがシスターズの動画。


     また、ミライアカリらの運営であったENTUM(株式会社ZIZAI)も事務所のプロデュース体制が行き届いていないことを理由に、2019年12月31日に閉鎖されている。

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    ENTUMに所属していたもちひよこの動画。


     株式会社VICが運営に携わっていた四天王の1人、輝夜月についても2020年8月29日を最後にYouTubeチャンネルの活動が停止している(2025年現在)。

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    輝夜月のチャンネルに投稿されている最後の動画。




    Kizuna AI

     キズナアイを運営していたActiv8株式会社は、2020年4月24日に分社化を発表。

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     2020年5月11日にKizuna AI株式会社が設立され、キズナアイの声優を務める春日望がアドバイザーに就任した。

    ※このタイミングでキズナアイはupd8を脱退していた

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    RIOT MUSIC

     かつての3D動画勢の淘汰が進む一方、その原因ともいえる会社は新たな事務所を立ち上げていた。

     ゲーム部騒動を経て社名を変更した株式会社Brave group(ブレイブグループ)は、2020年3月に新事務所「RIOT MUSIC(らいおっとみゅーじっく)」を設立した。

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    手前左が芦澤サキ(あしざわさき)、手前右が道明寺ここあ(どうみょうじここあ)。


     RIOT MUSICは音楽事務所であり、ゲーム部プロジェクトの一員でもあった道明寺ここあ(中の人は交代済み)らが所属することとなる。



    Balus

     「Balus」は、バルス株式会社が運営するVTuber事務所である。

     所属VTuberのMonsterZ MATE(モンスターズメイト)は多くのVTuberとコラボをすることで人気を集めた。

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    アンジョー(左)、コーサカ(中央右)
    「誰が持ってるか王選手権」は凄まじいヒットシリーズであった。

     なお、MonsterZ MATEのアンジョーとコーサカは、中の人が歌い手のun:c、はしやんであることを公表している。



    ゆにクリエイト

     「ゆにクリエイト」は、株式会社ゆにクリエイトが運営するVTuber事務所である。

     当初は赤月ゆに(あかつきゆに)のプロデュースが中心であったが、後に餅月ひまり(もちづきひまり)が加入。

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    餅月ひまり(左)、赤月ゆに(右)


     2022年には、事務所名が「ライブラリ」に変更された。

    ※2023年にライブラリは内部崩壊により所属VTuberが0人となった



    プロプロプロダクション

     プロプロ株式会社は2020年7月にVTuber事務所「プロプロプロダクション」を設立した。

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     この事務所についても、2024年に事実上の解散状態となっている。



    星めぐり学園

     「星めぐり学園」は、ラファクト株式会社が2020年3月21日に設立したVTuber事務所である。

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     2020年内に1期生にあたるグループが全員卒業するものの、その後も活動が継続されている。



    AVTuber

     2020年2月、世界初のHentai Camgirlを自称する、Projekt Melody(プロジェクト・メロディ)が活動を開始した。

    ※Camgirl(カムガール)とは、欧米においてライブ配信でセンシティブなコンテンツを提供する女性を指す言葉。男性の場合はCamboyとなる。

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    Projekt Melody(プロジェクト・メロディ)。


     彼女はVTuberとしても注目され、新たな概念として「AVTuber」が誕生するきっかけとなる。

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    2020年2月13日のあさココより抜粋。


     日本では株式会社FlyがVTuber事務所「えもえちプロダクション」を設立。

     アダルトコンテンツに特化した業界初のAVTuberとして、柚木凛(ゆずきりん)をデビューさせた。

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    柚木凛(ゆずきりん)。YouTubeの限界に挑戦していた。


     株式会社オクトーバーは、2020年3月にVTuber事務所「PinkPunkPro」を設立しており、こちらもAVTuberの系譜である。

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    PinkPunkPro


     株式会社オクトーバーは2020年7月には「ますかれーど」を立ち上げたほか、2021年には新事務所「セキララでもいいよ。」を設立している。

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    ますかれーど
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    セキララでもいいよ。


     AVTuber事務所の大手と呼べるのかもしれない。



    その他のVTuber

     2020年はホロライブの時代ではあったが、この時期に活躍を始めたVTuberも多くいる。
    ここでは当時の代表的なVTuberを紹介する。

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    芸能事務所インクストゥエンター所属のカグラナナ。
    「ななかぐら」名義でイラストレーターとしても活躍。
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    個人勢の名取さな(なとりさな)。
    宮城県名取市での献血キャンペーンで話題を呼んだ。
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    バーチャル花魁の由宇霧(ゆうぎり)。株式会社Candeeがプロデュース。
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    ゲーム実況者のガッチマンがサブチャンネル「ガッチマンV」を立ち上げVTuber化。
    別人格ではなく、アバターとしての活動である。
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    ディープウェブ・アンダーグラウンド。
    2020年10月に個人勢グループ「深層組」を立ち上げる。




     桐生ココ革命と新型コロナウイルス。
    この2つの出来事は、VTuberという文化を新たな段階へと押し進めた。

     それと同時に、VTuber業界はホロライブとその他VTuberとの分断時代へと突入し、それぞれは違う歴史を歩むこととなる。


     2020年の下半期、ホロライブとその他VTuberは、2つの全く異なる衝撃を受けた。

     次回はホロライブ側の歴史、次々回はその他VTuber側の歴史について見ていきたい。


    次回、
    「EN革命」

    次々回、
    「CR革命」
    「ぶいすぽっ!」



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