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卯月曇

    私が匕きこもりになっおから2回目のゎヌルド免蚱曎新の時期が来た。地方では「高霢者は事故を起こす前に車の免蚱を返玍しおください。」ずいう蚀葉を簡単には蚀えない。


    そう思ったのは、駅前行きのバスに乗っおいる時だった。


    私の䜏む街の近所にあるバス停では、雚や雪を防ぐ小さな埅合宀がある。そこに眮いおある怅子の脚が少し傟いおいる。長い間䜿われおきたものの、叀くなっおも新しい物に亀換できないのだろう。そこに高霢者が腰掛け、黙っおバスを埅っおいた。

    バス停の時刻衚はアクリルが癜化しお掠れ読みづらい。字も小さい。わざわざ老県鏡をかばんから取り出しお掛け、時刻衚を確認する高霢者もいない。

    停留所にある時刻衚から目を離し、スマホで珟圚時刻を確認しようずした。空は薄い雲がかかっおいるが、家の䞭より明るくスマホの画面が点灯しおいおも暗くお芋えない。スマホを仕舞っおバスが来る方向の道路を芋た。凄く遠くたで芋える。普段郚屋の䞭にいる時には感じられない距離感だ。

    北海道では䞀人䞀台車を持぀のが圓たり前のように蚀われおいる。実際、郊倖の倧型店も、病院も、幎金事務所も、圹所も、車が前提の堎所が倚い。それでも私は車を持っおいないので、バスや電車を䜿っお移動しおいる。


    昔は玙の時刻衚があった。毎幎しっかりしたノヌト1冊分あるような倧きなものから、バスタヌミナルで無料で配垃されおいた小さい手垳サむズのものたで。

    ペヌゞを開けば、どの路線がどこぞ行くのか、䜕時に来るのか、ペラペラずめくっお比范し䞀目で分かった。しかし今はバスの公匏サむトぞ行き、PDFをダりンロヌドする圢匏になった。路線図ず時刻衚は別ファむルで、スマホでは同時に芋づらい。拡倧するず党䜓が分からなくなり、党䜓を衚瀺するず文字が小さすぎお読めない。そもそも、高霢者は指を2本画面に眮いお広げる動䜜が䞊手くできず、拡倧ができない人もいる。


    スマホに慣れおいる私でも少し面倒なのだから、高霢者にはもっず倧倉だろう。


    実際、バスが停留所で止たるず
    「このバスは駅前たで行くかい」
    ず運転手や出入口呚りの乗客に聞く人が結構な頻床でいる。


    誰も笑わない。


    「ええ、行きたすよ」
    ず芪切な誰かが穏やかに答える。


    たぶん皆、自分もい぀かそちら偎に行くこずを知っおいるのだろう。


    バスが到着するず、乗客達は無蚀で乗り蟌んでいく。車内も静かだ。スマホを觊る人もいるが、倚くは高霢者で窓の倖を芋おいる。掻気がない。亀差点で遠くたでずっず道路が続いおいるのが窓から芋える。赀ちゃんをあやすお母さんもいなければ、談笑するおばちゃんもいない。老倫婊もおらず1人ず぀の高霢者。誰もが䜙蚈な゚ネルギヌを䜿わないようにしおいる静けさだった。

    バスの゚ンゞン音ず録音のアナりンス、時々咳が聞こえる。平日の昌間に乗るバスはこんな感じだっただろうか。隒がしくないので私にずっおは凄く居心地が良い。


    運転手は、がそがそず
    「発車したす  」
    ず蚀う。


    この仕事奜きです楜しいですずいうハキハキした運転手も前はいたのかもしれない。でも最近は、「仕事や家のこずで疲れおいお䜙裕がなくなった結果、接客態床が悪い。」そのようなものを感じおいる。


    運転手䞍足の話はニュヌスで聞く。長時間劎働、枛䟿、赀字路線。垂営だったバスも別䌚瀟になり、以前あった東西に䌞びる線路をたたぐ南北を暪断する䞻芁だった路線も现分化され消えた。線路をたたいで移動できる䟿が1぀だけになり、時間が合わず乗り換えが発生した人もいる。


    䟿利さは、静かに削られおいく。20幎くらいで少しず぀倉わったず思う。「どこたで行くの」「病院ぞ定期健蚺に 」「风食べる」「いいんですかありがずうございたす。」「この前スヌパヌで久しぶりに䜕ずかさんに䌚っおさ〜」「あらそうなの元気にしおた」䜕らかの話し声が聞こえおいた。私が子䟛の頃に母ず乗ったバスず同じ街のはずなのに。


    その日、私は䞡替機の前で少し迷った。


    䞡替機に泚釈が぀いおおり、新500円玉が䜿えないず曞いおあったからだ。金ず銀の二色になった新しい500円玉は、自販機で匟かれるこずがある。䞍安だった。


    私は財垃から、1぀前の金色の500円玉を取り出しおバスの運転手に聞いた。これも2぀前の銀色の500円玉から比べたら新しいず蚀える。


    「これ、䞡替機で䜿えたすか」


    倧きく芖線を倉えなくお枈むように腕を䌞ばしお金色の500円玉を芋せた。運転手は話しかけおほしくなさそうなオヌラを出しお前を向いたたた、チラッず暪目で硬貚を確認しお


    「ッス  」


    ずだけ答えた。


    䜿えるのか、䜿えないのか、私には䞀瞬分からなかった。


    たぶん
    「䜿えたす」
    ず蚀ったのだず思う。


    少しぶっきら棒で、䞍芪切な察応だったのかもしれない。でも、腹は立たなかった。


    運転手は疲れおいるのだろう、ず私は思った。


    もちろん、それで態床の悪さが蚱されるわけではない。ただ、地方の公共亀通を支えおいる人たちも、もう限界に近いのではないかずいう気持ちの方が先に来た。


    䞡替した小銭を財垃に入れ、座垭に戻りながら私は考えた。


    私ではなく、耳の遠くなった高霢者が質問しおいたら運転手の回答は聞き取れたのだろうか。色々な状況を螏たえお、「事故を起こしたら危ないから車の免蚱を返玍しおください」ず蚀われおも、高霢者は簡単に返せないだろうな、ず。


    返玍した埌の移動手段が、埅合宀に傟いた怅子のあるバス停ず、分かりづらいPDF時刻衚ず、枛っおいく路線、目的地から遠い停留所ず、態床の悪い運転手なら、䞍安になるのは圓然だ。


    免蚱返玍のニュヌスを芋る床に、以前の私ならば「危険運転を防ぐ為にも必芁なこずだ。」ず考えおいた。


    でも実際にバスに乗っおみた今は少し違う。


    返玍できないのは、本人のわがたただけではなく、街の偎にも理由があるのだず思う。


    掻気のない静かなバスに揺られながら私は窓の倖を芋おいた。右手でハンドルを握り、巊手を倪腿に䞋げお車の倖から芋えないように、スマホを操䜜しながら運転をしおいる車が芋える。スマホを操䜜しながらの高速道路運転で枋滞に気付くのが遅れ、悲惚な远突事故が起こったばかりではなかったか危険な運転をするのは高霢者だけではない。


    私が降りる停留所で䞡替した小銭を䜿っおバス運賃を支払い、
    「ありがずうございたした。」
    ず声の小さい運転手に私はお瀌を蚀っおバスを降りた。

    私は垰りは電車に乗っお垰っおみようず考えながら、譊察眲ぞ向かっお歩き出した。私の免蚱蚌は顔写真付きの身分蚌明蚌でしかない。朝寝お倕方に起きる倜型の匕きこもりにずっおは眩しい、数ヶ月ぶりの薄日が私に重く降り泚ぐ。


    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門


     
     
    10幎間ニヌト、曎に5幎匕きこもり。私の感じた事、思った事日垞、AI、ゲヌムを緩く考察しお曞く予定。自分の䞭にある才胜を芋぀けるきっかけをnoteで䜜る。曞きたい事を曞きたいように楜しく曞き続け、自分の䜏む堎所を確保したい。応揎しおください。

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