
Kazakhstan Breeder's Cup~中央アジア競馬の祭典~
昨夏、単身でアルマトイ競馬場を訪れ、カザフスタンダービーの観戦およびレポートを行いました。中央アジアの大国カザフスタンは、競馬の発展と国際化に向けて少しずつ歩みを進めています。そんな中、今年は新たな試みとして「カザフスタン・ブリーダーズカップ」(以下、カザフスタンBC)が創設されることになりました。本稿では、この注目イベントの概要と、その周辺事情をご紹介します。
カザフスタン競馬について
中央アジアの大国・カザフスタンの競馬は、まだ日本では耳慣れない存在ですが、その概要や歴史については過去の投稿で触れておりますので、ぜひご覧ください。近年では、カザフスタンでデビューした Kabirkhan号 が、ロシアを経由してドバイへ遠征し、昨年の国際GIアルマクトゥームチャレンジを制覇しました。父は日本で繋養されているカリフォルニアクローム。地理的には日本からやや離れていますが、“二つお隣”の国であり、競馬においても決して無縁ではありません。
カザフスタンBC・その全貌
初開催を飾る舞台とプログラム
・カザフスタンブリーダーズカップ(Kazakhstan Breeders’ Cup)
・開催日時:2025年10月4日(土)
・開催場所:アルマトイ競馬場
・ライブ中継:Sport+ Qazaqstan(予定)

カザフスタンBCは、その名の通り、米国にて開催持ち回りで行われる世界的競馬イベント「ブリーダーズカップ」を範に、今年新たに創設された競馬ミーティングです。当日は施行距離や性齢条件の異なる8つのレースが組まれ、各カテゴリーにおけるチャンピオン決定戦の役割を担います。


シリーズの総賞金額は64,600,000テンゲ(約1,740万円)。
日本の競馬ファンには物足りない額でしょうが、これはカザフスタン国内競馬においては突出した規模で、カザフスタンダービーデー開催の総賞金(20,000,000テンゲ=約540万円)の3倍以上に相当します。
高額賞金は国内外から有力馬を呼び寄せる大きな要素であり、特に近隣諸国からの参戦が期待されています。
文化と競馬が融合する一日
当日はレースだけでなく、カザフスタンの伝統文化を取り入れたイベントも予定されています。
・カザフスタンの伝統的な馬術ショー
・遊牧民の生活を再現したアウル(集落)展示
・民族音楽や舞踊パフォーマンス
などが予定されており、競馬場全体がカザフスタンの伝統文化を押し出した遊牧民調な雰囲気に包まれるでしょう。


昨年のカザフスタンダービーデーでは、レース後に花火やライブなども行われており、今年はさらに国際色豊かな演出が加わる見込みです。
国境を超えた遠征馬の可能性
近隣諸国に広がる招待の輪
こうした国内外のファンを惹きつける演出の一方で、北米のブリーダーズカップを範として創設されたカザフスタンBCは、その性格上、周辺諸国からの参戦有無は最大の関心事です。事前の取材によれば、すでにキルギス、ウズベキスタン、ジョージア、アゼルバイジャンなどの競馬関係者に招待状が送られています。これら4か国はいずれも、統括機関による恒常的なサラブレッド競走は現時点で確認されないものの、少数ながらサラブレッドの生産は行われています。例えばジョージアなどは、北米からGIII勝ち馬Vicarageを種牡馬として輸入して、かつてソ連邦下では存在した競馬を、草の根的な活動から復活させようという動きのある国もあります。また、アゼルバイジャンでは、2014年にアゼルバジャン産馬による北米での初勝利が記録されています。現地の馬産家や調教師の間でも関心は高いでしょうから、初回からどのような形で交流が見られるのか楽しみです。
・First Azerbaijani-Bred Wins in U.S. (Blood Horse)
・Vicarage to Republic of Georgia (Blood Horse)
周辺競馬場と遠征を支える条件
地理的に見ると、カザフスタンは他にも周辺に、複数の競馬拠点があります。ロシア側では、タタールスタン共和国のカザン競馬場や、ウファ市近郊のアクブザット競馬場が知られ、中国にはカザフの国境の街ホルゴスにほど近い霍城県に新疆六州国際競馬場があります。これらの競馬場のうち、新疆六州国際競馬場はカザフスタン国境に近く、アルマトイからの距離も比較的短い立地です。ただし、現時点では両国間での競馬的な交流は確認されておらず、遠征の実現性については未知数と言えます。一方、カザン競馬場やアクブザット競馬場は、広大なロシアの中では中部に位置するが、アルマトイからは相当の距離があります。それでも、ロシアからカザフスタンへの移籍馬はこれまで多数存在しており、検疫や輸送に関する実務的なノウハウはすでに蓄積されているのではないでしょうか。

4歳まで🇷🇺タタールスタン共和国で走り、2023年に
カザンのセントレジャーに優勝したステイヤー。

彼もロシアからの移籍組の1頭
輸送距離の短さや既存の協力関係は、近隣諸国からの遠征を後押しする大きな基盤といえるでしょう。
遠征がもたらす未来
こうした物理的・制度的条件が整えば、遠征馬の実現に期待が持てます。そしてそれは、カザフスタンBCを単なる国内重賞から、中央アジアと南コーカサスを結ぶ地域交流戦へと押し上げる力となるかもしれません。
さらに、血統や馬資源の循環が促進されることで、域内の競馬レベルが底上げされ、国際的な注目度も高まるでしょう。2025年の初開催は、その未来への第一歩となることを期待してます。