メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

やはり、父になれず。

    あらすじ

    山䞋培(30æ­³)は粟神病の方々の職業指導員ずしお働いおいる。
    音楜クリ゚むタヌになるずいう倢を持ちながら、忙しい毎日を送っおいた。

    四歳の灯ず二歳の颚花、結婚五幎目になる劻の雪乃ず劻の家族ず共に過ごしおいるが、子育おの過酷さず肩身の狭さに心が折れかけおいた。

    そんなある日、音楜クリ゚むタヌずしお倧きな仕事を獲埗するこずずなる。
    倢ぞの第䞀歩ずしお絶察に倱敗するわけにはいかないず意気蟌む培。
    しかし、圹職を持っおいる本業を蔑ろにするわけにも父芪業を攟棄するわけにもいかないゞレンマの䞭で、家族ずの関係性は悪化しおいく。

    眠れない日々が続き、培の心ず身䜓は疲匊しおいた。
    どうにか掻路を芋出そうず奮闘する培だったが、ずある倜に完党に心は厩壊する。

    倢の狭間で、キャリアの途䞭で、果たしお培は父ずしお生きるこずが出来るのか

    この䜜品はこの䞖の党おの父芪に送る、心震える物語です。



    第䞀章 自由に生きられず


    4Kテレビのブルヌラむトが県鏡に反射しおいる。
    日曜の昌間からカヌテンを閉め切り、幻想的な䞖界が目の前に広がっおいる。

    山䞋培(やたしたずおる)は二階の自宀にお、長い時間遊んだテレビゲヌム[神殺しの怪物ず六人の玄束]をプレむしおいた。

    いく぀もの困難を乗り越え、ラスボスを倒し、感動のムヌビヌシヌンの最䞭、突劂䞋の階から嚘の声が響き枡る。

    「パパヌ早く䞋に来お」

    ああ、耳障りだ。
    そう心の䞭で呟きながら、この瞬間しか味わうこずの出来ない物語のクラむマックスに集䞭しおいた。

    「うわぁぁヌヌんうわぁあ」

    「もうふヌちゃんが悪いんでしょ」

    テレビ画面に集䞭したいが嚘達の声により集䞭が途切れる。
    どうやら䞋の階では二人の姉効が喧嘩をしおいるようだ。

    4Kテレビには苊楜を共にした仲間達が抱擁するシヌンが映し出されおいる。

    培は心から蟌み䞊げる蚀葉に出来ない感情が溢れ出し、目に涙を浮かべおいた。

    その時、䞋の階から劻の声が響く。

    「うるさいあんた達が隒ぐから䜕も手に぀かない」

    その怒鳎り声を聞いお、目に溜たっおいた涙は䞀瞬で匕いおいった。

    「はぁ、、、」

    培は深くため息を぀き、本来ならば号泣する予定だった感動のクラむマックスをただ眺めおいた。

    もう二床ずこの感動を味わうこずはないだろう。

    仲間達ずの絆、手に汗握るラスボスずの戊い、そしおようやく倒した埌の感動のムヌビヌシヌン。

    結末が気になっおいたが、絶察にYouTubeで怜玢するこずはしなかった。

    この感動を味わうためだ。

    しかし、その感動も珟実の喧隒に掻き消される。

    「はいはい、俺のせいですよね」

    培は虚しく流れる゚ンドロヌルをそのたたに、䞋の階ぞず降りた。

    「パパ遅い䜕回も呌んだのに䜕で来ないの」

    䜓党身を䜿いながら怒りを露わにしおいるのは長女の灯(あかり)である。

    「ごめん、聞こえなかった」

    そう蚀い蚳をするも、灯の怒りは収たらない。

    「うわぁあんパヌパ」

    泣き぀いおきたのは次女の颚花(ふうか)だ。

    「ふヌちゃんはなんで泣いおるの」

    培の問いかけに颚花は芚えたおの日本語で頑匵っお説明を開始する。

    「あヌちゃんが、、、ふヌちゃんのおもちゃ、ずったの」

    その蚀い分に姉の灯はたかだか二歳差のアドバンテヌゞを存分に䜿い、鬌の圢盞で颚花ぞず距離を詰める。

    「いっ぀もふヌちゃんが䜿っおるから良いでしょだっお、、だっおふヌちゃんがぁあああ」

    話しながら、遂に灯も泣き出した。

    「うわぁあああああん」

    ネガティブな感情を撒き散らした蜟音の合唱が突劂ずしお始たる。

    「はぁ、、、、そんな理由で俺のたった䞀床の感動を奪ったのか」

    培はその埌蚀葉を発さず、リビングぞず歩き出した。

    そこぞ掗濯物を畳み終えた劻の雪乃(ゆきの)がやっおきた。

    雪乃の眉間には皺が寄り、今にも苊蚀を発しそうな雰囲気である。

    「いやゲヌムがいいずころでさ、なかなかやめられなかったんだ」

    事実ながらも苊し玛れの蚀い分を聞き、雪乃は明癜なため息を぀いた。

    雪乃は䜕も蚀わずに子䟛達の昌食の甚意を始める。

    先皋たでゲヌムを楜しんでいた自分は、今ここで子䟛達を萜ち着かせなければならない。
    そんな矩務感ず眪悪感を感じながら、培は子䟛達をあやし始めた。

    あやしながらも心の䞭で疑問を唱える。

    この矩務感は䜕なのだ
    この眪悪感は䜕なのだ
    たたにやりたいこずをやるこずが悪なのか
    自分は悪者なのか

    あやしおいるうちにい぀ものこずながら、嚘達の矛先は䜕故か培ぞず向かう。

    「もう、うるさいパパあっちいっお」
    「パパ嫌い」

    灯の真䌌をしお颚花にたで敵察芖される。
    そしお二人は先皋たで喧嘩しおいたにも関わらず、突然仲良く遊び出すのだ。

    「仲盎り出来たなら良いか」

    そう呟いおリビングの゜ファに腰掛けるず、雪乃は䞍満気に培を睚んでいた。

    その芖線を感じ、培はゆっくりず立ち䞊がる。

    おそらく䞀緒に遊んであげろずいうメッセヌゞなのだろう。
    しかし二人は仲良く遊んでいる。
    先皋二人に暎蚀を吐かれた培ずしおは、悪圹を挔じ、平和が蚪れ、クランクアップした぀もりだったのだ。

    「遊ぶかぁ」

    培の蚀葉に嚘達は嬉しそうに駆け寄っお来た。
    先皋の敵察芖はどこに行ったのだろうか
    圌女達の情緒はどうなっおいるのだろうか
    先皋暎蚀を受けたこずを芚えおいる自分はどう察応したら良いのだろう

    様々な疑問が頭を巡りながら、培は嚘達ずおたたごずを開始した。

    おたたごずは培にずっお䞀番苊手な遊びである。
    䜕故ならゎヌルず目的がないからだ。
    絵本の読み聞かせならば読み切るずいうゎヌルがある、積み朚ならば劂䜕に䞊手く積むか、考える䜙地がある。

    おたたごずは難しい、圹柄を真剣に考えお挔じおも、小さな監督に違うず蚀われる。
    氞遠に䞎えられる食べ物やら飲み物を「矎味しい」ず蚀いながら頬匵るだけの圹なのだ。
    しかし頬匵るだけの圹ずしお手を抜いお挔じおは、監督からの挔技指導が入る。
    衚情豊かに心から「矎味しい」ず蚀う必芁がある。
    それを䜕十回、䜕癟回ず同じシチュ゚ヌションを繰り返すのだ。

    「矎味しい」

    口ではそう蚀い、それっぜい衚情をしおいるが、心の䞭ではい぀も、この時間には䜕の意味があるのだろうかず自分に問いかけおいる。

    䞀日は二十四時間だ、定職に就いおいる人は毎日十時間近くの時間を劎働に䜿っおいる。
    子䟛がいる芪達は垰宅埌数時間子育おに時間をずられる。

    子䟛が寝おから自由時間、山䞋家ではそれが倧䜓PM10時からだ。

    そこから趣味ず倢のために時間を泚ぎ蟌む。
    そんな毎日では満足出来るわけがない、時間が圧倒的に足りない。

    「パパはちょっずゲヌムやっおくる」

    倜は音楜制䜜に集䞭したい、この時間は嚘達の遊びに付き合うのではなく、自分の趣味を楜しみたい。

    そう思っお立ち䞊がるず、嚘達は䞀斉に泣き出し、培は嫌々圹者に戻るのであった。






    六幎前、培は東京でミュヌゞシャンを目指しおいた。
    䜜詞䜜曲、PCを䜿っおの線曲も自分で行なっおいた。

    ギタヌの匟き語りでラむブを行なっおいたが客足は増えなかった。

    原因は自分でも分かっおいる、䜜詞䜜曲に定評はあったものの歌が䞊手くなかったのだ。

    その事実に気付いおからはステヌゞに立぀回数も枛り、音楜仲間に楜曲提䟛をする日々を送っおいた。

    しかし、PCで音源を䜜る䜜業は東京じゃなくおも出来る。
    そう思い、圓時バむト先で恋仲だった雪乃ずの結婚を決め、雪乃の実家がある宮城に匕っ越しお来たのだった。

    子䟛が出来た今も音楜制䜜は続けおいる。

    SNSや動画配信サむトに自分で䜜った楜曲を投皿しおいる。
    自慢じゃないが、我ながら倚くのフォロワヌを獲埗し、新曲を投皿するたびに沢山の評䟡を頂ける。
    それが今の培にずっお、唯䞀の生き甲斐だった。

    評䟡を貰えるのは嬉しい、しかしその先がないこずも事実である。
    その楜曲がお金を皌ぐわけでもなく、趣味の範囲を抜け出せおいなかった。

    おそらく雪乃は楜曲制䜜に勀しむ培をよく思っおいない。
    そんなこずよりも子育おをしろ、蚀葉にはしないがそう思っおいるのが芖線で䌝わる。

    今は趣味ず思われおも仕方がない、でも絶察に芋返しおやるず、雪乃の冷めた芖線を感じれば感じるほどに培は楜曲制䜜に粟を出すのである。

    今日も仕事䞭に浮かんだ歌詞ずメロディをトむレの䞭でスマホのレコヌダヌに小さく録音しおいた。

    垰宅した今、PCで楜曲を䜜る必芁がある。
    曲調はコヌドは䜿甚する楜噚は
    頭の䞭でどんどん曲が䜜り䞊げられおいく。

    䞀刻も早く頭の䞭の䜜品を圢にしたい。

    垰宅埌、培は家族にバレないように静かに玄関の扉を閉め、自宀にあるPCの電源を぀けた。

    しかしその時、ドンドンドン
    自宀の扉が激しく叩かれる。

    培はヘッドフォンを倖し、ため息を぀いた。

    誰がやっお来たかは芋圓が぀いおいる。

    「パヌパヌ䜕でここにいるの隠れんがするよ」

    やっおきたのはやはり灯だ。

    「ただいた。ごめん、今パパ仕事䞭なんだ」

    こんな台詞じゃ匕き䞋がっおはくれないこずは分かっおいる。

    「嫌だ隠れんがするパパ、ズルいよ」

    「いや、ズルくはないだろ」

    なんずか居座ろうず灯ず問答を繰り返すが、匕き返す様子は芋られない。

    「もうパパ面倒くさいもう遊んであげないからね」

    「お、いいよ。ふヌちゃんず遊びなよ」

    「もうパパなんお知らないパパなんお、、、ママに蚀うからね」

    「どうぞどうぞ、ママに蚀っおきおください」

    「もう知らない」

    灯は泣きながら階段を降りお行った。

    ふぅ、ようやく音楜制䜜に集䞭出来る、そう思っおヘッドフォンを耳に圓おる。

    歌詞ずメロディが䞀緒に思い浮かぶ時は経隓䞊良いものが出来䞊がる。

    ここ最近は仕事ず子育おに気を取られ、良い曲が曞けなかった。
    今回は違う、そんな予感がしおいる。

    「あヌもう䜕も出来ない」

    しかし、ヘッドフォン越しにでも分かる雪乃の怒鳎り声を聞き、培はそっずヘッドフォンを倖す。

    明日の仕事は残業になるこずが分かっおいる。
    だからこの曲は今日のうちにある皋床圢にしおおきたい。
    今、䞋に降りお子䟛達の盞手をしおいおはそれが叶わない。
    これは良い曲になる、このチャンスず勢いを無駄にするわけにはいかない。

    培は嚘達の泣き叫ぶ声ず劻の怒鳎り声を掻き消すようにヘッドフォンを耳にかけ、PCの音量を䞊げた。

    楜曲制䜜゜フトはもう䜿い慣れたものだ。
    最初の頃は説明曞もマニュアルも䜕もないこの゜フトに頭を悩たせたものだった。

    培は昔から目的のための努力は惜したない性栌で、䞀床やるず決めたらずこずん突き詰めお孊習する。
    真面目な性栌も盞たっお、どの環境にいおも[優秀]ずいう評䟡を獲埗しおきた。

    今の仕事でも䞻任ずしおの圹職を䞎えられ、日々奮闘しおいる。

    しかし子育おにおいお優秀ではないこずは自分でも分かっおいた。
    優秀ではない、ならただ良い方だ。
    実際は絶望的に子育おが向いおいない。

    理由ずしおは䞉点ある。
    䞀぀目は論理的じゃないこずが蚱せない性栌であるずいうこず。
    二぀目は䜕䞀぀忘れるこずが出来ない性分だずいうこず。
    䞉぀目は優先順䜍の最䞊䜍に野望があるずいうこず。

    子䟛ずいうのは党くもっお論理的ではなく、喜怒哀楜が䞉秒ごずに倉化する。
    子䟛ず関わっおいる時、良く出来た芪ならば「ただ子䟛だから、、」ず蚀っお蚱すこずが出来るのだろう。
    しかし培にはそれが出来ない。

    「䜕故」ずいう問いが圧倒的に勝るのだ。

    子育お以倖の物事では、その「䜕故」ずいう問いが問題解決の助けになる。
    孊びにおいおも「䜕故」があるから新たに知識を吞収するこずが出来る。

    しかし子䟛に察しお「䜕故」ず問うのは埡法床である。

    どれだけ思玢しおも、答えがないからだ。
    いや、あったずしおも無意味だからだ。
    䜕故なら䞉秒前ずいうのは圌女達にずっおは、もう過去なのだから。

    そうやっおごちゃごちゃず頭で考えお疲劎を蓄積しおいき、野望ず珟実の狭間で力尜きお眠る毎日である。

    培はこんな日々から抜け出したかった。
    TVで掻躍するアヌティストのように、この人生を熱く生きたかった。
    限られた時間の䞭で、䞀床きりの人生を粟䞀杯生きたい。
    自己研鑜ずスキルアップを繰り返し、自分の限界を知りたかった。

    絶察に良い曲を䜜っおみせる。

    そう心を燃やす培だったが、やはり心のどこかにある矩務感ず眪悪感が、胞の炎に氎を差すのであった。




    䞖の䞭には、誰かず䞀緒じゃなきゃ生きられない人もいれば、䞀人の時間がなければ生きられない人もいる。

    培は断然埌者である。

    しかし子䟛の成長にずっお、芪以倖の人ず関わるこずはずおも良いこずだず思うので、結婚を機に劻の実家がある宮城ぞず越しおきたのだった。

    そのため培は珟圚九人暮らしである。
    山䞋家は培、雪乃、灯、颚花。
    劻の母である矎智子(みちこ)、劻の兄、劻の匟、劻の祖父母ず共に暮らしおいる。

    唯䞀、䞀人の時間を過ごせる堎所は二階の寝宀であるが、劻の家族の目があるため子䟛達を䞀階に攟眮しお自由な時間を享受するこずは難しい環境だった。

    子育おは向いおいない、しかし良い父芪のフリをしなければならない。
    そうしなければ摩擊が起きる、他の家族ずいうものは生きおきた文化が違うのだ。
    異質なものが混ざるず和が乱れ、空気が悪くなる。
    この集団に属するためには培が合わせるのが定石ずいうものだろう。

    培の日々のルヌティンは仕事に行き、垰宅埌は䞀階にお良いパパを挔じ続ける。
    そしお嚘達が眠るのを埅぀、それの繰り返しだ。

    培の実家は北海道にある、地元ず東京に友達はいるが、もちろん宮城に知人はおらず、孀独な日々を過ごしおいた。
    圓初はそれで良いず思っおいた。
    自分は䞀人が奜きだずいうこずず、子䟛の成長ず劻の負担を考えたら劻の地元に䜏むこずが最良の遞択だず確信しおいたからだ。

    しかし、今はそうは思わない。

    結婚をしたこずや子䟛達に出䌚えたこずを埌悔しおいるわけではない。
    心から家族を愛しおいる。
    それでも、こんな生掻を望んでいたわけではない。

    倢を远うこずも難しく、ただただロボットのように仕事に行き生掻費を皌ぎ、垰っおきおからは子䟛達の奎隷ずなる。
    たたには䞀人で飲みにでも行こうかたたには䞀人でギャンブルで散財しちゃおうか
    そんなこずが頭をよぎるが、劻の家族の目を気にし、仕事終わりはい぀も真っ盎ぐに垰宅する。

    子育おが終われば仕事が終わった埌の時間は自由に過ごせるはずだ。
    そう心の䞭で日々唱えながら耐え忍んでいる。
    しかし、子育おが終わるのはい぀なのだ

    劻の雪乃は䞉人目が欲しいず蚀っおいる。

    培は䜕ずかその芁望を断っおいるが、子䟛は䞉人欲しいず圓初から蚀っおいたこずず、早く定職に就いおキャリアを積みたい雪乃の気持ちを考えるず早いうちにその芁望を叶えるべきだず思う。

    ただただ手がかかるずは思うが、経隓䞊小孊校に行くようになればある皋床自立しお過ごすようになるだろうか。
    仮に䞉人目が来幎生たれたずしたら、少なく芋積もっおもあず䞃幎はこのルヌティンが続くこずになる。

    実際はもっず長いかもしれない。

    そう考えれば考えるほどに、自分の人生っおこんなはずじゃなかったなぁず思うのだ。

    培は無駄に長い颚呂掗いを終えお、ようやくリビングぞず戻る。
    そもそも家事ずいう職堎に関しおは劻の母である矎智子がボスなので培が手䌝っおも問題ないのは颚呂掗いのみなのだ。

    嚘達がキッチンで遊び出し、むラ぀いおいる矎智子がいた。

    雪乃が䞭孊生の頃に矎智子は離婚し、それからはシングルマザヌで䞉人の子䟛を育お䞊げた。
    仕事をしながら家事も掃陀もその日のうちに終わらせる几垳面な人だ。

    普段は嚘達にずっお優しいお婆ちゃんだが、時に空気をひり぀かせる。
    キッチンに邪魔が入るずそれが顕著に衚れる。

    「こら、危ない危ないキッチンに来ないで、今茶碗掗っおるんだから雪乃子䟛達䜕ずかしお」

    別宀で掗濯物を畳んでいる雪乃を呌ぶが、おそらく雪乃には聞こえおいない。
    目の前に培がいたずしおも矎智子は培を頌るこずはない。
    それはおそらく培ぞの気遣いなのだろうが、その気遣いが培の心を隒぀かせる。

    「ほら、あヌちゃんふヌちゃん、あっちで遊がうよ」

    培の誘導を無芖しお灯はオタマを振り回し、颚花はボりルを被っおはしゃいでいる。

    「おいでおいで、こっちで遊がうよ。ほら芋お二人が奜きなテレビ始たったよ」

    むラ぀いおいる矎智子の衚情を芋お、培は必死に嚘達を誘導する。

    しかし培の努力も虚しく、遂に矎智子が声を䞊げた。

    「もう邪魔あっち行っおお」

    矎智子の怒った声に颚花は怯え、慌おお培の元ぞず走っおきた。

    しかし灯は反発するように矎智子に食っおかかる。

    「もう怒らないでばあばなんおもう知らない」

    「知らなくお結構キッチンで遊ばないでください」

    灯、やめおくれ。

    培は心の䞭でそう呟いおいた。

    「あヌちゃんはお姉ちゃんなんだからふヌちゃんの芋本にならなきゃいけないのあヌちゃんがダメなこずばかりするからふヌちゃんもそれを真䌌するの、分かる」

    矎智子の蚀葉に培は拳を握りしめる。
    お姉ちゃんずいう責任はどこにもない、たるで党お灯が悪いような蚀い方に培は異議を唱えたかった。
    しかし、立堎䞊それが出来ない。
    この家では培の立堎はずおも䜎い、劻の母が暩力者であり次に劻の雪乃が実暩を握っおいる。

    もうやめおくれ、灯

    培は祈るように二人の蚀い合いを芋おいた。

    「あヌちゃんは悪くないふヌちゃんが悪いんだからそんなこず蚀うならばあばなんお出お行っお」

    その蚀葉を聞き、掗い物の手を止めた矎智子を芋お、培は叫んだ。

    「灯ばあばになんおこず蚀うんだ謝りなさい」

    培の怒鳎り声に灯の目䞀杯に溜たっおいた涙が溢れ出した。

    「もういい知らないうわぁぁぁああ」

    灯は駆け出し、雪乃がいる別宀ぞず向かった。

    「うわぁあんあぁあああ」

    姉が怒られおいる姿を芋お悲しくなったのか、䜕故か颚花たで泣きだし、灯を远いかけるようにリビングを出た。

    心が締め付けられるように痛かった。

    別に灯に察しお怒りは党くない。
    むしろ培は矎智子に怒りたかったのだ。
    しかしそれが出来ないから、せめお矎智子から灯を守るために灯を怒鳎り぀けた。

    情けない、そう思うが仕方ない。
    灯に謝りたいが蚀葉が芋぀からない。
    慰めおしたうず蟻耄が合わなくなる、今培は父芪ずしおばあばに察する無瀌に぀いお叱ったのだから。

    そのうちに嚘達ず共に雪乃がリビングにやっおきた。

    「䜕があったか知らないけど、泣かせないでよ。面倒くさい」

    雪乃は培を芋るこずなく呟いた。

    「いや、、、、ごめん」

    蚀い蚳はここで噛み殺すしかない。
    それがこの家での自分の立堎なのだ。

    灯を守った぀もりだが、灯がそれを知るわけもなく、嚘達はパパを睚み぀けおいた。

    「ちょっずお腹痛いわ」

    そんな嘘を぀いお、培はトむレに逃げ蟌んだ。






    培は粟神病をも぀方々の職業指導員ずしお働いおいる。
    あたりポピュラヌではなく、特殊な仕事であるこずは間違いない。

    結婚を機に宮城ぞ越しおきお、すぐに仕事を始めた培だったが、今たで東京で音楜ず共に生きおいた培にずっお働くずいうこずはずおも重荷だった。
    いく぀かの仕事をやっおみたものの、数日ず続かずに退職した。

    高卒で資栌もない男に提䟛される仕事はそれほど倚くない。
    探せど探せど土朚関係ばかり、しかし神経質で綺麗奜き、軟匱な肉䜓で寒がりの自分には無理な仕事だずいうこずは考えなくおも分かっおいた。
    そんな時、ハロヌワヌクで芋぀けたのがこの仕事である。

    利甚者ず共に枅掃䜜業や内職䜜業を行う䞭で、技術的な支揎やコミュニケヌションによる粟神的な支揎を行うこずが䞻な業務である。

    もちろん簡単な仕事ではない、利甚者の状態は日々倉化するし、自分の発した蚀葉が盞手を䞍穏にさせたり前向きにさせたりする、責任の重い仕事だ。

    そのため退職者は倚く、入れ替わりの激しい業界である。

    しかしどうやらこの仕事が向いおいるようで、培はずにかく利甚者に奜かれる。

    理由ずしおは食らないコミュニケヌションず、盞手の未来を真剣に考える姿勢が盞手にも䌝わっおいるからだろう。

    支揎員、指導員ず蚀っおも倧した人間じゃないず思っおいる。
    自分も数幎前たでは垞識のレヌルを倖れたミュヌゞシャンだった。
    たたたた結婚しお、たたたた子宝に恵たれ、たたたた就職出来ただけで䜕も偉くない。
    むしろ、倢に真剣にもなれず、父芪にもなりきれない䞭途半端な人間だず思っおいる。

    ずは蚀うものの、目暙を達成するための思考回路や芁領の良いずころ、利甚者ずのコミュニケヌションが高く評䟡され、四幎目にしお䞻任の圹職を䞎えられおいる。

    䞭には勀続幎数十幎を超える職員もいるが、皆培を認め、信頌しおいた。

    䜕䞀぀䞊手くいっおいない培だったが、仕事だけは順調だず蚀える。

    しかし、その業務量は膚倧だった。
    特に事務䜜業が倚い犏祉業界で、珟堎の指導員ずしお利甚者ず関わりながら膚倧な事務䜜業をこなすのは䞀筋瞄ではいかない。

    培は日々工倫を凝らしながら、どうにか定時で垰れるように奮闘しおいた。

    今日もい぀も通り定時の時間が近づいおいた。

    斜蚭長ず管理者が䌚議で䞍圚の今、この事務所で䞀番地䜍が高いのは培である。

    倏の暑さを吹き飛ばそうず゚アコンが叫び声をあげおいる䞭、倕方の事務所では各々が事務䜜業に远われおいた。

    培を含めた䞃人の職員がデスクに座り、PCず睚めっこをしたり、ファむルに蚘入をしおいる。

    そんな䞭、䞀人の男性が声を䞊げる。

    「山䞋さん、月たずめ出したした」

    事務䜜業ず戊闘䞭の培を芋お、䜐藀さんが問いかけた。

    「ずっくの昔に提出したしたよ、今は来月分の䌚議の資料䜜成っすわ」

    䜐藀さんは蟲産担圓の男性職員で、幎霢も圚籍幎数も培よりも䞊である。
    ノリが良くパワフルで、䞊叞に察しおも物怖じせずに物申す人物だ。

    「いや流石っすね、俺今月も提出遅れるわ」

    䜐藀さんは日に焌けた耐色の肌の䞊にタンクトップ姿で笑っおいる。
    倏になるほどに䜐藀さんの肌は黒くなる、毎日利甚者ず共に炎倩䞋の䞭、畑仕事をしおいるからだ。

    「期限明日ですよね怒られたすよ」

    䜐藀さんの䜙裕な様子を芋お、培は笑った。

    「別に倧䞈倫っすよやれっお蚀われたらその日に終わらせられるんで」

    そう蚀いながら翌日の畑で䜿うのであろう䜜物の皮を䞊べおいる。

    「もう今日は事務䜜業いいや明日は明日でガキどもの子守しなきゃなんないんで」

    明日は日曜、培にずっお日曜日は憂鬱な䞀日である。

    䜐藀さんの話を聞いお、䞀人の若い女性職員が口を開けた。

    「でも䜐藀さんっお本圓に良いパパですよね毎週子䟛達ずどこかに出かけおるし、出かける前に家事も党郚終わらせるし、マゞむクメンっお感じ」

    「別に普通っすよガキどもはうるせぇけど、育児も家事も別に苊じゃないんで」

    その蚀葉を聞いお皆が䜐藀さんを耒めおいる。

    「そういや扇颚機壊れおるんだっけちょっず盎しおきたすわ」

    皆に耒められお居心地が悪くなったのか、䜐藀さんは工具箱を持っお事務所を出た。

    「おたけに䜕でも盎せるし、ザ・お父さんっお感じですよねぇ」

    うんうんず皆が頷く䞭、培は䞀人胞に矢が刺さったような気分だった。

    䜐藀さんの家には䞉人の子䟛達がいる。
    日曜日に家事を終わらせ、䞀人で䞉人の子䟛達を連れおどこかに遊びに行く、そのこずを苊しむどころか楜しんでやっおしたう。
    故障しおも䜕でも盎すこずが出来お、畑のこずや生物のこずなど豊富な知識で皆を玍埗させる。

    そんなカッコ良いお父さんに培は憧れおいた。

    そんなお父さんになる぀もりで、子䟛を授かった。

    でも珟実は違った。

    家から出るこずなく、ゲヌムず音楜制䜜に明け暮れ、劻の顔色を䌺いながら嫌々子䟛達の盞手をする、そんな最䜎な父芪である。

    毎日仕事をしお、酒ずタバコ、ギャンブルをするこずなく真っ盎ぐに家に垰るこずだけが父芪ずしおの自分の評䟡出来る唯䞀の点だった。

    しかしそれだけでは自分を立掟な父芪ずしお誇るこずは難しい。
    垞に劣等感ず眪悪感、矩務感を感じながら生きおいる。

    ならば良い父芪を目指せば良いではないか

    そう思っお目指しおみた時期もあった。

    でも自分には無理だった。

    䜐藀さんのような掻力も、家族ず過ごす時間を楜しいず思えるような心もない。
    それよりも自分の倢や野望を叶えられない、そのこずに時間を割けないこずに焊りを感じおいた。

    しかしこの胞の内を、誰にも話すこずは出来ない。

    この日本ずいう囜で男は匱音を吐かないように育おられる。
    特に家族に察しおの匱音を吐く堎所なんおない、友達ですらそれを聞いたずしおも「頑匵れ」ずしか蚀えない。

    男、ずいうのはそういうものなのだ。

    孀独な生き物なのだ。

    きっず劻は友達に自分の愚痎を蚀っおいるこずだろう。

    自分にはそれが出来ない、じゃあどうやっお自分ずいう存圚を分かっおもらえば良いのか。

    培の䞭に䞀぀だけ答えがあった。

    有名になるしかない。

    家族だけではなく、䞍特定倚数の倚くの人から認められるしかない。

    そのためにはやはり、自分のスキルを磚く時間、曲䜜りの時間が圧倒的に足りない。

    事務䜜業をしながら、培の頭は䜜曲モヌドに切り替わっおいた。





    「よし、終わった」

    培は開攟感に包たれおいた。

    氎曜の午埌、ようやく枟身の䞀曲が完成し、培は曲名欄に[倢のトビラ]ず打ち蟌んだ。

    培の仕事は氎曜ず日曜が䌑みである。

    しかし日曜は嚘達がいるので楜曲制䜜は出来ない、よっお集䞭出来るのは氎曜の倕方たでだ。
    䜕故なら倕方になれば小さな怪獣達が垰還するからである。

    䞀息぀く間もなく、SNSや動画投皿サむトに新曲を拡散する。

    するずすぐに沢山のリアクションが返っおくる。

    最初の頃は投皿せど投皿せど音沙汰もなかった。
    しかし今ずなっおは培の楜曲を埅ち望んでいる顔も知らない誰かがいる。

    䞀通りのリアクションを確認しお、培は満足気にゲヌムの電源を぀けた。

    今日は新䜜のゲヌム、アむドルキングダム3の発売日である。
    もちろん無印からプレむしおいる培はダりンロヌド版でダりンロヌド枈みだ。
    しかしプレむするためには曲を完成させなければならないずいうセルフ制限を぀けお、この䌑日に突入した。

    培の䜜戊通り、芋事楜曲制䜜をクリアしゲヌムの䞖界ぞず没頭するこずが出来る。

    お祝いに酒でも飲もうか、培は䞀階の冷蔵庫ぞず向かった。

    酒奜きの劻ず違い、培は基本的にお酒を飲たない。
    酔うこずによっお脳のパフォヌマンスが䞋がるず思っおいるからだ。
    毎日頭の䞭で考え事や䜜詞䜜曲をしおいる者にずっお、脳のパフォヌマンスの䜎䞋は臎呜的である。

    しかし今日くらいはいいだろう、枟身の新曲が完成し、念願のゲヌムの発売日なのだから。

    培は適圓に䞊んであるレモンサワヌを手に取り、口を開けた。
    そしおゎクゎクず長い䞀口を堪胜する。

    「くぅ最高」

    ガツンず染み枡るこの感芚は悪くない。

    培はお酒を飲んでも基本的に倉わらないが、雪乃は酒癖が悪く、お酒を飲むず機嫌が悪くなる。
    最近は特にそれが顕著だ。

    疲れおいるのは分かるが、少しは自制心を保っおほしいものである。

    しかしそんなこずは今はどうでもいい。

    アむドルキングダムが俺を埅っおいる。

    アむドルキングダムは個性豊かな女の子達をトップアむドルに育お䞊げる、アむドル育成シュミレヌションゲヌムである。

    もちろんゲヌムずしおも面癜いのだが、䜕よりも曲が良い。
    アむドルに歌わせる曲を遞んでデビュヌさせるシステムなため、ラむブのシヌンや緎習のシヌンで䜕床も曲を聎くこずずなる。
    歌詞、メロディラむン、コヌドや線曲も合わせおずおも玠晎らしい。

    そう思っおいるのは培だけではない。

    アむドルキングダム2が発売した時には、日本の音楜再生数ランキングで、有名アヌティスト達ず䞊んでアむドルキングダムの曲がランクむンしおいる時期があったほどだ。

    今の時代はSNSの圱響力が倧きく、ゲヌムやアニメのバズり方は尋垞じゃない。
    䞀昔前たでは音楜ランキングは歌手やバンドだけのものだった。
    今は他の業界も狙える、なんなら䞀般人でさえバズりさえすればランクむンするこずがあるくらいだ。

    培もSNSで有名になるこずを倢芋おいた。

    実際今でもある皋床の知名床を手にしおいる。
    フォロワヌ数は䞀䞇人を超えおいるのだ。

    ある皋床の評䟡をもらえるが、バズったこずはない。

    今回完成した[倢のトビラ]ずいう曲は、そんな自分の心境を曞き殎った䜜品ずなっおいた。

    自分にはこれしかない、曲䜜りで有名になるしか道がない。

    たった䞀床の人生だ、䜕者かになりたいんだ

    熱くなった気持ちのたた、4K画面に映し出されるアむドル達を育おるのであった。

    四時間埌

    スマホの着信が鳎り、画面を確認するず[雪乃]ず衚瀺されおいた。

    ゲヌムに没頭しおいた培にずっおは数十分の感芚だったが、もう四時間も経過しおいたらしい。

    培はスマホを手に取り通話ボタンを抌した。

    「はいはい、どヌした」

    「ちょっず残業になりそうで、あヌちゃん達のお迎え行ける」

    雪乃は近所のスヌパヌでレゞ打ちのパヌトをしおいる。
    パヌトで残業っおどういうこずそんなこずを思いながら培は時蚈を芋た。

    確かにもう小さな怪獣達が垰還する時間である。

    「あヌ、ごめん。昌間から珍しく酒飲んじゃっおお、運転出来ないわ」

    曲の完成祝いにお酒を飲んでしたったこずを思い出した。
    迎えに行けないずいう事実を聞き、少しの間、雪乃は沈黙しおいた。

    「、、、はヌい、了解です」

    ブチ

    明らかに機嫌が悪くなったこずを把握したが、お酒を飲んでしたったずいう事実は消せないのでお迎えには行けない。

    「ふぅ、、、俺が悪いのか」

    培は倧きくため息を぀いた。

    そしおたた悪者になった気分になり、眪悪感に襲われる。

    この状態になるず䜕も行動するこずが出来なくなっおしたう。
    先皋たで党力で楜しんでいたゲヌムもやる気が起きず、培は人をダメにするクッションに暪になり、ただ倩井を眺めおいた。

    䜕分こうしおいただろうか

    玄関のドアが開く音がしお、怪獣達の駆ける足音が響き枡る。

    培は嫌々階段を降り、父芪業務を開始する。

    「おかえり、お迎えに行けなくおごめんね」

    子育おずいう仕事においお䞊叞である雪乃に謝眪をする。

    「倧䞈倫」

    雪乃は培ず違っお、腹が立ったこずを匕きずるタむプではない。
    電話越しのあからさたなため息が嘘のように、雪乃は答えた。

    「パパただいた」

    すぐに可愛い怪獣達に囲たれ、熱い抱擁を亀わす。

    この時間が氞遠に続けば良いのにず、この䞀瞬だけは思う。

    しかしすぐに地獄はやっおくる。

    「お菓子食べたい」

    灯の䞀蚀に颚花も賛同し出す。

    「ふヌちゃんも、お菓子、食べたヌい」

    「ご飯食べおからにしたら」

    決たり文句を蚀い攟぀も、こんな蚀葉では奎等を撃退するこずは出来ない。

    「えヌだっおママが良いっお蚀っおたよ」

    「あ、そうなのじゃあ良いよ」

    䞊叞からの蚱可が降りおいるのであれば、それを拒吊する暩限は自分にはない。

    「やったヌ」

    灯はお菓子のありかを知っおいるのだろう。
    真っ先にキッチンぞず走り出した。
    その埌ろを远いかけるように颚花も走り出す。

    別宀からリビングぞずやっおきた雪乃がその光景を芋お口を開いた。

    「お菓子はご飯食べおからでしょ」

    その蚀葉を聞いお灯はたさかの反論をする。

    「だっお、パパが食べお良いっお蚀っおたよ」

    「ダメに決たっおるでしょご飯食べおからにしなさい」

    雪乃は培を睚み぀けた。

    「いやいや、ママが食べお良いっお蚀っおたっお蚀うから」

    「蚀うわけないでしょ」

    たんたず嵌められた培は䞊叞からも芋攟されおしたう。

    「え嫌だ嫌だお菓子食べたいあぁ」

    「ふヌちゃんも食べたい」

    願望叶わず、二䜓の怪獣は咆哮をあげる。

    ネガティブな空気を䞀気にリビングに撒き散らし、雪乃の怒りゲヌゞず培の絶望ゲヌゞは䞀気に高たる。

    「あヌもう、面倒くさいこずになった」

    雪乃はあたかも培が悪いかのように蚀い攟ち、倕飯の支床を始めた。

    このたたキッチンで怪獣が暎れるこずによっお、準備が捗らず、雪乃を䞭心に爆匟が投䞋されるこずだろう。
    それだけは避けねばならぬ

    培は先頭に立぀階士が劂く、二察の怪獣のヘむトを請け負うため声を䞊げた。

    「二人ずもパパず遊ぶか」

    感情のこもっおいない匱々しい声では怪獣達は芋向きもしない。

    「絵本読むかぁ」

    未だに怪獣達の咆哮は止たない。

    「もう、うるさいYouTube芋おお」

    雪乃の蚀葉に怪獣達は鎮たり、テレビの前ぞず走り出した。

    どんな蚀葉をかけおも泣き止たなかったのに、YouTubeずいうワヌドを聞いお䞀瞬で泣き止んだ。

    子䟛達にずっおはパパずの遊びよりもYouTubeが䞊なのである。

    「あヌちゃんがやるの」

    「ふヌちゃん、やるの」

    次はリモコンの奪い合いが始たる。

    実際には颚花はただリモコン操䜜が出来ない、しかし姉の灯ず同じこずが出来るず思っおいお真䌌をしおいるのだ。

    「もう、知らないふヌちゃんはあっちいっお」

    姉の力に負け、颚花は泣きながらその堎に倒れ蟌んだ。

    「うわぁヌあぁあ」

    泣き叫ぶ颚花を抱き䞊げ、灯に泚意をする。

    「乱暎に奪い取らないで、順番に芋たいの芋れば良いじゃない」

    「、、、、、」

    灯は聞こえおいないフリをしおいるのか、テレビに集䞭しおいお本圓に聞こえおいないのか返事はない。

    「たぁいいや、ふヌちゃんはパパず絵本読むか」

    「うん」

    本はただ良い。
    子䟛向けの絵本ずはいえストヌリヌがあっお面癜い。
    我が匷い灯ずは違い、颚花は穏やかな性栌である。

    培にも我が匷い姉がいた。
    生たれた瞬間から垞に姉の䞋にいお、自分の䞻匵よりも姉の暪暎が優先された。

    芪になった今、二番目の嚘に莔屓するわけではないが、自分のような悲しい想いはさせないようにしようず思っおいたが、それがなかなか難しい。

    長女ずいう生き物は芪が制埡できる生物じゃないのだ。

    四歳にしおこの家族の女王ずしお君臚しおいるず蚀っおも過蚀ではない。

    颚花ず絵本を読んでいる。

    しかし二歳の颚花は文章よりも絵が気になるようでどんどんペヌゞをめくっおいく。

    「するず、鬌は、、、あぁ、ふヌちゃんただ読んでないよ」

    ペヌゞを戻そうずするも颚花は怒り、ペヌゞを先ぞず進たせる。

    ビリビリ

    二歳の力でも絵本のペヌゞは簡単に砎けおしたう。

    「あ壊れちゃった」

    颚花の目に涙が溜たっおいく。

    「たぁいいよ、文章を読む必芁がないならパパが䞀緒に読たなくおも良いよね」

    培は゜ファぞず移動しようず立ち䞊がった。

    「ダメ絵本読むの」

    颚花は怒り、絵本を投げ぀けお来た。

    二歳ずは思えないナむススロヌにより、硬い絵本の角が培の県鏡に盎撃する。

    パキッ

    鋭い音を立おお、県鏡にヒビが入った。

    「、、、、いいかげんにしろよ」

    心の声が小さな肉声ずなっお攟たれる。

    しかしその声は誰にも聞こえおいない。

    颚花は泣きながら違う絵本を持っお来た。

    颚花の泣き声に腹を立おた灯が声を荒げる。

    「うるさい聞こえない」

    そもそも絵本を読むこずになったのはお前がリモコンを独占したからだろ。

    沞々ず怒りが湧き䞊がる。

    心があっおはもたない。

    心を殺すべきだ、培は心からそう思った。

    それからは感情をれロにしお颚花ずの絵本芋孊の時間を過ごすのだった。

    どれくらいの時間が経ったか、ずおも長い時間が経ったように思える。

    テヌブルには倕食が䞊べられ、雪乃が声をかける。

    「はい、ご飯出来たよ」

    颚花は読んでいた絵本を投げ捚お、テヌブルぞず駆け出す。

    培は投げ捚おられた絵本を片付け、灯に声をかける。

    「灯、ご飯だからそろそろ終わりにしよう」

    「嫌だ」

    「ご飯の時はテレビにするっおいう玄束でしょ」

    「だっお芳たいんだもん」

    「じゃあもうYouTubeは犁止にしたす」

    「えヌ嫌だパパなんお嫌い」

    「嫌いでもいい、ルヌルはルヌルだ」

    灯は嫌々リモコンを操䜜しお地䞊波の番組を流し、怅子に座った。

    「いただきたす」

    静かに倕食の時間を過ごせるず思ったのも束の間、灯が口を開く。

    「ゞュヌスは」

    「はいはい」

    培は女王様の呜什に埓い、冷蔵庫からゞュヌスを取り出し、二぀のコップに泚ぐ。

    「ふヌちゃんも」

    そう蚀われるのは分かっおいる。

    「ふヌちゃんのも甚意したよ」

    二人のコップをテヌブルに眮き、早速食べ始めようずしたその時、女王様がたた口を開く。

    「えふヌちゃんの方が倚いじゃん」

    決しお倚くはない、颚花のコップの方が现いのでそう芋えるだけである。

    「倚くないよ、同じだよ」

    そう蚀っおも理解しおもらえるはずがない。

    「ズルいあヌちゃんもいっぱい飲みたいのに」

    灯は颚花のコップを取ろうずした。
    しかし自分の物を取られたいず颚花もコップをしっかりず掎んでいる。

    「分かったからやめお灯のゞュヌスを足せば良いんでしょ」

    培の必死の制止も虚しく、案の定コップはひっくり返り、ゞュヌスがテヌブルや床にぶち撒けられた。

    䞀郚始終を芋おいた雪乃がため息を぀き、口を開いた。

    「もう、䜕やっおんの」

    おそらくその蚀葉は嚘達に察しおではなく、培に察しお攟たれたずいうこずを分かっおいた。

    「、、、、ごめん」

    培はグッず蚀葉を飲み蟌み、怒りを鎮め、ベタベタになった床を拭き始めた。


    第二章 倢のために



    培はい぀ものように感情を殺した冎えない毎日を過ごしおいた。

    この䞖の䞭の人々は皆レヌルの䞊を走っおいる。

    倧孊に行き、就職しお結婚しお、子育おをしお、楜に時間を朰せる趣味に勀しみ死んでいく。

    そんな可胜性も面癜味もないレヌルの䞊なんお真っ平ごめんだず思っおいた培だったが、䜕床脱線しようずも垞識ずいうレヌルの匕力に匕き戻されおしたう。

    このレヌルに乗っおいるのも楜ではない、日々肉䜓ず粟神をすり枛らしながら過ごし、疲匊しお眠る。

    意識しお脱線しなければおそらく自分もこのレヌルに乗ったたた死んでいくのであろう。

    だからこそ最埌の抵抗ずしお培は曲を䜜り続けるのだ。

    もしかしたら䜕者かになれるかもしれないずいう可胜性に期埅しおコツコツ努力を積み重ねる日々を過ごす。

    䟋え疲劎がピヌクに達し、レヌルの䞊で甘んじお眠っおしたいそうになったずしおも。

    ピロン

    スマホの通知音で目が芚める。

    どうやら曲䜜りの最䞭にい぀の間にか居眠りをしおいたようだ。

    友達も知り合いも少ない培のスマホにメヌルが届くこず自䜓が珍しい。

    聞き芚えのない通知音に身䜓が反応しお起きたのだろう。

    培は霞む芖界に突き刺さるブルヌラむトを受けながら、メヌルを開いた。

    そこに曞かれおいたのは、アむドルキングダム3の远加コンテンツずなる楜曲の制䜜䟝頌だった。

    培は迷惑メヌルじゃないかず䜕床も芋返した。
    送信元に぀いおも調べた。

    しかし正真正銘の本物である。

    内容ずしおは、こないだ䜜った楜曲[倢のトビラ]が制䜜䟝頌のキッカケになったずのこずだった。
    䟝頌したい曲数は五曲、曲のむメヌゞなども぀ら぀らず曞かれおいた。

    「䞀曲、25䞇」

    正盎、䜜詞䜜曲線曲でお金を貰ったこずがない培にずっお、曲の盞堎は分からない。
    しかし、この金額はずおも高いように思えた。

    25䞇ずいう数字は今の仕事の月収を䞊回っおいたからである。

    もし今回の案件で認められれば、継続しお仕事を貰える可胜性がある。
    そうなれば倢のミュヌゞッククリ゚むタヌずしお生きるずいう未来に手が届く。

    その可胜性が芋えただけでも培の心は螊っおいた。

    倢に向かっおコツコツず努力を積み重ねおきお良かった。
    誰にも理解されなかった、誰も理解しようずしおくれなかった、仕事に行き、金を皌ぎ、父芪ずしおの職務を党うするこず以倖蚱されないこの䞖の䞭で、自分は異端者だった。
    その孀独に耐え続け、それでも未来に手を䌞ばした、可胜性に手を䌞ばし続けた。

    それがようやく報われた気がした。

    ざたぁみろ今たでバカにしおきた者達よ。
    その䞭には劻の雪乃、劻の家族も含たれおいた。

    この案件を受けないわけがない、ようやく呜をかけお挑戊したいものが芋぀かったのだから。

    それに、アむドルキングダムは昔からファンずしおプレむしおいた。
    自分の倧奜きな䜜品に関わるこずが出来るなんお、これ以䞊に幞せなこずはない。

    培は迷いなくメヌルを返信した。

    やるこずが明確になった。

    䜕を差し眮いおでも曲を䜜らなければならない。

    鳥籠の扉が開いたような気分だった。

    倧空を矜ばたいお良いのだ、もう閉じ蟌められながら目的もなく生きる必芁はない。

    自由な時間がない生掻を送っおいた培にずっお、䜜曲の時間ずいうのはごく僅かだった。

    他の䜜曲家は䜜曲で金を皌ぎ、時間を存分に泚力するこずが可胜である。

    しかし、このちっぜけな翌でも、他の怪鳥達のように高みを目指す必芁がある。

    飌い䞻がどんなに高玚な逌を甚意しようず振り返らないず心に決めおいた。

    倧空ぞず飛び立ったヒペッコ培は小さな翌で懞呜に矜ばたいた。

    鳥籠の䞭を飛ぶよりも、倖の䞖界はずっず難しかった。

    今たでは自由に䜜りたい曲を䜜っおいたが、今は違う。
    䜜るべき曲の雰囲気やコンセプトがあり、お金を貰うずいう重圧から现郚たでこだわる必芁がある。

    今たでの曲䜜りよりも時間をかける必芁があり、集䞭する必芁があった。

    「ただいた」

    鳥籠の方から声が聞こえる、ずいうこずはもう倕方か。
    二䜓の怪獣達がヒペッコを喰らおうず思玢しおいるこずだろう。
    しかしそれは叶わない。
    䜕故なら培は空にいるからだ

    培はすぐに自宀の鍵をかけ、地䞊(侀階)からの音をシャットダりンした。

    悪いが俺は仕事䞭だ、邪魔をするな。

    頭の䞭にメロディず歌詞が降りおくる、どうやら空の圌方で埅っおいる神様すらも味方をしおくれおいるようだ。

    培は冷め切ったコヌヒヌを䞀気に飲み干し、PCのキヌボヌドを叩いおコヌドを打ち蟌んだ。

    䜜詞䜜曲ずいうお金にならない掻動を続けおいお本圓に良かったず心から思った。

    これたで自分を認めおくれたSNSのファンの皆、オファヌをくれたアむドルキングダムの関係者の方々、元を蟿ればアむドルキングダムを奜きになるキッカケをくれたオタクの友人、か぀お音楜ずいうものを切磋琢磚し合った音楜仲間達。

    党おに感謝の気持ちが湧き䞊がっおきた。

    必ず良いものを䜜っお有名になっおやる。

    そうすれば雪乃も子䟛達も、雪乃の家族も自分を認めおくれるに違いない。
    そしお倧金を手にしお耒めおもらおう。

    そんなこずを考えおいたら、尚曎モチベヌションが高たった。

    音楜を䜜るのは楜しい、心からそう思えた瞬間だった。




    䌑日は子䟛達が垰っおきおも䞀階に降りるこずなく䜜曲を続けた。

    それに関しお雪乃から䞍満が出るこずはなかった。

    曲䜜りに熱䞭しおいるず雪乃からLINEがきた。

    [ご飯出来た]

    結婚五幎目にもなるず、もはや絵文字なんお䜿わない。
    基本的に業務連絡のみである。

    [了解]

    そう送ったものの、ただ曲䜜りがひず段萜しおいない。

    い぀でもやる気があるわけではない、創䜜掻動ずいうのは気力に波があるものなのだ。

    気力のビッグりェヌブには乗らないず損である。

    そしお、今がその時だ

    培はそのたた楜曲制䜜を続けた。

    そうこうしおいるうちに階段駆け䞊がっおくる音が聞こえる。

    おそらく晩埡飯を食べたくない灯が時間皌ぎのためにパパを呌びに来たのだろう。

    「パパご飯出来たよ」

    ご名答である。

    「仕事終わったら降りるから、先に食べおお」

    ガチャガチャ

    扉を開けようずドアノブを荒々しく揺する灯だったが、扉には鍵をかけおいる。

    「えパパも行かなきゃ嫌だ」

    「いいから、先に食べおなさい」

    ガチャガチャガチャガチャ

    ドアノブが悲鳎をあげおいる。

    「パパは仕事䞭だよ」

    「開けおようわぁヌヌヌヌん」

    自分の思い通りにいかない時の最終手段、倧泣き倧暎れを発動し、灯は制埡䞍胜ずなる。

    ワガママでネガティブな炎を扉の前で撒き散らし、籠城しおいる培を火攻めする。

    この状況䞋で仕事に集䞭するこずなど䞍可胜であるず刀断した。
    結局培は灯の蚈略にたんたず匕っかかり、扉を開けるのであった。

    「パパ遅いよ」

    「はいはい、䞋に降りたしょう」

    スタスタず階段を降りるず灯は曎に怒り出す。

    「あヌちゃんが先に降りるの」

    「はいはい、じゃあ早く先に降りおください」

    「もうパパなんお知らない」

    プリプリず怒りながら培を远い越す灯。

    その埌ろをPCにうしろ髪ひかれながらダラダラず降りる培。

    「パパ早く」

    ただ仕事が終わっおいないのに、䜕故こんな茶番に付き合わされなければならないのか。
    理䞍尜な怒りを受け続け、沞々ず胞に怒りが溜たっおいく。

    子䟛がいる生掻ずいうのは党おの行動の時間を決められおいるようなものだ。
    起きる時間、ご飯の時間、お颚呂の時間、寝る時間、、、
    奜きな時間に奜きなタむミングで動くこずは出来ない、垞に決められた時間に子䟛ず䞀緒に行動する必芁がある。

    こんな状況じゃ仕事が進たない。

    今ずなっおは曲䜜りの優先順䜍が䞀番高い。
    䜕故ならお金が発生しおいお、責任が䌎っおいるからだ。

    「やっぱりパパは仕事をしなきゃいけないから、あヌちゃんは先にご飯食べおお」

    「えヌ嫌だパパも行くの」

    灯は地団駄を螏みながら泣き始めた。

    「ごめんね、ちゃんずご飯食べるんだよ」

    泣き叫ぶ灯に背を向け、培は自宀ぞず匕き返す。

    これで良いんだ、最悪の事態は曲䜜りが終わらず、玍期に間に合わずに倢が途絶えるこずである。

    「もうパパなんお知らない」

    階段に灯の怒りが響き枡る。

    䜕床も聞き流しおいたその蚀葉に初めお返答をしたくなった。

    「ああ、頌むからほっずいおくれ」

    そう小さく呟いた。




    曲䜜りに時間を䜿いたいが、仕事には行かなければならない。

    今日も培は出勀しおいた。

    培は粟神疟患を持぀方々の職業指導員ずしお働いおいる。
    今日も利甚者ず共に枅掃䜜業を行うのであった。

    六人の利甚者を匕き連れお、䌁業から委蚗されたビルの枅掃を行っおいるず、䞀人の利甚者に声をかけられた。

    「山䞋さん、俺思うんですけど、人生に意味なんおないず思うんです」

    そう蚀ったのは40歳の矩幞(よしゆき)さんだ。
    矩幞さんは利甚者の䞭でも䞀番よく働き、呚りが芋えおいお頭も良いので職員からも信頌されおいる人物だ。

    しかし、ギャンブル䟝存症でパチンコが蟞められず、負けおお金がなくなるず自暎自棄モヌドに突入するこずが倚々ある。

    「急にどうした」

    拭き掃陀をしながら暪目で矩幞さんを芋た。
    モップの手を止めお眉間に皺を寄せながら䞀点を芋぀めおいる。
    そしお蚀葉を続けた。

    「パチンコも、今やっおるこの仕事も結局意味ないんですよ。俺達粟神障害者の未来に垌望なんおないんですから」

    この台詞は状態が悪くなった矩幞さんの定番の台詞だった。
    い぀もなら受け止めお傟聎を続ける培だったが、今日の培は違った。

    「自分の未来に垌望がないず思っおいる奎に、たたたたラッキヌで垌望が蚪れるわけないだろ」

    矩幞さんはその蚀葉を聞き、驚いた様子だった。

    「どういうこずですか」

    「倉化を恐れお今の生掻に甘んじおる奎の未来が良いものに倉わるわけないだろっおこずよ」

    矩幞さんは戞惑っおいる様子だった。
    おそらく想像ずは違う蚀葉が返っおきたからだろう。

    少しの沈黙の埌、矩幞さんが口を開いた。

    「やっぱり粟神障害者の未来に垌望なんおないっおこずですよね」

    捻くれた様子の矩幞さんに培は本心を蚀おうか迷ったが、決心した。

    「確かに健垞者よりも䞍利な郚分はある。でも実際、障害の有無は関係ない。自分の人生をどうしたいか、そうなるために今どうすべきか、倉化を恐れずに努力を続けた人だけが望む未来を手に入れるこずが出来る。健垞者でもそれが出来ない人は倚いし、そういう人達は珟状にブツブツ文句を蚀いながら寿呜を迎える。もちろん粟神に病を抱えおいる人達は病状の安定が最優先だから目指す未来に到達するのが遅れる可胜性はある。でも遅れるだけで、䞍可胜ではない。手を䌞ばさなきゃ、垌望なんおない」

    流石に蚀い過ぎたか

    蚀い終えたのず同時に少しだけ埌悔した。

    だが、矩幞さんは頷きながら䜜業を再開した。

    「分かっおるんですけどね、倚分皆分かっおるんですけど怖いんですよ」

    「怖い怖いず怯えおいたら、未来は䜕も倉わらない、時には立ち向かわなければ」

    「山䞋さんは怖くないんですか」

    「同玚生達が就職する䞭、音楜の道を遞んだむカれた男だよ、恐怖なんおものはずうの昔に捚おた」

    「凄いですよね、山䞋さんっお」

    「いや、凄くないんだよ、ただ䜕者にもなれおいない。ミュヌゞッククリ゚むタヌになろうずはしおるけど、ただなれないし、父芪にもなりきれない、䞭途半端な男よ」

    「いや、凄いですよ。子䟛を育おながら仕事もしお倢を远う勇気もある。俺こそ䜕者でもないですよ、家族もいないし、こうやっお就劎支揎を受けながらパチンコで金を溶かすだけですから」

    矩幞さんは深くため息を぀いた。

    「矩幞さんはさ、この先の自分の人生をどうしおいきたいの䟋えば誠叞さんはこのたたグルヌプホヌムで生掻保護をもらいながらゲヌムを楜しめればそれで良い、ずにかくストレスがないように生きたいっおこないだ蚀っおたじゃん矩幞さんはあの時䜕も蚀っおなかったからさ」

    誠叞さんずいう人は矩幞さんずよく䞀緒に䜜業をする利甚者である。

    人はそれぞれどう生きおいきたいかが違う、就劎蚓緎ずしお通所しおいる利甚者も党員が䞀般就劎を目指しおいるわけではない。
    グルヌプホヌムずいう耇数人の利甚者ずお䞖話人さんが垞駐しおいる守られた空間で過ごすこずが心地良いず思っおいる人は倚い。
    就劎蚓緎で埗た収益は、倧䜓皆ゞュヌス代で消える。

    矩幞さんの堎合はせっかく皌いだお金をパチンコに溶かしおしたう。

    本人がその生き方で満足しおいるならそれで良い、だがもし本圓は違う生き方をしたいのであれば、応揎したかったし、圌なら違う生き方が出来るず確信しおいた。

    「俺も本圓は䞀般就劎しお、䞀人暮らしをしお、あわよくば結婚しお、普通の人ずしおの暮らしをしたいです」

    「じゃあそこを目指そうぜ、今から」

    矩幞さんはモップの手を止め、培を芋た。

    「いやでも、生掻保護が切れるのは怖いし、今は就劎蚓緎ずいうこずでたたに静逊しおも蚱される状況ですけど、、、それに、もしおかしくなったずしおも山䞋さんがいるから倧䞈倫っおいう安心感もあるんです。この環境から抜け出すのは怖いですね」

    新しい環境に飛び蟌むのは誰だっお怖い。
    自分も䞀人で東京に飛んだ時、結婚しお宮城に匕っ越した時は怖かった。
    それでも珟状を倉えるには䞍安だらけでも飛び蟌むしかなかった。

    「今のたた死ぬたでぬるた湯に浞かるこずを吊定しおるわけじゃない、そういう人生もアリだず思うし、傷付くくらいならそのたた生きたいっおいう気持ちは誰もが分かるず思う。でも、珟状を倉えたいなら挑むしかない他に方法があれば良いけど、誰もが今を倉える時、すなわち未来を倉える時は自分ず戊うこずになるんだ」

    熱い挔説が矩幞さんの心に響いたかは分からない。
    それでも圌は頷き、モップをかけ始めた。

    「俺は䞀般就劎したいです。䞀人暮らしをしお普通の生掻をしたい」

    少し熱くなりすぎたか、そう思った培だったが矩幞さんの蚀葉を聞いお安堵した。

    「良いね、人生はい぀だっおこれからよ。互いに倢を叶えよう」

    気が぀くず二人は握手を亀わしおいた。





    曲䜜りに割く時間を増やしたおかげで順調に仕䞊がっおいた。

    そんなある日、今日も倉わらずに曲䜜りを行なっおいるず怪獣の足音が近づいおくる。

    二䜓の怪獣が泣きながら階段を駆け䞊がっお来おいる。

    ふず時蚈を芋るず20時を回っおいた。

    「パパぁああ、、ああ」

    扉の向こうから呌び声がする。

    灯だけではなく、どうやら颚花もいるようだ。

    泣き叫びのデュ゚ットが郚屋に響き枡っおいる。

    「䜕、どうしたの」

    扉越しに䌚話を詊みる。

    開けたら最埌、曲䜜りの時間が終わっおしたうだろう。

    颚花は泣き叫ぶのみだが、灯はどうにか説明しようず蚀葉を詰たらせおいる。

    「ママに怒られたのぉ」

    怒られるには理由があるはずだ、そう思う培は灯に問いかける。

    「䜕で怒られたの」

    「ママが出おいけっお蚀ったの」

    自分は悪くないず蚀いたいのだろう、䜕故ずいう質問には答えない。

    「䜕で出おいけっお蚀われたの」

    「あヌちゃんずふヌちゃんが喧嘩したから」

    「仲盎りしお、仲良く遊びなさい」

    さぁ、䞋の階に行くんだ

    そう願ったが叶わず、二人は尚も扉の前で泣き叫んでいる。

    「だっお、ママが怒っおるんだもん」

    「謝れば良いじゃん」

    そもそも俺が行ったずお状況は倉わらないだろう。
    そう思ったが、行かなければ怪獣達が撀退する様子もないので、培は枋々扉を開けた。

    扉が開くなり二人は培に抱き぀き、倧泣きした。

    様子がおかしい、流石に泣き過ぎだ。
    そう思った培は灯に問いかける。

    「䜕かあったの」

    灯は泣きながらも説明を詊みる。

    「ママがさ怒っおるんだもん」

    「それは分かっおるんだけど、、たぁずりあえずパパず䞀緒に䞋に行くか」

    培は二人を䞡腕に抱き抱え、䞋ぞず降りた。

    そこには明らかにむラむラしながら掃陀機をかける雪乃がいた。

    この時間に掃陀機をかけおいる事自䜓䞍自然である。

    子䟛達は未だ培にしがみ぀いおいる。

    「お疲れ様」

    「、、、、、、」

    掃陀機の音で聞こえないのか、雪乃は無蚀で掃陀機をかけ続けおいる。

    培は悲鳎をあげる二の腕を䌑めるために゜ファに腰掛け、二人をおろした。

    しかし二人は培から離れようずしない。

    掃陀機をかけ終えた雪乃に声をかける。

    「䜕かあったかい」

    「、、、別に」

    明らかに䞍機嫌な様子だが、これ以䞊詮玢しない方が良いだろうず思い、゜ファから立ち䞊がった。

    「パパ行っちゃダメ」

    珍しく子䟛達が二人でパパを匕き留める。
    自分にやれるこずは䜕もない、そう思うずすぐに頭をよぎるのは曲䜜りのこずである。

    「パパは仕事に戻るよ」

    そう蚀った瞬間、雪乃が突然口を開いた。

    「あなたには父芪ずいう仕事はないの」

    遂に蚀われおしたった、心の䞭でそう思った。

    本圓は分かっおいる、職堎の䜐藀さんのように毎日子䟛ずどこかぞ出掛け、子䟛達ずの時間が至犏だず蚀えるような生掻をすべきだずいうこずを。

    でも自分には無理だ。

    「毎日仕事をしお、絊料のほずんどを家族のために消費しおいる。飲みにも行かず、タバコもギャンブルもやらず、自分に党くお金を䜿わない。それは父芪ずしお居続けるためにやっおるこずだけど、それだけでは父芪ずしおの仕事が出来おいるずは蚀わないのだろうか」

    今蚀っおしたった蚀葉は本心だ、本心だが蚀わなくおも良かったなぁず、蚀った瞬間に埌悔した。

    「やっぱりそんな颚に思っおるんだ。私は毎日早起きしお自分の甚意ず二人の甚意しお保育園に送っお、その埌仕事に行っお、仕事が終わったら嚘達二人を迎えに行っお、垰っおきおから家事やっお二人のご飯の甚意しおお颚呂入れお寝かし぀けお、、、良いよね、あなたは仕事さえしおいれば良いんだから」

    ごもっずもだ、返す蚀葉もない。

    もちろん本来ならば、良い父芪ならば雪乃が行なっおいるこずを倫である自分も請け負うのが圓たり前なのだろう。

    だが、それが出来ない、どうしおも出来ないんだ。

    「芁するにこうだ、俺はお金を皌いでそのほずんどを家族のために䜿い、垰宅埌の時間も党お家族のために䜿い、この先の俺の人生をすべお家族のために䜿えば良いずいうこずだな」

    「私は毎日その生掻をしおるのそもそも子䟛達のためを想ったらそんな蚀葉は出おこないよあなたは子䟛をなんだず思っおるのあなたは結局自分のこずしか考えおないんでしょ」

    雪乃がこんなに取り乱しおいるのは初めおのこずだ。
    旊那ずしおも倱栌だ、そう思った。

    「あなたはあなたの楜な仕事だけしおいれば良いず思っおるんだろうけど、こっちは家事も育児も仕事もしおるの子䟛達が熱を出したら仕事を早退しおるけど、たたにはあなたが早退しおくれおも良いんじゃないの」

    党面的に自分が悪い、そう思っおいたが、こちずら楜な仕事をしおいるわけじゃない。
    圹職も぀き、日々責任ある仕事を行なっおいる。
    䞊叞ず郚䞋の板挟みの䞭、ストレスを抱えながらも䌑たずに働いおいる。
    働いお埗たお金のほずんどは雪乃に枡しおいる。

    楜な仕事だず蚀われるのであれば、俺は䜕のために働いおいるんだ

    そう思うず自然ず口が動いおいた。

    「雪乃はパヌトだろ、俺は圹職がある仕事だ。その時点で同じ仕事ではないだろ。俺が早退するのは䌚瀟にずっお倧きな痛手だ、パヌト埓業員ずはわけが違う。この際蚀わせおもらうけどな、俺は皌ぎを自分に䜿っおいない、コンビニで買い食いするこずもないしタバコもギャンブルもやらない、垞に節玄しお生掻しおいる。それは䜕故だず思う少しでも倚く家族にお金を残すためだ。だがお前はどうだ毎日お菓子やらアむスを買っお、䌑日には既に持っおいるカバンやら服を買う。気にはなっおいたが目を瞑っおきた、家事も育児も倧倉だろうず分かっおいたからだ。でも今の蚀葉を聞いたからには黙っおいられない。俺が皌いで俺が節玄しお残したお金を無駄遣いするな。党お自分が正しいず思ったら倧間違いだぞ」

    あヌあ、蚀っおしたった。
    そう思ったが蚀っおしたったものは仕方がない。

    「家事も育児も倧倉だっお分かっおるなら䜕で手䌝っおくれないの私はあんたの家政婊じゃないの」

    「俺は犏祉の仕事以倖に音楜も䜜っおるんだ、お前は俺の仕事を手䌝えるのかお金が発生したからには曲䜜りも仕事だぞそんな時間はないんだよ、そこたで蚀うんなら俺は犏祉の仕事を蟞めお家事ず育児をやれば良いのかそれで家蚈は足りるのか」

    「蟞めたら良いよ私が働くからあんたが家事ず育児すれば良いじゃん家事ず育児は音楜䜜りながらでも出来るでしょ私も働くだけで良いなら楜な毎日になりそうだわ」

    「楜な毎日だずやっおみろよパヌトしかやったこずがない奎には到底無理だろうけどな」

    「家事も育児もやったこずない人には無理だろうけどね」

    その時、灯が割っお入った。

    「喧嘩したらダメ」

    子䟛達がいるこずをすっかり忘れお䞍毛な喧嘩を繰り広げおいたこずに気が付いた。

    「ごめん、ずりあえず分かった。良い父芪になれるように努力したす」

    「お願いしたす」

    この䞍毛な喧嘩の萜ずし所は培が譲る他ないのだろう。

    こうしお倫婊史䞊最倧の倧喧嘩は灯によっお終戊した。




    その日の倜から曲䜜りで倜曎かしするこずをやめ、翌日の朝は早く起きお子䟛達の保育園の準備をした。

    䌚瀟が終わるずすぐに垰宅し、曲䜜りはせずにそのたた居間で子䟛達ず過ごした。

    その間に雪乃は家事を片付けおいる。

    雪乃曰く、家事はお母さんず共にやるからその間に子䟛達を芋おいおほしいずのこずだ。

    どうやらこれで合っおいるらしい。

    子䟛達ずお颚呂に入り、子䟛達の歯磚きをしお、子䟛達を寝かし぀ける。

    蚀葉で蚀うのは簡単だが、お颚呂では頭を掗いたくないず倧暎れされ、歯磚きでも同じように拒吊が芋られお挙句の果おに顔面を叩かれた。

    目を擊り、眠い様子が芋られるものの、グズグズ泣き叫び、眠りに萜ちる気配がない。

    ようやく自分の時間がやっおきたのは22時を過ぎおからだった。

    さお曲䜜りを開始しようかず思ったが、これから自分の寝る甚意をしお、明日も同じように早く起きなければならないこずを考えるずもう眠るべきだ。

    それに睡魔に襲われ始めた。

    今日はもう寝よう。

    子育おず仕事だけで䞀日が終わっおしたった。

    

    次の日。

    今日も朝早く起きお子䟛達の保育園の準備をした。

    仕事が終わるずすぐに垰宅し、曲䜜りはせずにそのたた居間で子䟛達ず過ごした。

    頌たれたので颚呂掗いずゎミ捚おも行なった。
    ゎミを捚おる前に党おの郚屋のゎミを集める、それが地味に面倒である。
    ゎミ捚お堎は団地の真ん䞭あたりに蚭眮されおいお、埒歩で5分くらいかかる。
    実に効率が悪い。

    子䟛達の芋守りをしおいる間に雪乃は家事を片付けおいる。
    雪乃の衚情は良い。
    やはりこれで合っおいるらしい。

    子䟛達ずお颚呂に入り、子䟛達の歯磚きをしお、子䟛達を寝かし぀ける。

    蚀葉で蚀うのは簡単だが、今日もお颚呂では頭を掗いたくないず倧暎れされ、歯磚きでも同じように拒吊が芋られお今日は錻に頭突きをされた。

    目を擊り、眠い様子が芋られるものの、今日もグズグズ泣き叫び、眠りに萜ちる気配がない。

    ようやく自分の時間がやっおきたのは22時を過ぎおからだった。

    さお曲䜜りを開始しようかず思ったが、これから自分の寝る甚意をしお、明日も同じように早く起きなければならないこずを考えるずもう眠るべきだ。

    それに今日も睡魔に襲われ始めた。

    もう寝よう。

    そう思ったその時、颚花の倜泣きが始たった。
    赀ん坊の頃は毎日倜泣きがあっお眠れなかったが、最近はなくなっおいた。

    だがここにきおたた始たった。

    雪乃は眠っおいる。

    ここは父芪の出番なのだろう。

    培は颚花をあの手この手であやすが泣き止む気配がない。
    雪乃の眉間には皺が寄っおいる。
    おそらく起きおいるが動きたくないのだろう。

    培は颚花を抱き䞊げ、家の䞭を歩き回った。

    どれくらい時間が経っただろうか

    今日も子育おず仕事だけで䞀日が終わっおしたった。

    

    そんな日々を繰り返し、培はふず気が付いた。

    曲䜜りが党く進んでいないずいうこずに。

    䌑日は䌑日で䞀日䞭子䟛達ず過ごした、そうしなければ父芪ではなくなっおしたうからだ。

    期限たであず二週間しかない。

    だが父芪業を蟞めるわけにもいかない。

    今日もい぀も通り朝早く起きお子䟛達の保育園の準備をした。

    仕事が終わるずすぐに垰宅し、PCがある郚屋に駆け䞊がろうず思ったが思い止たり、曲䜜りはせずにそのたた居間で子䟛達ず過ごした。
    曲を䜜らなければならない、しかしそんな時間はない。

    その間に雪乃は家事を片付けおいる。
    雪乃の衚情は良い。
    このムヌブが正解だず確信しおいる。

    子䟛達ずお颚呂に入り、子䟛達の歯磚きをしお、子䟛達を寝かし぀ける。

    蚀葉で蚀うのは簡単だが、い぀も通りお颚呂では頭を掗いたくないず倧暎れされ、歯磚きでも同じように拒吊が芋られお、歯ブラシをぶん投げられた。
    俺だっおこんなこずやりたくないんだ、誰のためにやっおあげおるず思っおる
    喉元たで昇っおきた怒りを噛み殺し、䜕ずか冷静さを保぀。

    目を擊り、眠い様子が芋られるものの、い぀も通りグズグズ泣き叫び、眠りに萜ちる気配がない。
    奜きなタむミングで寝れば良い、だがその代わり芪に䟝存せず自立しお生掻しやがれ。
    唇を噛み締めながら蚀葉を殺す。

    ようやく自分の時間がやっおきたのはやはり22時を過ぎおからだった。

    さお曲䜜りを開始しようかず思ったが、これから自分の寝る甚意をしお、明日も同じように早く起きなければならないこずを考えるずもう眠るべきだ。

    それにたたい぀も通り睡魔に襲われ始めた。

    もう寝なければならない、しかし曲を䜜らなければならない。

    い぀ものように子育おず仕事だけで䞀日を終えるわけにはいかない

    雪乃は寝る甚意を枈たせ、子䟛達ず共に眠りに぀いた。

    培ぱナゞヌドリンクを身䜓に流し蟌み、ベランダに向かった。

    肌寒い秋の倜颚を身䜓に济びながら、タバコに火を぀けた。
    灯が生たれるタむミングでタバコを蟞めたが、この蟛い日々を乗り越えるためにたたタバコが必芁になっおしたっおいた。
    深く煙を吞い蟌み、ゆっくりず吐き出す。
    タバコの時間は頭の䞭を敎理できる。

    さお、やるか。

    ゚ナゞヌドリンクずタバコの煙を燃料にPCの電源を぀けた。


    第䞉章 死


    仕事ず父芪業ず曲䜜りを繰り返す日々の䞭で、培の身䜓は明らかに疲匊しおいた。

    しかし止たるわけにはいかない。

    仕事を䌑むわけにはいかない。
    圹職付きの培は職堎で重芁なポゞションにある。
    䌑めば皆に迷惑がかかる、培に䌚うために登所する利甚者がいる、そもそもお金を皌がなければならない。
    䌑んではいけない理由は芋぀かるが、䌑む理由は芋぀からない。

    父芪業を攟棄するわけにもいかない。
    最近の雪乃は以前よりも笑顔を芋せおくれるようになった、本来父芪ずしおこのように過ごすべきだずいうこずは分かっおいた。
    ようやく父芪になれたのだ、それ自䜓は培自身も嬉しかった。
    子䟛達ず遊ぶのは正盎楜しくはない、だが日々子䟛達が考えおいるこずや成長を知るこずが出来るのは面癜い。

    倢を諊めるわけにはいかない。
    曲を䜜り続けおSNSに投皿し続けおきた、その努力がようやく報われた。
    今回アむドルキングダム3の楜曲制䜜を䟝頌され、この詊緎を乗り越えれば華々しくミュヌゞッククリ゚むタヌずしお名を銳せるこずずなる。
    こんなチャンスが巡っおくるこずは二床ずない。
    䜕を差し眮いおも曲を䜜らなければならない、そんなこずは分かっおいる。

    問題は物理的に時間が足りないずいうこずだ。
    仕事、子育おには必芁最䜎限の時間を割いおいる。
    それでいお今の状況だ、曲䜜りをする時間は睡眠を削る他ない。
    だが次は身䜓の限界を感じおいる。

    いや、ここは正念堎だ。

    若かりし頃はラむブ終わりに音楜仲間ず共に飲み明かしたものだった。

    今はもう連絡すらずらなくなっおしたったが、圌等は今も倢を远いかけおいるだろうか
    あの頃は楜しかった、ず昔に想いを銳せおいる自分に気が付き、倧きく息を吞った。

    昔は良かったなどず蚀いたくはない。
    そう思うのであれば、今を人生で最高の瞬間にする必芁がある。
    俺が今やるべきこずはこうだ。

    毎日仕事ず子育おをやり切り、睡眠を削っおでも曲を䜜る。
    しかし、ただ曲を䜜るだけではダメだ。
    最高の五曲を䜜り䞊げおみせる、構想はもう頭の䞭にある。

    あずはやるだけだ、シンプルじゃないか。

    こうしお培は心を殺し、仕事ず子育おをやり切った。

    い぀からか眠気を感じなくなり、曲䜜りは順調に進んでいた。

    眠気がくるのは朝の五時頃からだったが、もはや䞀時間も眠れないずいうこずでオヌルで仕事に臚んだこずもあった。

    期限たであず䞀週間、もう既に四曲制䜜を終え、残すは䞀曲ずなっおいた。

    疲れなどもう感じなかった、そんなある時。



    仕事を終え、家に垰ろうず車に乗った。

    早く垰らなければ父芪になれない。
    その匷迫芳念からか、培は残業するこずをやめた。
    䞻任ずいう肩曞き䞊、郚䞋を眮いお毎日䞀番最初に垰るのは良くないのだろう。
    皆の癜い芖線を感じながらも、培は父芪になるために足早に垰るのだった。
    今たでは䞊叞の仕事を肩代わりしお、残業しおでも䌚瀟のコミュニティを倧切にしおいた。
    そのおかげもあり、職堎での人間関係がも぀れるこずは䞀切無かったが、今は良いずは蚀えない。
    䞊叞からは日々小蚀を蚀われおいる。

    しかし今の培にずっおは時間以䞊に優先すべきものはない。

    この仕事が終われば、子育おずいう次の仕事が埅っおいるのだから。

    培は鍵を刺し、゚ンゞンをかけようずした。

    「、、、、、」

    䜕故だろうか、手に力が入らない。

    鍵を回そうずするも、鍵は回らない。

    垰らなければいけない、でも垰れない。

    よく芋るず手が震えおいた。

    疲れおいるのだろうか
    そう思い、䞀呌吞おいお再床鍵を回しおみる。

    やはり回らない、回すこずが出来ない。

    培はグッタリずシヌトに倒れた。

    垰らなければいけないのに、垰りたくない。
    そんな感情に気付いたのだ。

    ゚ンゞンはかからないのではない、かけたくないのだ、身䜓が拒絶しおいるかのようだった。

    培は車の䞭で䞀時間近く䌑憩し、ようやく鍵を回すこずが出来た。

    垰っおいる最䞭の蚘憶はないが、家に着き、゚ンゞンを切った。
    少し遅れおしたったが父芪になる必芁がある。

    車の扉を開けようずしたが、今床は扉が開かない。

    早く垰っお子䟛達の面倒を芋なければならないのに、車から出られない。

    たたもそこで䞉十分ほど䌑憩しおからようやく家に垰った。

    合蚈で䞀時間半も遅れお垰っおきおしたったこずぞの眪悪感ず怒られるのではないかずいう恐怖感に駆られながらそっず扉を開けた。

    「ただいた」

    「パパ遅いよ」

    嚘達のお叱りを受けながら居間ぞず入る。

    「ごめんごめん」

    「おかえり」

    雪乃は倕飯の準備をしおいた。

    䞀時間半遅れお垰っおきおしたったが、特に倉わりはないように思えおホッずした。

    動けないずいう謎の状態に陥っおしたったため、今日は早めに眠ろうずした。
    しかし眠気が党くやっおこない。
    それどころか垃団に入っおも頭の䞭で過去の出来事や誰かに蚀われた蚀葉、珟圚䞍安に思っおいるこずや未来の想像などの映像が目たぐるしく映し出される。

    頭が冎えおいるずもいえない、心は沈んでいる。
    頭が冎えおいるのであればこのたた曲でも䜜っおしたおうかず思ったが、たたも身䜓が動かない。

    どうしたら良いんだ、どうしたら良いんだ。

    俺は䜕をどうしたら良いんだ

    俺は、どうしたいんだ

    その自問自答を繰り返し、朝がやっおきた。



    䞀睡も出来ない日々が続いおいる。
    しかし䜕故だか䜕もやる気が起きない。
    朝も起きられなくなっおしたった。

    子䟛達の保育園の準備をしなければ、そう思うのに時間だけが過ぎおいく。

    ガチャン

    玄関の扉が閉たる音がした。
    子䟛達は保育園に行っおしたった。

    俺は父芪ずしお䜕も出来なかった、雪乃は倱望したこずだろう。
    垰っおきたら、嚘達には眵声を济びせられ、雪乃からは冷たい芖線を貰うこずだろう。

    そうならないように、眪滅がしにプレれントでも買っお垰ろうか
    いや、そんなこずよりも家族ずの時間を増やすべきだ。
    しかし曲䜜りの期限たで䞉日しかない。

    曲を䜜らなければならない、残すはあず䞀曲。
    しかし、たずは䌚瀟に行かなければならない。

    身䜓が動かない、䌑むわけにはいかない。

    動け、動け、動け

    「動けぇえ」

    絶叫ず共に起き䞊がるこずが出来た。

    「ク゜ッたれ、皆俺の邪魔ばかりしやがっお」

    培は寝癖のたた家を飛び出した。

    培の心の䞭の獣が、静かに脱走の機䌚を䌺っおいた。



    今日は月初ずいうこずもあり、事務凊理が倚かった。

    培の事業所は利甚者様のお金の管理もしおいるので、それに䌎う資料は利甚者本人から盎筆のサむンをいただく必芁がある。

    「サむンなんか曞かねぇいらねぇ」

    「いらねぇじゃなくお、曞いおよ畑山さん」

    今日もあらゆる堎所で利甚者が䞍機嫌を撒き散らしおいる。

    培もずある利甚者の元ぞず向かっおいた。

    圌はい぀も誰もいない倉庫の前に座り蟌んでいる。
    コミュニケヌションが嫌いで、人ず亀わるこずが出来ない性質を持っおいる。

    圌がこの事業所に来た時は仕事もせず、誰ずも䌚話せず、どうしたものかず職員間でも議論が亀わされおいた。

    しかし、それはあっさりず解決されたのだ。
    圌は培がいる䜜業には参加する。

    圌がいるであろう倉庫に近づいた時、廊䞋に声が響いた。

    「あこれは山䞋さんの足音だ山䞋さんおはよう」

    子䟛のように倧きく手を振る圌が、42歳の誠叞(せいじ)さんだ。

    圌はどの利甚者ずも職員ずも話さないが、培にだけは心を蚱しおいる。

    「おはよう誠叞さん」

    「やった今日も山䞋さんに䌚えた」

    「42歳のおじさんにそれを蚀われおもなぁ」

    「本心ですからいいじゃないですか」

    「どヌもどヌも、誠叞さんサむンをもらいに来たんだ」

    培は誠叞さんのお小遣いの明现が添付された資料を芋せる。

    誠叞さんは䞭身を確認せずにサむンをした。

    「ちゃんず確認しおくれっお、これもし内容が間違っおおも誠叞さんサむンしたからには抗議出来なくなるんだよ」

    「山䞋さんが䜜成した資料が間違っおるはずありたせんから」

    「いやいや、俺も人間だからね、間違えるこずはあるんだから」

    「それはそれで良いです、い぀も山䞋さんにはお䞖話になっおたすから」

    「たったく、たぁいいや」

    誠叞さんは続けおゲヌムの話をしおいる。
    圌はゲヌムが倧奜きなのだ。
    日垞で極力ストレスを感じないように過ごし、あずはゲヌムさえ出来れば人生は十分だずいう考えを持っおいる。
    生掻保護を受けながらGH(グルヌプホヌム)で生掻しおいるが、今の生掻が最高だずのこずだ。
    ちなみにGHずは、利甚者数人で同じ屋根の䞋で生掻をする堎所のこずである。
    その生掻をサポヌトするお䞖話人さんが垞駐しおいる。

    「最近どうよ倉わりないかい」

    これは病状を確認するためによく䜿う台詞だ。
    この台詞を聞いお、利甚者は今自分の身䜓に起こっおいる問題や呚りぞの䞍満、人生に぀いおの䞍安を口にする。
    それを傟聎し、堎合によっおは助蚀したり励たしたりしお共に仕事に向かう。
    状態が悪いず刀断した堎合は仕事を無理匷いするこずはしない、仕事は楜しく無理せず、人間なんお無理なずきは無理だ、これが山䞋培の考えだった。

    それもあっおか培は利甚者からの信頌が厚く、培が担圓する䜜業で静逊する利甚者は少ない。

    「最近ですか倉わりないです、山䞋さんがいれば俺の病状は安定しおいたすから」

    「いやいや、俺にそんな力はないだろう」

    「本圓ですよ通院に行っお、粟神科医に話をするよりも山䞋さんず話しおいる方が病状良くなるんです本圓ですからね」

    「マゞかよ嬉しいけどさ」

    職業指導員ずしおこんなに嬉しいこずはない。
    ちょっずした恥ずかしさを隠しながら培は立ち去ろうずした。

    「ずりあえず、もう少しで䜜業始たるから準備しずいおくれよ」

    「はい分かりたしたあ、山䞋さん」

    歩き出した培だったが、急に呌び止められお振り返った。

    「山䞋さん、絶察にいなくならないでくださいよ俺山䞋さんがいなきゃ人生楜しくないですから」

    突然䜕を蚀い出すか、思いがけない蚀葉に培は蚀葉を探しおいた。
    おそらく圌は特に深い意味はなく、䌝えたかったから䌝えたのだろう。
    利甚者はたたにそういうこずがあるのだ。

    「ありがずう」

    面癜い返しやツッコミを探したが芋぀からなかった、出おきた蚀葉はありふれた感謝の五文字だった。

    そしお䜕故か、目から涙がポロポロず溢れおきた。

    「え山䞋さん、どうしたんですか倧䞈倫ですか」

    誠叞さんは心配しお駆け寄っおきたが培はそれを制止した。

    「倧䞈倫だ、ありがずうな、誠叞さん」

    「あ、はい、、だ、倧䞈倫ですか」

    こんな顔を芋せるわけにはいかないず思い、培は足早に歩き出した。

    誠叞さんは心配そうに゜ワ゜ワずしながらこちらを芋おいるに違いない。

    培は埌ろ向きに手を振り、廊䞋の角を曲がった。




    今日は臎し方なく残業するこずになっおしたった。

    培は慌おお䌚瀟を飛び出し、車に乗った。
    早く垰らなければならない、最近は車に乗っおから動けなくなるこずが倚いため、それも加味しおのこずだった。

    䞀息぀いお車の゚ンゞンをかける。

    ブルン

    今日は止たるこずなく゚ンゞンをかけられた。
    その勢いのたた駐車堎を埌にした。

    家に着き、車の扉を開けた。
    今日は止たるこずなく倖に出るこずが出来た。

    小走りで走り、玄関の扉を開けた。

    「ただいた」

    家に垰っお培はため息を぀いた。

    「嫌だふヌちゃんのはそっちでしょ」

    「むダだむダだふヌちゃんの、すくない」

    どうやら灯ず颚花が喧嘩をしおいるようだ。
    圌女達は䞀日に䞉十回は喧嘩する。
    い぀ものこずではあるが、ネガティブな感情を撒き散らされるのはい぀も疲れる。

    培の足が玄関で止たりそうになる。

    このたたではダメだず思い、培は無理やり靎を脱いで居間ぞず通じる扉を開けた。

    「ただいた」

    「おかえり」

    明らかにむラ぀いおいる雪乃のぶっきらがうなおかえりを聞いお、二人の喧嘩が長匕いおいるこずを悟った。

    「どうしお喧嘩しおるの」

    培の問いかけに灯が答える。

    「だっおさふヌちゃんが同じなのに少ないっお蚀っお泣くから」

    テヌブルの䞊のお皿にお菓子が乗せられおいる。
    二぀のお菓子は均等に入れられおいる。
    お菓子にしろ飲み物にしろ少しの差分もなく提䟛しなければ、この小さなクレヌマヌ達からクレヌムが来るからだ。

    「ん同じだよ、ふヌちゃん。おんなじ」

    お菓子が同じ量入れられおいるこずを颚花に䌝えるが、パパも敵になったずいうこずを理解した颚花は思いっきり泣き出し、暎れ出した。

    「ずっずこんな感じ、むダむダ期なのは分かるけどもう無理だわ」

    雪乃は眉間に皺を寄せながら倕食を䜜っおいる。

    おそらく雪乃もいろいろ詊しおあやしおみたが効果はなかったのだろう。

    培は灯に耳打ちをするこずにした。

    「埌でもっず沢山お菓子あげるから、今はふヌちゃんに少しだけ分けおあげお」

    それを聞いた灯は怒り出した。

    「え嫌だ䜕で灯がお菓子あげなきゃいけないの」

    確かにその通りである、しかし、そうしおくれればこの堎はおさたるのだが、、、
    ただそこたでの状況把握は出来ないか。

    そうこうしおいるうちに颚花はお菓子の入ったお皿をひっくり返した。
    床にお菓子が散らばり、お皿にお菓子が入っおいないこずを確認するず曎に泣き出した。

    「あダメだよ、ふヌちゃん」

    培は床に散らばったお菓子を拟う。

    「はい、じゃあもうお菓子おしたいご飯出来たよ」

    雪乃がテヌブルに倕食を䞊べ出した。

    「ええもうおしたい」

    「むダだ、おかし、たべる」

    灯ず颚花が猛抗議する。

    それに察し、雪乃がトドメの䞀蚀を蚀い枡す。

    「倕食が出来るたでっお蚀ったよねゎチャゎチャ喧嘩しお食べなかったあなた達が悪い」

    それを聞いお、二人は倧泣きし始める。

    「掗濯物干しおくるわ」

    そう蚀っお雪乃は居間をあずにした。

    怪獣達の倧合唱の䞭、培はストレスに耐え忍んでいた。

    このネガティブの倧攟出が䞀番のストレスである。

    「よし、ずりあえずご飯食べようか。その埌だったらお菓子食べおも良いよ」

    培の蚀葉を聞いお、灯は涙を拭いおご飯を食べ出した。

    颚花はむダむダモヌド継続䞭によりただ泣いおいる。

    「分かった分かった、パパが食べさせおあげるから」

    颚花は䞀人で食べられるようになったのだが、最近は甘えるこずを芚え、食べさせおもらわなければ食べない。

    培は怅子に座っお颚花の食事介助を開始する。

    「むダだ、ママがいい、ママ」

    颚花は盞倉わらず泣きながらむダむダを撒き散らしおいる。

    「ママ今お仕事䞭だから、パパでも良いでしょ」

    「むダだ、むダだ」

    最近はい぀もこうだ、だからずいっお雪乃が食事介助をしたずころでむダむダモヌドは解陀されない。
    雪乃のためにもここはパパである培がこのむダむダを匕き受けよう。

    そう思った時、颚花がわざず味噌汁の入ったお怀をぶん投げ、培の顔は味噌汁たみれになった。

    その瞬間、培の䞭で䜕かが匟けた。
    檻の扉が開かれ、䞭から眠っおいた猛獣が飛び出したかのようだった。

    「テメェいい加枛にしろよ」

    培は片手で颚花の胞ぐらを掎み、子䟛甚チェアから匕き摺り䞋ろした。
    そのたた゜ファに叩き぀け、顔を近づける。

    「いいか、よく聞けお前が飯を食おうが食わたいが知ったこっちゃねぇんだよ、でも俺はお前の芪だから、奎隷のようにお前に埓っおやっおんだ王様か女王様か䜕か知らねぇけどな、誰だっお我慢の限界があるお前は味噌汁を䜜れるのか盛り付けられるのか無理だろうが䜕も出来ないからやっおもらっおんだろうがその恩を仇で返すような奎は飯を食うな䜕も求めるな俺はお前に埓わないこずだっお出来るんだぞ俺はお前の奎隷じゃない勘違いするなこのク゜ガキ」

    培の怒鳎り声に驚いた雪乃が居間ぞず駆け蟌んできた。

    「䜕があったの」

    味噌汁だらけの培が颚花の胞ぐらを掎み、゜ファに抌し付けおいる。

    そしお怯えた様子の灯が泣き出した。

    「おしっこ挏らしちゃった、、ごめんなさい、
    うわぁヌん怖かったよぉ」

    それを聞いた培は灯に詰め寄る。

    「おしっこはどこでするんだシャワヌで身䜓を掗っお、自分が汚した床を自分で拭け、分かったか」

    「うわぁヌん」

    「泣くな返事は」

    「ぁあ怖いよぉ」

    培の怒る様を芋兌ねた雪乃が割っお入る。

    「䜕をそんなに怒っおるのもっず蚀い方を考えおよ」

    雪乃のためにやっおるんだぞ。
    心の䞭で沞々ず煮えたぎる䜕かがあった。

    「お前のためにこい぀らの奎隷になっおんだ」

    その蚀葉を聞いた雪乃の衚情が歪んだ。

    「奎隷っお䜕あなた頭おかしいんじゃないの」

    「おかしいのはお前だ䜕故俺がい぀も悪者になる䜕故家族のために動けば動くほど傷付けられるこい぀らにずっおはママが正矩でパパが悪者だ䜕をどうしたっおその䟡倀芳は倉わらない子育おを頑匵れば頑匵るほど雪乃は俺を蔑むこんなこずなら俺は関わりたくない、頑匵りたいず思えない」

    「あ、そうじゃあ䜕もやらなくお良いわ」

    そう蚀われたのを最埌に、培は䞀人二階に駆け䞊がった。




    その日はずっず怒りが収たらなかった。
    そしおずっず手が震えおいた。

    曲を䜜れる状況でもなく、ゲヌムをする意欲すらなかった。
    ただひたすらに頭の䞭で雪乃に蚀われたこずや子䟛達の蚀動が繰り返され、沞々ず䞀人で煮えたぎっおいた。

    気が付けば家族のこずだけじゃなく、䌚瀟のこずや過去に誰かに蚀われたこずなども頭の䞭を駆け巡り、思わず頭を振っお倧声で叫んでいた。

    ふず我に返っお時間を確認するず0時を回っおいた。
    もう寝よう、明日も仕事なので寝なければならない。
    そう思い、寝宀ぞず向かう。

    子䟛達ず雪乃はもう眠っおいた。

    ベッドを二぀䞊べただけなので、四人で眠るには狭過ぎる。
    い぀も培は壁際の狭いスペヌスで寝おいた。
    子䟛達の足が顔面に振り䞋ろされるこずは倚々あるが、子䟛がいなかった時からこのベッドで䞀緒に寝おいたため、今曎寝る堎所を倉えるこずは出来なかった。

    自分の定䜍眮に寝転び、目を閉じるずたた嫌な映像が頭の䞭を駆け巡る。
    さっきたでは怒りの感情に支配されおいたが今は心の底から䞍安に襲われおいた。

    どうしおあんな酷いこずを蚀っおしたったのだろうか。
    俺は父芪倱栌だ。

    自分が蚀った蚀葉が頭の䞭に響く。

    きっず子䟛達にも雪乃にも嫌われおしたった。

    身䜓が震え出し、恐怖感に襲われ始める。

    家族に煙たがられながら死ぬたで過ごしおいくのだろうか
    定時ですぐに家に垰るので、きっず䌚瀟でも悪口を蚀われおいるに違いない。
    どうせ䜜った曲は評䟡されるこずなくお蔵入りになるのだろう。

    誰の期埅にも応えられなかった。
    䜕者にもなれなかった。

    䜕者にもなれないのであれば生きおいる意味はない。

    止たらない䞍安感ず恐怖感に抌し朰されそうになりながらも垃団から出られずにいた。

    遂にはどうやっお死のうかを考え出しおいた。

    あの棚の䞭に䜿っおいない延長コヌドがある、それを銖に括り付ければ、、
    いや、そんなこずをしお良いわけがない。

    そうやっおいくら振り払おうずも死のシュミレヌションは終わらない。

    济槜にお湯を溜めお、その䞭で手銖を切れば死ねるず聞いたこずがある、詊しおみようか。
    いっそ切るなら銖に刺しおいっおしたおうか。
    家の䞭にある薬類を党お䞀気に飲み蟌んでしたおうか。

    シュミレヌションは止たらず、気付けば培は歩き出し、そっず棚を開けおいた。

    やはり、これで銖を吊ろう。

    延長コヌドを解きながらベランダぞず出た。

    倜の冷たい颚を受け、少しだけ我に返る。

    俺は䜕をしおいるんだ、こんなこず蚱されるわけがない。
    䞀旊倖を歩いお冷静になった方が良いか。。。

    「パパ、䜕しおるの」

    その時、トむレに起きたのか灯が目を芚たしおいた。

    「ちょっず眠れなくおね、トむレかい行っおおいで」

    「うん、あヌちゃん怖い倢芋たの、パパぎゅヌしお」

    灯はぎゅヌされようず手を広げおいる。

    「どんな倢か明日聞くから芚えおおいおね」

    培は灯を匷く抱きしめた。

    「ありがずう、トむレ行っおくる」

    灯は走っおトむレに駆け蟌んだ。

    培は延長コヌドをゎミ箱に捚お、パゞャマのたた階段を駆け䞋りた。
    そしお玄関の扉を開けた。

    蚳も分からず走り出しおいた。
    どのくらい走るのか、どこを目指しおいるのか、䜕のために走っおいるのか、䜕も考えおいなかった。
    ただずにかく今は死のシュミレヌションから逃げ切りたかった。
    死ぬべきではない、死んではいけない、有酞玠運動によっお早たる呌吞に合わせお、その蚀葉を繰り返した。

    道䞭の蚘憶はないが蟿り着いたのは海だった。
    ここは車で䞉十分ほどかかる距離にあるので、二時間近く走っおいたのかもしれない。
    䜕も考えおいなかったので、スマホも家に眮いおきた。
    正確な時間は分からないが、もはやそんなこずはどうでもいい。

    培は砂浜に腰掛けた。
    倜の海を眺め、波の音に身を任せる。

    この暗闇の海を真っ盎ぐに歩いおみようか、行けるずこたで行っおみよう。
    それでもし生きおどこかに蟿り着いたずしたら、生きおいる䟡倀があるずしおこの先も生きおいく、このゲヌムはどうだろう

    自分に問いかける。

    答えはこうだ。
    「面癜い、やっおみよう」

    培は靎を脱ぎ、砂浜を歩き出した。

    抌し寄せる波は月明かりに照らされ、幻想的な颚景が぀くられおいた。

    冷たい氎枩を足で感じながら、どんどん前に進んでいく。
    あっずいう間に腿のあたりたで氎に浞かり、数歩進んだだけで腰たで浞かっおしたった。

    それでも真っ盎ぐに海を歩く。

    波だけが培の行手を阻んでくれるが、それを振り切っおずにかく前に進んでいく。

    自分がこの䞖から消えたずころで悲しむ人などいない、䞖の䞭の動きが止たるわけでもない、自分は䜕者でもないのだから。
    そう思ったが、ふず矩幞さんず誠叞さんの姿が頭をよぎる。
    矩幞さんには䞀般就劎を目指しお欲しい、圌なら出来る。
    でもたた今日もパチンコに負けお粟神を病んでいるだろうかだずしたら俺が隣でサポヌトすべきだろうなぁ。
    誠叞さんは俺がいなくなっおも働いおくれるだろうか
    「山䞋さんがいないなら俺は仕事したせん」っお蚀い出しお、職員を困らせそうだなぁ。

    もうすでに胞の蟺りたで氎に浞かっおいた。

    培が曲を䜜り、投皿する床にコメントをくれおいたファンの方々がいた。
    「䜕回もリピヌトしお聞いおいたすい぀も新曲を心埅ちにしおいたす」
    その蚀葉から勇気をもらい、曲䜜りによる収益がなくずも、䟋え有名になれなくずも曲を䜜り続けるこずが出来た。
    新曲を心埅ちにしおくれおいる誰かを悲したせおしたうだろうか
    そう思い、ほんの少しだけ歩みが止たった。

    氎はもう銖の蟺りたできおいた。

    いや、しかし行くしかない、行かなければならない。

    遂に海の䞭ぞず沈んで行った。

    息が出来ない、苊しい、やはりここで俺は死ぬのだなぁ。
    ようやく少しだけ心が安らいだ。

    灯はどんな怖い倢を芋たのだろうか
    明日どんな倢を芋たのか聞かなければならない、、、
    「パパ」
    ふず灯の声が聞こえた。
    いや、そんなわけはない、培は今海の氎の䞭にいるのだ。
    「パパ」
    次は灯に泣かされたのだろう颚花の声が聞こえた。

    これはあの䞖ぞ行く前の走銬灯のようなものなのだろうか

    「必芁なものを必芁な分だけ集めながら生きるのも悪くないんじゃない」

    次に雪乃の声が聞こえた。
    結婚する前、倢を諊めるず蚀った培に察しお雪乃が蚀った蚀葉だった。
    確かに圓時はその生き方は玠晎らしいのかもしれないず思っおいた。
    でも結局は倢を捚おきれず、時間のない䞭でコツコツず努力を積み䞊げおしたっおいた。
    それだけならただ良かったのかもしれない、今は必芁なものを集めず、本圓は必芁のないものに手を䌞ばしおいたのかもしれない。
    もちろん音楜クリ゚むタヌになりたいし、期埅に応えたい。

    しかし、それは家族を蔑ろにしおたで必芁なものではない。

    数分前たでは怒りの感情に囚われ、䞍安に抌し朰されおいた。
    党おが攻撃の察象であり、党おが敵だず思っおいた。
    自分には䜕もない、䜕者にもなれない、生きおいたっお意味がないず思っおいた。

    それは玛れもない事実だ。

    だがしかし、死が間近に迫り、湧き出おきた感情は感謝の感情だった。

    この感謝を䌝えなければ、、、

    暗闇の海の䞭で酞玠が䞍足し、意識が薄れおいく。

    いや、もう䜕もかもが手遅れか。
    今曎生きお戻っお、関係を修埩出来る自信はない。

    䜕よりも、もう疲れた。

    培はゆっくりず目を閉じた。




    「ここは、、、」

    薄らず明るい空が芋える。

    身䜓は冷え切っおいお、波の音が聞こえる。

    ここが死埌の䞖界か、ふずそう思ったがどうやら違うらしい。

    おそらく、ただただ波に抌し戻されおしたっただけのようだ。

    「あぁ、生きおしたった」

    甘ったれたこずを蚀っおないで、さっさず必芁なものを集めろ、行け

    ザヌザヌず音をたおる波がそう蚀っおいるように聞こえた。

    倜の海は培を飲み蟌むこずなく、吐き出した。

    ただ死ぬ䟡倀もないずいうこずか。
    この皋床の人間が海に身を投げ出すのは、海にずっおも迷惑か。

    別にポゞティブになれたわけじゃない、しかしやるべきこずが分かった。

    「垰るか」

    培はびしょびしょのたた歩き出した。

    道䞭、培は考え事をしおいた。

    冷静に考えお、最近の自分の状態は明らかにおかしかった。

    子䟛達に察しお雪乃が怒るこずはあっおも培が怒るこずはなかったはずなのに、急にどうしようもない怒りに支配されるこずが倚々あった。
    䞍安感に襲われ、垞に悪口を蚀われおいる気がしたり、突然動けなくなるこずもあった。

    これらの状態を、培は知っおいる。

    培の事業所に通所する利甚者達だ。

    圌等は日々そういった状態になり、それをケアしながら䞀緒に仕事をするのが培の仕事である。

    「そうか、俺は、、、」

    培は心療内科に通院するこずを考えた。
    もちろん抵抗がある。
    本来、培はサポヌトをする立堎なはずなのに、その立堎の人間が粟神を病んでいおは本末転倒である。

    しかし、そうも蚀っおいられない。

    たたい぀あの䞖に行こうずしおしたうか分からない。

    培は決心した。



    家に着く頃には朝になっおいた。

    仕事の時間たであず䞀時間ある。

    「ただいた」

    「おかえりどこに行っおたの」

    慌おた様子で雪乃が走っおきた。

    「パパどこに行っおたの」
    「パパぁ」

    怒っおいる様子の灯ず泣いおいる颚花も走っおきた。

    「ちょっず海に行っおたんだ」

    「なんで」

    「雪乃、俺は少し倉だ、しばらく仕事を䌑んで心療内科を通院しようず思う。今たで迷惑をかけおすたなかった」

    雪乃は動揺しながらも静かに頷いた。

    「分かった」

    灯が培のお腹にパンチした。

    「パパいなくなったらダメでしょ蚱さないからね」

    「ごめんごめん、そういえば灯、どんな怖い倢を芋たの」

    「パパがいなくなる倢だよ」

    偶然か必然か、灯は培がいなくなる倢を芋たようだ。

    「倧䞈倫、パパはいなくならないから」

    「じゃあ、ゆびきりげんたんしお」

    小さな小指をこちらに向け、ゆびきりげんたんの匷芁をしおいる。

    「はい、分かりたした」

    培は灯の小指を小指で握った。

    それを芋おいた颚花が培に抱き぀く。

    「パパ」

    自分にも構っおほしいずいうメッセヌゞず共に、抱っこの匷芁をしおくる。

    「はいはい、ごめんね」

    培は颚花を抱き䞊げた。

    これで良いんだ、これで良い。

    子䟛達の奎隷で良い、自分の時間なんお少しで良い。

    雪乃がそばにいおくれれば良い、それだけで良いはずだ。

    俺に必芁なものはそれだけで良いはずなんだ。


    第四章 やはり、䜕者にもなれず。



    䞊叞に連絡をしお、ずりあえず䞀週間仕事を䌑たせお頂いた。

    そしお、すぐに心療内科に電話をかけ、䞉日埌に通院するこずになった。

    あず䞀曲玍品しなければならなかったため、䌑日ずなったこの日に䞀曲䜜り䞊げた。
    正盎完成床は良くないが、もう仕方がない。

    培はギリギリ期日たでに五曲玍品するこずが出来た。

    久しぶりに平穏な日々を過ごし、培は思った。

    自分に完璧を求め過ぎおいたのではないか

    曲だっおそうだ、自分は有名人じゃない、チャレンゞャヌだ。
    それなのに無駄にプラむドが高く、完璧な曲を䜜ろうずしおいた。
    もちろん良いものを䜜ろうずするのは悪いこずではない、だが完璧を求め過ぎおいたのは確かだ。
    自分の力量を正しく刀断する必芁があった。

    仕事だっおそうだった、い぀も培は誰よりも仕事をしおいた。
    同僚の誰もが山䞋さんのポゞションは誰にも真䌌できないず蚀っおいたほどだ。
    皆が明日たでの曞類を䜜っおいる時、培はもう来月の資料を䜜成しおいた。
    利甚者のちょっずした倉化に誰よりも早く気付き、芪身に話を傟聎しおいた。
    我ながら完璧だった。
    気付かぬうちに疲れおいたのかもしれない。

    そう思っお、心療内科たでの日々は静かに過ごした。
    䜕もやる気は起きなかった。
    子䟛達ずは奎隷のように遊んでいた。
    決しお楜しくはないが、それでも苊ではなくなっおいた。

    もちろんい぀も通り、倜は䞀睡も出来なかった。



    心療内科ぞの通院日、その日は奥様もいらっしゃるようにずのこずで雪乃ず共に車で向かっおいた。

    培は仕事柄、粟神病ずいうものをよく理解しおいるが、おそらく雪乃は党く分からない状態だろう。

    今も䞀応共に通院しおくれおいるが、頭では理解しおいないずいうこずが蚀葉の節々に衚出しおいる。

    気持ちは分かる。

    培だっおこの仕事に就くたでは、粟神病は甘えだず思っおいた。
    やる気がない、気力がない、動けない、仕事が出来ない、そんなものは本人次第だず思っおいた。

    でも違うずいうこずは利甚者ずの関係を通じお理解しおいる。
    そしお、培自身もそれを珟に䜓隓しおいるわけだ。

    心療内科に到着しお、埅合宀で呌ばれるのを埅぀。

    他にも埅っおいる人々がいお、雪乃は驚いた衚情をしおいた。
    「こんなに心療内科に来る人っおいるんだね」

    こればっかりは、こっちの䞖界を知っおいないず理解が出来ないのだろう。
    雪乃本人は䜕気なく攟った蚀葉だず思うが、その蚀葉からは棘が感じられた。

    こんなにも、病のせいにしおいる人っおいるんだね。

    培にはそう聞こえた。

    心の病なんお蚀葉があるから知れ枡っおいないが、実際に粟神病ずいうのは身䜓の䞍調である。
    本来分泌されるはずのホルモンが分泌されなかったり、副亀感神経が優䜍になるはずなのにならなかったり、心がどうにかなっおいるのではなく、本来人間が普通に生きるために備わっおいる正垞に䜜動するはずの身䜓のシステムが誀䜜動を起こしおいるのだ。

    だから、本来怒りの感情は時間経過ず共におさたるようになっおいるのに正垞な状態に戻す成分が分泌されないから怒りがおさたらないこずがある。

    身䜓が健康な人は「疲れたら眠れるよ、眠れないのは身䜓が疲れおいないから」なんお銬鹿なこずを口にするが、そうじゃない。
    どれだけ身䜓が疲れおいおも、副亀感神経が優䜍にならなければ人間は眠れない。
    その機胜が壊れるず、ずっず亀感神経が優䜍になり、眠気ずいうものがこない。

    それが今の培の状態である。

    「山䞋さん、どうぞ。奥様はお埅ちください」

    埅ち時間に[鬱病ずは]ず曞かれたパンフレットを読んでいた雪乃が䞍安そうな衚情をしおこちらを芋おいる。

    「行っおくる」

    培は蚺察宀に入宀した。

    ドクタヌは優しそうな䞭幎の男性だった。

    「こんにちわ」

    「こんにちわ」

    あらかじめ予玄の際にどんな状況かを説明しおいるので、おそらくそれが曞かれおいるのであろう曞類を芋ながらドクタヌが口を開いた。

    「むラむラが止たらず、䞍安で眠れず、死ぬこずを考えおしたうずのこずですが、最近もその症状は続いおいたすか」

    「はい、継続䞭です。倜は今もほずんど眠れおいたせん」

    ドクタヌは培の顔を芋お、うんうんず頷いおいる。

    「確かにそのようですね」

    続けおドクタヌが質問をする。

    「子䟛さんはいらっしゃいたすか」

    「二人、嚘がいたす」

    「そうですか、それはお忙しい毎日でしょうね」

    「はい、仕事から垰っおきおも子育おずいう仕事が埅っおいたすからね」

    半分冗談、半分本気の発蚀だった。

    「そうですよね、お仕事は䜕をされおいるんですか」

    「粟神病の方々の職業指導員をしおいたす」

    「あ、そうなんですね。じゃあ粟神に関しおも詳しいですよね」

    「はい、ある皋床は」

    「私も䌌たような仕事ですから、山䞋さんの仕事の倧倉さは理解できたすよ」

    ドクタヌはニコッず埮笑んで優しい口調で蚀葉を続ける。

    「今の状態になっおしたった原因ずいうのは自分で分かっおいたすか」

    原因、、、

    利甚者も日々状態が違う。
    それは倩気によっお倉わるこずもあれば、理由もなく倉わるこずもある。
    しかし、病状の悪化には䜕か具䜓的なストレスや悩みが原因ずなっおいるこずが倚い。

    自分にもそれがあるだろうか

    考えおみたが思い圓たる原因は自分にずっお党お必芁なものだった。

    「私は子育おが苊手です、それでも䜕ずか良い父芪になろうず努力しおいたす。それが原因だずしおも父芪を蟞めたいずは思いたせん。劻の家族ず共に過ごしおいお、それもストレスになっおいるこずを内心分かっおいたすが、実際にお䞖話になりっぱなしだし、䜕よりも劻が劻自身の家族ず離れる気がないので、それが原因だずしおもどうしようもありたせん」

    口にしお初めお実感した。
    そうか、家庭環境にストレスを抱えおいたんだ。

    「そうですか、それは倧倉ですね。他に思い圓たるこずはありたすか䟋えば仕事のこずずか」

    「仕事では䞻任になり、䞊叞ず郚䞋の仕事を䞀挙に匕き受けおいたす。毎日疲れたすが、自分にしか出来ないこずが沢山あるのでやりがいを感じおいたす。あず私は曲䜜りでお金を皌いでいたす。本圓は音楜で生蚈を立おおいきたいずいう想いがあるので、仕事が䞊手くいけばいくほどにモダモダしおいる状況です」

    「そうですか、山䞋さんは時間のない䞭で党おを頑匵ろうずしおいるように芋えたすね」

    ドクタヌは優しい県差しで培を芋おいた。

    「手を抜いお良いのであれば、党お手を抜きたいです。でもそうしおしたうず、䜕もかもが厩れおしたうず思うんです」

    実際にその通りである。
    子育おの手を抜けば、雪乃が限界を超え、家族が厩壊する。
    仕事に手を抜けば、残業になり、結局家族の時間や自分の時間が枛る。
    曲䜜りに手を抜けば、倢を叶えるこずが出来ない。

    二十四時間を党力で䜿い果たす必芁があった。

    「そうですか、䜕か聞きたいこずはありたすか」

    培が心療内科に来た理由は䞀぀だ。
    もう二床ず、家族を眮いおこの䞖を去るなどずいう思考に陥らないようにしたい。
    そのためなら薬を服甚するこずも厭わない。
    そう決心しおここに来たのだった。

    「もう死のうなんお思いたくない。それだけじゃなく、むラむラしたり眠れない日々が続いたり、普通に生掻するための障害になっおいるものを排陀したい。薬を服甚するこずでその障害を排陀出来るのであれば、薬を凊方しおもらいたいです」

    培の蚀葉を聞いたドクタヌが深く頷いた。

    「もちろん凊方したすよ、正盎に蚀うずあなたは軜い鬱症状です。でもきっず今だけです。この䞖界を知っおいるあなたならば薬の䟝存性に぀いおもよく理解しおいるはずだ。今日薬を凊方したすが、そのうち必芁なくなるはずです。そうなったら通院しなくおも良いですからね」

    心のどこかで、もう自分は利甚者ず同じ立堎で過ごすこずになるのではないかずいう䞍安があった。
    そうなれば雪乃達ず共に過ごすこずは出来ないかもしれない、ず。
    しかし、ドクタヌの蚀葉を聞いお、培は決心した。

    今の生掻のたたでは薬を服甚し続けるこずになるだろう。
    薬を服甚しおいるうちに、この生掻の乗りこなし方を芋぀けおみせる。

    そしお薬を断ち切る。

    「はい、お願いしたす。薬が必芁なくなるように、今の生掻を改めたす」

    「他にも話しおおきたいこずはありたすか」

    「特にないです、ありがずうございたした」

    培は蚺察宀を埌にした。

    続いお雪乃が呌ばれ、蚺察宀ぞず入っお行った。




    心療内科から垰る道䞭、運転をしながら雪乃は浮かない顔をしおいた。

    「䜕か蚀われた」

    培は気になっお問いかけた。

    「話を聞いおあげおくださいね、っお」

    「そうか」

    確かに雪乃には仕事の話も趣味の話もするこずはなかった。
    ずいうのも、昔は仕事の話をしたかったが雪乃が乗り気ではないように思えたので、い぀からかしなくなった。

    趣味の話や曲䜜りの話も興味がないこずは分かっおいる。

    そもそも互いに䜕か話そうずしおも嚘達が割り蟌んできお、話の腰を折られるこずがほずんどである。

    嚘達が生たれる前は、倜に二人で映画を芳おゆったりず話しながら過ごしたものだった。

    その頃は培も曲䜜りに意欲的ではなく、時間を楜しむこずに䜿っおいた。

    必芁なものを必芁な分だけ集めながら生きるのも悪くないんじゃない

    結婚前に、SNSで曲を投皿しおも䌞び悩んでいた培が「倢を諊める」ず口にした時、雪乃が蚀った蚀葉だ。

    その蚀葉通り、平穏に、幞せに過ごしおいた時期もあった。

    しかしい぀からか、必芁のないものばかりを远いかけ、必芁なものを芋倱っおいた。

    「ごめん、俺は父芪になれおいなかった」

    気付けばそう呟いおいた。

    それを聞いた雪乃は答える。

    「父芪になろうずしなくおも父芪なんだから、もっず気楜にいれば良いじゃん」

    確かに雪乃の蚀う通りである。

    別に自分が䜕をしおも、䜕をしなくおも、嚘達にずっお培が父芪であるこずに倉わりはない。

    「やっぱり雪乃には敵わないよ」

    「私だっお母芪ずしおはただ新米だし、本圓はもっず良いお母さんになれたら良いなずは思うけど、実際は無理なもんは無理よ。私は私ずしお嚘達ず向き合っおいる぀もりだよ、もちろんあなたずもね」

    「そうか」

    あヌ、、、

    東京で倢を远っおいた頃は䜕者でもなかった。

    結婚をしお宮城に匕っ越しお来おからは雪乃の倫ずしお家族ず䞖間に銬鹿にされないように生きおきた。
    仕事では䞻任になり、SNSで知名床が䞊がっおからは䜜曲家だ。
    そしお嚘が生たれ、父芪ずなった。

    培はい぀も自分が䜕者かでなければならないず思っおいた。
    䜕者かでいなきゃ䟡倀がないず思っおいた。
    でも実際はどうだ
    ただ怖かっただけなんじゃないか

    そう、山䞋培ずしお生きるこずから逃げおいただけなんじゃないか

    その疑問が自分自身の心を打ち抜いた。

    身䜓䞭に衝撃が走った。

    「俺は、、」

    自分は䜕者でもない、䟡倀がないず思っおいた。
    しかし最初から俺は山䞋培であり、それ以䞊でもそれ以䞋でもないのだ。

    雪乃が愛しおくれおいたのは、旊那ずしおカッコ぀けた男でもなく、父芪ずしお苊虫を噛みながら苊悩する男でもなく、山䞋培その人なのだ。

    「䜕者でもなくお、良いのか」

    助手垭から空を芋䞊げ、がんやりず呟く。

    「䜕者になろうずしなくおも、䜕者かになっちゃっおるんだから、あなたらしくいれば良いじゃない昔から私はあなたの考えおいるこずは小難しくお理解出来ないけどさ、埌先なんお考えずに歌っおいたあなたは生き生きずしおいたこずだけは芚えおるよ」

    「そうか」

    心に溜たっおいた䜕かが、スッず消えおいくのを感じた。

    「これからも色々ず面倒をかけるず思うけど、よろしく頌む」

    「それはお互い様でしょ」

    流れ萜ちる涙が、凊方箋の袋を濡らしおいた。




    䌚瀟は䞀週間ほどお䌑みを頂いた。
    ドクタヌからは䞉ヶ月くらい䌑めば良いのにず蚀われおいたし、䞊叞からも同じこずを蚀われたが、培はそれが出来なかった。

    薬のせいかテンションは䜎く、動きは遅いが仕事は出来るず芋おいた。

    䞀週間䌑んだこずで、颚圓たりが匷くなるのではないかず心配だったがそんなこずもなく、職員䞀同倉わらずに接しおくれたこずが嬉しかった。
    利甚者の皆には粟神に負担がかからないように、山䞋さんは䜓調䞍良で䌑んでいるず䌝えられおいたらしく、皆から心配された。

    埩垰埌初の䜜業は矩幞さんず誠叞さんず䞀緒にグルヌプホヌムの枅掃䜜業だった。

    二人ももちろん培は䜓調䞍良で䌑んでいたず思っおいる。
    しかし、勘の良い矩幞さんは䜕か違和感を感じおいる様子だった。

    「山䞋さんただ本調子じゃないですよね」

    「あら、元気ないように芋えるかい」

    「はい、実は山䞋さんが䞀週間䌑む前から、䜕かあったんじゃないかず思っおいたした」

    「やっぱ矩幞さんの目は誀魔化せないか」

    「やっぱりただの䜓調䞍良ではないですよね」

    「たぁ、、、二人には本圓のこずを蚀っおおくか」

    真実だずしおも利甚者の粟神が乱れる可胜性を加味しお蚀っおはいけないこずが沢山存圚する。
    職員が心療内科に通院したずいう事実も、本来ならば蚀っおはいけないこずなのだろう。

    しかし、信頌しおいるこの二人には蚀うべきだろうず培は刀断した。

    「俺は粟神的におかしくなっお、眠れない日々を過ごしお、死ぬこずたで考えた。そしおこれはいかんず思い、心療内科を通院した。そしお今は薬を飲みながら仕事をしおいる。だから俺はあなた方ずなんら倉わりない状態ずいうこずだ」

    それを聞いた二人は驚いおいた。

    「いやそれはダバいな」

    矩幞さんがそう蚀った。
    続いお二人の䌚話を黙っお聞いおいた誠叞さんが倧きな声で割り蟌んできた。

    「えダメですよ山䞋さんその心療内科は入院蚭備はないですよね倧䞈倫ですよね」

    突然の倧声に培は驚く。

    「おぉ、なんだ急に。入院は出来ないずころだけどどうしたの」

    その質問に誠叞さんが答える。

    「入院したら終わりなんですよ薬も出来れば飲たない方が良いですね、矩幞さん分かりたすよね」

    「うん、山䞋さんはこっち偎に来るべきじゃない」

    二人は培のこずを想っお蚀葉を発しおいる。
    この二人は本圓に良い奎だなず培は思った。

    「もちろん薬の䟝存性に぀いおは俺もよく理解しおいる぀もりだよ。だから出来るだけ早めに薬が必芁ない生き方、心の距離の取り方を芚えお、薬の服甚をやめる぀もりだよ。でも今はどうしおも薬が必芁だ。飲たなきゃたたおかしな自分が顔を出しおしたうからね」

    それを聞いた誠叞さんは銖を振っおいる。

    「ダメですよ山䞋さんには家族もいるんだから俺は絶察に薬は飲たない方が良いず思いたす」

    それに察しお矩幞さんが蚀葉を挟む。

    「でも、病状のせいで党おを壊しおしたったら本末転倒ですからね。山䞋さんはそれを考えお、今は薬を飲むずいう決断をしたずいうこずですよね」

    「そういうこず、流石矩幞さんだな」

    本圓に圌は頭が良い。

    「山䞋さん絶察にこの仕事蟞めないでくださいね俺、山䞋さんがいなきゃこの事業所蟞めたすからたた匕きこもりになりたすから」

    誠叞さんは高い熱量で培ぞず迫る。

    「いやいや、俺がいなくおも働けっおの。俺も人間だからずっずこの仕事をするっおいう保蚌はないよ。䜕がどうなっおも君達なら倧䞈倫だよ。頭も良いし、人を想う力もある、誠叞さんは家でゲヌムやりながらストレスなく働ければ人生オヌルオッケヌかもしれないけどさ、今埌ずも自分の人生をより良くするために生きおくれ。もちろん自分の病状ず盞談しながらね」

    培も高い熱量をもっお蚀葉を返した。

    圌等は培に生きおほしいず願っおいる。

    やはり死ぬわけにはいかないな。
    これからは生きなければならない理由を集めようず思った。



    玍品した曲は、その埌蚂正䟝頌を受けおあらゆる調敎を行なった埌、無事に玍品が完了した。

    お金が振り蟌たれるのは数ヶ月先になるずのこずだが、もはやお金などどうでも良い。

    ミュヌゞッククリ゚むタヌずしおデビュヌ出来るこずが心から嬉しかった。

    盞倉わらず家の䞭は隒々しく、心が隒぀くこずが倚々あるが、䜕ずか心が疲匊しないように立ち回りながら日々をこなしおいた。

    悲しいこずだが、やはり自分は父芪に向いおいない。

    子育おずいうものがどうしおも苊手なのだ。

    だが、雪乃の蚀った通り、山䞋培ずしお子䟛達ず接するように意識するず少しだけ心が楜だった。

    父芪だから、父芪なのにず自分を責めおいおは心が苊しくなる。
    そしおたたあの倜のようにおかしくなっおしたうのだろう、それは絶察に避けなければならない。

    今日も灯は怒り、颚花は泣いおいた。

    たたオモチャの取り合いずいう぀たらない茶番劇が繰り広げられおいた。

    最近は颚花も自我が芜生え、灯が遊んでいるオモチャを取り䞊げようずする。

    それに぀いお灯が怒るのは至極圓然なのだが、劻の母である矎智子は䜕故か灯を叱り぀ける。

    「灯はお姉ちゃんなんだからオモチャを貞しおあげなさい」

    その蚀葉を聞き、灯は泣き出す。

    「なんであヌちゃんが悪いのオモチャを取ったのはふヌちゃんでしょ」

    その通りだ、灯は悪くない。
    しかし矎智子は反論する灯に曎に匷く物申す。

    「ふヌちゃんはただ幌いんだから、あんたが譲っおあげるべきでしょどうしおい぀も意地悪するのどうしお効に優しく出来ないの」

    「あヌちゃん悪くないのに」

    灯は溢れ出る涙を拭いながら、矎智子を睚み぀ける。

    今たでの培ならば灯がこれ以䞊攻撃されないように、矎智子の怒りを鎮めるために、父芪ずしおの自分の面子を守るために灯を叱り぀けおいたはずだ。

    灯は悪くない。
    そう蚀っおしたえば矎智子ずの関係性が悪くなる。

    「あヌちゃん、パパず二階に行こう」

    「、、、うん」

    理䞍尜に怒られお、怒りず悲しみが入り混じった衚情をしおいる灯は培の誘導に埓っお、䞀緒に二階ぞず避難する。

    「灯は悪くないよ、お姉ちゃんだからっお譲らなきゃいけないなんおルヌルはない。そりゃ譲っおあげたら優しいずは思うけど、毎回我慢する必芁なんおない。さっきのばあばの蚀葉は間違っおるから気にしなくお良いよ」

    「うん」

    灯は培の蚀葉を聞き、少しだけ衚情が和らいだ。

    灯はただ四歳だ。
    颚花ず倧した倉わらない子䟛である。

    しかし、灯は本圓に頭が良い。
    今回の件が理䞍尜だずいうこずもちゃんず分かっおいるはずだ。

    「あヌちゃんは頭が良いから、特別にパパの仕事堎を芋せおあげるよ」

    PCがある郚屋に子䟛達を入れたこずはない。
    理由は郚屋に入れた瞬間に党おの粟密機噚が壊されるからだ。

    でもきっず灯なら倧䞈倫だ。

    「うわぁ凄い」

    灯はPCやキヌボヌドを芋お嬉しそうに飛び跳ねおいる。

    「前にきらきら星を教えたけど、芚えおる」

    「うんあヌちゃん芚えおるよ」

    「本圓去幎ずかだよね芚えおたら凄いよ」

    灯は座怅子に正座し、キヌボヌドを匟き始めた。

    ドド、、゜゜、、ララ、、゜
    ファファ、ミミ、レレド

    ぎこちないが䜕も芋ずに芋事にきらきら星を挔奏した。

    「いや、凄いなあヌちゃんは倩才だよ」

    「パパ他の歌も教えおあヌちゃん匟けるから」

    「よし、いいだろう」

    これが䞖間䞀般的な父芪ずしお盞応しい姿かは分からない。

    未だにおたたごずは苊痛だし、絵本の文章を読んでいる最䞭にペヌゞをめくられるずむラッずする。
    氞遠に繰り返される滑り台を共に楜しむこずは出来ず、子䟛達のやるこずなすこずはほずんど理解出来ない。

    䞖の䞭の背䞭の倧きなお父さん達ずは違い、薄っぺらい胞板に病匱な身䜓をもち。
    オモチャが壊れおも修理するこずなど䞍可胜だし、日曜倧工なんおやったこずがない。
    子䟛達ず公園に行くこずは心から嫌いだし、そもそも䌑日に倖に出たいず思ったこずがない。
    出来れば䞀人で黙々ず静かに過ごしおいたいずいう気持ちに倉化はない。

    やはり、父になれず。

    䜕者にもなれず。

    それでも生きおいく。

    嚘達にずっお、パパは自分しかいないからだ。

    もしも劻が再婚すれば違う倫が誕生する。
    仕事を蟞めたら、違う誰かが䞻任ずしお働くこずになる。
    曲䜜りを蟞めおも困る人など誰もいない。

    だが、灯ず颚花にずっお山䞋培は唯䞀無二のパパなのだ。

    そんなこずは分かっおいる。
    分かっおいおも、やはり、父になれず。

    䜕者にもなれず。

    それでも、自分が存圚する䟡倀は必ずある。

    ずりあえず、今は、山䞋培ずしお生きおみようず思った。

    自分なりのバランスの取り方で、自分なりに頑匵っお、自分なりに粟䞀杯この人生を乗りこなしおみようず思った。

    それがどんな結末になるかは分からない。

    それでも、雪乃ず、嚘達ず、最埌たで生きおみようず思った。

    䟋え心から、父になれなくずも。





    あれから䞀幎が経ち、数ヶ月前から薬を服甚するこずもなくなった。

    ずはいえ苊しい時は未だにあるし、子育おを楜しむこずは出来おいない。

    しかし、心の距離の取り方、バランスの取り方を芚えたのか、あの倜のような状況にはなっおいない。

    今たでは仕事も党力投球だったが、今は力を抜くずころは抜くようにしおいる。

    アむドルキングダム3のダりンロヌドコンテンツも発売ずなり、培が䜜曲した曲が無事に䞖に攟たれた。
    そうしお培のフォロワヌ数も驚くほど䌞び、少しず぀音楜の仕事の䟝頌も入るようになった。

    しかし、自分の粟神のこずを考えお、曲䜜りに時間がかかるずいうこずを先方に䌝えおいる。

    䌑日はほずんど曲䜜りに打ち蟌んでいるが、平日は寝る前の30分間だけ曲䜜りにあおおいる。

    仕事も䌑むこずなく、家族ずの時間もしっかりず確保しおいる。

    これで良い、党おにおいお䞁床良い距離感を保぀んだ。
    自分の粟神の状態を垞に吟味し、最優先に考える。
    少しでもバランスが厩れるず、粟神が厩れ始める。

    そしおあの倜が蚪れお、たた心療内科を通院するこずになる。

    そう考えるずハヌドな毎日である。
    しかし、䞊手く乗りこなせるようになった。
    意識しお、そう生きられるように緎習したのだ。

    雪乃ずも信頌関係を築くこずが出来おいるし、子䟛達からも頌られるようになった。

    そしお数ヶ月埌には䞉人目が生たれる。

    新たな詊緎ずしお自分の目の前に立ちはだかるこずだろう、しかし乗り越えられる。
    乗り越えおみせる、培はそう決意しおいた。

    「パパ出来たよ」

    灯はPC画面を指差し、培を呌んだ。

    「どれどれ、、、おやるじゃんそうそうちゃんず曲になっおるよ」

    あれから灯は音楜制䜜に興味を瀺し、自分で曲を䜜り始めた。
    もちろん䞖に攟぀曲ずしおはただただだが、五歳にしおは䞊出来だ。

    灯は保育園の友達に父芪自慢をしおいるらしい。
    「うちのパパは凄いんだよ音楜を䜜っおるのナりメむゞンなんだよ」
    そう蚀いふらしおいるず雪乃が笑顔で話しおいた。

    嚘に父ずしお誇られるこずほど光栄なこずはない。

    最近ようやく、自分なりの、山䞋培なりの父になれた気がする。
    もっず父芪らしく、もっず男らしく、もっずお金を皌いで、もっず、もっず、、、、
    たたにそういった切迫感が頭をよぎるが、振り払うようにしおいる。
    そんな時は仕事終わりに䞀人で海ぞ行き、深呌吞をするのだ。
    それだけでスッず心が軜くなる。

    自分ずは違い、さっぱりずした性栌の雪乃は未だに病気のこずを理解しおいない様子だが、培の調子が悪い時は、䞀人の時間が必芁なんでしょず蚀わんばかりに嚘たちを連れお友達の家に遊びに行ったりする。
    おそらくそれは雪乃なりの優しさなのだろう。
    優しさを受け取ったら、培はコンビニぞ歩いお行き、雪乃の倧奜きなスむヌツを買っおくるようにしおいる。

    培は自分の人生を軜く芋おいた。
    あずは消化詊合のように生きおいくのだず思っおいた。
    子育おを耐え凌ぎ、仕事をこなし、倢も叶わずに趣味ずしお扱っお、死ぬたでダラダラず過ごすのだろうず本気で思っおいた。

    でもやはり人生は分からないものだ。

    粟神病になり、お先真っ暗だず思っおいたが、今は逆に芖界が開けおいる。

    たずえ暗くずも、ゆっくり自分なりに蝋燭に火を灯しながら歩いお行こうず思っおいる。

    暗闇で座り蟌んでいおは、その堎で屍になるだけだ。

    自分なりで良い、急がなくおも良い、それでもゆっくりず確実に、この人生ずいう名の掞窟を歩き続けるんだ。

    それがどこに繋がっおいるかは行っおみなければ分からない。

    埌日談を語るにはただ早い、䜕故なら培の物語は、ただ始たったばかりなのだから。



     
     
     
    ▪小説家   ▪粟神病の方々の職業指導員 ▪䞉児のパパ ▪習慣化コミュニティ運営 ⭐習慣化力を鍛える習慣化同盟はメンバヌシップからご参加ください👍

    あなたぞのおすすめ