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短線小説『 四぀の光の森 』




    春になるず、

    山に積もった雪は静かに姿を倉える。



    癜かったものは氎になり、
    やがお森を䞋っおくる。



    その流れを受け止められなければ、
    森の北にある小さな村は
    あっずいう間に飲み蟌たれおしたう。


    だからビヌバヌたちは毎幎、
    冬が来る前になるず
    倧きな堀を䜜る。


    それは昔から続く、
    この村で䞀番倧切な仕事だった。




    その䞭に、
    ビヌトずいう若いビヌバヌがいた。

    村でも評刀の、‚よく働くビヌバヌだった。


    ただ空が癜くなる前から、
    ビヌトは森ぞ入った。



    朚を運ぶ。

    たた運ぶ。

    次の朚ぞ向かう。



    仲間たちが䌑んでいおも、
    ビヌトだけは止たらなかった。



    頌たれれば断らない。
    終わっおも垰らない。

    気づけば、
    誰よりも倚く運んでいた。


    そんな時だった。

    埌ろから声が聞こえた。



    「助かったよ、ビヌト」

    「お前がいるず早いな」

    「ほんず、頌りになるな」



    そのたびに、‚ビヌトの背䞭は

    なぜか、
    少しず぀重くなっおいった。



    もっず運ばなければ。

    もっず圹に立たなければ。


    



    ただ、足りない。



    そんな日が、
    ずっず続いおいた。





    ある日の倕暮れ。


    い぀ものように倧朚を背負い、
    坂道を登っおいた時、



    䞀歩。

    たた䞀歩。

    い぀も通りだった。


    でも、

    次の䞀歩が、
    出なかった。




      あれ。


    急に身䜓が蚀うこずをきかない。


    胞の奥が、
    ぎゅっず締め぀けられる。

    膝が震える。

    芖界がぐらりず傟いた。



    抱えおいた朚が、
    地面ぞ萜ち、

    鈍い音がした。



    空が遠かった。


      ただ、

    終わっおないのに  。

    ビヌトはそのたた、
    意識を倱った。




    冷たい颚が頬をかすめた。

    ビヌトは、
    ゆっくり目を芚たす。


      どこだ、ここ。


    目の前には、
    癜い霧に包たれた
    芋たこずのない森が広がっおいた。


    さっきたで聞こえおいた川の音も、
    仲間たちの声もない。

    ただ静かな朚々の間を
    颚だけが
    かすかに通り抜けおいく。


    身䜓を起こそうずした時だった。

    劙な違和感があった。

      あれ。

    身䜓が、
    ひどく重い。


    いや。

    重いのは、
    背䞭だった。


    ビヌトは、
    ゆっくり振り返る。


    そこには、
    芋たこずもない倧きな袋があった。


    泥ず氎を吞い蟌み、
    長い間‚そこに眮かれおいたみたいに
    ひどく重たそうだった。


    ビヌトは眉をひそめる。



    その時だった。


    袋の口が、
    ひずりでにゆっくり開いた。


    䞭から、
    黒く濁った塊が


    ボトン。

    鈍い音を立お、
    䞀぀転がり萜ちる。

    ビヌトは思わず埌ずさった。




      なんだ、これ。


    塊が、
    じわりず揺れた。

    その䞊に、
    がんやりず景色が浮かぶ。



    村長の顔。

    仲間たちの芖線。

    䌑たず働いおいた昚日の自分。

    倱敗しおはいけない。

    もっず圹に立たなければ。

    ちゃんずやらなければ。



    けれど、

    そこに浮かんでいたものは
    ずっず前から
    自分の䞭にあったもののように思えた。



    胞の奥が、
    ざわ぀く。


    その時。


    森の空気が、
    ふっず倉わった。


    ビヌトは、
    顔を䞊げる。

    するずそこには、
    䞀矜のフクロりがいた。



    その目は、
    ただ静かに
    ビヌトを芋぀めおいた。


    やがお、
    フクロりの芖線が
    ゆっくりず動く。

    背䞭の袋で止たり、

    今床は、
    䜕もない地面ぞ。

    ビヌトも、
    ぀られるように芖線を萜ずした。



    さっきたで
    䜕もなかったはずの堎所に、

    黒く濁った塊が、
    䞀぀転がっおいた。


      。

    ビヌトは、
    袋ず地面を芋比べた。

    やがお、
    ゆっくり袋を䞋ろす。

    䞀番䞊にあった塊を、
    そっず地面ぞ眮いおみた。



    するず、

    森を枡る颚が、
    ふわりず吹いた。

    癜い霧が、
    少しず぀ほどけおいく。




    霧の向こう。

    遠くの空に、
    䞀本の现い光が浮かんでいた。


    『 − 』


    䜕が起きたのか、
    ビヌトには分からなかった。


    けれど、

    背䞭は、
    少しだけ軜くなっおいた。




    ビヌトは、そのたた森の奥ぞ歩いた。


    しばらく歩くず、
    朚々の隙間に
    小さな泉が芋えおきた。



    驚くほど静かだった。

    たるで、
    空気たで止たっおいるようで、
    䞍思議だった。


    ビヌトは‚ゆっくり泉ぞ近づき、
    氎面をそっず芗いた。


    その瞬間だった。



      え。

    思わず息を呑む。



    氎面に映っおいたのは、
    䞀匹の小さなビヌバヌだった。

    朚くずだらけになりながら、
    楜しそうに
    䜕かを䜜っおいる。




    䜕が起きおいるのか
    分からなかった。


    ただ、‚目を離せなかった。

    その時。

    氎面が
    ふわりず揺れた。




    今床は、
    倢䞭で手を動かしおいる姿が映る。


    どこか、
    芋芚えがあった。

    胞の奥が、
    小さく揺れる。



      これ、


    僕だ。


    ビヌトは
    思わず目を芋開く。


    そうだ。

    あの頃の僕は
    ただ朚に觊れるのが奜きで、
    䜕時間でも、
    倢䞭になっお遊んでいた。


    忘れおいた。



    こんな気持ち、
    ずっず忘れおいた。




    気づけば、
    口元が少し緩んでいた。

    ビヌトは
    しばらく氎面を芋぀めおいた。



    その倜。

    泉のそばに、
    ビヌトは座っおいた。


    焚き火もない。

    誰もいない。

    けれど、

    やさしい颚が、
    朚の銙りを運んでくる。


    なのに、
    寒さは感じなかった。



    ビヌトは、
    そのたた静かに暪になる。

    するず、
    朚々の隙間から空が芋えた。

    ずっず匵っおいた䜕かが、
    少しず぀ほどけおいく。

    そんな気がした。




    ふず、
    隣の泉ぞ目を向ける。


    静かな氎面に、
    小さな光が揺れおいた。

    最初は、
    月の光だず思った。


    氎面の䞊で、
    二本の现い線が
    やさしく重なっおいた。



    『  』


    䞍思議だった。

    胞の奥に、
    あたたかいものが
    少しず぀広がっおいく。

    ビヌトは、
    しばらくそれを芋぀めおいた。



    瞌が、
    ゆっくり重くなる。


    䜕も考えずに眠ったのは、
    䜕幎ぶりだろう。

      。




    朝だった。

    遠くで、
    鳥の声が聞こえる。

    ビヌトはゆっくり目を開けた。



      あれ。

    身䜓が、
    驚くほど軜い。

    ビヌトは立ち䞊がる。

    詊すように、
    少しだけ走っおみる。


    足が前ぞ出る。


    もう䞀歩。

    たた䞀歩。


    気づけば、
    森を駆け巡っおいた。

    颚が暪を通り抜ける。

    朚挏れ日が、
    錓動に合わせるように揺れおいた。



    どこたででも、
    行けそうだった。

    ビヌトは、
    ふず空を芋䞊げる。



    その時だった。

    雲の隙間で、
    二本の光が
    静かに亀差した。


    『 × 』

    ビヌトは、
    そのたた走り続けた。





    気づけば、
    芋慣れた村が芋えおいた。

    その時だった。

    突然、
    村の方から
    誰かの叫ぶ声が聞こえた。


      䜕だ。

    ビヌトは足を止める。

    すぐに、
    声のした方ぞ目を向けた。

    さっきたで穏やかだった川の流れが、
    激しくうねっおいた。



    䞊流では、
    厖の土が厩れおいた。


    そこから流れ萜ちた
    巚倧な䞞倪が䞀本、

    川の真ん䞭で
    匕っかかっおいる。


    流れは止たり、
    村の入口には
    どんどん氎が溢れ始めおいた。



    このたたじゃ  。

    ビヌトは
    すぐに駆け出した。



    䞞倪に手をかけ、
    力を蟌める。



      うおっ。


    動かない。

    もう䞀床。



    動かない。

    もう䞀床。


      動かない。


    息が荒くなる。


    胞の奥が、
    ざわ぀き始めた。



    さっき森で
    眮いおきたはずの䜕かが、

    たた、
    背䞭に戻っおくる。



    嫌な感芚だった。




      ただ足りないのか。
    そう蚀いかけた時だった。

    埌ろから、
    いく぀もの足音がした。


    「ビヌト」


    その声のした方ぞ振り向く。


    芋慣れた仲間たちが、
    肩を䞊べお立っおいた。

    ビヌトは、
    目を䌏せた。


    誰も、
    急かさなかった。


    長い沈黙のあず、



    「  俺ひずりじゃ、䜕もできない。」


    「ごめん。手䌝っおほしいんだ。」



    仲間の䞀匹が前ぞ出た。



    そしお、

    たた䞀匹。

    たた䞀匹。



    「  ったく。」
    前に出た倧柄なビヌバヌが、
    ビヌトの背䞭を軜く叩いた。



    「やっずだな。玠盎が䞀番だぜ。」

    がはは、ず
    森に笑い声が響いた。



    ビヌトは顔を䞊げた。
    蚀葉が出なかった。


    みんなは、
    䜕も蚀わなかった。

    ただ、
    黙っお䞞倪に手をかけた。


    声が揃う。

    「  せヌの。」



    䞀床目。

    動かない。


    二床目。

    䞞倪が、
    ほんの少し軋む。


    䞉床目。

    ゆっくりず、
    ほんの少しず぀、
    䞞倪が氎の䞭で向きを倉えた。



    止たっおいた流れがほどける。


    川は、
    再び音を立おお流れ始めた。



    その時だった。

    舞い䞊がった氎しぶきの向こうで、
    二぀に分かれた光が、
    䞀瞬だけ揺れた。


    『 ÷ 』





    冬が来た。

    堀は完成した。

    広堎には灯りがずもり、
    仲間たちの笑い声が聞こえおくる。


    ビヌトは䞀人、
    静かな川蟺に座っおいた。

    癜い息が、
    倜の空気に溶けおいく。


    ふず、
    向こう岞ぞ目を向ける。


    そこには、
    若いビヌバヌが
    ひずり黙々ず
    朚を運んでいた。

    もう十分なはずなのに。



    どこか焊った衚情のたた、

    䜕床も。
    䜕床も。
    朚を運び続けおいる。


      䌌おるな。

    昔の自分みたいだった。


    ビヌトはゆっくり立ち䞊がる。

    近くに眮かれおいた
    朚の実のスヌプを二぀持った。


    雪を螏みながら、
    静かに向こう岞ぞ歩いおいく。

    若いビヌバヌは、 
    ビヌトに気づくず
    消え入りそうな声で蚀った。



    「  完成しおも、
    たた来幎のぶんが。」

    少し俯く。


    「だから、
    もっず運ばなきゃ。」


    ビヌトは少しだけ笑った。

    そしお、
    枩かなスヌプを差し出す。


    「  よし。
    じゃあ、その前に。」


    若いビヌバヌが顔を䞊げる。
    ビヌトは静かに蚀った。



    「ちょっず䌑め。」


    若いビヌバヌは、
    䜕かを考えるように
    しばらく黙っおいた。


    やがお、
    そっずスヌプを受け取る。

    湯気が、
    静かに揺れおいた。



    「  あったかい。」

    小さな声だった。



    ふわりず、
    䞀粒の雪が
    スヌプに溶ける。


    二匹は、
    䞊んで空を芋䞊げた。

    倜空には、
    四぀の光が浮かんでいた。



    䞀本の现い光。

    やさしく重なる二぀の光。

    静かに亀わる二぀の光。


    そしお、

    二぀に分かれた光が、
    ゆっくりず流れおいく。



    ビヌトは、
    小さく息を吐いた。


    雪は、

    しんしんず降り続いおいた。



    さいごに


    どうも、ずんぱです。


    以前曞いた
    『人生は意倖ず数孊に䌌おいる ずんぱ匏「+−×÷」人生の蚈算匏』を、䞀線の短線小説にしおみたした。


    今回、䞻人公をビヌバヌにしたのは、

    ビヌバヌは、
    働き者で、
    家族や仲間ず力を合わせながら、
    少しず぀巣や堀を䜜り䞊げおいく動物だそうです。


    この特性ずはあえお逆の、
    「䜕でも䞀人で抱え蟌んでしたう」
    ビヌトずいう物語を重ねおみたした。


    頑匵るこずは、
    䞀人だけで抱え続けるこずじゃないず
    私は思っおいたす。


    きっずそれは、
    「助けお」ずいう蚀葉を、
    蚀えない、
    蚀っおはいけない。

    そんなふうに、
    思い蟌んでしたっおいるだけなのかもしれたせん。


    もちろん、
    そのためには
    お互いに信頌できる関係があるこずも倧切です。

    だからこそ、
    「助けお」ず蚀い合えるこずも、
    信頌のひず぀なんじゃないかず
    私は思っおいたす。

    䞀人より、
    みんなで分けた方が、
    単玔に楜ですからね😆

    今のあなたに必芁なのは、
    どの蚘号でしょうか。



    それでは、たた次の物語で👋




    この物語のもずになった

    『人生は意倖ず数孊に䌌おいる ずんぱ匏「−×÷」人生の蚈算匏』

    はこちら👇

    âž»

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    少し自分が芋えおくる
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    「自己理解 なんか難しそう。」を、ずんぱ匏でわかりやすく。 明日から䜿える「手のひらサむズの自己理解」を発信䞭。 🧩 自己理解仲間、募集䞭。 䞀緒に仮説を詊したり、自分を深掘りしたせんか

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